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労働時間等設定改善委員会とは?




厚生労働省の人口動態統計によれば、2022年中の出生率は

79.9万人で7年連続減少しており、統計開始以来はじめて80万人を下回りました。

日本の少子化が加速しています。


少子化の進行と人口減少が進む中、多様な人材が長期にわたって

活躍できる環境が求められています。

そのためには長時間労働の改善や、年次有給休暇が取得しやすい

環境整備などについて企業と従業員が深く話し合うこと、

また働きやすい職場環境の実現のため労使が協力し共に取り組む姿勢が必要です。


企業の労使協議の場には「衛生委員会」「労使委員会」などがありますが、

企業内で労働時間や休日、休憩、年次有給休暇など労働環境の改善を

中心に話し合うための専門チームとして、

労働時間等設定改善委員会」の設置をおすすめします。



労働時間などの改善についての法律



企業が自ら労働時間などの改善に取り組み、働く人たちがスキルや能力を

最大限に発揮でき、健康で充実した生活の実現を目指す法律に

労働時間等設定改善法(正式名称:労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)」

があります。


労働時間等設定改善法は2006年4月1日に施行された法律で

1992年に制定された「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」が

基盤となって誕生しました。


この法律では、企業における労働時間や休日、休憩、年次有給休暇など

(以降「労働時間等」という)の問題を、

企業の自主的な取り組みで改善することを努力義務として定めています。


勤務間インターバル制度の導入や、取引先に対する短納期発注や

発注内容の頻繁な変更の回避などもこの法律がもとになっています。



労働時間等設定改善委員会とは



企業の労働時間等の問題を改善するためには、企業経営の実情や

従業員の抱える事情を考慮に入れた検討が必要です。

企業と従業員が十分に意見を出しあうことができる体制を整えることも

労働時間等設定改善法における企業の努力義務の一部とされています。


その体制のひとつとして、労働時間等設定改善委員会があげられます。

この委員会は、事業場ごとに設置します。


労働時間等設定改善委員会の設置をおすすめする理由は2つです。


➀労働時間等の問題を労使で熟慮し

 解決策を見つけるための専門チームを発足できる


➁一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会の設置で

 労働基準法の適用の特例がある


2019年3月31日まで、衛生委員会や安全衛生委員会を

労働時間等設定改善委員会とみなす規定がありましたが、

現在は廃止されています。



労働基準法の適用の特例



一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会を設置した場合、

委員の5分の4以上の多数による決議により

労働基準法の各労使協定の締結に代替することができます。


また、行政官庁への労使協定の届出義務がある制度での届出免除など、

労働基準法の適用の特例があります。


要件を満たさないまま労働基準法の各制度を適用するときは

労使協定の締結および届出義務が発生し、

各種制度の労働基準法違反となる可能性があります。

正しく委員会を設置し決議をするようにしてください。



(※)36協定については届出義務の免除はありません。

委員会の決議により労使協定の代替をしたときは、届出様式が「時間外・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届」になるためご注意ください。




一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会とは



労働基準法の適用の特例を受けるためには

一定の要件を満たした委員会を設置する必要があります。

一定の要件は、次の3つです。



1 委員の半数は従業員側のメンバーで構成する


委員は、事業主側(使用者)と従業員側のメンバーで構成しますが

委員の半数は従業員側のメンバーである必要があります。


また従業員側のメンバーは、事業場の過半数で組織する労働組合、

または、従業員の過半数を代表する者の推薦に基づいて

指名されていることが要件です。


この委員会は、労働時間等に関して企業と従業員の十分な話し合いや

問題の改善を行うことが目的のため、

従業員側のメンバーを選出するポイントとしては、企業で働く従業員が抱える

多様な事情が反映されるよう、性別、年齢、家族構成、育児・介護、自発的な

職業能力開発等の経験や知見に配慮することをおすすめします。


2 委員会の議事録を作成し5年間保存する


委員会開催の都度、議事録を作成します。

いずれかを起算日として5年間(当分の間3年)保存しなければなりません。


・委員会の開催の日

・決議にかかる内容の完結の日


3 委員会の運営規程を定める

委員会の運営に必要な事項に関する規程を定める必要があります。

規程の作成や、変更については、委員会の同意を得なければなりません。


【労働時間等設定改善委員会の運営規程 内容例】

・委員会の目的

・委員会で調査審議する内容

・構成員の選出方法、人数

・構成員の任務、任期

・委員会の開催頻度

・委員会の定足数

・議事録の作成方法

・その他、委員会の運営に必要なこと など



労働時間等設定改善委員会の役割の整理



労働時間等設定改善委員会では、事業所で働く従業員の勤怠データなどの

情報をもとに労働環境を把握し、解決すべき問題点について

中長期的な措置の計画を立てていきます。


1 現状を把握する

事業場で働く従業員の、労働時間等の実態について適正に把握します。


【把握する内容】

・時間外・休日労働の時間数

・始業時刻・終業時刻、終業から始業までの時間

・年次有給休暇の取得率

・深夜労働の回数および時間数

・時間当たりの業務負担の度合 など


特に労働時間等の配慮を必要とする従業員がいるかも把握します。


【特に労働時間等の配慮を必要とする従業員】

・健康診断の結果や医師等の意見を踏まえた、健康面に気を付けなければならない人

・育児・介護を行っている人

・公民権の行使または、公の職務の執行をする人

・自発的な職業能力開発を図る人

・地域活動やボランティア活動をする人 など


2 労働時間等の設定の改善にかかる措置の検討

労働時間等の設定の改善にかかる措置を委員会で検討します。

把握した現状の内容をもとに、時間外・休日労働の削減率や年次有給休暇の取得率の目標づくりなど、具体的な数値目標、措置の内容、実施スケジュールなども踏まえて計画を立てて取り組むことが大切です。


【措置 例】

・業務の特性に応じた柔軟な労働時間の導入:変形労働時間制、フレックスタイム制など

・年次有給休暇を取得しやすい環境の整備:時間単位有給、計画的付与など

・時間外・休日労働の削減:ノー残業デーの導入、休日労働したときの代休付与など

・多様な働き方の選択肢の拡大:短時間正社員制度、テレワークの活用など

・終業および始業の時刻に関する措置:勤務間インターバル制度、深夜業の回数制限など


厚生労働省のガイドラインを参考にしてください。



まとめ


労働時間等設定改善法は強制的に委員会設置を義務付ける法律ではありません。

あくまで、企業の自主的な取り組みを促進し、働きやすい職場環境を

実現するための法律です。


多様な人材が長期にわたり活躍できるよう、働きやすい職場環境づくりの

専門チーム「労働時間等設定改善委員会」の設置をご検討ください。

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