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「」に対する検索結果が109件見つかりました

  • 労災保険の特別加入制度~手続と流れ~

    労災保険の特別加入制度とは、一定の要件を満たす中小事業主等や一人親方等を従業員に準じて保護するための制度です。 加入は任意ですが、特別加入することにより、業務や通勤が原因でケガや病気をしたときも治療費の負担はありません。 さらに治療や療養のために働けなくなったときは、その期間の生活の安定を図るための給付金が支給されます。 このほか、障害が残ったときの給付や、死亡したときの遺族への給付などもあり、 万が一に備え、安心して働くことができるのも特別加入のメリットのひとつです。 今回の記事では、特別加入制度の中で加入者が最も多い「中小事業主等」、 それに次ぐ「一人親方等」を中心に、特別加入の手続や保険料、給付基礎日額について解説します。 なお、補償の対象範囲や保険給付等については、以前の記事をご確認ください。 以前の記事『労災保険の特別加入制度とは。(対象者や補償の範囲)』 特別加入するための手続 中小事業主等、一人親方等それぞれの加入手続について解説します。 1 労働保険事務組合と特別加入団体 特別加入制度の加入手続は、以下の組合や団体を通じて行います。 ・中小事業主等:労働保険事務組合 ・一人親方等 :特別加入団体 ①労働保険事務組合とは 労働保険事務組合(以下、事務組合)とは、厚生労働大臣の認可を受けた団体です。 中小事業主等に代わり、労働保険事務の手続を行います。 特別加入を希望する場合だけでなく、「人手不足で事務処理に困っている」 「手続の時間が取りにくい」など事務処理が負担になっているときも、事務組合への委託が可能です。 委託する事務組合をお探しの場合は、都道府県労働局または労働基準監督署にお問い合わせください。 (出典)京都労働局『労働保険事務組合制度をご存知ですか』 ②特別加入団体とは 特別加入団体とは、都道府県労働局長の承認を受けた団体です。 一人親方等の特別加入は、「特別加入団体を事業主」 「一人親方等を従業員」とみなして労災保険を適用します。 そのため、一人親方等は特別加入団体の構成員になる必要があります。 なお、特別加入団体ごとに対応できる地域や業種が異なるため、加入の申込前に居住地や業種が対象であるかご確認ください。 お近くの特別加入団体をお探しの場合は、都道府県労働局または労働基準監督署にお問い合わせください。 2 手続の流れ 中小事業主等は事務組合、そして一人親方等は特別加入団体に特別加入の申込をします。(申込方法は、インターネット・郵送・FAXなど組合や団体によって異なります。) 申込を受けた事務組合や特別加入団体は、都道府県労働局(労働基準監督署経由)に特別加入の届出を行います。 なお、加入日は、事務組合や特別加入団体が都道府県労働局に届出した日(※)の翌日から30日以内のうち、中小事業主等や一人親方等が希望する日です。 申請日からさかのぼって加入することはできないため、日数に余裕を持って特別加入の申込をしてください。 ※中小事業主等や一人親方等が特別加入の申込を行った日ではないためご注意ください。 【特別加入証明書】 特別加入証明書とは、特別加入していることを証明する書類です。 近年、建設現場などで提示を求められる場合が増えています。 万が一の事故に備え、特別加入していない者には業務をさせない方針の元請企業もあり、特別加入証明書がない場合は現場に入場できない可能性もあります。 特別加入証明書は、中小事業主等は事務組合、一人親方等は特別加入団体が発行します。 特別加入の手続完了とともに自動的に発行される場合や依頼しなければ発行されない場合など、発行方法は加入する組合や団体によって異なります。 3 加入時健康診断 中小事業主等や一人親方等が、以下の表にある業務を過去に一定期間従事していた場合、特別加入の申請時に健康診断を受けなければなりません。 この健康診断を加入時健康診断といい、適正な保険給付を行うために実施します。 病気などが発症したとき、発症の要因が特別加入の申請前と申請後のどちらの業務によるものか判断するための大切な診断です。 なお、健康診断を受診した結果、以下に該当する場合は特別加入が認められなかったり、保険給付を受けられない可能性があります。 給付基礎日額について 給付基礎日額とは、特別加入の保険料や給付額などを算定するときの基礎となるものです。 給付基礎日額は3,500円~25,000円の中から、中小事業主等や一人親方等が金額を選択します。 給付基礎日額が低いほど保険料が下がりますが、それだけ給付額も低くなります。 保険料と補償内容とのバランスを考慮しながら給付基礎日額を選択することをおすすめします。 1 年間保険料 特別加入の年間保険料は以下の計算により算出されます。 保険料率は事業ごとに定められています。2024年4月より保険料率が改定され、最新の保険料率は厚生労働省のサイトから確認することができます。 (中小事業主等は「第一種特別加入保険料率」、一人親方等は「第二種特別加入保険料率」を適用) 参考|厚生労働省『特別加入保険料率表(令和6年4月1日施行)』 【給付基礎日額・保険料率一覧表】 以下の一覧表は、給付基礎日額に対する年間保険料です。 自身が適用される保険料率をあてはめ、給付基礎日額を選択するときの参考にしてください。 参考|厚生労働省『特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>』P9 2 補償内容(保険給付・特別支給金) 以下の一覧のうち、赤枠で囲まれた保険給付や特別支給金は、給付基礎日額が支給額に反映されます。 参考|厚生労働省『特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>』P13 労働災害の発生から給付手続までの流れ 労働災害が発生した場合、以下のように対応します。 ①医療機関を受診し、以下のことを伝える ・業務中または通勤途中の災害であること ・特別加入していること なお、受診先が労災病院、労災指定病院、労災指定薬局の場合、治療等を無償で受けることができます。 それ以外の医療機関を受診するときは、病院や薬局の窓口で治療費等を立替えて支払い(10割負担)、後日費用の請求手続を行うと立替えた費用が支給されます。 ②保険給付の請求書を作成 保険給付の請求手続(特別支給金の申請手続を含む)は、事務組合や特別加入団体が行うことができません。 そのため、中小事業主等や一人親方等が自身で請求手続を行う必要があります。 (一人親方等は特別加入団体の証明が必要) ただし、請求書の作成サポートなどを行う事務組合や特別加入団体もあるため、まずは加入先の事務組合や特別加入団体にお問い合わせください。 なお、社会保険労務士は請求手続の提出代行が可能です。 日頃から労務管理などを依頼している社会保険労務士がいる場合は、社会保険労務士に請求手続の代行を依頼するのもひとつの方法です。 ③保険給付の請求書を提出 保険給付の請求書(特別支給金の申請書を含む)を提出します。 提出先は、医療機関や労働基準監督署など給付の種類により異なります。 その他注意事項 ①支給制限 中小事業主等や一人親方等の故意または重大な過失によって発生した災害や、保険料の滞納期間中に生じた災害では、支給制限(全部または一部)が行われる可能性があります。 ②【中小事業主等】包括加入および脱退 中小事業主等が特別加入する場合、家族従事者(事業主と同居している家族でその事業に従事している者)や役員(法人の場合)など従業員以外でその事業に従事している者がいるときは、原則として全員が加入することとなります。 これを包括加入といいます。 また、中小事業主等が特別加入から脱退する場合、包括加入した者も全員脱退することとなります。 なお、例外として、以下に該当すると認められた事業主は包括加入の対象から除くことができます。 ・就業実態のない事業主(例:病気療養中や高齢など) ・事業主本来の業務のみ行う事業主 (例:株主総会や役員会など会議出席のみ行い、実際の業務執行は他の役員が行っている場合など) ③【中小事業主等】健康保険の特例は対象外 被保険者数が5人未満の企業において、中小事業主等が被ったケガや病気が、従業員と同様の業務を行っていたときの災害によるものと認められたときは健康保険が適用されます。 ただし、特別加入している中小事業主等は労災保険を適用するため対象外です。 よくある質問 中小事業主等や一人親方等の特別加入について、よくあるご質問と回答を紹介します。 おわりに 労働災害の備えには、特別加入制度のほか、民間保険(障害保険など)もあります。 民間保険も商品によって内容はさまざまで、特別加入制度より手厚い補償の商品もあります。 ただし、民間保険は特別加入制度とくらべ、保険料が高い傾向にあります。 特別加入制度はコストを抑えつつ、療養や休業、傷病、遺族、介護など幅広く補償される点もメリットのひとつです。 内容を十分に理解したうえで、加入の検討をしてください。

  • 労災保険の特別加入制度とは ~対象者や補償の対象範囲~

    労災保険は正式名称を「労働者災害補償保険法」といい、従業員が業務や通勤により 被った災害(病気、けが、障害、死亡など)に対し、保険給付を行う制度です。 従業員や遺族を保護することを目的としているため、事業主や役員など従業員以外の者は 原則として対象外です。 しかし、建設現場の作業などでは、事業主等が従業員と同様の業務を行うこともめずらしくありません。 こうしたときの災害の発生リスクは従業員と変わらないため、一定の要件を満たす場合は、 事業主等についても特別に労災保険への加入が認められています。 これを特別加入制度といいます。 今回の記事では、特別加入制度の中でも加入者が最も多い「中小事業主等」、それに次ぐ「一人親方等」を中心に、補償の対象範囲や保険給付などについて解説します。 今後、加入手続や保険料、給付額の算定基準について解説した記事の公開を予定しています。 今後の記事『労災保険の特別加入制度。(手続およびその後の流れ)』 特別加入制度の対象者 1 加入の対象区分 特別加入制度の対象者は大きく分けて4種類です。 ①中小事業主等 以下に定める従業員数を常時雇用する事業主や役員、事業主の家族でその事業に従事している者(以下、家族従事者) ②一人親方等 従業員を雇用せず、常態として以下の事業を行う一人親方や自営業者、および家族従事者 (従業員を雇用していても雇用する日数が年間延べ100日未満のときは、一人親方等の対象) 詳しくは、厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。 参考|厚生労働省『特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>』P3 ③特定作業従事者 以下の特定の業務に取り組む者 ・特定農作業従事者 ・指定農業機械作業従事者 ・国や地方公共団体が実施する訓練従事者 ・家内労働者およびその補助者 ・労働組合等の一人専従役員 ・介護作業従事者および家事支援従事者 ・芸能関係作業従事者 ・アニメーション制作作業従事者 ・ITフリーランス など ④海外派遣者 労災保険の対象は、日本国内の事業所に勤務する従業員です。 転勤などで海外の事業所に派遣される従業員は対象外となり、原則として派遣先の国の 災害補償制度が適用されます。 しかし補償内容が十分とはいえない国もあることから、以下に該当する従業員は特別加入 することができます。 ・日本国内の事業主から、海外事業の従業員または海外の中小事業主等として派遣される者 ・技術協力の事業を行う団体から派遣され、開発途上地域の事業に従事する者 なお、海外派遣者については、今後公開の記事で詳しくお伝えする予定です。 2 下請の場合はどうなるのか 建設現場などでは、重層的な請負契約関係により、元請、下請、孫請など複数の企業の 従業員が一体となって作業します。 そのため一般的な労災保険の適用とは異なり、元請の企業が下請・孫請の従業員も含めて 現場全体の労災保険に加入します。 つまり、下請・孫請の従業員が現場で労働災害にあったときは、元請企業の労災保険が 適用されます。 一方、中小事業主等や一人親方等は、元請の労災保険は適用されません。 そのため労災保険の補償を受けるためには、あらかじめ自身で特別加入する必要があります。 3 今後の見通し 近年、特別加入制度の対象が順次拡大されています。2021年から2022年の2年間だけでも、 以下の事業を行う者が新たに対象となりました。 ・芸能関係作業従事者 ・アニメーション制作作業従事者 ・柔道整復師 ・創業支援等措置に基づき事業を行う者 ・自転車を使用して貨物運送事業を行う者 ・ITフリーランス ・あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゅう師 ・歯科技工士 その背景には、働き方の多様化があります。 なかでもフリーランスの増加による影響は大きく、2023年にはフリーランス新法が成立し、 2024年秋頃に施行予定です。 こうした動きに伴い、労働政策審議会においても、一定の要件を満たすフリーランスを 特別加入制度の新たな対象者として加える方向性が示されています。 特別加入のメリット・デメリット 特別加入は任意加入の制度です。メリットとデメリットを知ったうえで、加入の判断を することをおすすめします。 1 メリット ①業務または通勤による災害を受けたときに補償が受けられる 業務や通勤が原因で病気やけがをした場合、治療費などを負担する必要がありません。 さらに、治療や療養で働けなくなったときは、その期間の生活の安定を図るための給付金が 支給されます。 このほか、障害が残ったときの給付や、死亡したときの遺族への給付などもあります。 ②保険料を自分で設定できる 特別加入の保険料は保険料一覧の中から加入者が選択します。補償の手厚さ、事業の経営状況などのバランスを見ながら保険料を設定することができます。 2 デメリット ①会費や手数料などの費用が発生する 特別加入は、労働保険の事務処理を行う労働保険事務組合や特別加入団体などを通じて 加入しなければなりません。 加入先で定められた費用(入会金や会費、委託手数料など)を負担する必要があります。 ②業務上の災害がすべて補償の対象とはならない 特別加入は従業員に準じて保護される制度です。業務中の災害は、従業員と同様の業務を 行っていた場合に補償対象となります。 そのため、事業主の立場で行う事業主本来の業務を行っていたときの災害については 補償されません。 補償の対象範囲 特別加入における補償は、「業務災害」 「複数業務要因災害」 「通勤災害」の3つに 大別されます。 1 業務災害 業務災害とは、業務が原因となった病気やけが、障害、死亡のことです。 病気やけがなどの発生が、業務と因果関係があるかどうかで業務災害であるか判断されます。 中小事業主等、一人親方等による具体的な対象範囲は以下のとおりです。 参考|厚生労働省『特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>』P10 2 複数業務要因災害 近年、働き方の多様化により副業や兼業など複数の企業で働く人が増えています。 こうした状況を踏まえ、2020年9月からの労災認定については、事業主が同一ではない 複数の企業で働く従業員を対象に、すべての勤務先で発生する業務上の負荷(労働時間や ストレスなど)を総合的に評価して判断されることとなりました。 こうして認定された災害を複数業務要因災害といいます。 (対象疾病:脳・心臓疾患や精神障害など) 特別加入者の複数要因災害は以下のとおりです。 3 通勤災害 通勤災害とは、通勤途中の事故などによるけがや病気、障害、死亡のことです。 特別加入者の通勤災害は以下のとおりです。 保険給付・特別支給金の種類 特別加入者の被った事故が、業務災害、複数業務要因災害、通勤災害であると認定された場合、保険給付や特別支給金が支給されます。なお、特別加入者の健康診断の受診は自主性に任されているため、特別加入者は二次健康診断等給付の対象とはなりません。 【保険給付】 被災した従業員または死亡した従業員の遺族に対して支給されます。 【特別支給金】 社会復帰促進等事業として保険給付とあわせて支給されるものです。保険給付の種類によっては特別支給金がない場合もあります。 以下は、保険給付や特別支給金の一覧です。 なお、「給付基礎日額」とは、保険料や給付額を算定する基礎となるものです。詳しくは、今後の記事『労災保険の特別加入制度。(手続およびその後の流れ)』で解説します。 参考|厚生労働省『特別加入制度のしおり<一人親方その他の自営業者用>』P13 おわりに 特別加入制度に加入して万が一に備えることは、働く中小事業主等や一人親方等だけでなく家族にとっても安心感を与えられます。メリットとデメリットを前もって理解したうえで、加入の検討をしてください。 今後の記事では、特別加入制度の加入手続や負担すべき保険料、給付額の算定基準について解説します。 また、特別加入の対象のひとつである「海外派遣者」についても、今後詳しくお伝えする予定です。

  • 知っておきたい労災保険料の基礎知識(2024年4月から労災保険率改定)

    労災保険制度は、すべての従業員の保護を目的とした公的な保険制度です。 そして、この制度の適正な運営を確保するための重要な財源が、労災保険料です。 2024年4月から労災保険率が改定されます。 労務担当者は、改定後の自社の労災保険率を把握してください。 今回の記事は、労災保険料のしくみや計算方法のほか、2024年4月に改定される労災保険率も紹介します。 労災保険料とは 労災保険は、従業員が業務中または通勤途中の事故などで被ったケガや病気などに対して、保険給付が受けられる制度です。 あわせて、被災した従業員の社会復帰促進や援護(遺族も含む)などの社会復帰促進等事業も行います。 労災保険制度を運営するための財源を大きく占めるのが労災保険料で、以下のような内容に使われます。 【労災保険料の負担について】 労働基準法は、事業主の災害補償責任を定めています。業務災害が発生した場合、 どの事業主でも被災した従業員や、従業員が死亡した場合には遺族に対し、 損害賠償の責任を負わなければなりません。 事業主の故意や過失の有無にかかわらず責任が発生します。 (従業員の重大な過失により労働基準監督署長の認定を受けた場合の休業補償および障害補償を除く。) しかし業務災害が発生した場合、療養や休業、障害、遺族に対する補償など、すべての補償を行う資金がない事業主もいます。 この場合、被災した従業員や遺族に対して十分な補償ができない可能性があります。 そこで事業主の災害補償を代行し、従業員や遺族が補償を受けることができるよう定められたのが労働者災害補償保険法(以下、労災保険法)です。労災保険による給付が行われると、事業主は労働基準法の災害補償責任を免れることとなります。 このような労働基準法と労災保険法との関係から、1人でも従業員を雇用する場合は労災保険の成立手続を行い、労災保険料は事業主が全額負担することとなっています。 労災保険料の計算 ここからは労災保険料の計算について解説します。なお、この記事で解説する労災保険料は、従業員に対して適用される通常の労災保険にかかる保険料です。 中小事業主や一人親方等が特別加入している場合の特別加入保険料は別途計算されます。 1 労災保険料の計算式 労災保険料の計算式は以下のとおりです。 労災保険は、企業単位ではなく事業所単位で加入します。そのため、労働保険番号を複数もつ企業はそれぞれの労働保険番号ごとに労災保険料の計算をします。 (継続事業の一括をしている場合はまとめて計算) ①賃金総額とは 賃金総額とは、すべての従業員に対し労働の対償として支払ったものです。 4月1日から翌年3月31日の勤務分の賃金が対象で、税金や社会保険料などを控除する前の総支給額をいいます。 なお、役員報酬は対象外ですが、兼務役員に対し従業員部分として支払われた賃金は対象になります。 (出典)厚生労働省『労働保険対象賃金の範囲』 ②労災保険率とは 労災保険率は事業の種類ごとに定められています。 過去3年間の災害発生率などを考慮して定められ、危険な作業が多い事業ほど労災保険率は高くなります。 また、同じ企業で複数の事業を展開するなど、事業所によって主たる事業の種類が異なる場合もあります。 この場合、それぞれの事業所の主たる事業の種類ごとに労災保険率が決まります。 【2024年4月、労災保険率が改定されます】 労災保険率は原則として3年ごとに改定され、次回は2024年4月に改定されることが公表されています。 改定後の労災保険率は、以下の厚生労働省のサイトで確認できます。 参考|厚生労働省『労災保険率表(令和6年4月1日施行)』 ③労災保険料の計算例 以下は、労災保険料の計算例です。 2 賃金総額の特例(建設業) 下請や孫請など数次の請負による建設業の場合、元請が下請や孫請の従業員も含めて現場全体の労災保険に加入します。 しかし、元請が現場全体の従業員の賃金総額を正確に把握することが困難な場合も多く見受けられます。 困難であると認められた場合、特例として、請負金額に労務費率を乗じた額を賃金総額とみなして計算することができます。 この特例による労災保険料の計算式は以下のとおりです。 ①労務費率とは 労務費率とは、工事の請負金額に占める賃金総額の割合です。 事業の種類ごとに定められています。 【2024年4月、労務費率が改定されます】 労務費率は2024年4月に改定されることが公表されています。 具体的な率は厚生労働省のサイトで確認できます。 参考|厚生労働省『労務費率(令和6年4月1日施行)』 ②労務費率を使用した労災保険料の計算例 以下は、特例により労務費率を使用した労災保険料の計算例です。 3 現場労災と事務所労災(建設業) 建設業には、現場で働く従業員のほか、事務員など現場以外で働く従業員もいます。 この場合、労災保険は別々に加入するため労災保険料も分けて計算します。 【現場労災】 現場で働く従業員の労災保険です。 上述のとおり数次の請負による建設現場の場合、元請が加入するため労災保険料も元請が計算します。 【事務所労災】 事務員など現場以外で働く従業員の労災保険です。雇用する事業主が加入します。 なお従業員によっては、現場作業と、資料作成など現場以外の業務を兼務する人もいます。 こうした従業員については、現場以外の業務中の災害に備えて事務所労災にも加入します。 この場合、現場と現場以外の労働時間の割合により現場以外にかかる賃金総額を算出して労災保険料を計算します。 4 メリット制 安全衛生への取り組みや快適な職場環境づくりの意識は、企業によって異なります。 事業の種類が同じであっても、こうした企業の努力や姿勢により業務災害の発生率に差が生じます。 そこで、企業の災害防止の努力を推進するため、適用要件を満たす事業所については、業務災害の発生が多い少ないに応じ、一定の範囲内で労災保険率または労災保険料額を増減させます。 この制度をメリット制といいます。 適用要件は、継続事業、一括有期事業、単独有期事業により異なります。 以下の図は、継続事業の場合の適用要件です。 なお、一定の安全衛生措置を講じた中小企業事業主を対象に、通常のメリット制よりもさらに増減率が大きくなる特例メリット制も設けられています。 労働保険料の申告および納付 労災保険料は、雇用保険料とあわせて労働保険料と呼ばれます。 労働保険料は、年に1回行う年度更新により申告および納付をします。 【年度更新とは】 毎年6月1日から7月10日のあいだに行う以下の手続です。 ・前年度の確定保険料を申告・納付するとともに概算保険料を精算 ・新年度の概算保険料を申告・納付 なお単独有期事業では、年度更新ではなくひとつの事業(工事など)ごとに労働保険料の申告および納付をします。 ・事業を開始した日から20日以内に概算保険料を申告・納付 ・事業が終了した日から50日以内に確定保険料を申告・納付するとともに概算保険料を精算 労災保険の加入手続や労働保険料の納付を怠ったとき 労災保険の加入手続や労働保険料の納付を怠った企業に対し、以下のような徴収が行われます。 1 労災保険の加入手続(成立手続)を怠った場合 ①加入勧奨に従わないとき 加入手続を行わない企業に対し、行政機関から加入手続の指導が行われる可能性があります。 再三の加入勧奨にも従わない場合、職権により強制的に加入手続が行われ、最大2年間さかのぼった労働保険料と10%の追徴金が徴収されます。 ②未加入期間中に災害が発生したとき 労災保険の加入手続を行っていない期間中に、企業の故意または重大な過失により労働災害が発生した場合、最大2年間さかのぼった労働保険料と10%の追徴金を徴収されるとともに、下図のように保険給付に要した費用の100%または40%が徴収されます。 (出典)厚生労働省『ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。』P4 2 労働保険料を滞納した場合 労災保険の加入手続は行っているものの労働保険料を滞納した場合、以下のように延滞金や保険給付に要した費用の一部が徴収されます。 (出典)福井労働局『保険料を滞納すると?』 おわりに 労働保険料の納付は企業の義務です。 2024年4月から労災保険率や労務費率が改定されるため、労務担当者は留意しながら正しく労働保険料の計算をしてください。 また、事情により労働保険料を一時に納付できない企業は、一定の要件に該当すると猶予制度を受けられる場合があります。 詳しくは、都道府県労働局または労働基準監督署にご相談ください。

  • 人事異動におけるトラブルを回避するためには

    企業はさまざまな人事権を持っており、人事異動も人事権を根拠に行われます。 そのため、基本的に人事異動の裁量権は企業側にあります。 しかし、完全に企業側の自由というわけではなく、契約上の根拠がなかったり、従業員の 個別の状況を考えないまま人事異動を命じてしまうと、労使紛争の火種となる恐れが あります。 一方、正しく運用ができれば企業には業務の属人化の防止や組織の活性化というメリットが 生まれ、従業員にはキャリア形成やスキルアップなどのメリットが生まれます。 この記事では、人事異動を企業と従業員の双方にプラスのものとするため、人事異動の 基本や、トラブル回避のための方法を紹介します。 人事異動とは 人事異動とは、企業が従業員に対して、勤務地や役職、職種などの変更を命じることです。 別の事業場に勤務地を変更する転勤や、職種を変更する職種変更など、人事異動にはさまざまな種類があります。 基本的に、就業規則などの根拠規定が定められている場合には、ほとんどの人事異動で 企業側の裁量権が認められます。 特に、新卒採用や期間の定めなく採用された正社員は、人事異動を前提にした採用である ことが多く、その場合は企業の決定した人事異動が認められるケースが多いです。 人事異動によるメリットとデメリット 人事異動には、企業と従業員の双方にメリットがあると同時に、デメリットもあります。 ここでは、それぞれを簡単に紹介したいと思います。 1 メリット 企業にとってのメリットとして、経営方針に合わせた人材の配置ができることがあります。 力を入れたい事業の人員を増員する際、新たに従業員の採用を行うと費用がかかります。 しかし人事異動ができれば、企業内の人員だけで対処することができます。 また、企業が従業員の適性を踏まえて人事異動を行うことで、適材適所の配置が実現し、 従業員の生産性の向上も期待できます。 人事異動の従業員側のメリットは、キャリア形成やスキルアップにつながるという点です。人事異動で新たな業務に就労することは、新たなスキルを獲得する機会や、その後のキャリアを考えるきっかけにもなります。このことは従業員のやる気やモチベーションの向上につながります。 2 デメリット 人事異動には、デメリットもあります。企業と従業員の双方にとって有益なものとなるため には、人事異動を正しく運用する必要があり、正しく運用できなかった場合には、従業員の モチベーションや生産性の低下が生じます。 従業員のモチベーション低下は離職の原因になり、企業の戦力ダウンにもつながって しまいます。 さらに、従業員のキャリア形成を不当に侵害するような人事異動をしたり、従業員の 家族状況等に一切配慮をしない人事異動をしてしまうと、労使間での紛争が生じてしまいます。 その人事異動が不当であると認められてしまうと、多額の賠償金を支払わなければならない というリスクも発生します。 近年の傾向と対策 これまでは、転勤や職種の変更を含む人事異動が企業の一存で決められることが多く ありました。 しかし、近年ではワークライフバランスの考え方が浸透し、法律でもワークライフバランス に配慮した契約の締結が求められています。 また、育児や介護を行う従業員に対して転勤を命じるときには、企業が養育や介護の状況に 配慮する必要もあります。 さらに、ワークライフバランスを求めて、労働契約を締結する時点で勤務地や職種などを 限定する「多様な正社員」といわれる雇用区分を希望する労働者も増えてきています。 企業側に大きな裁量権があるという人事異動の原則は変わっていませんが、時代背景に 応じて裁量権がだんだんとせまくなっていることには注意が必要です。 人事異動は従業員の私生活に少なからず影響を及ぼすことから、可能な限りしっかりと 説明をしたうえで、個別に合意を得ることをおすすめします。 人事異動におけるリスクやトラブルを避けるため、企業が取り組むべきことは2つ あります。 1 自社の制度や従業員との契約内容を確認する 就業規則に人事異動についての定めをしているか、従業員との契約内容はどのようになって いるのかなどについて、改めて確認することをおすすめします。 特に契約内容については、2024年4月からは契約の締結や更新時に、就業場所や業務の変更 の範囲を労働者に明示する必要があります。 この改正に沿って契約を結ぶことで、就業場所や業務(職種)が限定されているのかを はっきりさせることができ、人事異動を命じる際のトラブル防止につなげられます。 2 従業員とのコミュニケーションを取る 法的に問題がないからといって、一方的に人事異動を命令するのではなく、従業員としっかりコミュニケーションを取ることが大切です。 事異動は、従業員にとって労働環境が変わる大きなイベントです。本人の希望やライフプラン、キャリアの展望などを聞き、従業員が納得できる人事異動の実現を目指しましょう。 仮に従業員の希望通りの人事異動を実現できないとしても、その人事異動によって従業員に どのようなメリットや成長の機会が生まれるのかを説明し、理解してもらうことが大切 です。 人事異動にあたっての法的観点での注意点 基本的に企業に広い裁量権が認められる人事異動ですが、従業員に与える影響が大きすぎる 場合は法的に問題となる場合があります。 法的に問題になるかどうかの基準は、人事異動の種類によって変わってきますので注意が 必要です。 人事異動の種類に分けて、基準を説明します。 1 配置転換 配置転換には、転勤・配置替え・職種変更があります。 これらの配置転換では、「契約上の根拠があること」と「権利濫用に当たらないこと」の 2点をクリアする必要があります。 まず、契約上の根拠として、配置転換を命じることをあらかじめ就業規則に明記する必要が あります。 ただし、就業規則に定めをおいたとしても、「多様な正社員」に対しては個別の契約で 限定されている労働条件の変更を命じることはできませんので注意が必要です。 そのうえで、以下の場合には権利の濫用となってしまう可能性がありますので、注意をして ください。 ①業務上の必要性がないにもかかわらず配置転換を行った場合 ②不当な動機・目的で配置転換が行われた場合 ③従業員の私生活に著しい不利益がある配置転換を行った場合 2 降格 降格とは、一般的には企業内での組織上の地位が下がることを指す言葉であり、多義的に 使用されています。 したがって、役職を外された場合や、職務等級制度などにおける等級の引下げなども 「降格」と言われます。 この降格については、降格に伴い賃金の引下げが行われているか(いわゆる、降給を伴う 降格)が重要です。 降給を伴う降格が行われた場合には、降格前の賃金との差額の賃金の支払をめぐって労使紛争になることが多いです。このような紛争になった際の重要な争点は、降格について合理性があるかどうかであり、人事評価制度が適切に運用されていなかった場合には降格について合理性がないと判断され、降格前の賃金との差額の支払を命じられてしまいます。 3 出向 出向には、もとの企業に在籍しながら他の企業で就業する在籍出向と、もとの企業との契約 を終了して他の企業と新たに契約を結ぶ転籍出向の2つがあります。 在籍出向は、もとの企業との契約関係が残ることから、就業規則に在籍出向の可能性がある 旨を記載しておけば個別合意がなくとも出向させることは可能です。 ただし、出向期間中の労働条件について変更する場合は、就業規則等に明示する必要が あります。 そのうえで、出向元、出向先そして従業員とで、労働条件の設定について協議を重ねること が重要になります。 転籍出向の場合は、出向元の企業との雇用関係が解消されてしまうことから、退職類似の 関係となってしまいかねません。 特に、出向期間について期限の定めがない場合には、実質的に会社を辞めさせられることに なってしまいます。 したがって転籍出向の場合には、就業規則に出向がある旨を定めるだけでは足らず、 原則として、転籍出向をさせる従業員と個別に同意を得る必要があります。 出向を命じる可能性がある場合には、あらかじめ制度を構築しておくことが重要です。 勤務する企業が変わるということは、他の人事異動と比べても従業員に与える影響は 大きくなるため、在籍出向の場合であっても個別の同意を得ることをおすすめします。 なお、配置転換同様、業務上の必要性がない出向や、不当な目的で行われた出向について も、権利濫用となってしまうことに注意が必要です。 おわりに 人事異動の最終決定権は企業側にありますが、ワークライフバランスを含む働き方に対する 意識が変化しているなか、各従業員の状況や契約内容などを考慮した人事異動を行わなければ労使間のトラブルや法的な問題につながる可能性もあります。 一方で、正しく運用すれば従業員の生産性やモチベーションを最大化する方法にもなり得ます。 適材適所の観点で人事異動を行い、従業員のパフォーマンスを引き上げる施策として活用 することをおすすめします。

  • 令和6年度の雇用保険料率と、保険料の仕組み

    令和6年2月15日、厚生労働省から令和6年度の雇用保険料率が発表されました。 令和4年度から2年連続で雇用保険料率が引上げとなっていましたが、令和6年度の 雇用保険料率は令和5年度と同率のため、変更はありません。 しかし雇用保険料率は毎月の給与計算にも影響を及ぼすため、基本的な制度内容についても 理解しておく必要があります。 今回の記事では、雇用保険の制度や、新しい雇用保険料率の詳細とその計算方法について 解説します。 雇用保険とは 雇用保険は、自身の労働により給与を得て生計を立てている従業員が、離職後の生活の 安定を確保し、雇用の継続を図るための制度です。 雇用保険料は、失業や育児休業、介護休業の給付金だけでなく、雇用調整助成金などの 失業を予防したり雇用機会を増やすための「雇用安定事業」や、従業員のスキルアップを 支援する「能力開発事業」にも利用されています。 令和6年度の雇用保険料率 雇用保険料率は、令和4年度から2年連続で引き上げられていました。 しかし前述のとおり、令和6年度の雇用保険料率は令和5年度と同率で、変更はありません。 【令和6年度の雇用保険料率】 (出典)厚生労働省『令和6年度の雇用保険料率について』 雇用保険料率の変更のタイミング 雇用保険料は、毎月の給与計算時に、雇用保険に加入する従業員ごとに計算して徴収しなけ ればいけません。 令和6年度は雇用保険料率に変更がないため対応すべきことはありませんが、労務担当者と して、変更タイミングは押さえておきましょう。 雇用保険料率の変更タイミングは「4月1日以降に最初に到来する締日により支給される 給与」となり、賃金締日を基準にして変更を行います。 賃金締日が雇用保険料率の改定日の前後いずれにあるかにより、雇用保険料率を変更する 時期が決まります。 (例)当月締/当月支払の場合 締日 :4月20日 支払日:4月30日 →賃金締日が4月1日以降のため、4月30日に支払う給与より新しい雇用保険料率で計算 します。 (例)末締/翌月支払の場合 締日 :3月31日 支払日:4月25日 →賃金締日が3月中のため、4月25日に支払う給与は従前の雇用保険料率で計算します。 そして、5月25日に支払う給与より、新しい雇用保険料率で計算します。 雇用保険の加入要件 雇用保険の加入要件は以下のとおりです。 【雇用保険の適用対象者の要件】 以下のいずれにも該当する従業員 ①1週間の所定労働時間が20時間以上であること ②31日以上の雇用見込みがあること 現在の制度では、2か所以上の雇用関係にある従業員は、1か所でしか雇用保険に加入でき ません。 ただし、雇用保険マルチジョブホルダー制度により、65歳以上の従業員で以下の適用対象者 の要件を満たしたときは、本人の申出があれば雇用保険の被保険者となることができます。 【雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者の要件】 ①複数の事業所に雇用される65歳以上の従業員であること ②2つの事業所(1企業あたり週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を 合計して、週の所定労働時間が20時間以上であること ③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること 参考|厚生労働省『「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します』 また、従業員として勤務しつつ、個人事業主やほかの企業の役員などその他の収入がある 方については、雇用保険の適用となる場合があるためご留意ください。 従業員としての収入と個人事業主等での収入のどちらが多いかにかかわらず、従業員として 雇用保険の加入要件に該当していれば加入する必要があります。 参考|広島労働局『従業員の方が自営業を営んでいる場合の雇用保険の取扱い』 雇用保険料の対象となる賃金とは 雇用保険料の対象となる賃金は、賃金、給与、手当、賞与などの名称にかかわらず、 労働の対象として企業が従業員に支払うすべてです。 結婚祝金や休業補償、解雇予告手当などは賃金に含まれません。 (出典)厚生労働省『雇用保険料の対象となる賃金』 雇用保険料の計算方法 雇用保険料の対象となる賃金は、税金や健康保険料などの社会保険料を控除する前の 総支給額に雇用保険料率を掛けて求めます。 上記で計算したときに、従業員負担分に端数が出たときは以下のように処理します。 【雇用保険料の計算例】一般の事業の従業員(令和6年4月~)の給与から控除するとき 基本給325,800円 / 扶養手当20,000円 / 通勤手当15,000円 / 出張旅費20,000円 (計算方法) 325,800円+20,000円+15,000円=360,800円(※) 360,800円 × 6/1,000 = 2,164.8円 →雇用保険料:2,165円(50銭1厘以上のため端数切り上げ) ※出張旅費など、実費弁償と考えられるものは雇用保険料の対象賃金には含めません。 雇用保険料の申告と納付方法 雇用保険料の申告と納付は、毎年6月1日から7月10日までのあいだに申請する年度更新で 行います。 年度更新では、労災保険と雇用保険の2つの保険の総称である労働保険の保険料を計算します。 具体的には、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(「保険年度」という)を単位と して計算し、すべての従業員(雇用保険の場合は被保険者)に支払われる賃金総額に、 その事業ごとに定められた保険料率を掛けて計算します。 保険年度ごとに概算で保険料の申告と納付を行い、保険年度末に賃金総額が確定した保険料 の申告と納付をする、そのひとつのサイクルを総じて年度更新といいます。 雇用保険料の従業員負担分は毎月の給与や賞与から徴収し、年度更新のタイミングで支払う ことになります。 なお、年度更新で計算した労働保険料の納付には「現金納付」「口座振替」「電子納付」の 3つの方法があります。 現金納付と電子納付を行う場合の納付期限は、毎年7月10日(納付期限が土曜日・日曜日の 場合は、翌月曜日)です。 ただし、一定の条件を満たした場合は、延納(分割納付)により、最大3回に分けて納付が 可能です。 口座振替による納付の場合は、納付日(引落日)が毎年9月6日(土曜日・日曜日の場合は、 金融機関の翌営業日)のため、保険料の引き落としには最大2か月のゆとりができます。 【口座振替による労働保険料の納付日(引落日)】 (出典)厚生労働省『労働保険料は口座振替が便利です!』 口座振替は、金融機関の窓口に行く手間や待ち時間の解消がされ、納付漏れも防止できる ためおすすめです。 おわりに 今回は、令和6年度の雇用保険料率や雇用保険の基本についてお伝えさせていただき ました。 雇用保険は、働く従業員の生活や安定雇用の維持に欠かせない大切な保険です。 正しい計算方法などを理解し、適切に給与から徴収してください。 なお、今般の社会情勢を鑑み、雇用保険制度の見直しの方針も示されているため、今後も 制度の動向に注目が必要です。

  • 2024年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます

    2021年に行われた障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日から民間企業にも 「合理的配慮の提供」が義務化されます。 この合理的配慮の提供を通して、障害があるかないかにかかわらず、互いに認め合いながら 共に生きる社会の実現を目指します。 この記事では、合理的配慮の提供とその判断基準、留意すべきポイントなどについて 紹介します。 障害のある人への合理的配慮の提供とは 1 障害のある人とは 障害のある人には、障害者手帳を所持している人だけではなく、心や体のはたらきに 障害があり、社会的な障壁(バリア)によって制限を受けている人も含まれます。 2 合理的配慮の提供とは 合理的配慮の提供とは、障害のある人が店やサービスなどを利用するときに、提供側に 対して「利用の妨げになっている障壁(バリア)を取り除いて欲しい」という意思が 伝えられたとき、負担が大きすぎない範囲で配慮の提供を行うものです。 たとえば耳の不自由な人からの求めにより、筆談を用いて対応することも合理的配慮の 提供です。 これまでの合理的配慮の提供は、民間企業や個人事業主に対しては努力義務にとどまって いましたが、2024年の4月からは義務化されます。 合理的配慮の提供を行うときは、求められた配慮の内容や障害の程度、その時の状況に よって、臨機応変な対応が求められます。 合理的配慮の提供の判断基準 合理的配慮の提供が義務化されるからといって、障害のある人からの求めにすべて対応 しなければならないという訳ではありません。 以下の基準を満たすかどうかを順に考えてください。 1 社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があるか 合理的配慮の提供は、障害のある人からの求めがあってはじめて配慮の提供を行う必要が 生じます。 したがって、法令等上は求めがない場合は対応しなくても問題はありません。 ただし、障害のある本人から以外にも、本人が自ら申し出ることが困難な場合の家族や 支援者、介護者などからの求めも該当します。 2 求められている配慮が「必要かつ合理的な配慮」に該当するか 事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つをすべて満たした求めである場合にのみ、 合理的配慮の提供を行う必要があります。 3 求められている配慮が「過重な負担」に該当するか 求められた配慮に応じて以下の要素を総合的・客観的に検討し、その内容が企業にとって 過度な負担となる場合には合理的配慮の提供を行う必要はありません。 合理的配慮の提供の例 合理的配慮の提供の例となります。内容は個別の場面に応じて異なるものになり、必ずしも 実施するものではないこと、また以下の例以外であっても合理的配慮に該当するものが あることに注意してください。 その他の差別を解消するための制度 1 不当な差別的取扱いの禁止 法律で禁止している不当な差別的取扱いとは、正当な理由がないにもかかわらず、障害が あるという理由だけでサービスの提供に制限をかけることです。 たとえば、同伴者がいることを利用の条件にするなども不当な差別的取扱いに含まれます。 なお、障害のある人から配慮を求められ対応するときには、対応の内容によっては不当な 差別的取扱いにも該当する可能性もあります。 合理的配慮の判断基準と合わせて検討することが大切です。 2 環境の整備 合理的配慮の提供は配慮を求められたことをきっかけに行われ、その内容は配慮を求めて いる人の状況に合わせて変わります。 これに対して、環境の整備とはバリアとなり得るものをあらかじめ取り除くことをいい、 障害のある人全般を対象とするものです。いわゆるバリアフリー化や従業員への研修なども 環境の整備に当てはまります。 合理的配慮の提供との関係として、環境の整備の実施状況が合理的配慮の提供を行ったか どうかを直接的に決定づけることはありませんが、環境の整備を行うことで合理的配慮を 行う際の負担を減らし、質を上げることにもつながります。なお環境の整備は、努力義務と されています。 合理的配慮の提供における留意点 1 建設的対話の重要性 求められた配慮の提供を行わないと判断しても、障害のある人と企業が対話を繰り返し、 一緒になって新たな解決策を模索すること(建設的対話)は大切です。 たとえば、障害のある人が普段行っている対策を聞いたり、企業が対応できる範囲を伝え たりすることが、法の目指す共生社会実現への一歩となります。 そのため、前例がないことや漠然とした不安などを理由に建設的対話を拒否することは、 合理的配慮の提供義務違反になる可能性があります。 2 社内制度の見直し 既存の社内ルールやマニュアルの項目が、障害のある人に制限をかけてしまう内容になっている可能性があります。 社員との建設的な対話のためにも、社内ルールやマニュアルの見直し、研修の実施を おすすめします。 なお、マニュアルの見直しや研修の実施などは「環境の整備」に当てはまるため、努力義務 です。 3 対応指針の参考 国の行政機関は、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体例が書かれた「対応指針」を 作成しています。これらの「対応指針」を参考にしながら、対応を検討しましょう。 参考|内閣府『関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針』 労務管理上の注意点 合理的配慮の提供を行うときには、対応する従業員の負担を考慮することも大切です。 合理的配慮の提供には、個別に対応するための時間や、重たい物を持つ必要などが生じ ます。 そのためシフト調整などで労働時間を管理したり、精神面も含めた体調管理にも気を配って ください。 また、合理的配慮を行うための環境の整備には社内体制や設備の変更などが伴うため、それ自体が負担となります。実現可能な範囲と、法令等上守らなければならないラインを見極めて対応してください。 おわりに 合理的配慮の提供は、個別のケースに対応しなければならないため、企業としては取り組むことに前向きになれないかもしれません。 しかし一律に最初から求めに応じなければ、法令等違反になる恐れがあります。 建設的対話を意識し、上記の判断基準に当てはめながら検討を行い、求められた配慮を行う 必要があるかどうかを決定することが大切です。

  • 協会けんぽから令和6年度の健康保険料率が公表されました。

    協会けんぽから、令和6年度の都道府県単位健康保険料率が発表されました。 令和6年度の健康保険料率は神奈川県を除く46都道府県で変更が発生し、引下げが 22都道県、引上げが24府県となっています。 介護保険料率は、全国一律で令和5年度の1.82%から0.22%引下げとなり、令和6年度は 1.60%となります。 令和6年3月分(4月納付分)から適用されます。 (引用)|協会けんぽ『令和6年度都道府県単位保険料率』 健康保険料の額とは 健康保険料の額は、次の計算式で求めます。 従業員が40歳から64歳までの場合は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料を支払います。 上記で求めた保険料額を企業と従業員で折半します。 【標準報酬月額】 標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするために報酬月額の区分ごとに設定 されている、基準となる金額をいいます。 現在、58,000円(第1級)から1,390,000円(第50級)までの全50等級に区分されています。 標準報酬月額の決定方法は、下記の5種類です。 ・資格取得時決定 ・定時決定 ・随時改定 ・育児休業等を終了したときの改定 ・産前産後休業を終了したときの改定 【標準賞与額】 標準賞与額とは、賞与にかかる保険料を計算するときの元となる金額で、賞与の支給総額 から1,000円未満を切り捨てて算出します。 標準賞与の対象となる賞与は、名称に関係なく従業員に対して労働の対象として支払う 年3回以下のものをいいます。 標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日)における 累計額573万円です。 【端数処理について】 従業員負担分に端数が生じた場合は端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は 切り上げて1円とします。 (例) 12,345.50円 ⇒ 12,345円を控除 12,345.51円 ⇒ 12,346円を控除 ただし、企業と従業員のあいだで「端数は企業負担とする」などの特約がある場合は、 特約に基づき端数処理ができます。 都道府県単位の保険料率とは 協会けんぽの健康保険料は、各都道府県により保険料率が異なります。各都道府県の 保険料率は、地域の加入者の医療費に基づいて算出されており、都道府県ごとに必要な 医療費(支出)が異なるため、保険料率に差が生じます。 つまり、疾病予防などの取り組みにより都道府県の医療費が下がれば、その分都道府県の 保険料率も下がることになります。 保険料率は毎年度改定され、都道府県によって「引上げ」「据え置き」「引下げ」に分かれます。医療費を下げる取り組みが、保険料の負担を左右するのです。 なお、健康保険組合では各組合によって保険料率が定められているため、都道府県単位の 保険料率が適用されているのは協会けんぽのみです。 下記のサイトより、各都道府県の保険料率を反映した保険料額表が公開されています。 参考|協会けんぽ『令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)』 保険料の納付手続と納付期日 企業は、企業負担分と従業員負担分をあわせた保険料を協会けんぽに納付する義務が あります。 この場合、従業員が負担する分については、企業は従業員に支払う給与や賞与から保険料を 控除できます。 従業員の負担する保険料を給与や賞与から控除したときは、給与明細などに記載し従業員に 通知しなければなりません。 【納付期日と納付方法】 納付期日:翌月の末日 納付方法:銀行・郵便局等金融機関窓口、口座振替、電子納付(Pay-easy) 納付日までに納付を行わない場合、期限を指定した督促状が送られてきます。 督促状の期限までに納めないと、延滞金が課され、財産差押えなどの滞納処分を受けること にもなります。 まとめ 協会けんぽの健康保険料率は、都道府県によって異なります。給与計算ソフトなどを 導入している場合は、3月分の保険料を徴収する給与計算が始まる前に、令和6年度の 健康保険料率に置き換える処理を行う必要があります。 また、3月に賞与を支給する場合は、令和6年度の健康保険料率で保険料を算出する必要が あります。 各都道府県の健康保険料率を確認し、正しい健康保険料率で従業員から保険料の徴収を行ってください。

  • 2024年4月以降の法改正で、労務担当者がおさえておくべきもの

    2024年にはさまざまな労務関連の法改正が行われます。 企業は改正内容に合わせて、手続の見直しなどの準備をする必要があります。 この記事では、2024年の法改正のうち労務担当者がおさえておきたい改正を選び、 概要をまとめています。 労働基準法 1 労働条件明示事項の追加 2024年4月1日から、企業と従業員との労働契約の締結時や更新時に、法令等上明示 しなければならない労働条件が追加されます。 追加される項目は以下の3点です。 【追加される労働条件明示事項】 (出典)厚生労働省『2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?』 ①就業場所・業務の変更の範囲 正社員か否かを問わず、すべての労働者に対して、これまで明示していた雇入れ直後の 就業場所・業務内容に加え、将来的に人事異動や配置転換で変更の可能性のある就業場所 および業務内容の変更の範囲について、書面での明示が必要になります。 ②更新上限の有無と内容 有期契約労働者との労働契約の締結時と更新時に、有期労働契約の通算期間または有期労働 契約を更新できる回数に上限がある場合については、その内容の書面での明示が必要に なります。 また、更新の上限を新たに設けたり短くする場合には、書面に記載する必要はありませんが、従業員にその理由を説明する必要があります。 ③無期転換申込機会・無期転換後の労働条件 有期契約労働者に対して、無期転換申込権が発生する契約更新のたびに、希望をすれば 無期労働契約へ変更できる旨について明示し、無期労働契約へ変更した後の労働条件に ついても明示する必要があります。 以上の追加された項目は従業員が将来の見通しを立てるために重要なものです。 従業員に労働条件をしっかりと理解してもらえるよう詳細に説明をしてください。 また、これらの変更に合わせて、求人を募集する段階の明示事項にも、以下の3項目が 追加されています。あわせて求人票や募集要項の内容も変更することをおすすめします。 ①業務内容の変更の範囲 ②就業場所の変更の範囲 ③有期労働契約を更新する場合の基準 (有期労働契約の通算期間または更新回数の上限を含む) 2 建設業や自動車運転業務、医師などの時間外労働の上限規制 2019年4月(中小企業は2020年4月)より、働き方改革の一環として、長時間労働の解消 などによる労働環境の改善を目指した「時間外労働の上限規制」が施行されています。 これまで、建設業や自動車運転業務、医師などについては、時間外労働の上限規制の適用が 5年間猶予されてきました。 しかし、2024年4月1日以降、これらの事業・業種についても時間外労働の上限規制が適用 されます。(一部、今後も原則と異なる取扱いもあります。) 今後は原則、月45時間、年360時間が時間外労働の上限となります。 (1年単位の変形労働時間を導入の場合、月42時間、年320時間) 臨時的な特別な事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結・届出することで、 月45時間、年360時間を超えて従業員を労働させることができます。この特別条項についても以下のような上限が設けられています。 ・時間外労働が年720時間以内 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度 ・時間外労働と休日労働の合計は、2か月~6か月までを平均してすべてひと月あたり 80時間以内 (出典)厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』P4 3 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 タクシーおよびハイヤー、トラック、バスの自動車運転者の時間外労働の上限規制が 適用されることを踏まえ、拘束時間や勤務間に確保しなければならない休息時間 (勤務間インターバル)および運転時間についての基準が設けられます。 これは労働監督行政上の指導指針となっているため、この基準を超えたとしてもすぐに 罰則が課せられるということにはなりませんが、指導の対象にはなります。 基準については、タクシーおよびハイヤーと、トラック、バスで分かれているので、 それぞれ以下の資料を参考にしてください。 参考|厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』 参考|厚生労働省『トラック運転者の改善基準告示が改正されます!』 参考|厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』 4 裁量労働制の見直し 2024年4月1日から、新たに、または継続して裁量労働制を導入するために必要な手続が 変わります。 裁量労働制とは、一定の業種に就く労働者については、業務の進め方や方法、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要があるとしてあらかじめ労使協定で定めた時間数の労働を したものとする制度です。 裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。 今回はそれぞれで改正が行われ、裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年3月末まで)に労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要が出てきます。 参考|厚生労働省『裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』 【専門業務型裁量労働制の改正点】 ①対象業務の追加 「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく 合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)」が 追加され、対象業務が20種類になります。 ②労使協定の記載事項の追加 導入・継続にあたり締結する労使協定に、以下の事項が追加されます。 ・労働者本人の同意を得なければならないこと ・労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと ・制度の適用に関する同意の撤回の手続 ・同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を保存すること ③健康・福祉確保措置の強化 健康・福祉確保措置として以下の表の①〜③、⑤の措置が追加されました。 健康・福祉確保措置は、以下のいずれかを選択し、1、2から1つずつ以上実施することが 望ましいとされます。 把握した適用労働者の勤務状況およびその健康状態を踏まえ、③の措置を実施することが 労働者の健康確保をはかる上で望ましいとされます。 (出典)厚生労働省『専門業務型裁量労働制について』P3 【企画業務型裁量労働制の改正点】 ①労使委員会の決議事項の追加 労使委員会の決議事項に、以下の事項が追加されます。 ・制度の適用に関する同意の撤回の手続 ・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更の内容の 説明を行うこと ・同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を保存すること ②労使委員会の運営規程の記載事項の追加 労使委員会の運営規定に定める事項に、以下の事項が追加されます。 ・対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に 対する説明に関する事項 ・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項 ・開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること ③定期報告の頻度の変更 初回は6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回に変更 ④健康・福祉確保措置の強化 健康・福祉確保措置として以下の表の①~③、⑤の措置が追加されました。 健康・福祉確保措置は、以下のいずれかを選択し、実施することが適切であり、1、2から 1つずつ以上実施することが望ましいとされます。 このうち特に、把握した適用労働者の勤務状況およびその健康状態を踏まえ、③の措置を 実施することが労働者の健康確保をはかる上で望ましいとされます。 (出典)厚生労働省『企画業務型裁量労働制について』P2 厚生年金保険法・健康保険法 2024年10月1日から、パート・アルバイトをはじめとした短時間労働者に対する社会保険の 適用が拡大され、適用対象となる事業所の規模が「被保険者数51人以上」となります。 適用対象となる事業所のことを「特定適用事業所」といい、特定適用事業所に勤務する 従業員のうち、以下の加入要件すべてを満たす短時間労働者も社会保険に加入することに なります。 短時間労働者の中には、配偶者の扶養の範囲内で勤務時間を調整するなど、家庭との バランスを考慮しながら働く従業員もいます。 そのため、2024年10月からの適用拡大により新たに社会保険に加入する可能性のある 従業員には、あらかじめ労働条件や社会保険の加入について十分に説明しておく必要が あります。 障害者雇用促進法 1 短時間労働者である障害者の実雇用率における算定の特例 2024年4月1日から、障害者の法定雇用率の算定の対象となる障害をもつ従業員について、 週の所定労働時間がとくに短い週10時間以上20時間未満の短時間労働者も対象になります。 週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を雇用した 場合は、1人をもって0.5人とカウントします。 2 障害者の法定雇用率の引上げ 2024年4月1日から、民間企業における障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%へ引き上げ られ、40人以上の従業員がいる企業は少なくとも1人の障害者を雇わなければなりません。 さらに2026年7月には法定雇用率が2.7%に上がり、37.5人以上の従業員がいる企業に拡大 される予定です。 ※支店や営業所など事業所が複数あるときでも、企業(事業主)全体を一単位とします。 対象となる企業に該当する場合、障害者の雇用だけでなく、以下の義務も対象になります。 ・障害者雇用状況のハローワークへの報告(毎年6月1日時点) ・障害者雇用推進者の選任(努力義務) おわりに 今回の記事で紹介した以外にも、2024年にはさまざまな改正が行われます。 たとえば障害者差別解消法が改正され、民間企業にも障害者に対して合理的な配慮を提供 することが義務化されました。 改正には事前に準備を行う必要があるものもありますので、あらかじめ対応することをおすすめします。

  • フレックスタイム制の実務対応(運用のポイント)

    今回の記事では、フレックスタイム制の労働時間の考え方、さまざまな場面での対応方法 など、実務対応を中心に解説します。 なお、フレックスタイム制の仕組みや導入方法については、前回の記事をご確認ください。 前回の記事『フレックスタイム制の基礎知識。(仕組みと導入のポイント)』 フレックスタイム制における労働時間 フレックスタイム制が適用されている従業員は、設定された総労働時間分の労働を しなければなりません。 総労働時間とは、清算期間における所定労働時間で、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で 設定します。 フレックスタイム制における時間外労働の考え方 フレックスタイム制において発生する時間外労働には、以下の2種類があります。 1 法定労働時間の総枠を超えた時間外労働 フレックスタイム制では、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が 時間外労働となります。 日々の始業・終業時刻、労働時間は、原則として従業員が自由に決めることができます。(コアタイムなどを除く)そのため、1日の所定労働時間という概念がなく、たとえ1日 8時間を超えてもただちに時間外労働が発生することはありません。 2 清算期間が1か月を超える場合の時間外労働 清算期間は1か月を超えて設定することもできます。繁忙月は労働時間を増やし、そのほか の月は早めに帰宅させるなど、総労働時間の範囲内で労働時間の調整が可能となります。 しかし総労働時間の範囲内であっても、従業員の健康を守るため、極端な長時間労働になる月を設定することはできません。 以下の①②どちらも満たすように労働時間を調整する必要があり、いずれかの時間を超える と時間外労働となります。 (上記1の法定労働時間の総枠を超えた時間も時間外労働となります。) (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P7 フレックスタイム制における休憩、休日、深夜労働 フレックスタイム制が適用されている場合でも、休憩、休日、深夜労働については通常の 勤務と同じく労働基準法の規定が適用されます。 1 休憩 ・労働時間が6時間を超える場合:少なくとも45分 ・労働時間が8時間を超える場合:少なくとも1時間 原則として、休憩は一斉に与えなければならないため、コアタイムの時間帯に休憩を与え ます。(適用対象外の事業を除く) ただし、労使協定の締結により、休憩する時間帯を従業員にゆだねることもできます。 2 休日 法定休日として、少なくとも週に1回または4週を通じ4日以上の休日を与えなければなり ません。 法定休日に労働した時間は、総労働時間や時間外労働とは分けて取扱います。 そして、35%以上の割増率で計算した割増賃金の支払が必要です。 3 深夜労働 22時〜翌日午前5時の深夜時間に労働した場合、25%以上の割増率で計算した割増賃金の 支払が必要です。 従業員の深夜労働ができるだけ発生しないよう、深夜時間を避けたフレキシブルタイムを 設定する企業も見受けられます。(例:7時~22時など) 給与計算の流れ フレックスタイム制における給与計算の流れを解説します。 1 勤怠情報の集計 実労働時間を集計するとともに、時間外労働や休日労働、深夜労働の時間数を確認します。 とくに、清算期間が1か月を超える場合の時間外労働の集計は煩雑です。 上述「フレックスタイム制における時間外労働」や以下の図を参考にしながら正しく 集計してください。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P16 2 実労働時間と総労働時間の過不足による清算 清算期間における「実労働時間」と「総労働時間」をくらべて過不足があった場合、 以下のように対応します。 【実労働時間が総労働時間を超えた場合】 ①「法定労働時間の総枠を超えた時間」は、時間外労働として割増賃金を支払います。 ②「総労働時間を超えているが法定労働時間の総枠は超えていない時間」は、法定内残業 となります。 法定内残業は通常の賃金の支払が必要ですが、割増賃金の支払は不要です。 ただし、就業規則等に法定内残業も割増賃金を支払う定めがある場合は規定に従います。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P13 【実労働時間が総労働時間より少なかった場合】 以下のいずれかの方法により対応します。どちらの方法を採用するかは企業の任意ですが、 その都度対応が変わることのないよう、あらかじめ労使協定や就業規則等に対応方法を 定めておくことをおすすめします。 ①不足した実労働時間分を賃金から控除する ②不足した実労働時間分を翌月に労働させる(翌月の総労働時間に加算)(※) ※ただし「翌月の総労働時間+加算した時間」が法定労働時間の総枠内であること (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P5 3 賃金の計算 基本給や諸手当、および上記1、2で算出した時間外労働や休日労働、深夜労働による 割増賃金などを計算します。 以下は、時間外労働と法定内残業が発生したときの計算例です。 【シーン別】このようなときどう対応するか フレックスタイム制を運用するなかでは、判断に迷う状況が発生することもあるはずです。ここからは、よくある質問のなかからシーン別に対応方法を解説します。 1 遅刻・早退、欠勤したとき ①遅刻・早退 コアタイムを設定していない企業では、遅刻・早退の概念がないため発生しません。 一方、コアタイムが設定されている場合、設定された時間帯のうち労働できなかった 時間は、遅刻や早退扱いとなります。 ただし、フレックスタイム制の場合、遅刻・早退が発生しても、清算期間内の実労働時間が 総労働時間を満たしている場合、賃金控除はできないため注意が必要です。 ②欠勤 欠勤の場合、出勤すべき日に勤務をしなかったときは欠勤扱いになります。 ただし、遅刻・早退と同様、清算期間内の実労働時間が総労働時間を満たしている場合は 賃金控除はできません。 【不足時間の対応】 遅刻・早退、欠勤により実労働時間が総労働時間に満たなかった場合、企業で定めたルール に従って不足時間の対応をします。 詳しくは、上述「給与計算の流れ」の「2 実労働時間と総労働時間の過不足による清算」 を参考にしてください。 【遅刻などを繰り返す従業員への対応】 遅刻・早退や欠勤を繰り返す従業員に対して何らかの措置を取りたい場合、以下のような 対応が考えられます。 2 清算期間の途中に入社・退職があるとき ①清算期間が1か月を超える場合 以下の期間の実労働時間を平均し、週40時間を超えると時間外労働となり、割増賃金を 支払います。 ・途中入社:入社日~清算期間の末日 ・途中退職:清算期間の起算日~退職日 ②清算期間が1か月以内の場合 法令等による明確な定めはありませんが、実務上、以下のいずれかの対応が考えられます。 ・入社日または退職日を含む清算期間中はフレックスタイム制を適用せず、通常の労働 時間制とする ・上記①の「清算期間が1か月を超える場合」の対応を準用し、週の平均労働時間が40時間 を超えた時間に対し割増賃金を支払う なお、①②ともに、清算期間の途中の入社・退職における対応については、労使協定に定 めておくことをおすすめします。 3 清算期間の途中に産前産後休業や育児休業などの開始・終了があるとき 清算期間の途中に、産前産後休業や育児休業、介護休業、休職などの開始日または終了日を 含む場合、上述「2 清算期間の途中に入社・退職があったとき」の対応を準用します。 4 時間管理ができない従業員がいるとき 欠勤や総労働時間の不足を繰り返すなど、怠惰により時間管理ができない従業員にフレックスタイム制を適用し続けることは、企業にとって弊害となることもあります。 労使協定にフレックスタイム制の適用解除を定め、当該従業員を通常の労働時間制にすると いった方法も対策のひとつです。 5 年次有給休暇を取得したとき 年次有給休暇を取得した場合、その日の賃金は、労使協定で定めた「標準となる1日の 労働時間」を働いたものとみなして賃金を計算します。 6 休日労働したとき(法定休日、法定外休日) ①法定休日に労働した場合 法定休日に労働した時間は、総労働時間とは分けて取扱い、35%以上の割増率で計算した 割増賃金の支払が必要です。 ②法定外休日(所定休日)に労働した場合 法定外休日(所定休日)に労働した時間は、総労働時間に含めます。これにより、総労働時間が清算期間における法定労働時間の総枠を超えると時間外労働となり、割増賃金の支払が必要です。 7 会議の出席を命じたいとき コアタイムの時間帯であれば、企業は会議の出席を命じることができます。 一方、コアタイムを設定していない場合や、コアタイムの時間帯以外については、 会議の出席を命じることはできません。従業員に出席を依頼することは可能ですが、強 制することはできないため出席は従業員の任意となります。 8 残業を命じたいとき 始業・終業時刻の決定は従業員にゆだねるため、企業が残業を命じることはできません。 9 パート・アルバイトもフレックスタイム制で働かせたいとき パート・アルバイトでも対象労働者に含めることで、フレックスタイム制を適用させることができます。ただし業務の性質上、パート・アルバイトはシフト制のほうが適していることが多い傾向にあります。業務指示の出しやすさなども考慮しながら適用すべきか判断することをおすすめします。 おわりに フレックスタイム制による柔軟な働き方は、従業員のワークライフバランスを向上させ、 人生をより豊かにすることが期待されます。企業にとっても、優秀な人材確保、生産性の 向上、ひいては企業の発展へと繋がる可能性があります。 フレックスタイム制の効果を最大限に高められるよう、実務担当者は制度を熟知すると ともに、従業員にしっかりと理解を促しながら運用することをおすすめします。

  • フレックスタイム制の基礎知識(仕組みと導入のポイント)

    近年、政府は「働き方改革」を推進し、多様な働き方を選択できる社会の実現を 目指しています。 その一環として、2019年4月にはフレックスタイム制に関する法改正も行われました。 フレックスタイム制は、従業員がプライベートと仕事とのバランスをとりながら働ける 職場環境づくりを実現するために有効な制度です。 今回の記事では、フレックスタイム制の仕組みや導入方法について解説します。 なお、次回の記事は、フレックスタイム制の実務対応や企業が押さえておきたい ポイントを解説します。 フレックスタイム制とは フレックスタイム制は、働く時間を従業員が自由に決められる制度です。 あらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、従業員が自身の都合や業務量などに 合わせながら働くことができます。 そのため、多様な働き方への取り組みとして導入を検討する企業も増えています。 【適している業種・職種】 情報通信業、金融・保険業、学術研究・専門・技術サービス業などで導入が進んでいます。 情報通信業にはエンジニア、プログラマー、WEBデザイナーなど、パソコンがあれば 時間を問わず作業ができる職種が多く、フレックスタイム制の導入率が高くなっています。 また、金融・保険業など女性の比率が比較的高い業種では、仕事と家庭を両立しやすい 環境づくりの一環として導入を進める企業も多くあります。 【休憩、休日、深夜労働について】 フレックスタイム制は、休憩や休日までも従業員が自由に決めることができる制度では ありません。深夜労働も適用されます。 (詳しくは、次回の記事で解説します。) フレックスタイム制の仕組み フレックスタイム制は、従業員に始業・終業時刻の決定をゆだねます。 しかし自由であるがゆえに、企業によっては「ミーティングを設定しづらい」「 夜だけ労働されるとチーム全体の業務に支障をきたす」などの問題が出てきます。 そのため、一定のルールを決めたうえで運用します。 以下は、フレックスタイム制の導入にあたって労使協定で定めるべき項目です。 これらの項目を中心に社内ルールを決定し、企業にとって最適な仕組みを作ることを おすすめします。 1 対象となる従業員の範囲 法令等による対象者の制限はありません。 全従業員を対象としたり、課ごと・職種ごとなど範囲を設定することもできます。 2 清算期間 総労働時間(※)を設定する単位期間を清算期間といいます。 労使協定には起算日と期間の長さを定め、清算期間のサイクルを繰り返して運用します。 なお、清算期間の上限は3か月です。 業務の繁閑などを考慮しながら期間の長さを検討してください。 ※次の「3 総労働時間」を参照 (例) ・月末月初が忙しく、月の半ばは業務量が少ない場合:1か月 ・繁閑のサイクルが四半期ごとの場合:3か月 【清算期間が1か月を超える場合の注意事項】 従業員の健康を守るため、総労働時間(※)の範囲内であっても極端に長時間労働となる 月を設定することはできません。 そのため、以下の①②のどちらも満たすように労働時間を調整する必要があります。 なお、いずれかの時間を超えると時間外労働となります。 ※次の「3 総労働時間」を参照 3 総労働時間 総労働時間とは、清算期間における所定労働時間です。 従業員は設定された総労働時間分の労働をしなければなりません。 総労働時間は、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で設定します。 上記の計算式をもとに算出した、1か月・2か月・3か月単位の清算期間におけるそれぞれの 法定労働時間の総枠は、以下のとおりです。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P10 なお、総労働時間は、清算期間の所定労働日数にあわせて毎月日数が変動する方法のほか、 「1か月160時間」など各清算期間の総労働時間を一律にする方法もあります。 4 標準となる1⽇の労働時間 フレックスタイム制の対象従業員が年次有給休暇を取得した場合、その日の賃金は、 標準となる1日の労働時間を働いたものとみなして計算します。 「総労働時間÷清算期間中の所定労働⽇数」で算出した時間を基準として定めます。 5 コアタイム コアタイムとは、従業員が必ず働かなければならない時間帯です。設定は任意です。 近年、従業員の自由度をより高めるためコアタイムを設けない企業もあり、スーパー フレックスやフルフレックスなどと呼ばれています。 6 フレキシブルタイム フレキシブルタイムとは、従業員が自由に労働時間を決めることができる時間帯です。 コアタイムと同様に設定は任意です。 たとえば、深夜労働をしないように5時〜22時をフレキシブルタイムに設定する企業も あります。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P3 なお、以下のような場合、実態として従業員が自由に始業・終業時刻を決めることが できません。 そのため、フレックスタイム制と認められない可能性が高く注意が必要です。 ・フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い ・コアタイムの時間が1日の労働時間とほぼ同程度である(例:7時間など) フレックスタイム制のメリット・デメリット フレックスタイム制にはメリットとデメリットがあります。 それぞれ理解したうえで導入を検討することをおすすめします。 1 フレックスタイム制のメリット 2 フレックスタイム制のデメリット フレックスタイム制の導入方法 フレックスタイム制を導入するための手順を解説します。 1 就業規則等への規定 フレックスタイム制を導入するためには、就業規則等に始業・終業時刻の決定を従業員に ゆだねる旨を定めなければなりません。 そのほか、上述の「フレックスタイム制の仕組み」で解説した清算期間や総労働時間などの 各項目も定めます。 ただし、労使協定を就業規則の一部とする場合、「それ以外の項目は、労使協定に定める 内容による。」などとすることも可能です。 就業規則に定めた内容は、従業員に周知しなければなりません。 なお、従業員が10人未満の企業は就業規則等の作成義務はありません。 その場合、就業規則に準ずるものに各項目を定めて従業員に周知します。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P4 2 労使協定の締結 就業規則等への定めとともに、労使協定も締結しなければなりません。 【労使協定で定めるべき項目】(※) ①対象となる従業員の範囲 ②清算期間 ③総労働時間 ④標準となる1⽇の労働時間 ⑤コアタイム(任意) ⑥フレキシブルタイム(任意) ※各項目の詳細は、上述の「フレックスタイム制の仕組み」で解説 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P11 3 労働基準監督署への届出 ①就業規則等 従業員が10人以上の企業が就業規則等を変更した場合、管轄の労働基準監督署へ届出 しなければなりません。 ②労使協定届 清算期間が1か月を超える場合、労使協定届に労使協定書の写しを添付し、管轄の 労働基準監督署へ届出しなければなりません。 違反すると、30万円以下の罰⾦が科せられるおそれがあります。 なお、清算期間が1か月以内の場合、労使協定届の届出は不要です。 参考・ダウンロード|東京労働局『清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届 様式第3号の3』 ③36協定 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合、36協定届を管轄の 労働基準監督署へ届出しなければなりません。 フレックスタイム制の場合、日々の労働時間は従業員の判断にゆだねるため、 36協定の「1日」の延長時間の協定は不要です。 「1か月」および「1年」の延長時間を協定してください。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P13 なお、厚生労働省のパンフレットに36協定届の記載例があります。 参考にしてください。 参考|厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P19 おわりに フレックスタイム制の導入時は、仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解した うえで、自社に適したルール設定を行ってください。 また、フレックスタイム制は労働時間の取扱いが特殊であるため、実務担当者は十分に 理解しておく必要があります。 次回の記事では、フレックスタイム制の実務対応として、時間外労働の考え方やさまざまな 場面での対応方法を解説します。

  • 【知っておきたい】治療と仕事の両立支援と環境整備

    高齢化や定年の引き上げなどにより、病気を抱えながら働く人が増えています。 病気を抱える従業員のなかには、働く意思があっても治療のために仕事を辞めてしまう 人もいますが、そのようなことを防ぐため「治療と仕事の両立支援」が求められています。 治療と仕事の両立支援とは、病気を抱えながらも働く意欲・能力のある労働者が、 仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として仕事の 継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら生き生きと働き続けられる社会を 目指す取り組みです。 今回の記事では、従業員が安心して治療と仕事を両立できるようにするための 企業でできる取り組みについて解説します。 治療と仕事の両立支援が求められている背景 治療と仕事の両立は、「働く世代」にとっても無関係ではありません。 「平成31年(令和元年) 全国がん登録 罹患数・率 報告」によると、20〜69歳で がんに罹患した人の割合は全罹患数の約37%を占めています。 診断技術や治療方法の進歩により、かつては不治の病とされていた疾病の生存率が上がり、病気と長く付き合う時代に変化しつつあります。 そのため従業員が病気になったからといって、すぐに離職をしなければならない状況が 必ずしも当てはまらなくなってきました。 がん治療のため、仕事を持ちながら通院している者は約44.8万人いるとされています。 主ながんの平均入院日数は短くなりつつあり、治療の副作用や症状等をコントロール しつつ、通院で治療を受けながら仕事を続けるケースが増えています。 (出典)厚生労働省『事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン』P23 治療と仕事の両立支援とは 企業にできる治療と仕事の両立支援は、支援が必要な従業員が、業務で疾病を悪化させる ことがないよう、治療を受けながらも働き続けることができるようサポートすることです。 また従業員が疾病を理由に安易に退職を決めることのないよう、長期的な治療が必要な疾病 に対する理解と、治療と仕事の両立のための環境整備、そして日頃からの従業員との良好な コミュニケーションが求められています。 支援体制の構築には、従業員自身による取り組みはもちろんのこと、治療の状況に応じた 就業上の措置や配慮をはじめ、産業医との連携や上司・同僚の理解と協力も必要です。 そのため、企業内外の関係者が連携して対応することが重要です。 企業側の両立支援の取り組みによる効果 治療と仕事の両立を図るための企業の取り組みは、支援が必要な従業員だけではなく、 すべての従業員にとって以下のような効果があります。 1 継続的な人材の確保 新しい人材を確保して1から教育をすることは企業にとって大きな負担となります。 そのため自社のノウハウを蓄積している従業員のサポート体制を築き、治療と両立して 働き続けてもらうことは大きなメリットとなります。 2 従業員のモチベーション向上による人材の定着・生産性の向上 両立支援を積極的に行うことは、万が一のサポートが充実している企業だという従業員へのメッセージにもなります。これによって、仕事へのモチベーションの向上、離職率の低下や生産性の向上にもつながります。 3 多様な人材の活用による組織や事業の活性化 高い能力や専門性を持っている人が病気や障害を理由に退職してしまうことは大きな損失 です。 両立支援によりそれぞれが能力を発揮できれば、組織や事業の活性化につながります。 企業の両立支援を円滑に進めるための環境整備とは 治療と仕事の両立支援は、私傷病である疾病によるものであるため、従業員本人から支援を 求める申出がされた場合に支援を始めます。 しかし企業で働く従業員がいつ疾病を抱えることになるか予想ができません。 従業員への両立支援が必要な状態になってから検討を始めても、適切な支援ができない恐れ があります。 そのため、治療と仕事の両立支援を円滑に進めるために、事前に企業内の仕組みづくりや 意識啓発などの環境整備に取り組むことをおすすめします。 1 企業として両立支援に取り組むことの表明・周知 治療と仕事の両立支援に取り組むに当たっての基本方針や具体的な対応方法などのルールを 作成し、すべての従業員に周知します。 企業として治療と仕事の両立支援に取り組むことが明確になり、従業員の理解・協力が 得られやすくなります。 2 研修などによる両立支援に関する意識啓発 治療と仕事の両立支援は、いつ・だれが当事者になるかわかりません。 また、両立支援を行うためには当事者の従業員からの申出が必要です。 相談しやすい環境づくりのためにも、当事者やその同僚となり得るすべての従業員に 治療と仕事の両立に関する研修などを通じた意識啓発を行うことをおすすめします。 3 相談窓口等の明確化 治療と仕事の両立支援は、定期健康診断などにより企業が把握した場合を除いては、 従業員からの支援の申出を原則としています。 そのため、支援を必要とする従業員が安心して相談・申出を行うことができるよう相談窓口 を明確にしておき、利用方法などを日頃から周知しておくことが重要です。 相談窓口は設置するだけではなく、従業員の利用しやすさのための工夫も必要です。 4 両立支援に関する制度・体制等の整備 ①休暇制度、勤務制度の整備 通院治療が定期的に繰り返される場合や、体調面で所定労働時間の勤務が難しい場合、 また満員電車などの通勤による負担軽減のために出勤時間をずらす必要がある場合など、 通常とは異なる働き方が必要になることがあります。 そのときは実情に応じて各種勤務制度の検討と導入を行い、治療のための配慮をすることが 望まれます。 ②従業員から支援を求める申出があった場合の対応手順、関係者の役割の整理 従業員から支援を求める申出があった場合に円滑な対応ができるよう、従業員本人、 人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ等の関係者 の役割と対応手順をあらかじめ整理しておくことが重要です。 ③関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり 治療と仕事の両立のためには、関係者が本人の同意を得た上で支援のために必要な情報を 共有し、連携することが重要です。 特に就業継続の可否、必要な就業上の措置および治療に対する配慮に関しては、治療の状況 や心身の状態、就業の状況等を踏まえて主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見に 基づいて対応を行う必要があります。 あらかじめ、必要な情報が提供できるように企業で様式を定めておくことをおすすめ します。 おわりに 現在の社内を見回したとき、健康な人が多いことはとてもよいことです。 しかし病気はいつ、誰に降りかかってくるか分かりません。 現在治療中の従業員がいなくても、すべての企業に起こり得る問題であることを知り、 早めの制度構築を行いましょう。 従業員が病気により働けなくなることは、従業員本人だけでなく企業にとっても大きな 損失です。 また、治療が必要なのに会社に言い出せなかった、ということが起きればトラブルにも つながってしまいます。 できるところから取り組みを始めてみてください。

  • ドライバーの労働時間等の改善基準が変わります。

    2024年4月1日、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が改正されます。 これは、同じく4月の法改正でトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者 (以下、ドライバー)の時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえての見直しと なります。 ドライバーを雇用する企業は働き方の見直しをはじめ、人手不足などさまざまな問題に 直面しており、対応が急がれています。 なかでも、ドライバーを多く抱える物流・運送業の状況は「2024年問題」とも呼ばれ、 2023年の「新語・流行語大賞」のノミネート語にも選ばれるなど、深刻な問題となって います。 今回の改正はドライバーを雇用する企業以外でも、多くの企業に影響をおよぼす可能性が あるため、すべての企業が自分事として対応に取り組むことが求められます。 今回は、この改善基準告示の改正内容と、物流・運送業をはじめとしたドライバーを 雇用する企業およびそれ以外の企業がそれぞれ取り組むべきことを解説します。 改善基準告示とは 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、改善基準告示)は、 ドライバーの労働条件をより良くするため、拘束時間の上限や休息時間など労働時間等の 基準を定めたものです。 ドライバーの長時間労働を防ぐことは、ドライバー自身の健康確保はもちろんのこと、 交通事故の予防など国民の安全確保の観点からも大切です。 【対象業種】 物流・運送業に限らず、ドライバーを雇用するすべての事業に適用されます。 【対象者】 物や人を運搬するため、自動車を運転する時間が労働時間の半分を超えることが見込まれる 従業員が対象です。 そのため、以下のような従業員も対象となります。 (例) トラック運転者:工場など製造業における配達部門のドライバー バス運転者:旅館の送迎用のバスやスクールバスのドライバー なお、企業の役員や個人事業主(以下、個人事業主等)は改善基準告示の対象では ありません。 しかし、道路運送法などの法令等では、ドライバーの過労死防止等の観点からドライバーの 労働時間等についての規定があり、その基準として改善基準告示が引用されています。 この規定はドライバーが個人事業主等である場合も適用されるため、実質的に改善基準告示 に留意する必要があります。 ここからは、トラック運転者、バス運転者、タクシー・ハイヤー運転者ごとに改正内容を 解説します。 ドライバーの労働時間等の定義 ドライバーは、目的地によっては長時間拘束されたり、荷主等の都合による待機時間 (以下、荷待ち時間)や仮眠時間などがあるなど、一般的な労働時間とは異なる時間も 発生します。 以下は、ドライバーの労働時間等の定義です。 ①拘束時間 始業から終業までの、企業に拘束される時間です。(労働時間+休憩時間) ・労働時間:運転や整備、発送準備などの作業時間(荷待ち時間も含む) ・休憩時間:労働時間の合間でドライバーや運行管理者が自己判断で身体を休める時間 (食事や仮眠時間も含む) (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P3 ②休息時間 業務から解放され、次の業務まで完全に自由に過ごすことができる時間です。 睡眠時間を含む、ドライバーの生活時間にあたります。 ③運転時間 労働時間のうち、ドライバーが運転している時間です。 トラックおよびバスの運転者の1日、1週の運転時間を算定するにあたり、以下のように 考えます。 ・1日:2日を平均した1日あたりの時間 ・1週:2週間(バスは4週間)を平均した1週あたりの時間 ④休日 ドライバーの休日の取扱いは「休息時間+24時間」の連続した時間をいいます。 なお、休日は30時間を下回ることはできません。 【トラック運転者】改正後のポイント 物流・運送業では、トラック運転者の人手不足が深刻化しています。 インターネットの通信販売の利用増加による宅配の取扱い個数の増加や再配達の増加、 当日配達サービスなどサービスの高度化により、配達ドライバーが長時間労働をせざるを 得ない状況も一因です。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間 ・1年:原則3,300時間以内(※1) ・1か月:原則284時間以内(※1) ・1日:原則13時間以内(上限15時間)(※2、※3) ※1:労使協定により、年間3,400時間、1か月310時間まで延長可 (ただし、1年のうち6か月まで。かつ284時間超は連続3か月まで) ※2:14時間を超える回数をできるだけ少なくする。(週2回までが目安) ※3:長距離の貨物運送で宿泊を伴う場合、週2回に限り上限16時間まで延長可能の場合あり なお、1か月の時間外労働および休日労働の合計時間数が、100時間未満となるよう努める 必要があります。 (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P4 ②休息時間 基本的に継続11時間以上与えるよう努め、継続9時間を下回ってはいけません。 ただし、長距離の貨物運送で宿泊を伴う場合、週2回に限り継続8時間以上でも可能な場合が あります。 (継続9時間未満になった後は継続12時間以上の休息期間が必要) (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P7 ③運転時間 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、2週平均で1週あたり44時間以内です。 また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに、1回がおおむね 10分以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。 ④時間外労働および休日労働 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は 2週間に1回までです。 ⑤予期し得ない事態が発生したとき 災害や事故など予測不能な事態により運行が遅延したとき、拘束時間、運転時間から その対応時間を除くことができます。 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『トラック運転者の改善基準告示が改正されます!』 【バス運転者】改正後のポイント バス運転者もトラック運転者同様に不足しています。 このような状況でも路線バスなどが日々のダイヤに合わせた人員配置をするためには、 運転者に長時間労働を強いることとなり、その結果さらに人手不足を招くという悪循環と なっています。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間、休息時間 労務管理などの実態に応じて、拘束時間は「1年・1か月」「52週・4週平均1週(※)」 いずれかの基準を選択します。 ※4週間を平均した1週あたりの時間 (出典)厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 ②運転時間 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、4週平均で1週あたり40時間以内です。 また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに1回がおおむね10分 以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。 ③時間外労働および休日労働 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は 2週間に1回までです。 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』 【タクシー・ハイヤー運転者】改正後のポイント 1 タクシー運転者 タクシー運転者には、以下のような勤務形態があります。 ・日勤勤務:1日の所定労働時間が8時間など一般的な勤務形態です。 昼日勤や夜日勤があります。 ・隔日勤務:2日間を1単位とした勤務形態です。1回の乗務が長時間であるため1日おきに勤務します。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間、休息時間 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 ②車庫待ち等 「車庫待ち等」は、車庫で待機し、顧客からの呼び出しに応じて出庫する営業形態です。 このうち、一定の要件を満たす場合は「車庫待ち等の自動車運転者」として、以下の拘束 時間が適用されます。 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 2 ハイヤー運転者 ハイヤーは完全予約制で運転手付きの貸切乗用車です。要人や役員などの移動手段に 利用されることも多く、上質なサービスが提供されます。 勤務形態がタクシー運転者とは異なるため、タクシー運転手の拘束時間や休息期間などの 基準は適用されず、以下のように定められています。 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』 ドライバーを雇用する企業が対応すべきこと 1 36協定届の様式変更 36協定の対象者にドライバーを含む場合、2024年4月より36協定届の様式が変わります。 ・一般条項のみ:様式第9号の3の4 ・特別条項あり:様式第9号の3の5 (ドライバーの上限は年960時間以内、それ以外の業務は年720時間以内) (出典)静岡労働局『自動車運転者についても、時間外労働の上限規制が適用されます』P1 なお、対象者にドライバーを含まない場合、物流・運送業であっても36協定届は様式 第9号(一般条項のみ)または様式第9号の2(特別条項あり)となります。 様式は以下のサイトからダウンロードできます。 参考・ダウンロード|厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)』 2 業務効率化のためのシステム導入 配車計画システム、ドライバーの勤務形態に対応できる労務管理システムなどの導入に より、時間コストの削減や人的ミスの防止を図ります。 3 配送形態の見直しなど長時間労働対策 1人のドライバーによる長距離運送は、長時間労働の一因につながります。 複数のドライバーがリレー方式で運送するなどの体制の見直しは、従業員の負担軽減に 有効です。 また、健康診断だけでなく、気軽に利用できる相談窓口の設置や日頃の声かけなど、 ドライバーの心身の健康状態の把握に努めることも大切です。 ドライバーが自身の疲労状態を自覚するための「労働者の疲労蓄積度自己診断チェック リスト」などの活用もおすすめします。 参考・ダウンロード|厚生労働省『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)』 4 ドライバーの人材確保 ドライバーは、長時間労働や休日の少なさなどから若年層に敬遠される傾向にあり、 人手不足および高齢化に拍車をかけています。 給与体系の見直しや有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、福利厚生の充実などを行い、 人材確保に努めることが必要です。 また、時短勤務など働き方の多様化を進めることは、女性や副業を希望する方などの新たな 層の採用にもつながる可能性があります。 5 荷主への協力要請 ドライバーの長時間労働の問題は、物流・運送業者である企業の努力だけでは対処しきれないこともあります。 荷主と協力しながら取引環境の改善に向けた取り組みが必要です。 荷主企業への影響、協力できること 「2024年問題」の影響は物流・運送業者だけに限るものではありません。 多くの企業が、荷主として荷物の配送依頼をしたり(発荷主)、荷物を受け取ったり (着荷主)しています。 今後、荷主への影響として「指定した日時に荷物が届かない」「配送を断られる」など、 これまでにない状況が発生する可能性も考えられます。 こうした懸念への対策には荷主の協力が欠かせません。 ドライバーの労働時間の削減や労働環境の改善は、サービス向上にもつながり、荷主にも メリットをもたらします。 物流・運送業者と連携しながら2024年問題に取り組むことが大切です。 なお、長時間の荷待ちがいつまでも改善されない状況が続くなど改善基準告示の違反を 疑われる場合、労働基準監督署から荷主等に対して「要請」が行われる可能性があります。 (出典)厚生労働省『トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!』P4 おわりに 改善基準告示の違反による罰則はないものの、労働基準監督署の指導を受けたり、 状況によっては国土交通省の行政処分を受ける可能性があります。 ドライバーを雇用する企業だけでなく、荷主企業も含めたあらゆる企業が自社ですべき ことを検討し早急に取り組むことが求められています。

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