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  • 【2022年度版】流行前のインフルエンザ対策について。

    毎年、季節性インフルエンザが流行しています。 一般的な風邪と違い、インフルエンザウイルスの感染でかかる病気です。 高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が突然現れます。 季節性インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると短期間で職場内感染が広がるケースも見受けられます。 今回の記事では、季節性インフルエンザ(以下、インフルエンザ)の流行前に企業がおさえておくべきポイントについてお伝えします。 流行前に企業が決めておくこと 一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出する時期といわれています。 この時期は人に感染させるリスクが高まりますが、インフルエンザには出勤停止期間を定める法律がないため、企業のルールを就業規則に定めておく必要があります。 インフルエンザの欠勤連絡を受ける度に異なる対応になったり、対応の遅れで業務への支障が出ないよう事前の対策をおすすめします。 【流行前に決めておきたい項目】 ・出勤停止期間 ・従業員やその家族がインフルエンザに感染したときの企業への申告方法 ・有給休暇の当日・事後取得の可否 ・発熱した従業員へのインフルエンザ検査の命令基準 ・受診命令した時の賃金支払いや受診料の負担 ・休業時の連絡方法 ・業務の引継ぎ方法  など インフルエンザに感染した従業員が、出勤停止期間の早い段階で熱が下がり、症状が快復することもあります。 働ける健康状態であっても、感染防止のため出社を控えてもらうときは休業手当の支払が必要になります。 出勤停止期間を検討するうえで、学校保健安全法の出席停止期間も参考になります。 厚生労働省のインフルエンザQ&A(Q17)をご覧ください。 参考|厚生労働省サイト『令和4年度インフルエンザQ&A』(Q17) 休んだときに利用できる傷病手当金 インフルエンザに感染して仕事ができないとき、社会保険の被保険者は傷病手当金の支給対象になります。 ここでは、協会けんぽの傷病手当金について記載しています。 傷病手当金とは、業務外の理由による病気やケガで仕事ができず、企業から給与の支払いがないときに、健康保険から生活保障として支給される手当です。 支給を受けられるのは、休業している期間が4日以上あるときです 欠勤した日から最初の3日間(待期期間)は支給されず、4日目から支給されます。 支給額は以下の計算式で算出した額になります。 【傷病手当金の支給額の計算】 (出典)全国健康保険協会サイト『病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)』 傷病手当金は同一の疾病に対して通算1年6か月支給されます。 しかし、インフルエンザは原因となるウィルスが複数あるため、感染するたびに「別の疾病」の扱いになり、感染の都度、傷病手当金を受けられます。 有給休暇と傷病手当金のどちらを取得するのか 同じ日に有給休暇と傷病手当金の両方を選択することはできません。 どちらを取得するかは企業が一方的には決められず、企業のルールを踏まえ、最終的には本人の判断に委ねられます。 判断のポイントは以下の通りです。支給額や支給される日が異なります。 【有給休暇】 取得日ごとに1日分の賃金が企業から支給されます。 企業の公休日は有給休暇を取得できないため、賃金の支給はありません。 【傷病手当金】 1日分の賃金より低い額になります(上記【傷病手当金の支給額の計算】を参照)。 企業の公休日も支給されます。 有給休暇を事前申請としている企業では、当日申請や事後申請を受け付けていないケースもありますので、有給休暇のルールは就業規則を確認してください。 有給休暇がない従業員は、傷病手当金の申請を進めることになります。 待期期間の3日間を有給休暇、4日目から傷病手当金など組み合わせることもできます。 家族がインフルエンザにかかったとき 本人ではなく同居している家族がインフルエンザに感染するケースがあります。 対応例については以下の通りです。 【対応例】 ・一定期間、休業をさせる(業務命令の休業になるため休業手当の支払が必要) ・テレワークが対応可能か検討する ・特別休暇を取得させる ・本人の希望があれば有給休暇を取得させる ・小学校就学前の子どもが感染したときは「子の看護休暇」の利用を推奨する など 感染予防のための企業内周知 何より、インフルエンザに感染しないことが大切です。 1人1人が「感染しない」「感染させない」意識を持ち、咳エチケットや手洗いなどを徹底しましょう。 疲労が溜まっていたり、睡眠不足のときは免疫力が低下します。 普段から十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけることで免疫力も高まり、感染予防に繋がります。 厚生労働省の「今冬のインフルエンザ総合対策」のサイトでは、感染防止やワクチンなどの情報がまとめて掲載されており、予防啓発のためのポスターも用意されています。 参考|厚生労働省サイト『令和4年度 今冬のインフルエンザ総合対策について』 参考|厚生労働省『咳エチケット』 参考|厚生労働省『正しい手の洗い方』 まとめ インフルエンザは感染力も強く、毎年約10人に1人が感染しています。 インフルエンザで急に欠勤する従業員が出たときのため、業務の引継ぎや連絡方法などをあらかじめ決めておくと、従業員の不安も軽減されます。労務担当者として、事前に対応策を準備しておくことをおすすめします。

  • 【保存版】有給休暇にまつわる疑問の解消と基本対応。

    年次有給休暇(以降、有給休暇)は、出勤日に労働を免除する制度です。 有給休暇を付与する対象者と、付与する日数は法令等により定められています。 従業員は有給休暇を取得した日にも賃金が支払われます。 2019年4月、有給休暇の改正がありました。有給休暇の年5日の取得義務化です。 有給休暇が年10日以上付与される従業員に休暇を5日以上取得させることは、人手不足が深刻な中小企業にとっては人員配置や管理面で負担の大きな改正となりました。 しかし有給休暇取得は、法律で定められた従業員の権利です。 今回の記事では、改めて有給休暇の基本を解説します。 長い記事ですが、保存版としてお役立てください。 有給休暇を付与する対象者 有給休暇を付与する対象者は、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、以下のいずれにも該当する従業員です。 ①入社して6か月を経過している ②有給休暇の付与日前の1年間(初回は半年間)の全労働日の8割以上を出勤している 要件②の「8割以上の出勤率」は、以下の計算式で算出します。 出勤率は、「日」単位で計算するため、遅刻や早退した日は出勤した日とします。 また、実際の出勤日数には、以下の出勤したとみなす日も含めて出勤率を算定します。 【出勤したとみなす日】 ・有給休暇を取得した日 ・業務中の労災で休業した日 ・産前産後の休業を取得した日 ・育児休業、出生時育児休業、介護休業を取得した日 出勤予定日数から除く日にも注意が必要です。 【出勤予定日数から除く日】 ・企業の都合により休業した日 ・休日出勤をさせた日(法定休日、企業で決めている休日) ・正当なストライキ、その他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日 付与日数と保有について 有給休暇の付与日数は、入社してからの継続勤務年数によって異なります。 入社後6か月経過した翌日が、はじめての有給休暇の付与日です。 以降、初回付与日が基準日(この記事では、付与基準日とします。)となり、1年ごとに付与日数が増えていきます。 付与日数は、正社員と所定労働日数が少ないパート・アルバイト等で異なります。 原則の付与日数となる正社員に対し、所定労働日数が少ないパート・アルバイト等の付与日数は、所定労働日数に応じて比例付与されます。 また、有給休暇の時効は2年です。 業員は、前年度分の未使用分と本年度に付与された有給休暇を足した日数を保有することになります。 【正社員(原則)】 正社員以外であっても、以下1つ以上該当する場合は上記の表をご覧ください。 ・週の所定労働日数が5日 ・週の所定労働時間が30時間以上 ・年間の所定労働日数が217日以上 【所定労働日数が少ないパート・アルバイト等(比例付与)】 以下のすべてに該当する場合は、上記の「週の所定労働日数」の欄をご覧ください。 ・週の所定労働日数が4日以下 ・週の所定労働時間が30時間未満 また、所定労働日数が少ないが、週の所定労働日数が決まっていない働き方をする場合は、上記の「1年間の所定労働日数」の欄をご覧ください。 原則、有給休暇の付与時点で予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数で判断します。 しかし、月や季節によって勤務シフトがさまざまで、予定されている所定労働日数を算出しがたいときがあります。そ のようなときは有給休暇の付与直前の実績を考慮して算出することとして差し支えありません。 有給休暇を取得したときの賃金 有給休暇の賃金は、以下の3つから選択できます。どの計算方法で支払うかを決めたら、就業規則に記載します。 ①その日に働く予定だった通常の賃金 ②平均賃金 ③(社会保険に加入している場合)標準報酬日額 有給休暇の賃金では①がよく使われます。 月給であれば、有給休暇を取得した日は賃金控除をしません。 時給のときは「出勤していれば勤務していた時間 × 時間給」になります。 ②の平均賃金は、過去3か月間に支払った賃金を合計し、その期間の歴日数で割って計算します。 時給制の従業員のときは、AまたはBのどちらか高い方になります。 A 賃金総額/歴日数 B 賃金総額/労働日数×60% ③の標準報酬日額は、健康保険で決められている報酬月額を1/30した金額です。 こちらの方法を選択するためには企業と従業員代表者と労使協定書(有給休暇の賃金に関する協定書など)を結ぶ必要があります。 社会保険に加入していないアルバイト・パート従業員には使えません。 有給休暇の管理方法 有給休暇の管理は、有給休暇管理簿(任意書式)で行います。 企業には有給休暇管理簿の作成と保管が義務付けられており保管期間は、有給休暇を付与した期間および期間満了から5年(当分の間3年)です。 有給休暇の取得や付与を行った場合は、都度、有給休暇管理簿に記録します。 有給休暇は、労働基準監督署の定期調査で調査項目のひとつとなることも多いため、日頃から適正に管理することで、調査時にも焦らず準備ができます。 【有給休暇管理簿に必要な記載項目】 ・付与基準日(従業員に有給休暇を付与した日) ・取得日数(従業員が有給休暇を取得した日数、半日休暇、時間単位も含む) ・取得時季(従業員が有給休暇を取得した日付) 必要なときにいつでも出力ができる状態であれば、勤怠管理システム上で管理を行っても差し支えありません。 また、勤怠管理システムを利用する場合、上記の記載項目が必ずしも同じ帳票内で表示されている必要はありません。 必要な記載項目を出力し組み合わせて確認できる状態であれば、有給休暇管理簿を作成していると認められます。 参考・ダウンロード|福井労働局『年次有給休暇管理台帳』 有給休暇にまつわる疑問を解消 よくある疑問と対応をご紹介します。 1 パートタイマーが付与基準日直前で正社員に変更になったときの付与日数 有給休暇は、付与基準日時点の所定労働日数で付与日数を判断します。 出勤率を判定する有給休暇の付与基準日前の1年間がパートタイマーで、所定労働日数が少なかったとしても、付与基準日時点で正社員であれば原則の付与日数の表を適用します。 2 有給休暇の取得は、前年度分と本年度分どちらから取得するか 有給休暇の取得のとき、前年度分と本年度分のどちらから消化させるかは、企業が定めるルールによります。 多くの企業は前年度分から消化するというルールをとっています。 就業規則に記載をすれば本年度分(後に付与されたもの)から消化することもできます。 3 有給休暇の買取りはできるか 有給休暇の目的は、従業員が仕事を離れ、心身の疲労の回復などを行えることにあります。そのため、有給休暇の取得を阻害する有給休暇の買い取りは原則できません。 ただし、以下の買い取りは法令等に違反するものではないとされています。 ①法定を超えた日数の有給休暇 ②退職時に消化できなかった有給休暇 ③有給休暇の付与日から2年経過し時効で消滅した有給休暇 買い取るかどうか、買い取ったときの金額は企業が自由に決められます。 ➂については、毎年付与される有給休暇を取得しない従業員が増え、有給休暇の目的から外れてしまう可能性が高くなるのでおすすめしません。 4 付与基準日より前に有給休暇の前借りはできるか 付与基準日より前に有給休暇の前借りはできません。 前借りした有給休暇の日数を付与基準日に付与される有給休暇から差し引くと法令違反になります。 前借りに似たような言葉に「前倒し」があります。 有給休暇を付与基準日より前倒しにして付与することはできます。 有給休暇の前倒しを行ったときの1年間の付与基準日は、前倒しを行った日になります。 5 有給休暇の申請のとき理由を必ず提出させることはできるか 有給休暇の理由を必ず提出させることはできません。 有給休暇は従業員の権利のため、取得理由によって企業が取得できるかを判断したり、理由を強制することはできません。 しかし、理由を聞いてはいけないわけではないため、有給休暇申請時に理由欄を設けることは問題ありません。 有給休暇を取得しやすくするための取り組み事例 有給休暇を取得しやすくするための方法をご紹介します。 【半日単位年休の導入】 有給休暇は、1日単位での取得が原則です。1日とは午前0時から24時を指します。 法令等上、半日単位で付与する義務はありませんが、企業が就業規則で半日休暇の運用を認めることで、短時間で利用したい従業員の有給休暇の促進に繋がります。 半日単位年休を導入するときは「半日」の基準は企業が決めることができます。以下、参考にしてください。 ・1日の所定労働時間を按分する方法(例:9:00~13:00、14:00~18:00) ・正午を半休の境として決める方法(例:9:00~12:00、13:00~18:00) また、有給休暇の年5日の取得義務日数にも0.5日として含めることができます。 【時間単位年休の導入】 半日単位年休と同じく、法令等上、時間単位で付与する義務はありませんが、労使協定を締結すれば、年5日の範囲内で時間単位での取得が可能となります。 半日単位よりもさらに短い単位での利用が可能となるため、通院や学校行事などを必要とする従業員に喜ばれます。 ただし、有給休暇の年5日の取得義務日数には含めることができませんのでご注意ください。 就業規則や労使協定の締結については、以下を参考にしてください。 参考|厚生労働省『時間単位の年次有給休暇制度』 【計画的付与の導入】 計画的付与とは、企業が前もって計画的に休暇取得日を割り振りし有給休暇を取得させることを指します。 労務管理面でも計画的に有休消化が進むというメリットがあり、従業員はためらいを感じることなく休暇を取得できます。 計画的付与は、従業員の付与日数から5日を除いた残りの日数を対象にできます。 企業全体の一斉付与、交代制、個人別付与方式などがあります。 夏季や年末年始に計画的付与を組み合わせ、大型連休とすることもできます。 (出典)厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』P14 計画的付与の導入時には、就業規則の変更や労使協定の締結が必要になります。 以下を参考にしてください。 参考|厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』P18 【取得推奨日の設定】 有給休暇を取得しにくい環境で、休むことをためらう傾向がある従業員がいる場合は、取り組みの一つとして、企業が有給休暇の取得推奨日を設定することもおすすめです。 (有給休暇の取得推奨日 例) ・夏季休業や年末年始休暇の前後 ・暦日の関係で休日が飛び石となっているとき、休日の間にある平日 ・企業の閑散期の土曜出勤日 ・従業員や配偶者、扶養家族の誕生日をアニバーサリー休暇とし推奨する など 【付与基準日の統一】 法令等では、入社後6か月経過した翌日が有給休暇の付与基準日になります。 従業員ごとに入社日が異なるため、従業員数が多い企業では有給休暇の取得状況の管理が大変です。 全社的に付与基準日を統一すれば、統一的な有給管理が可能となります。 また部署ごとの取得計画や実施状況を確認しやすくなるため、取得できていない従業員がいるときは、所属長への確認や改善がしやすくなります。 (付与基準日の統一 例) ・年始(1月1日) ・年度初め(4月1日) ・企業カレンダーの初日 ・企業の給与計算期間(勤怠)の初日 など 付与基準日を統一するときは、就業規則の変更が必要です。 また統一した初年度のみ、有給休暇の年5日の取得義務化のカウント方法が異なりますのでご注意ください。 参考|厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』P9 まとめ 有給休暇の取得が進んでいる企業は、人員配置の面での業務効率化や業務の属人化の解消、チーム内情報共有などの取り組みも同時に進められていることが多いでしょう。 有給休暇を取得しやすい職場は、仕事と生活のバランスが取りやすく、従業員の定着にも繋がります。 記事を参考に、有給休暇の管理方法の確認と、企業の有給休暇の取得率向上にお取り組みください。

  • 労務担当者が知っておくべき退職時に必要な手続と注意点。

    従業員の退職時にはさまざまな手続があり、退職者とのトラブルを避けるためにも正しい流れでの手続が必要です。 しかし退職時の手続は退職者がコントロールできることではありません。 法令で決まっていることも多くあるため、企業内の労務担当者の知識が求められます。 この記事では退職時に必要な手続と、注意点を解説します。 退職届を提出してもらう 退職届の提出は、法令等では義務ではありません。 しかし従業員から退職の意思を明確に受け取り、トラブルを防止するという観点からも、提出を求めてください。 退職届は任意書式のため、あらかじめフォーマットを作成し、就業規則で退職届の提出日(退職日の〇日前)を明確にしておきます。 従業員から退職届を受け取った後は、退職日や引継ぎのスケジュールなどを決めて進めていきます。 退職理由欄に「一身上の都合」と記載してくるケースが多く見られますが、妊娠、育児、介護、疾病などが理由のときは、その旨を記載してもらいます。 離職票作成時に退職理由の記載が必要となり、理由によっては失業保険をもらえる日数などが優遇される場合があるからです。 退職時に貸出している備品などの返却してもらう 退職する従業員に貸与している備品や、名刺・社員証など従業員であることを証明するものを返却をしてもらいます。 その際、会社支給のパソコンや携帯電話などが返却されていないことを理由に、最後に支給する給与などから一方的な備品費用の控除はできません。 事前に労使協定で「退職時にパソコンを返却しなかったときは〇〇円支払う」などの合意を取っていたとしても、法令違反となります。 雇用保険の手続 雇用保険に加入していた従業員の退職時には、雇用保険の資格喪失と離職票の発行の手続が必要ですが、本人が希望しないときは離職票を発行しなくても差し支えありません。 しかし退職時に59歳以上のときは、本人が希望しなくても発行が必要です。 雇用保険の資格喪失手続は退職日の翌日から10日以内に管轄のハローワークで行います。 最終月の給与が確定していない(未計算)ときでも手続は進められます。 社会保険の手続 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入していた従業員の退職時は、社会保険の資格喪失の手続が必要です。 手続は退職日の翌日から5日以内に管轄の年金事務所または事務センターで行います。 健康保険は退職日の翌日から20日以内に本人が手続を行えば「任意継続」でき、 今までと同じ保険者(協会けんぽなど)に加入できます。 ただし、厚生年金には任意継続の制度がないため、退職後は転職先の厚生年金または国民年金に加入になります。 退職証明書 退職証明書は、退職者(退職予定者)から希望があったときに企業が発行する書類(任意書式)です。 証明の項目は以下になり、本人が希望した項目のみ証明します。 本人から発行の依頼があれば退職後2年間は対応しなければなりません。 企業が発行を拒んだときは法令等違反となり30万円以下の罰金に課せられる可能性があります。 【退職証明の項目】 ・ 使用期間 ・ 業務の種類 ・ その業務における地位 ・ 賃金 ・ 退職の事由(解雇のときはその理由) 源泉徴収票 年度途中で退職した従業員には源泉徴収票を発行する必要があります。 本人が発行を希望しなくても、退職日から1か月以内に発行し、本人へ渡さなければなりません。 企業が源泉徴収票の発行を行わなかったときは法令等違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。 住民税 住民税の納付方法は2種類あり、毎月の給与から控除して本人に代わって市町村に納付する「特別徴収」と、本人が直接市町村に納付する「普通徴収」があります。 特別徴収がされているときは、退職月などによって処理が異なります。 【1月1日~5月31日の間に退職するとき】 本人の希望の有無にかかわらず、残りの住民税を退職時の給与や退職金などから一括徴収し、本人に代わり企業が市町村に納付します。 ただし、一括徴収する額が給与や退職金などを超えるときは、普通徴収に切り替えることができます。 【6月1日~12月31日の間に退職するとき】 退職月の翌月以降は普通徴収になるため、企業が市町村に納付しなくてもよくなります。 ただし本人が退職時に希望すれば翌年5月までの住民税を一括徴収し、企業が市町村に納付することもできます。 【退職後、すぐに就職するとき】 すでに転職先が決まっている従業員から「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の発行を依頼されるケースがあります 発行された「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を転職先の会社から市区町村へ提出してもらうと、特別徴収が継続されるため、転職後の住民税の納付がスムーズになります。 発行依頼があったときは、作成し渡すようにしてください。 退職手続で注意すべきこと 1 有給休暇の買い取りはしなければならないのか 有給休暇の買い取りは原則できません。 ただし、退職日が決まっており、退職の申出から退職日までのあいだに有給休暇の残日数分の出勤日がなく、有給休暇を取得しきれなかったときは企業が取得しきれなかった有給休暇を買い取ることは可能です。 2 退職代行を使われたときの注意点 最近、従業員の代わりに退職意思を企業に伝える「退職代行」が増えています。 退職代行の運用者は、弁護士、労働組合(ユニオン)、民間企業の3つに分けられます。 退職代行から連絡があったときは、まずは弁護士かどうかを確認してください。 弁護士であれば退職手続(有給休暇の消化、退職日、退職金などの条件)の話ができますが、それ以外のときは手続の話ができません。 弁護士以外の退職代行業者ができるのは、本人の退職意思を伝える使い(使者)の範囲です。 弁護士以外が退職の条件交渉などの行為を行うことは、法令等違反にあたります。 弁護士かどうかを確認した後は、退職の意思をもつ従業員が誰かと、本人からの依頼かどうかの確認(書面で提出してもらうなど)を行い、退職届を郵送、FAXなどで本人から提出してもらってください。 まとめ 退職時は手続や確認項目が多いため、スケジュール表やチェックリストを作成し、管理をしておくと便利です。 手続が遅れると、退職者にとっては、次の就職先へ必要な情報が提供できず、国民健康保険などへの手続が遅れるなどの不利益が生じます。

  • 特定業務従事者の健康診断の実施と、二次健康診断の適正な対応について。

    法令等で、企業は従業員に対して医師の健康診断を実施し、従業員は健康診断を受けなければならないと定められています。 健康診断は大きくは「一般健康診断(定期健康診断など)」と「特殊健康診断(有害業務が対象)」の2つに分けられ、それぞれに健康診断の種類があります。 この記事では一般健康診断に含まれる「特定業務従事者の健康診断(22時以降の残業含む)」と、その結果によって実施される「二次健康診断」についてお伝えします。 特定業務従事者の健康診断とは 特定業務に携わる従業員に対しては、年1回の定期健康診断とは別に、6か月以内ごとに1回の健康診断の実施が必要です。これを「特定業務従事者の健康診断」といいます。 6か月以内に1回ですが、健診項目が定期健康診断と同じであり、定期健康診断と合わせて実施ができるため、実際のところは年2回の実施になります。 また定期健康診断と同じように、実施後には本人へ結果を通知し、結果は企業内で保管しておかなければなりません。 なお特定業務従事者の健康診断の未実施や、従業員へ健康診断の結果を通知していない、健康診断の結果を保管していないときは、法令等でそれぞれ50万円以下の罰則が課せられる可能性もあります。 【法令等で定まっている健診項目】 (出典)厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』 特定業務とは 特定業務は法令等で定められており、従業員が携わる業務や業務中に扱う有機溶剤等によって対象になるかどうかが決まります。企業の業種で判断されるわけではありません。 特定業務の中には「深夜業を含む業務」が含まれており、これは所定労働時間に22時~5時の時間帯を含んでいるかだけではなく、残業で22時以降に勤務した日も含まれます。 健康診断が必要になるのは、特定業務従事者の健康診断実施日前に1週に1回以上、または平均して月4回以上の深夜業があるときです。業種問わず対象になる可能性があります。 【対象となる特定業務】 (出典)厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』 二次健康診断とは 二次健康診断は脳・心臓疾患の予防を目的とし、定期健康診断と特定業務従事者の健康診断(以下、一次健康診断)の結果で一定の項目に異常所見があった従業員が、医療費の負担なく再度、健診や特定保険指導を受けられる制度です。 定期健康診断と異なり、本人が受ける・受けないを決められるため、未実施であっても罰則はありません。 しかし、脳・心臓疾患の早期予防、早期発見につながるため、対象となった従業員へは健診を受けるよう働きかけてください。 健診を受けられる期間は一次健康診断を受けた日から3か月以内、回数は一年度(4月1日〜翌年3月31日)につき1回です。 また、脳・心臓疾患の持病がある、症状が出ている(病気の診断がある)従業員は対象になりません。 【異常所見とは】 一次健康診断の結果の数値が正常でない状態をいいます。一次健康診断の結果表に、異常なし以外の「要医療等」「要再検査」などの記載があったときは該当します。 二次健康診断の対象者は、以下のすべての項目で異常所見があると判定された従業員です。ただし異常なしと診断されているときでも、産業医等の意見により対象となることがあります。 1 血圧検査 2 血中脂質検査 3 血糖検査 4 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定 【特定保健指導とは】 脳・心臓疾患を予防するため、二次健康診断の結果に基づき、以下の保険指導を行います。 栄養指導:適切なカロリーの接種等の食生活にかかわる指導 運動指導:必要な運動にかかわる指導 生活指導:飲酒、喫煙、睡眠等の生活習慣にかかわる指導 二次健康診断の勧奨 一次健康診断の結果を従業員へ通知後、二次健康診断の対象となる従業員へ口頭または「二次健康診断指示書(任意書式)」などで受診を促します。 二次健康診断は労災保険制度の1つで、費用はかかりません。従業員が健診を受けるときは、企業が「二次健康診断等給付請求書」を作成し、従業員から病院へ提出を行います。 参考・ダウンロード|厚生労働省『二次健康診断等給付請求書』 参考|厚生労働省『二次健康診断等給付の請求手続』 二次健康診断を受けられる病院は都道府県ごとに決まっています。以下のサイトより確認をしてください。 参考|厚生労働省サイト『労災保険二次健康診断等給付医療機関名簿』 二次健康診断の結果は、一次健康診断と異なり、病院から企業への結果の報告がありません。 健診結果を企業が知るためには本人からの報告が必要になりますが、結果は個人情報にあたるため企業は報告の強制ができません。 従業員は企業へ健診結果の報告義務がないので、報告を拒むケースもでてきます。そのときは、報告がなければ業務上の配慮などの対策ができないことなどを伝えて、提出を促します。 特定業務従事者の健康診断、二次健康診断の実施後の措置 特定業務従事者の健康診断、二次健康診断実施後に企業が行わなれければならない措置は以下になります。ただし二次健康診断については、従業員から企業に結果報告されたときに限ります。 1 健康診断個人票へ記載 健康診断個人票は健康診断の結果を個人ごとに記録する書類で、法令等で作成が義務付けられています。 2 医師等への意見聴取 特定業務従事者の健康診断で異常所見があると診断された従業員、二次健康診断を実施した従業員については、医師へ就業に関する意見を聞く必要があります。 3 健康を保持するために必要な措置 医師より就業に関する措置が必要と診断されたときは、診断内容に応じて就業場所や職務の変更、労働時間の短縮(時間外・休日労働の禁止、就業時間の制限など)、深夜業の回数削減などを行います。 (出典)愛知労働局『労働安全衛生法の定める健康診断事後措置等のあらまし』 まとめ 特定業務従事者の健康診断に深夜残業が含まれているのを知らずに、未実施になっているケースや、二次健康診断の受診を本人任せにして企業が実施を促せていないケースも散見されます。 健康診断は病気の「予防」「早期発見」が目的です。 健康維持は従業員が自ら行う必要もありますが、症状が出ていないと健康診断を受けるきっかけがなく病気になってしまい、勤務が難しくなることもあります。 また企業は従業員の健康状態を把握し、必要な措置を取らなければ安全配慮義務違反に問われる可能性も出てくるでしょう。 よいパフォーマンスを発揮できる健康状態は、企業・従業員双方にとって大切なことです。単に法令等で定められているからではなく、病気予防の一歩として健康診断に取り組まれることをおすすめします。

  • これだけはおさえておきたい、令和4年分年末調整の変更点について。(年末調整書き方ガイド付)

    企業が給与を支払うときに、従業員の給与や賞与から所得税を徴収することを、源泉徴収といいます。 しかし、毎月徴収している所得税の額はあくまで概算の金額で、年末調整で初めて税額が確定します。 年末に本来徴収すべき所得税の一年間の総額を再計算し、既に源泉徴収している合計額と比較し、過不足金額を調整することが年末調整です。 今回は、今年の年末調整のポイントと併せて令和5年の税制改正で押さえておくべき内容をまとめました。 年末調整の対象となる人 年末調整の対象となる人は、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人です。 年末調整には、12月に行う年末調整と年の途中で行う年末調整の2種類があります。 【12月に行う年末調整の対象者】 対象者は、企業に1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務している人です。 ただし、以下のいずれかに当てはまる人は除きます。 ・その年の給与収入が2,000万円を超える人 ・震災や火災などの災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人 ・2か所以上から給与の支払を受けている人で、自社以外へ扶養控除等(異動)申告書を提出している人 ・年末調整を行うときまでに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人 【年の途中で行う年末調整の対象者】 対象者は、以下のいずれかに当てはまる人です。 ・海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人 ・死亡によって退職した人 ・著しい心身の障害のために退職した人(退職した年に再就職し、給与の支払を受ける見込みのある人は除きます。) ・12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人 ・パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職した年に再就職し、給与の支払を受ける見込みのある人は除きます。) 令和4年分年末調整について 令和4年9月22日、 国税庁より「令和4年分年末調整のための各種様式等」が発表されました。令和4年分年末調整の各種様式については変更はありません。 令和5年分からは、扶養控除等(異動)申告書の住民税に関する事項に、を記載する欄が追加(以下、赤枠)されました。 【令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 【令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 【令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書』 【令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書』 令和4年分年末調整のポイント(昨年からの変更点) 令和3年分では、年末調整電子化に伴う「関連書類の押印廃止」や「税務署への事前申告の廃止」などがありました。令和4年分の年末調整に関するポイントは以下の3つです。 1 控除証明書の電子データ提出の適用範囲が拡大 令和4年4月の税法改正で、新たに「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の控除証明についても電子データでの提出が可能になりました。 【電子データ提出が可能な証明書】 ・生命保険、地震保険などの控除証明書 ・住宅ローン控除証明書 ・社会保険料控除証明書 ・小規模企業共済等掛金控除証明(払込証明書) 電子データでの受付ができない企業は、従来どおりの紙の控除証明書での提出や、必要に応じて国税局提供の「QRコード付証明書等作成システム」を利用して、電子データをQRコード付証明書等として書面で出力して提出できます。 参考|国税庁サイト『QRコード付証明書等作成システムについて』 2 源泉徴収票の未成年者欄の「〇」は、18歳以下へ 民法改正により、令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。令和4年分給与所得の源泉徴収票の「未成年者」欄は、従業員が平成17年1月3日以降に生まれた方の場合に「〇」を付けてください。 (出典)国税庁『給与所得の源泉徴収票(令和4年分以降用)』 3 令和3年度税制改正による住宅ローン控除の期間延長の適用対象者の確認 消費税率の引き上げや新型コロナウイルス感染対策により、住宅に対する税制上の支援措置として創設された「控除期間13年の特例措置」について、さらに期間延長されることになりました。 期間延長の適用となる住宅ローン控除を受ける従業員については、今年の年末調整にて、期間延長の対象となる可能性がありますのでご確認ください。 【期間延長の適用となる対象者】 以下の契約期限および入居期限を満たす場合となります。 ・契約期限 注文住宅:2020年10月~2021年9月分 分譲住宅等:2020年12月〜2021年11月 ・入居期限 2021年1月1日〜2022年12月31日 (出典)財務省『令和3年度税制改正』 令和5年分年末調整で変更が予定されている内容 令和5年分年末調整で予定されている変更内容で、令和5年1月1日以降適用になる内容もあります。令和4年分年末調整を行う際に、あわせて確認されることをおすすめいたします。 1 住宅借入金等控除の適用期限延長等 住宅借入金等控除の適用期限が令和3年12月31日より4年延長され、令和7年12月31日までとされました。 この改正に伴い、令和4年から令和7年までの期間に入居した場合の各種要件が変更となりました。 ① 住宅借入金などの年末残高の限度額、控除率および控除期間が住宅の種類などに応じて変更 令和4年から令和7年までの間に入居した場合の住宅借入金などの年末残高の限度額、控除率および控除期間が住宅の種類などに応じて変更されました。 (出典)国税庁サイト『住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)』 ② 適用対象者の所得要件が2,000万円以下に引き下げ 住宅借入金等控除適用の所得要件は、その年の合計所得金額が3,000万円以下でしたが、今回の改正により2,000万円以下へ引き下げられました。 ③ 新築住宅床面積が40㎡以上50㎡未満である場合の要件変更 令和3年1月1日から令和4年12月31日の期間で適用とされていましたが、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた住宅の取得においても適用とされました。 控除できる期間のうち、合計所得金額が1,000万円を超える年については適用されません。 ④ 借入金残高証明書の添付が不要に 令和5年1月1日以降に取得した住宅については、年末調整の際に借入金残高証明書を添付することが不要とされました。 令和6年1月1日以降に提出する「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」について適用となりますので、令和5年分の年末調整については従来通りの提出となります。 2 非居住者である扶養親族にかかる扶養控除に関する適用の変更 令和2年度の税制改正により、令和5年1月1日以降、扶養控除の対象となる扶養親族の範囲から、30歳以上70歳未満の国外に居住する非居住者について除外されます。 ただし、一定の要件に該当する場合は今まで通り扶養控除の対象になります。 【一定の要件とは】 ① 留学により国内に住所および居所をしなくなった者 ② 障害者 ③ 扶養控除の適用を受けようとする居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者 (出典)国税庁『源泉所得税の改正のあらまし(令和4年4月)』 【添付書類】 【一定の要件】のうち①・③に該当する場合は証明するための確認書類の添付が必要です。 (出典)国税庁『源泉所得税の改正のあらまし(令和4年4月)』 令和4年分年末調整申告書の書き方ガイド 年々、年末調整申告書の書き方が複雑になってきています。申告書を配布する際に、書き方ガイドを添えることで、書き方についての問い合わせや誤りが減り、年末調整担当者の負担も減ります。 こちらの書き方ガイドを配布していただいて、スムーズな年末調整を進めてください。 参考・ダウンロード|『令和4年分 年末調整書き方ガイド』 参考・ダウンロード|『住宅借入金等特別控除申告書書き方ガイド』

  • 中小企業こそ公益通報制度の導入をおすすめします。

    消費者庁が行った調査では、社内の不正発見のきっかけの58.8%は「従業員からの内部通報」であるという結果が出ています。 公益通報とは、企業内で働く従業員等(退職から1年以内の退職者、役員を含む)が、企業の法令違反となるような不正が発生したとき、または発生する可能性を通報窓口や外部の機関に通報することです。 2022年10月、改正公益通報者保護法が施行されました。 これによって、従業員が301人以上の企業には公益通報窓口の設置が義務付けられました。 従業員が300人以下の企業については努力義務ですが、300人以下だとしても公益通報制度をないがしろにする姿勢は時代に乗り切れていないといっても過言ではありません。 今回は公益通報制度について、導入のコツや注意点を交えて解説します。 導入するメリットとデメリット 公益通報制度導入のメリットとデメリットを紹介します。 【公益通報制度のメリット】 1 不正の予防および早期発見 公益通報制度を導入すると不正の予防ができ、不正が行われていても早期に対処できます。現代社会における「不正」は経営上の甚大なリスクなので、大きなメリットといえます。 2 従業員および取引先の信頼獲得 公益通報制度の導入は、公正さが求められる現代社会においては、信頼獲得の重要な手段となります。 公益通報者保護法に沿った制度の導入は従業員の安心や、よい人材の確保にもつながります。 また、消費者庁の調査結果では8割近くの企業が取引先の選定にあたって公益通報制度および運用状況を「考慮している」「将来的に考慮することを検討している」と回答しています。 取引の相手が不正を行った場合、自社もリスクを負う可能性もあるので、やはり取引先が公益通報制度を導入しているかどうかは重要な検討材料のようです。 3 外部への情報漏洩の防止と風評被害リスクの回避 公益通報制度を導入すると従業員の通報先の選択肢に自社が選定した通報窓口が含まれます。 しかし公益通報制度を設けていない場合、従業員の公益通報の通報先は官公庁かマスコミになり、企業の機密情報が外部に漏洩してしまうリスク、マスコミの報道によって企業の信用および評価が損なわれてしまうリスクが生まれます。 4 制度の導入の過程における企業のレベルアップ 公益通報制度の導入では、公益通報とは何か、通報対象となる不正とは何か、通報されないような体制を構築するにはどうしたらよいか、不正が発覚した場合にどのようなフローで対処を行うかなど考えることがたくさんあります。 自社だけで公益通報制度の導入は難しいため、弁護士などの外部専門家と関わる機会が増え、結果企業のガバナンスやコンプライアンスの強化は促進されます。 【公益通報制度のデメリット】 1 コストがかかる 新たな制度を導入するためには、従業員の労働力を割く必要もあります。 また、制度設計にあたっては専門家への相談が必須ですが、専門家に制度設計を委託するにあたっての報酬等の費用も発生します。 つまり、公益通報制度の導入には経済的にも時間的にも大きな出費が伴います。 2 運用を誤るとリーガルリスクを負う 公益通報制度で取り扱う情報は繊細なものが多く、運用を誤るとさまざまなリーガルリスクがともないます。たとえば、従業員に訴えられるリスクや、官公庁から立ち入り調査をされてしまうリスクです。 また、通報された事実がハラスメントに関する事項であった場合、その取扱いを誤ると甚大なプライバシー侵害につながります。 2022年6月1日施行の公益通報制度の改正内容 2022年6月1日、改正公益通報者保護法が以下のとおり施行されています。 ※ 通報対象事実とは、公益通報者保護法に定める法令に対し法令違反となるような事実をいいます。大まかにいえば、各種法令に定められている罰則規定の対象となる行為は通報対象事実です。 参考|消費者庁『通報対象となる法律一覧』 公益通報制度を導入するには 公益通報制度の導入はリーガルリスクの逓減だけでなく、企業の価値向上にもつながります。具体的な導入方法についてお伝えします。 1 就業規則での制定 新たな制度の導入は、従業員にとって労働条件の変更になります。 したがって、就業規則に公益通報制度を定める必要があります。 「通報窓口を設ける」という定めを置くだけでは意味がありません。制度運用が分かる程度に詳細に定めを置く必要があります。 【就業規則への記載内容 例】 ・制度導入の趣旨 ・具体的な通報窓口 ・情報の取扱い ・通報があった場合の企業対応 など 2 担当部門の設置 公益通報の窓口となる部門の設立が必要です。 窓口には、企業の人事(または総務)か、外部の弁護士などの専門家に委託するという方法があります。 通報者にとっては、人事や総務という企業の中枢を窓口とされるより、外部の弁護士など中立な立場の法律家の方が通報はしやすく、制度導入の効果は高くなると考えられます。 外部の弁護士などを検討するときは、従来の顧問弁護士等を窓口と設定すると、中立性を欠いてしまったり、場合によっては利益相反関係になりかねないので、既に顧問になっている弁護士等は避ける方が好ましいです。 また外部に委託した場合でも、その専門家と企業との窓口が必要になるので、いずれにせよ企業の担当者を定める必要があります。 3 担当部門での情報の取扱指針の構築 通報対象事実には、プライバシー性の高い繊細な情報や、企業の事業場の重大な機密が含まれます。 公益通報者保護法では、担当者の過失による情報漏洩等が起きないよう、情報の取扱指針の構築と周知が義務付けられています。情報漏洩があったときには罰則(30万円以下の罰金)があります。 また、万が一情報漏洩をさせてしまった場合は、漏洩させてしまった者だけでなく企業も損害賠償責任を負う可能性があります。 4 従業員への周知 就業規則に規定を設け、担当部門または外部通報先を設置して、担当部門内での情報の取扱指針を構築後、従業員に説明をしてください。 公益通報制度の実行性を高めるため、誤った運用により企業外に情報が漏洩したりプライバシー侵害を生じさせないためにも、制度趣旨だけでなく、運用方法について理解してもらう必要があります。 公益通報制度を効果的に導入するには 公益通報制度を効果的に導入するときのポイントは以下のとおりです。 1 専門家との連携 情報漏洩、風評被害リスク、プライバシー侵害などのリスクの顕在化を最小限にするためにも、導入から運用のすべての段階において専門家に相談をし、連携を図ることをおすすめします。 2 制度担当者への定期的な研修の実施 定期的に研修を行うなど、制度担当者の過失による情報漏洩等を回避するための措置が重要です。 特に、新たな制度を導入した場合、社内で制度趣旨の説明を求められる可能性もあります。制度担当者は制度や運用方法に答えられるようにしておくことが従業員からの信用獲得につながります。 万が一情報漏洩等が生じた場合、企業が義務懈怠を追及されないようにするという観点からも、定期的な研修の実施が必要です。 3 不利益な取扱を行わないことの徹底 公益通報をしたことによる解雇や減給、嫌がらせ、退職の強要などの不利益な取扱いは禁止されています。不利益な取扱いが行われれば、従業員等の心理的安全性が保たれず制度が正しく運用されません。 経営陣や担当者が公益通報制度の趣旨と意義を理解し、公正な事業運営を行うことが制度運用および事業の成功の鍵となります。 4 通報があった場合の体制確立と公表 実際に通報があった際には、あらかじめ定めたフロー通りの運用を徹底します。就業規則にフローを定めても、ケースごとに対応が異なると従業員の信用も損ね、公益通報制度の実効性も担保できません。 また、せっかく通報をしても、もみ消しが可能な余地を残してしまっては公益通報制度を導入した意味がありません。通報内容やその後の企業対応については、原則全従業員に対して公表しなければなりません。 ただしハラスメントに関する通報など公表が被害者のプライバシー侵害を招く場合には、公表する情報の制限も求められます。制度の実効性とプライバシー侵害の回避とのバランスを取るのは難しいので、公表にあたっても必ず専門家に相談してください。 まとめ 公益通報制度の導入では、制度導入の過程で企業を成長させるという恩恵もあります。不正のないクリーンな事業を心がけ、取引先や消費者の信用を獲得して成長を遂げた企業も多くあります。 また、あらゆる消費者がネットを媒介にして企業の不正を糾弾できる現代においては、公益通報者保護法制定当時よりも不正がもたらすリスクは大きくなっています。 公益通報制度の導入に後ろ向きな思いや迷いがある企業ほど、導入する意義はあるのかもしれません。 大企業だけでなく、これから成長をしようとする中小企業にとっても公益通報窓口の設置は大変意義があるものです。これを機にぜひ前向きに導入を考えてみてはいかがでしょうか。

  • 個人情報の取り扱いは適正ですか。

    個人情報は、「生存」している「個人に関する情報」です。 故人や実在しない人物についての情報は個人情報に該当しません。 新型コロナウイルス感染症拡大でテレワークやウェブ会議などが増え、様々なサービスがオンラン化され、個人情報に触れる機会も増えています。一方、個人情報に関する取扱いの知識不足から、不適切な取扱いをしているケースも見られます。 企業は従業員、顧客などの個人情報について理解を深め、適切な取扱いをすることが求められます。 個人情報とは 個人情報とは特定の個人を識別できるもので、マイナンバーや免許証番号など個人を特定できる番号(個人識別符号)などを指しています。 氏名、住所、顔写真以外でも、他の情報と簡単に照合でき、そこから特定の個人を識別できる情報も含まれます。 たとえば、生年月日のみでは個人を識別できないため個人情報には当たりませんが、氏名と合わせると個人を識別できるため個人情報に当たります。 要配慮個人情報とは? 個人情報の中でも、他人に知られると本人に対する不当な差別や偏見などの不利益が生じる可能性があり、配慮が必要な情報に「要配慮個人情報」があります。 要配慮個人情報とは、人種、信条、社会的身分、病歴、障害、医師等により行われた健康診断、その他の検査の結果、保健指導、診療・調剤情報などをいいます。健診の結果は要配慮個人情報となるため、漏えいが起きないよう取扱いには注意が必要です。 これらの情報を取得するときは、事前に本人からの同意が必要です。 ただし、法令等で定められている定期健康診断(年1回の健診健診)などの結果は、本人の同意がなくても企業が取得できるとなっていますが、ストレスチェックや生活習慣病などの情報を取得するときは本人の同意が必要です。 個人情報保護法の用語の定義 個人情報保護法では、個人情報を容易に検索できるようまとめたデータに「個人情報データベース等」「個人データ」「保有個人データ」などの区分があり、用語は似ていますがそれぞれ定義が異なり、定義によって課せられる義務も異なります。 企業で使用、保有している個人情報 個人情報は、顧客だけではなく、雇用している従業員なども対象になります。 ほとんどの企業で、手続きや管理のために従業員などの個人情報を取得していますが、取得時には利用目的の具体的な特定と、本人が利用目的を認識できる状態であることが必要です。また漏えいや紛失などが生じないよう、安全に管理しなくてはいけません。個人情報を第三者へ提供(税理士、社労士など)するときは、あらかじめ本人から「同意」を得ておく必要もあります。 ただし従業員の個人情報に関しては使用目的はある程度決まっているので、就業規則に個人情報の取扱いについて規定し、雇用契約書またはそれに付随する誓約書に「就業規則に記載された通りの個人情報の取扱等について同意する。」と記載し、署名をもらうことで事前対応ができます。 企業内で個人情報にかかわる者(人事部、総務部、役職者など)を明確にし、個人情報の取扱いについての研修や、管理方法についての指導を行い、適切な運用制度の整備を行ってください。 個人情報保護法の罰則 個人情報保護法の違反には厳しい罰則があります。 個人情報保護法に基づいて設置されている個人情報保護委員会(内閣府の所管の行政委員会)による命令違反の罰則は強化されており、法人は1億円以下、行為者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっております。 その他にも、個人情報データベース等の不正流用では「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」などもあります。 違反をした人だけはなく、企業も責任を問われるため、罰則は両方に適用(両罰規定)されます。罰則が適用されなくても、個人情報を漏えいなどのケースでは、プライバシー権侵害などで賠償責任を負う可能性もあります。 社内の職場の状況や採用に従業員の個人情報を使用 採用活動や、職場の雰囲気を伝えるため、企業サイトやSNSに在職者の写真を掲載しているケースが増えています。在職者の写真で個人が特定(顔写真など)できる情報は個人情報にあたるため、利用目的や範囲を伝えておかなければなりません。 退職した従業員の写真が企業サイトや募集サイトに掲載されたままで、後日トラブルになっているケースもあります。トラブルを防ぐためにも事前に利用目的、範囲、期間などをあらかじめ書面(「個人情報(写真)の利用についての同意書(任意書式)」)で明確に説明されることをおすすめします。 社内や店内の防犯カメラの映像は個人情報なのか 社内状況の把握や防犯のために、カメラを設置している企業も増えてきています。取得されたカメラ画像の特定の個人が識別できるときは「個人情報」にあたるため、利用目的の通知・公表をしておく必要があります。 方法としては、従業員へはあらかじめ利用目的の説明の実施を行い、社外から来られる方(営業や店舗に来店される方など)向けには「カメラ作動中」の掲示、企業サイトでのプライバシーポリシー公表などを徹底してください。 まとめ SNSなどの普及もあり個人情報への関心が高まっている一方、どこまでが個人情報なのか、どこから管理が必要なのかの認識が曖昧になっています。 「知らなかった」「これくらいまでは許容範囲だと思っていた」では従業員の個人情報を守れず、働く上での安心感が損なわれる可能性があります。 個人情報の取扱いや意識向上は、取り扱う担当者だけではなく、企業全体で取り組む課題です。トラブル防止のためにも、事前に対策を検討し実施されることをおすすめします。

  • 外国人を雇用するときの企業の基本対応。

    厚生労働省の外国人雇用状況によると、外国人労働者は約173万人(2021年10月時点)と なり、過去最高となっています。 労働人口の減少による人手不足は深刻化しているため、今後も外国人労働者の受け入れは 増加が予測されます。 今回の記事では、外国人が働ける在留資格や不法就労リスクなど、外国人を雇用するときの注意点についてお伝えします。 外国人が働ける在留資格とは 在留資格とは、外国人が日本に滞在するための資格です。 ビザとは外国から日本へ入国するための許可を指します。 就労をするためには就労ができる在留資格が必要で、「就労ビザ」と呼ばれることもあります。 在留資格は29種類あり、在留資格ごとに活動内容が決まっています。 大きくは、「就労が認められている在留資格」と「就労が認められない在留資格」に 分けられます。 (出典)東京都『外国人材と働くためのハンドブック』P9、P10 就労が認められない在留資格であっても、出入国在留管理庁から資格外活動許可を 受けたときは、認可の内容に沿った就労時間や就労場所の範囲内で働くことができます。 不法就労者を雇用したときの罰則 不法就労とは、日本で就労が認められていない外国人が日本で働いている状態です。 【不法就労となる例】 ・在留資格の有効期限が切れている ・退去強制を命じられている ・就労できる在留資格がない ・在留資格で認められた職種以外で働いている ・資格外活動許可の範囲を超えている など 不法就労をしたときは、在留資格の取り消しの他、出国命令や退去強制となったり一定期間日本への入国ができなくなります。 罰則は、不法就労をした本人だけでなく、不法就労となる外国人の雇用を勧めた人や企業の関係者、そして不法就労となる外国人を雇用した企業も対象となります。 企業は「就労できないと認識していなかった」などを理由に罰則を逃れられません。就労ができるかどうかの確認を怠った結果、不法就労があったとされるときは責任を問われます。 罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。 懲役「または」罰金となっていますが、両方科せられることもあります(企業に罰則の適用がある場合は罰金刑のみ)。 外国人を雇用するときの基本対応 1 在留カードで在留資格と在留期間を確認する 特別永住者を除き、原則在留カードを所持していない方は就労ができません。 外国人を雇用するときは、在留カードを確認してください。 外国人留学生を新規採用するときは、「留学」から卒業後の在留資格へ変更の手続きが必要です。 在留資格の変更が許可されるまでは2か月程度かかり、手続きも煩雑です。 変更手続き後、入社日までに新しい在留資格の許可が間に合わないときは働かせることができませんので、内定から入社までの間に変更ができているか確認をしてください。 【在留カードの確認ポイント】 (表面) ・「在留資格」就労が認められている在留資格であるか ・「就労制限の有無」が以下いずれかであるか ①在留資格に基づく就労活動のみ可 ②指定書に指定された就労活動のみ可(指定書の確認が必要) ➂就労制限なし ・「在留カード番号」が失効していないか 参考|出入国在留管理庁サイト『在留カード等番号失効情報照会』 ・「在留期間」が切れていないか (裏面) 表面で「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」となっている場合 「資格外活動許可欄」で以下いずれかの記載があるときは就労ができます。 ①許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。) ②許可(教育、技術・人文知識・国際業務、技能に該当する活動・週28時間以内)」 ➂許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動) (出典)出入国在留管理庁『不法就労防止にご協力ください』P2 2 ハローワークに雇用状況を届け出る 外国人(外交、公用、特別永住者を除く)の雇入れと退職があったときは、すべての企業で、ハローワークへの雇用状況の届出が法令等で義務付けられています。 正社員だけではなく、パート・アルバイト、契約社員など名称にかかわらず、すべての外国人労働者が対象となります。届出を怠ると、指導、勧告の対象となるほか、30万円以下の罰金の対象になります。 届出方法は、対象となる外国人労働者が雇用保険の加入要件を満たす働き方をするか否かで異なります。 雇用保険の加入要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合です。 【雇用保険に加入のとき】 届出様式:雇用保険被保険者資格取得届 届出期限:雇入れた日の属する月の翌月10日まで 退職のときは、雇用保険被保険者喪失届で届出します。 【雇用保険に未加入のとき】 届出様式:外国人雇用状況届出書 届出期限:雇入れ、退職ともに翌月末日まで アルバイト期間が短期のときなどは雇入れと退職をまとめて届出できます。 届出の記載方法は以下のパンフレットを参考にしてください。 参考|厚生労働省『外国人雇用はルールを守って適正に』P3~P5 3 労働関係法令は国籍を問わず外国人にも適用 労働基準法や社会保険、雇用保険の適用などの労働関係法令は、国籍にかかわらず適用されます。 外国人労働者と労働契約を締結するときは、労働条件を書面で交付します。 日本の労働慣習に慣れていない外国人労働者にとって、労働時間や給与、残業などの理解不足はトラブルに繋がりやすいため、平易な日本語や母国語を使うなどして、外国人労働者が労働条件を理解できるように努めなければなりません。 また、外国人労働者が使用する機械などは取扱方法が確実に理解できるように、安全衛生教育を実施ください。 その他、労働災害防止のために必要な日本語教育の実施や、労災防止の標識や掲示物に図解を用いるなど、外国人労働者の内容理解のための工夫も必要です。 4 外国人労働者を常時10人以上雇用するときは雇用労務責任者の選任 外国人を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者が適切な労働条件や安全衛生のもと能力を発揮して働けるよう、雇用管理の改善に関する責任者を選任する必要があります。 ハローワークなどへの届出の必要はありません。 外国人留学生の「資格外活動許可」と労働時間管理 外国人留学生は、原則就労ができません。 しかし本来の在留資格で許可された留学での学業を妨げないことを前提として 「資格外活動許可」を取得すると、1週間28時間以内で就労ができます(風営法の規制対象は除く)。 1週間28時間とは残業時間も含めた実際に働いた時間を指します。 1週間はどの曜日から区切っても28時間以下とならなければなりません。 繁忙期や急な人手不足であっても1週間28時間を超えて働くと不法就労になりますので、正しい労働時間管理が必要です。 また、外国人留学生が複数の企業で働く場合は、合計時間が28時間以下にならなければいけません。自社以外の企業で働くときは、事前に相談してもらうようにお伝えください。 【1週間28時間の範囲で就労するための企業対策】 ・28時間より短い時間で勤務の予定を組む ・曜日と労働時間を決めてシフトを組む ・自社以外で働くときは事前に相談してもらう など 学校が決めている長期休暇中に限り、28時間を超えて(1日8時間、週40時間まで)労働ができます。休学や中退となったときは「留学」の在留資格で日本に滞在ができないため、資格外活動の許可が無効になります。 このように、外国人留学生を雇用するときは労働時間の上限や在留資格の変更にも注意が必要です。そのため外国人留学生に、法令等で定められた労働時間の上限や、在留資格・資格外許可変更時の報告について理解を求め、日本で働く上で守るべきルールについて説明し、書面(資格外活動に関わる誓約書」など)にしておくことをおすすめします。 まとめ 外国人労働者は、人手不足の日本にとって貴重な労働力です。 しかし、在留資格によって就労できる職種や働ける時間が異なるなど、在留資格制度は複雑でわかりにくく、制度を理解せずに雇用を進めた結果、トラブルや早期離職に繋がるケースも見受けられます。 今回の記事を参考に、法令等違反にならないように企業が正しく法令等を理解し、外国人労働者の労務管理にご活用ください。

  • 従業員の新型コロナウイルス感染での、企業対応。

    新型コロナウイルス感染症の流行は続いています。 この記事では、従業員が陽性者や濃厚接触者になったときや、業務により感染したときなどで、企業が認識しておくべき内容についてお知らせいたします。 (出典)厚生労働省サイト『データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-国内発生動向』 職場で陽性者・濃厚接触者が発生したときの対応 従業員から「新型コロナウイルス感染症の陽性や濃厚接触の判定がされた」と連絡が来た ときの企業対応についてお伝えします。 【陽性の連絡が来たとき】 従業員が新型コロナウイルス感染症の陽性の判定がされたときは、以下を参考に確認と 対応を行ってください。 (陽性者となった従業員に確認すること) ・症状発生日、検査日等 ・療養予定期間(復帰予定日) ・症状が発生する2日前の勤務状況 ・濃厚接触者になりうる従業員や取引先がいないか ・休業中の勤怠 など (企業対応すること) ・休業中の業務引継ぎ ・欠勤をする場合の傷病手当金の案内 ・陽性者のデスク周りや共用部分の消毒 など 【濃厚接触の連絡が来たとき】 新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者は、陽性となった人と一定の期間に接触があった人をいいます。 一定の期間とは、陽性者に症状が出た日の2日前(症状が出ない場合は陽性者が検体採取した時から2日前)から、療養が終了するまでの期間をいいます。 参考|厚生労働省サイト『新型コロナウイルス最前線』Q1 濃厚接触の疑いがある状態で、企業が出勤停止命令を発令したときは、休業手当の支払いが必要ですが、濃厚接触者になった場合は休業手当の支払いは不要です。 そのため、濃厚接触者と判断されたときは、欠勤になります。 濃厚接触者でPCR検査の結果が陰性のときは、傷病手当金も支給されませんので、有給休暇の取得を推奨する企業も多いです。 テレワークが導入されていれば自宅で業務してもらうこともできます。 濃厚接触者の待期期間の見直しなども行われていますが、新型コロナウイルス感染症は現在も増加傾向にあり、それに伴い濃厚接触者も増えています。 濃厚接触者となった従業員が出社できなくなることを想定して、早めに業務の見直しや対応を決めておくことをおすすめします。 労災保険給付の対象となる場合 業務によって新型コロナウイルス感染症に感染したときは、療養補償給付や休業補償給付など労災保険給付の対象となります。 【対象になる人】 ・感染経路が業務によることが明らかな場合 ・感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務に就き、それにより感染した可能性が高い場合 例)複数の感染者が確認された労働環境下での業務 例)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務 ・医師・看護師や介護の業務に従事される方々については原則として対象(業務外で感染したことが明らかな場合を除く) ・症状が持続し(罹患後症状があり)療養等が必要と認められる場合 など 詳細は、以下のリーフレットをご確認ください。 参考|厚生労働省『業務によって感染した場合、労災保険給付の対象となります』 傷病手当金の対象となる場合 社会保険の被保険者は、新型コロナウイルス感染症に感染して仕事ができないときは 傷病手当金の支給対象になります。 ここでは、協会けんぽの傷病手当金について記載しています。 傷病手当金とは、業務外の理由による病気やケガで仕事ができず、企業から給与の支払いがないときに、健康保険から生活保障として支給される手当です。 支給を受けられるのは、休業している期間が4日以上あるときです。欠勤した日から最初の3日間(待期期間)は支給されず、4日目から支給されます。 支給額は以下の計算式で算出した額になります。 【傷病手当金の支給額の計算】 また、ご家族や事業所内で感染者が発生し濃厚接触者となり欠勤しているときも、PCR検査の結果『陽性』または『自覚症状があり労務困難な場合』のいずれかに該当するときは支給の対象になります。 【傷病手当金の支給対象者】 ・陽性者の方 ・発熱などの自覚症状があり労務困難で仕事を休んでいる方 ・自覚症状はないが検査の結果、『陽性』となった方 支給の対象になるかどうかは以下の図を参考にしてください。 (出典)協会けんぽ 大阪支部サイト『新型コロナウイルス感染症にかかる傷病手当金について』 当面の間、傷病手当金の医師証明の添付が不要 通常、傷病手当金申請書を申請する際は医師の意見書の添付が必要になります。 ただし、新型コロナウイルス感染により傷病手当金を申請する場合は、以下の方法により 当面の間医師の意見書の添付は不要となります。 【医師の意見書の添付を不要とするときの記載方法】 傷病手当金支給申請書(2ページ目 被保険者記入用)の「発病時の状況の欄」に発症年月日、発症時の症状等を記入します。 <協会けんぽの場合の記載例> 申請期間が14日以上の場合は、「療養状況申立書(新型コロナウイルス感染症用)」の添付が必要になる場合があります。 参考|協会けんぽ「療養状況申立書(新型コロナウイルス感染症用)」 <公的な通知書 例> ・My HER―SYSからプリントアウトした「療養証明書」 ・医療機関が発行した「PCR検査の結果通知」「抗原検査結果通知」写し ・任意でPCR検査・抗原検査を行った場合、検査機関より交付された陽性の検査結果通知書写し など (出典)厚生労働省『療養証明書の表示方法』 国民健康保険加入者の新型コロナウイルスによる傷病手当金申請について 協会けんぽ以外の健康保険に加入されているときは、加入されている健康保険の窓口へ お問合せをお願いします。 また、国民健康保険には傷病手当金の制度はありませんが、給与の支払いを受けている方(事業主、無職などの方は対象外)を対象に、新型コロナウイルス感染症に限り傷病手当金を期限つきで支給している市区町村があります。 該当するときはお住まいの市区町村へお問合せください。 まとめ 新型コロナウイルス感染により仕事を休まれた方や濃厚接触者の方への対応方法は感染状況により変化しています。 感染による欠勤はどの企業にでも起こり得ます。陽性者や濃厚接触者が発生してから対応を考えるのではなく、事前に対応方法を考え、従業員に速やかに案内できるように しておきましょう。 各都道府県で対応方法が異なる場合がありますので、都道府県のホームページで事前に 確認されることをおすすめします。

  • 2022年10月の改正内容のまとめ。

    2022年10月にはさまざまな改正が予定されており、企業に直接影響がある改正では 手続きの流れの見直しなどが必要になります。 この記事では10月改正の概要をまとめています。 1⃣最低賃金法 2022年10月から最低賃金が上がります。 全国加重平均31円の引き上げとなり、過去最高となっています。 前年と比べると引き上げ率は3.3%で、1日8時間、週40時間の企業であれば月額換算すると5,000円以上変わってきます。 最低賃金は、正社員・パート・アルバイトなど雇用形態に関係なくすべての従業員に 適用されるため、企業の負担も増えます。 最低賃金額や改定日は都道府県により異なります(以下の「令和4年度地域最低賃金改定状況」を参照)ので、いつから変更になるか、いくらになるかなどを確認し、最低賃金を下回らないようにしてください。 【令和4年度地域別最低賃金改定状況】 (参考)厚生労働省サイト『令和4年度地域別最低賃金改定状況』 2⃣職業安定法 2022年10月1日から職業安定法が改正され、求人を行うすべての企業・募集情報等提供 事業者(求人情報などを提供する事業者)で求人等にかかわる情報の的確な表示が必要になり、虚偽や誤解を生じさせる表示も禁止されます。 求人にかかわるトラブルは毎年報告されており、「基本給に残業代が含まれていた」 「正社員募集の認識だったが契約社員の募集だった」「求人票より低い賃金を提示された」「就業場所が求人票と違う場所だった」などがあります。 このようなことが起きないよう、的確な労働条件の記載が求められます。 スム-ズに採用を進めるためにも、求人票に記載する労働条件と実際の勤務に相違が ないよう見直しを進めてください。 この他に求人サイトや、複数の求人をまとめた検索サービスなどを行っている募集情報提供事業者については、届出の義務化と、求職者の個人情報収集にあたり本人に対して収集目的などの明示が義務付けられます。 【職業安定法 改正のポイント】 (参考)厚生労働省『職業安定法 改正のポイント』 3⃣育児・介護休業法 2022年10月1日より育児・介護休業法の改正があり、新しく「出生時育児休業(通称、産後パパ育休)」ができます。 産後パパ育休は子どもの出生後8週間以内に4週間(28日間)取得でき、2回まで分割取得が可能です。 育児休業中(産後パパ育休含む)の就業は原則禁止(緊急・突発的な就業は可能)されていますが、産後パパ育休中は労使協定を締結すれば休業中の就業が認められます。 これまで育児休業の取得は原則1回でしたが、10月1日以降は2回まで分割取得ができるようになります。 また1歳以降の休業についても特別な事情(別の子どもの産前・産後休業の終了など)があるときは再取得できるようになり、仕事と育児の両立が進むよう柔軟に育児休業が取得できる制度に変わります。 (出典)厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』 4⃣雇用保険法 2022年10月1日から、雇用保険の料率の変更、育児・介護休業法の改正に伴う育児休業給付金、出生時育児休業給付金(新設)の改正などが行われます。 【雇用保険料率の変更】 雇用保険料率の変更は給与計算にかかわってくるので、給与システムの設定や従業員への周知などが洩れないようにしてください。 (出典)厚生労働省『令和4年度雇用保険料率のご案内』 【育児休業給付金、出生時育児休業給付金(新設)】 1歳までの育児休業の分割取得(2回まで)ができるようになったため、分割した育児休業ごとに育児休業給付金が受給できるようになりました。 また、産後パパ育休に対応した「出生時育児休業給付金」ができました。 出生時育児休業給付金も分割取得(2回まで)が可能ですが、手続きはまとめて1回で行います。 育児休業給付金、出生時育児休業給付金の支給額は同じですが、申請期限などが異なります。以下のリーフレットをご覧ください。 (出典)厚生労働省『令和4年10月から育児休業給付金制度が変わります』 5⃣厚生年金保険法、健康保険法 2022年10月1日、厚生年金保険法、健康保険法の改正も行われます。大きくは3つです。 1 育児・介護休業法改正に伴う、育児休業中の社会保険料免除 同月内に育児休業(出生時育児休業含む)を14日以上取得したときは、その月の社会保険料が免除されます。 月をまたいで育児休業を取得したときは、従来とかわらず月末に育児休業を取得している月の社会保険料が免除になります。 また、賞与の社会保険料の免除は1か月を超えて育児休業を取得していないと適用されません。 (出典)日本年金機構『育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されます。』 2 厚生年金、健康保険加入の2か月みなしの適用除外 2か月の期間を定めて雇用される従業員への社会保険(厚生年金、健康保険)適用の取扱いが変わります。 今までは、2か月を超えて雇用継続が「見込まれる」従業員の社会保険の加入は適用除外(加入しなくていい)とされていましたが、今後、雇用継続が見込まれるときは初めから社会保険への加入が必要になります。 雇用契約書に「更新をしない」旨が明確になっているとき以外(「更新する場合がある」など)は、社会保険加入が必要です。 ※労働時間、勤務日数が社会保険加入要件を満たしている従業員が対象です。 3 101人以上の企業のパート・アルバイトへの社会保険適用拡大 社会保険加入の適用者(※)が101人以上の企業(法人番号単位)に勤務する一定の要件を満たす短時間労働者(パート・アルバイトなど)に対して、社会保険の加入要件が拡大されます。 社会保険は従業員や企業が加入する・しないを決められないため、対象になる短時間労働者への周知や手続きなどを漏れなく進めてください。 ※適用者とは、正社員の所定労働時間および労働日数の3/4以上の短時間労働者です。 【短時間労働者の社会保険の加入要件】 (出典)厚生労働省『社会保険適用拡大ガイドブック』 6⃣アルコール機器を使用したアルコールチェックの延期 2022年4月1日から、運転前・後の目視によるアルコールチェックおよびその記録の保存が義務付けされています。 2022年10月1日からアルコール検知器を使ったアルコールチェックの義務付けが予定されていましたが、こちらは延期になりました。 目視によるアルコールチェックは、今後もかわらず実施が必要です。 なお、アルコールチェックの対象は乗車定員11名以上の自動車1台以上または乗車定員にかかわらず、5台以上の自動車を保有する事業所です。 7⃣高年齢者医療確保法 2022年10月1日から、75歳以上で一定以上の所得がある方の医療費の窓口負担が2割になります。2割負担になるかどうかはフローチャートで確認ができます。 2割負担になった方は、外来医療の窓口負担割合の引上げに伴い1か月の負担増加額を3,000円までに抑える措置が2025年(令和7年)9月30日まで実施されます。 【窓口負担割合についてのフローチャート】 (出典)厚生労働省『後期高齢者医療制度の見直しについて』 8⃣確定拠出年金法 企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している方がiDeCoに加入するには、企業との労使の合意が必要でしたが、2022年10月1日より原則加入できるようになります。 マッチング拠出(企業と本人が掛金を拠出)を導入している企業DCのときは、マッチング拠出とiDeCoの両方への掛金の拠出はできません。どちらにするかは本人が選択できます。マッチング拠出は企業の掛金を下回る額でないと本人が拠出できず、企業の掛金と合わせて55,000円以下にしなければなりません。iDeCoの掛金は最大20,000円まで拠出できます。 つまり、企業の掛金が20,000円未満のときはiDeCoの方が本人の掛金を多く拠出でき、 企業の掛金が20,001円以上35,000円未満のときは、マッチング拠出の方が多く拠出できます。 (出典)厚生労働省『令和4(2022)年10月から 企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります』 まとめ 改正はまだまだ続きます。 2023年4月1日からは60時間を超える法定時間外労働の割増率が50%(大企業は適用済み)になるなど、企業の負担が増すものもあります。 事前に対策をしておかないと対応が難しい改正もありますので、早めに準備を進められるよう計画を立てることをおすすめします。

  • 企業が副業・兼業を許可する前に知っておくポイント。

    国は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にて副業・兼業を希望する労働者の 健康確保や労働時間管理のルールを明確にし、副業・兼業の普及を促進しています。 厚生労働省が公開している統計によると、全面禁止している企業も多いですが、条件付きも含め半数近くは認めていることがわかります。 出典)厚生労働省『副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定案について』P5 副業・兼業を行う従業員は、複数の収入源を得られるだけでなく、一つの仕事では 出会えなかった人や、本業以外での経験から得た広い視野を持って仕事に取り組めるようになります。企業側も、副業・兼業で得られた経験やスキルを本業へ活用してもらう期待が持てます。 今回の記事では、企業が副業・兼業を検討するときに知っておくべき、労働時間管理や 健康管理のポイントについてお伝えします。 副業・兼業は認めないといけないのか 従業員が、労働時間以外の時間をどのように利用するかは従業員の自由です。 そのため従業員の希望に応じ、原則副業・兼業を認める方向での検討が望ましいとされています。 しかし、企業には副業・兼業を認めるうえで懸念もあるはずです。そのため副業・兼業が本業にどのような支障をもたらすかを今一度精査した上で副業・兼業を認めない、条件付きで認める等の判断をする必要があります。 【副業・兼業を認めない・認めるときは条件付きとする理由】 ・本業の仕事への支障 ・働きすぎによる心身の健康負荷 ・業務上の秘密などの情報漏えい ・競業による自社利益の侵害 ・企業の名誉や信頼を損なう行為 など 企業の方針が決定したら、トラブルやリスク対策のため、就業規則の規程整備や 労務管理上の仕組みづくりを検討します。 副業・兼業に関する就業規則の規定や社内様式は、以下のサイトを参考にしてください。 参考|厚生労働省『副業・兼業』 副業・兼業に関する情報の公表 2022年7月、副業・兼業の促進に関するガイドラインが改定されています。 今までのガイドラインでは、安心して副業・兼業に取り組めるように、副業・兼業を 行うときの労働時間管理や健康管理等について示されていました。 今回の改定で、多様なキャリア形成など副業・兼業を希望する労働者が、職業選択の参考にできるよう、企業サイトや会社案内、採用パンフレットなどでの副業・兼業に関しての 情報公開の推奨が追加されました。 参考|厚生労働省『副業・兼業の促進に関するガイドライン』 情報公開するときの記載例です。 【副業・兼業を認めている(条件なし)】 【副業・兼業を認めている(条件付き)】 副業・兼業する従業員の労働時間 副業・兼業での労務管理では、労働時間に注意する必要があります。 法令等では、自社と副業・兼業先の労働時間を通算するものと通算しないものがあります。 【労働時間を通算するもの】 法令で定められている労働時間の限度時間は、原則1日8時間、週40時間です。 このルールは複数の事業場で働く従業員にも適用されるため、自社と副業・兼業先の労働時間を通算します。 さらに、従業員個人の実労働時間を規制する目的の「時間外労働の上限規制(時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内)」も適用されるため 自社と副業・兼業先の労働時間を通算します。 そのため、副業・兼業を行う従業員においては、副業・兼業先の労働時間も確認したうえで労働時間管理をする必要があります。 【労働時間を通算しないもの】 事業場ごとに締結される36協定の延長できる限度時間は、事業場ごとに延長時間の範囲内であるか確認するため、労働時間は通算しません。 また労働基準法が適用されない役員やフリーランス、労働基準法が適用されるが労働時間規制の適用除外となっている業種や管理監督者などの場合は通算しません。 どのように労働時間管理を行うのか 副業・兼業をする従業員の労働時間は、自社の労働時間と従業員の申告により把握した 副業・兼業先の労働時間を通算して計算します。 自社の労働時間と副業・兼業先の労働時間を通算して1日8時間、週40時間(特例措置対象事業場のときは44時間)を超える部分が時間外労働となります。 原則的な労働時間管理と、簡便な労働時間管理の2通りをご紹介します。 1 原則的な労働時間管理の方法 所定労働時間と時間外労働となる部分の2段階で通算を行います。 給与計算期間ごとに従業員に副業・兼業先の労働時間を申告してもらって労働時間の通算を確認します。 ステップ1 所定労働時間を労働契約を締結した先後の順番で通算する ステップ2 時間外労働の発生した順番で時間外労働時間を通算する 例1)A事業場と先に労働契約を締結後、B事業場と新たに労働契約を締結し副業している A事業場の所定労働時間:1日8H B事業場の所定労働時間:1日2H →先に労働契約しているA事業場は、法定労働時間内のため割増賃金の支払はありません。B事業場は、A事業場での労働時間が1日の法定労働時間に達しているため、B事業場で 働く時間はすべて法定外労働時間となります。 B事業場で働く2時間は割増賃金の支払が必要です。 労働契約を締結した先後の順番で通算するため、以下の図のように1日の中での労働時間の順番が前後しても割増賃金の支払は、後に労働契約をしたB事業場となります。 例2)A事業場と先に労働契約を締結後、B事業場と新たに労働契約を締結し副業しており、A事業場は所定労働時間を超え5時間働いた A事業場の所定労働時間:1日4H B事業場の所定労働時間:1日4H A事業場で行った時間外労働時間:1H →A事業場とB事業場で労働契約のとおり労働した場合、1日の労働時間は8時間なので 法定労働時間内の労働となります。 A事業場とB事業場の所定労働時間を通算して8時間に達しているため、いずれの事業場も 所定労働時間を超えて働いた時間は、すべて法定外労働時間となります。 A事業場で行った時間外労働時間は、割増賃金の支払が必要です。 2 簡便な労働時間管理の方法(管理モデル) 原則的な労働時間管理は、従業員にとっては毎月複数の事業場へ労働時間の申告、 事業場にとっては労働契約や毎月の労働時間の通算管理が必要となり、双方にとって負担となります。 厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインで、簡便的な労働時間管理として 「管理モデル」という考え方を示しています。 管理モデルは、副業・兼業の開始前にあらかじめ「自社の法定外労働時間の上限」と 「副業・兼業先の所定労働時間・時間外労働時間の上限」を設定し、その範囲内で 働くことで、自社以外の労働時間を把握しなくても法令等違反にならない仕組みです。 労働時間の上限は、自社と副業・兼業先の合計が 単月100時間未満、複数月平均80時間を超えない範囲で設定します。 管理モデルは、従業員と副業・兼業先に導入を求め、応じてもらう必要があります。 導入後のトラブル防止のため、管理モデル実施のための書面を自社、副業・兼業先、従業員の三者間で共有することをおすすめします。 ※割増賃金の支払義務の考え方が、原則的な労働時間管理の通算のステップとは異なるため 注意ください。 ステップ1 先に労働契約を締結した事業場の所定労働時間と時間外(所定外・法定外) 労働時間の上限を通算する ステップ2 ステップ1で通算した労働時間に、後に労働契約を締結した事業場の 所定労働時間と時間外労働時間の上限を通算する 例1)A事業場と先に労働契約を締結後、B事業場と新たに労働契約を締結し副業している A事業場の所定労働時間:月曜日から金曜日まで1日8H A事業場の法定外労働時間の上限の設定:1月20H B事業場の所定労働時間:1月20H B事業場の時間外労働時間の上限の設定:1月5H →A事業所の法定外労働時間の上限とB事業所の所定労働時間・時間外労働時間の上限の 合計が、単月100時間未満、複数月平均80時間を超えない範囲で設定されているので管理モデルの適用ができ、副業先の労働時間管理の把握は不要です。 割増賃金は、管理モデルの通算ステップに従います。A事業場は、すでに所定労働時間が 1週の法定労働時間に達しているため、所定労働時間を超えて働く時間はすべて 法定外労働時間となります。 B事業場も、A事業場の所定労働時間と法定外労働時間の上限の通算が1週の法定労働時間に達しているため、B事業場で働く時間はすべて法定外労働時間となります。 副業・兼業をする従業員の健康管理 企業は、従業員が健康に働けるように健康状況を把握し、健康管理に努める必要があります。そのため法令等により、健康診断やストレスチェックの実施が義務付けられています。 実施義務は、従業員の所定労働時間を基準に判断しますが、副業・兼業先の労働時間は 通算せず判断します。 副業・兼業をする従業員が、自社と副業・兼業先の労働時間を通算し対象となる労働時間となっていても、健康診断やストレスチェックの実施義務はありません。 しかし、副業・兼業をする従業員は、長時間労働になる可能性が高いため、働きすぎと ならないように、労使の話合いをもとに健康確保のための措置の実施をおすすめします。 また、中高年齢者にあたる45歳以上は、加齢に伴う心身機能の変化と無理な行動により 労働災害の発生リスクも高まります。 法令等でも中高年齢者の労災防止の就業上の配慮が求められています。 副業・兼業を条件付きで認めるときに、直近の健康診断の結果が業務遂行に問題がないことなどの基準を設けることもおすすめします。 【健康確保のための措置 例】 ・健康保持のための自己管理を行うように指示する ・自らの健康状態の報告を義務とする ・メンタルヘルスや健康相談できる相談窓口を設置する ・時間外・休日労働の免除、制限を行う など まとめ 多様な働き方を選択したり、パートタイマーとして複数の企業で働くなど副業・兼業をする方が増えてきています。 2020年9月には、複数の企業で働く労働者が安心して働ける環境整備として、労災保険給付の改正もありました。労災保険給付の基礎賃金をすべての就業先の賃金を合算するという内容です。また、1つの企業で労災認定できない場合は、複数の企業の業務上の負荷など総合的に評価して労災認定する仕組みもできました。 2022年1月には、複数の企業で勤務する65歳以上の労働者が、2つの企業での労働時間を合計して雇用保険の要件を満たすとき、労働者の希望により雇用保険の被保険者になれる雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設されました。制度の試行実施状況の把握・検証を行い、さまざまな年齢層のマルチジョブホルダーの雇用保険の適用が検討されます。 今後も、副業・兼業の普及促進のため新たな実効性のある政策の検討が進みます。 今回の記事を参考に、副業・兼業を検討するときに適切な雇用管理にお役立てください。

  • 2023年度の健康経営優良法人の認定受付は10月で終了です。

    「健康経営優良法人」は、経済産業省が2016年度から実施している認定制度です。 この制度は「健康経営」に取り組む優良な法人の「見える化」を行い、求職者、従業員や 関連企業、金融期間などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として認知・評価される環境整備を目標としています。 大企業、中小企業で要件が異なり、認定を受けるためには申請が必要で、今年度の締め切りは2022年10月21日(大企業は2022年10月14日)となっています。 この記事では中小企業対象の「健康経営優良法人」の内容を記載しています。 健康経営の必要性 健康経営とは、「健康管理」と「経営」を統合させ企業に必要な従業員等の健康管理を 経営的な視点から戦略的に実践することをいいます。 健康経営の取り組みにより、従業員の健康維持・増進、生産性向上や業績アップ、 組織の活性化などの効果が期待されます。 (出典)経済産業省『必須の企業戦略としての「健康経営」』 健康経営優良法人の最近の状況 健康経営優良法人の認定申請は年々増加しており、健康経営の推進に向け社内で明文化を している企業は増えています。また、健康経営の普及を進めるため、独自の取り組みを行う自治体(商工会議所、市区町村など)もあります。 【健康優良法人(中小規模法人部門)申請・認定状況】 (出典)経済産業省『健康経営の推進について』P18 健康経営優良法人は業種を問わず認定されており、建設業、製造業、運輸業が上位を占めています。 都道府県別では、大阪府、愛知県、東京都の順に多く、鳥取県、徳島県、茨城県、和歌山県は前年度と比較すると2倍以上に増加しています。 健康経営優良法人の顕彰制度、優遇制度とは 健康経営優良法人に認定されると顕彰制度や優遇制度があり、都道府県や自治体によって 内容は異なります。 内容はさまざまで、企業だけではなく、認定を受けた企業に勤務する従業員が優遇制度 (個人ローンの金利優遇など)を受けられることもあり、法人には以下のような顕彰制度や優遇制度があります。 詳細は、各自治体や顕彰制度・優遇制度の実施機関へお問い合わせください。 【顕彰制度・優遇制度】 ・金融機関からの支援(融資) ・公共調達加点評価(入札参加資格) ・融資利率割引 ・取組に対する表彰 ・取組に対する相談・支援  など 企業のメリット・デメリット 健康経営優良法人の認定を取得したときのメリット・デメリットを以下にまとめています。 【メリット】 ・健康経営優良法人の認定マークの使用 ・ハローワークの求人に認定マークが掲載 ・企業のブランドイメージの向上 ・顕彰制度、地域のインセンティブ措置を利用 ・離職率が低下 ・社内コミュニケーション活性化 ・モチベーションの向上 ・従業員の健康意識が向上 ・従業員の疾患リスク低下 など 【デメリット】 ・認定申請がインターネット(郵送など不可) ・認定申請の書類作成などに時間が必要 ・効果が見えにくい ・健康データなどの収集・管理に時間が必要 ・認定申請料がかかる など 健康経営優良法人の認定基準とは 健康経営優良法人認定の申請ができるのは「法人(法人番号が付与あり)」のみとなる ため、個人事業主は申請ができません。 認定基準は「経営理念」「組織体制」「制度・施行実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの大項目に分類されており、大企業も中小企業も同じですが 中項目以降は異なります。 また、健康経営を実施した結果を元に申請を行うため、今年の申請は来年度(2023年度)の認定分になります。 (出典)経済産業省サイト『健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)認定要件』 ※ブライト500とは「健康経営優良認定制度」における中小企業のうち上位500の企業です。 健康経営優良法人認定の流れ 健康経営優良法人認定の申請を進めるにあたり、加入している健康保険(協会けんぽ、健康保険組合など)に「健康宣言」を行なわなければなりません。 健康宣言とは、企業の健康経営の方針に基づき、従業員の健康づくりへの取組などを社内、社外に宣言することです。 健康宣言については、加入している健康保険へお問合せください。 認定は更新制となっており、健康経営優良法人認定の継続には毎年申請が必要です。 また、申請には1件あたり15,000円(税抜き)の「認定申請料」がかかります。 11月上旬にメールと郵送で請求書が届き、12月9日までに振込みが必要です。 申請期限:2022年10月21日(金)17時(大企業は2022年10月14日(金)17時まで) 申請方法:「ACTION!健康経営」サイトから申請(郵送不可) ※IDの発行が必要になります。サイト内の「新規ID発行サイト」かお手続きを行ってください。 ID、申請先のURLなどがメールで届きます。 参考|「ACTION!健康経営」サイト 【健康経営優良法人の認定申請の流れ (出典)経済産業省サイト『健康経営優良法人の申請について』 まとめ 健康経営を実践している企業はまだまだ少なく、取り組みには時間やコストがかかります。しかし、健康経営への取組みは、従業員の健康改善や維持だけではなく、企業が従業員を 大切にしてることが伝わり、「安心」に繋がります。 従業員が安心して健康に働ける職場づくりのためにも、健康経営についての検討をおすすめします。