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【2024年版】台風や豪雨などの自然災害時の企業対応




近年、全国各地で台風や豪雨などの自然災害が増えています。


企業は、従業員が安全かつ健康に働ける職場環境への配慮や対策のための

「安全配慮義務」を負っていますが、これは台風や豪雨などの災害発生時にも

同様に適用されます。


自然災害発生時に、従業員の安全を第一に考え、企業側が休業を指示するケースも

増えてきました。


今回の記事では、自然災害が起きたときの企業対応と、事前の備えについてお伝えします。



自然災害が起きたときの出勤判断と休業手当


自然災害時の出勤では、企業の判断で自宅待機や休業を命じるケースと、

従業員本人の判断で出勤しないケースがあります。


自然災害はいつ発生するか予測できないことも多くあります。

あらかじめ自然災害時の出勤について決めておくことをおすすめします。

なお、状況によっては休業手当の支払が必要になる場合もあります。



1 企業の判断で休業をするとき


自然災害が起き、事業活動が行える状態にもかかわらず会社都合により

休業を命じるときは、それが従業員の安全確保のための措置だとしても

従業員に対して平均賃金の60%以上の休業手当の支払が必要です。


ただし台風や豪雨による事業所の建物倒壊や器物破損など、施設や設備が

直接的な被害を受け出社しても事業活動を行える状態でないときなどは、

天災事変等の不可抗力による休業となり、会社都合の休業とは判断されず

休業手当の支払の必要はありません。



2 本人の判断で出勤しないとき


以下の例のように本人の判断で出勤しないときや、自然災害の影響により

出勤できなかったときは、休業手当の支払の必要はなく欠勤扱いとなります。


(例)

・通信回線の障害などにより、職場と連絡がとれず自主的に自宅にいることにした

・台風や大雨による浸水のため、職場まで行ける状態ではなかった など


このようなときに本人に負担なく休んでもらうためにも、有給休暇の取得を推奨したり

振替休日や災害休暇などの特別休暇を就業規則に設けている企業もあります。



給与の非常時払いとは


従業員本人や従業員の家族が被災し、住居の変更を余儀なくされる場合など

災害による急な出費が必要になることがあります。


給与は毎月一回以上、一定の期日を定めて支払をします。


しかし例外として、従業員が非常時の出費を必要とするときは、給与の支払日前であっても

すでに労働した分の給与を支払うように法令等で定められています。


非常時のケースには、出産、疾病、結婚、長期帰郷、そして「災害をうけたとき」があり、

災害には、大雨や台風による自然災害も含まれます。


この給与の非常時払いは、すでに行った労働に対しての給与の支払であって

これから行う予定の労働分に対しての給与(前借り)に応じることを求めるものでは

ありません。  



企業における事前の災害対策


自然災害が発生したとき、企業は従業員・物・資金・情報・時間・知的財産といった

経営資源を守り、事業を継続あるいは復旧させなければなりません。

そのため、事前に災害対策を講じることが重要です。


事前の災害対策には、「防災対策」と「事業継続」の大きく分けて二つの取り組みが

あります。




1 防災対策


企業内の防災対策は、従業員の安全確保や物的被害の軽減を目的とします。


【従業員の安全確保のための対策 例】


・事業所内の避難経路の確保

・事業所周辺のハザードマップや防災マップにて被害リスクや避難場所の確認

・災害時における指揮命令などの体制整備

・緊急連絡網の作成と更新

・安否確認のルール作成

・救急セットの準備

・非常用品の備蓄(飲料・食料、毛布などの衣料、懐中電灯・電池・トイレットペーパーなどの生活用品、ラジオ など)

・従業員への安全教育、防災訓練等の実施 など


【物的被害の軽減のための対策 例】


・事業所の耐震化

・事業所内の機械設備・家具などの転倒防止対策

・火気使用・危険物などの安全対策

・電気、ガス、水道、通信など障害発生時の緊急対応(二次災害防止) など



2 事業継続


自然災害が、必ずしも事業が行えないほどの影響を引き起こすとは限りません。

自然災害が起きても少ない人数で事業を継続できるよう、以下のような対策の検討を

おすすめします。


【事業継続のための検討 例】


・災害時の緊急性の高い業務の整理

・出勤しなくても業務ができる体制づくり(テレワーク、振替休日 など)

・出勤者の災害リスク回避(宿泊場所の確保 など)

・出勤できない可能性のある従業員の業務引継ぎ方法

・仕入先を複数確保

・工場など代替生産できる拠点の確保 など



テレワーク活用企業の自然災害時の備え


新型コロナ対策で導入が進んだテレワークは、自然災害時の事業継続にも有効な

手段となっています。


しかし、テレワークであっても最悪の事態は起こります。

たとえば台風や大雨、落雷などによる停電、過電流、インターネット接続不良などです。


具体的なケースとして、給与計算業務は停電やインターネット接続不良が起きると

業務がストップしてしまい、振込期日に間に合わない事態が想定されます。


そのため、非常時にもパソコンが稼働できるようにモバイルバッテリーを貸出したり、

インターネットの接続が途切れた場合のために自宅の主回線以外にも別のモバイル回線

(ポケットWi-Fiや会社スマートフォンでのテザリングなど)を用意しておくなど、

テレワーク環境でも業務をスムーズに続けるための備えが必要です。


【テレワーク活用企業の備え 例】


・非常時のパソコンバッテリーの確保

・インターネットのバックアップ回線の確保

・通信状況の急変に対する優先業務の整理

・データのクラウドバックアップ

・コミュニケーション手段の多様化(チャットツールの導入など)

・会議などの調整 など



自然災害後の業務量増加のときの時間外・休日労働


法令で定められている労働時間の限度時間は、原則1日8時間、週40時間です。

この時間を超える労働を命じる場合は、事前に届け出ている36協定で定めた

時間外・休日労働の範囲内である必要があります。


自然災害直後も、過重労働による健康障害を防止するため、36協定で定めた

時間外・休日労働を遵守します。


しかし例外として、企業や被災地域の早期復旧や、施設・設備故障の修理、

システム障害復旧など緊急かつ臨時の必要がある場合は、労働基準監督署の許可を得て

時間外・休日労働の上限規制を超えて働くことが認められるケースがあります。

緊急事態のときは、事後届出も可能です。  


例外の認定は、個別かつ具体的に判断され、単なる業務の繁忙などは認められません。

以下のリーフレットを参考のうえ、管轄の労働基準監督署へ相談してください。




自然災害による労災保険(業務災害・通勤災害)


自然災害の発生により、従業員が業務中や通勤途中に被災する可能性もあります。

自然災害発生時のケガなどが、業務災害や通勤災害として認められるのかについては

以下を参考にしてください。


①業務災害


自然災害により被災した場合、原則として業務災害とは認められません。

ただし、作業場所の立地条件や作業条件、作業環境、事業所施設の状況などにより

自然災害を被りやすい事情があると認められたときは、業務災害として認定される

ケースもあります。




②通勤災害


通勤途中に自然災害により被災した場合、原則として通勤災害が認められます。

ただし、企業が休業を命じたにもかかわらず、従業員の独断で出勤しようとしていた

ときに被災した場合などは私的行為とみなされる可能性があり、通勤災害に認定されない

ケースもあります。



相当な損失を受けたときの労働保険料・社会保険料の納付猶予


自然災害により、財産に相当な損失を受けた企業は、申請することにより

労働保険料や社会保険料の納付が猶予される場合があります。


「相当な損失」とは災害による被害額が全財産額のおおむね20%以上といわれています。

要件や申請方法など、詳しくは各行政機関のサイトを確認してください。


【社会保険料】


【労働保険料】



おわりに


例年、台風は7月から10月にかけて最も多くなります。

また、地震は全国各地で頻繁に発生しています。

自然災害は、全国各地、いつ、どこで発生するか分かりません。


自然災害時は誰しもが心理的な不安や焦りを感じますが、企業の落ち着いた対応があれば

従業員も安心できるはずです。


今回の記事を参考に、自然災害時の企業対応について検討されることをおすすめします。

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