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外国人雇用時に知っておきたい在留資格の基礎知識と創設される育成就労制度



厚生労働省の外国人雇用状況(2023年10月時点)によると、外国人労働者は約204万人と

初めて200万人を超え、過去最高となっています。国内では依然として深刻な人手不足が

続いており、今後も外国人労働者の受け入れは増加が予測されます。


今回の記事では、外国人が働くことができる在留資格や、企業が外国人を雇用するときの

基本対応、法改正により新たに創設される「育成就労制度」について解説します。



外国人が働ける在留資格



1 在留資格とは

在留資格とは、外国人が日本に滞在するための資格です。

一定の活動を行えること、あるいは、一定の身分や地位があることを示します。

在留資格は29種類あり(2024年10月1日時点)、資格ごとに活動内容が決まっています。 「一定の範囲で就労が認められている在留資格」「就労が認められない在留資格」

「就労に制限のない在留資格」に大きく分けられます。


 


2 外国人留学生の「資格外活動許可」と労働時間管理


外国人留学生の在留資格である「留学」は、原則就労ができません。

しかし本来の目的である学業を妨げないことを前提として資格外活動許可を取得すると、

週28時間以内(※)で就労ができます(風営法の規制対象は除く)。

※学校が定める長期休暇中に限り、週28時間を超えての労働(1日8時間、週40時間まで)も可能


外国人留学生を雇用するときは、資格外活動にかかわる誓約書を提出してもらうことも

ひとつの方法です。以下を参考にしてください。



3 「技能実習制度」と「特定技能制度」の違い


在留資格の中でも「技能実習」と「特定技能」は名称が似ているため混同されがちですが、

制度の目的は大きく異なります。




目的が異なれば当然ながら制度内容も異なります。

たとえば、「技能実習制度」では、技能水準や日本語能力が求められないのに対し

(介護職種のみ日本語能力が必要)、「特定技能制度」では、相当程度の知識や経験、日本語能力が必要です。


以下の図は、技能実習(団体監理型)と特定技能(1号)の比較表です。


 


なお、法令等の改正により、2027年頃を目途に「技能実習制度」は廃止され、新たな

在留資格として「育成就労制度」が創設される予定です。



「育成就労制度」の創設  



1 育成就労制度の導入背景


「技能実習」の目的は、人材育成を通じた技能(技術や知識など)の移転による

国際貢献です。


しかし、実態は企業に労働力として利用されている状況も多いとされています。

このほか、技能実習制度では、以下のような問題点が挙げられています。


 


国内の生産年齢人口(生産活動を中心となって支える15〜64歳の人口)の減少は、一層

加速すると予想されています。


さらに、総人口の減少や高齢化にはますます拍車がかかり、国内の人手不足もより一層深刻になるとみられています。

そのとき外国人労働者は貴重な労働力となるものの、近隣諸国との人材獲得競争も激化

しており、今後は外国人労働者の確保がより難しくなるとも予想されています。


こうした問題を解消するため、「技能実習制度」を廃止し「育成就労制度」が創設される

こととなりました。



2 育成就労制度とは


育成就労制度とは、対象となる分野において外国人労働者を原則3年間就労させながら

「特定技能1号」レベルに達するよう育成し、その分野で長期的に活躍してもらえる人材の

育成および確保を目的とする制度です。


対象となる分野は特定技能の受け入れ対象分野(以下、特定産業分野)と合わせる予定で

あるため、育成就労の後、特定技能へ移行がスムーズになります。

(育成就労の受け入れ対象分野の設定については「3 技能実習生の受け入れ企業が知って

おくべきこと」も参考にしてください。)


また、激化する近隣諸国との人材獲得競争において、外国人労働者に日本を選んでもらえる

魅力ある制度への見直しも行われます。




なお、育成就労制度の創設に伴い「技能実習制度」は廃止されます。

在留資格も新たに「育成就労」が加わり、「技能実習」は廃止されます。


【施行時期】

施行日は未定ですが、改正法の公布日(2024年6月21日)から起算して3年以内の施行が

決まりました。

そのため、2027年頃に開始される見通しです。


【在留期間】

育成就労による在留期間は原則として3年です。

その後、一定の技能や日本語能力にかかる試験に合格して「特定技能1号」に移行すると

プラス最長5年、さらに「特定技能2号」に移行すると在留期間の通算の上限がなくなり

ます。

外国人労働者のキャリア形成を支援することにより、日本での長期的な就労が期待され

ます。



【育成就労から特定技能1号、2号への移行イメージ】



特定技能制度では、外国人労働者には一定の専門性や技能を有していることと、即戦力と

なることが求められます。

一方、育成就労制度では、技能に関する要件はありません。

ただし、就労開始までに一定の日本語能力を身に付けておくことが求められます。



3 技能実習生の受け入れ企業が知っておくべきこと


①いつまで技能実習生の受け入れが可能か

改正法の施行日時点で受け入れている技能実習生については、認定を受けた計画

(以下、技能実習計画)に基づき、引き続き技能実習を続けることが可能です。


「技能実習1号」から「技能実習2号」への移行も可能とされていますが、「技能実習3号」

への移行については今後省令で示される予定です。


なお、施行日までに技能実習計画の認定申請を行っている場合、施行日から起算して

3か月以内に技能実習を開始するときは、技能実習生として受け入れできる可能性もあります。


②受け入れ対象分野の設定

育成就労制度により外国人を受け入れる場合は、あらためて受け入れ対象分野

(以下、育成就労産業分野)を設定します。


育成就労産業分野は、原則として特定産業分野と同じ分野になる予定です。

(ただし、国内での育成になじまない分野は対象外となる見込み)詳細は施行日までに決定されます。


③手続などの詳細

育成就労制度の手続のほか、制度の詳細については現在検討が進められています。

決まり次第公表される予定です。



外国人を雇用するときの基本対応



1 在留カードで在留資格と在留期間を確認する

在留カードを所持していない外国人は原則就労ができません(一部例外あり)。

外国人を雇用するときは、在留カードを確認してください。


外国人留学生を新規採用するときは、「留学」から卒業後の在留資格へ変更手続が必要です。

在留資格の変更が許可されるまでは2か月程度かかり、手続も煩雑です。

変更手続後、入社日までに新しい在留資格の許可が間に合わないときは働かせることが

できないため、内定から入社までのあいだに変更ができているか確認してください。





2 労働条件や社会保険・労働保険制度などを説明する

労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍にかかわらず適用されます。

しかし、日本では当然とされているルールが外国人労働者にとっては馴染みがなく十分に

理解できていないことも想定されます。

やさしい日本語を使うなどの工夫をしながら、分かりやすく説明することが大切です。



外国人労働者への説明等の支援ツールが、厚生労働省サイトで紹介されています。

参考にしてください。



3 ハローワークに雇用状況を届け出る

外国人(外交、公用、特別永住者を除く)の雇入れと退職があったときは、すべての企業に

対し、外国人雇用状況の届出が法令等で義務付けられています。


正社員だけではなく、パート・アルバイト、契約社員など名称にかかわらず、また雇用保険

加入の有無にもかかわらず、すべての外国人労働者が対象となります。


届出方法は、外国人労働者が雇用保険の被保険者となるか否かで異なります。



詳しくは、以下のパンフレットを参考にしてください。


なお、これらの手続は電子申請で届出を行うこともできます。

・雇用保険被保険者資格取得届:「e-Gov」から申請可能

・雇用保険被保険者資格喪失届(および離職証明書):「e-Gov」から申請可能

・外国人雇用状況届出書   :「外国人雇用状況届出システム」から申請可能



4 外国人労働者を常時10人以上雇用するときは「外国人労働者雇用労務責任者」を選任

外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者が適切な労働条件や安全衛生の

もと能力を発揮して働けるよう、雇用管理の改善等に関する責任者を選任する必要があり

ます。

ハローワークなどへの届出の必要はありません。



不法就労者を雇用したときの罰則



「在留資格の有効期限切れ」「就労できない在留資格」「認められた職種以外」などの

就労は不法就労となり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの両方を

課すと定められています。


罰則は、不法就労をした本人だけでなく、不法就労となる外国人を雇用した企業にも

適用されるおそれがあります。


就労できるかどうかの確認を怠った結果、不法就労があったとされるときは責任を問われる

ため注意が必要です。



おわりに


外国人労働者は、人手不足の日本にとって貴重な労働力です。


しかし就労できる職種や働ける時間が異なるなど、在留資格制度は複雑で分かりにくく、

制度を理解せずに雇用を進めた結果、トラブルや早期離職につながるケースも見受けられます。


今回の記事を参考に、法令等違反にならないよう正しく法令等を理解し、外国人労働者の

労務管理にご活用ください。

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