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【2024年度】地域別最低賃金 全国加重平均額が1,055円に




2024年度の最低賃金が改定されます。

すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされ、全国加重平均額は1,055円と

なりました。

47都道府県で50円〜84円の引上げとなり、全国加重平均額の引上げ額51円は

目安制度が始まった1978年度以降の過去最高額です。


最低賃金には、都道府県ごとの労働者の生計費や賃金、通常の事業の賃金支払能力を

考慮して定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業で定められる「特定最低賃金」の

2種類があります。


今回の記事は、毎年10月ごろに改定が行われる地域別最低賃金(以下、最低賃金)について

解説します。


47都道府県の最低賃金額と改定(発効)年月日は以下を確認してください。


なお全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数×地域別最低賃金で計算した

全国の合計を、総労働者数で割った額です。



最低賃金とは



最低賃金とは、法令等で定められている、労働に対して支払わなければならない

1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。


企業は、正社員、パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に

最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。


雇用契約書が最低賃金を下回っていたとしてもその部分は無効となり、法令等で定めている

最低賃金が適用されます。

最低賃金を下回る賃金を支払った場合は、50万円以下の罰金が課せられることもあり

ます。 



最低賃金に含まれる賃金とは



最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や各種手当

です。

ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。


【最低賃金から除外される賃金】

①慶弔手当など臨時的に支払われるもの

②賞与など1か月を超える期間ごとに支払われるもの

③所定労働時間を超える時間の労働に対する賃金(残業手当、固定残業代など)

④所定労働日以外の労働に対する賃金(休日手当など)

⑤午後10時から午前5時までのあいだの労働に対する割増賃金(深夜手当など)

⑥精皆勤手当

⑦通勤手当

⑧家族手当


1時間あたりの賃金計算は割増賃金の計算にも使用しますが、最低賃金と割増賃金の

基礎となる賃金とでは「含まれる賃金」「除外される賃金」が異なるため注意して

ください。


たとえば、割増賃金の計算では、⑥の「精皆勤手当」を含めますが、最低賃金の計算では

除外されます。


一方、割増賃金の計算では除外される「住宅手当」は、最低賃金がその地域における

従業員の生活の安定確保も目的のひとつとなっているため、最低賃金の計算には含まれ

ます。


なお、⑥〜⑧については手当の名称にかかわらず実質によって取り扱います。

以下の例のように、従業員への一律支給などその手当の本来の趣旨から外れた運用を

している場合は、最低賃金の計算に含めます。


【例】

・遅刻、早退、欠勤などがあっても一律で精皆勤手当を支給している

・通勤距離や通勤に要した費用にかかわらず一律の金額で通勤手当を支給している

・扶養家族の有無にかかわらず家族手当を支給している など



1時間あたりの賃金の計算方法



支払われる賃金が最低賃金額以上であるかの確認は、1時間あたりの賃金を計算し、

最低賃金額と比較します。

1時間あたりの賃金の計算方法は給与形態によって異なります。


【1時間あたりの賃金の計算方法】

時給制のとき:時給額

日給制のとき:日給額 ÷ 1日の所定労働時間

月給制のとき:月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間

歩合給のとき:歩合給 ÷ 1か月の総労働時間


以下のサイトで具体的な計算事例が紹介されています。


複数の給与形態によって賃金が支払われる場合、それぞれの給与形態ごとに1時間あたりの

賃金を算出し、合算額が最低賃金を下回っていないか確認します。


【例】

基本給が日給制(1日8,000円/日)、資格手当が月給制(20,000円/月)の場合

(年間所定労働日数:240日、1日の所定労働時間:8時間とする)

 ・1か月平均所定労働時間:240日✕8時間÷12か月=160時間

 ・基本給の時間換算額  :8,000円÷8時間=1,000円

 ・資格手当の時間換算額 :20,000÷160時間=125円

 ・合計の時間換算額   :1,000円+125円=1,125円

よって、1時間あたりの賃金は1,125円となります。



最低賃金の減額の特例許可制度とは



最低賃金には、特定の従業員について最低賃金を下回る賃金を支払うことができる

減額の特例許可制度が定められています。


申請先は、管轄の労働基準監督署です。減額できる対象者は以下になります。


・精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者

・試用期間中の者

・基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者

・軽易な業務に従事する者

・断続的労働に従事する者


いずれも一定の条件を満たす必要があります。

また、許可は対象となる従業員の労働条件を特定してから行いますが、最低賃金を

どこまで減額ができるかはそれぞれ異なります。

以下のサイトに対象ごとのリーフレットがあるため、参考にしてください。



減額を検討するときは、管轄の労働基準監督署へ相談してください。



企業が対応すべきこと



最低賃金の引上げにより、企業は必要に応じて以下のような対応を行います。


①最低賃金を下回る従業員の確認および賃金の見直し

最低賃金を下回る従業員がいないか確認します。

下回る従業員は最低賃金以上になるよう賃金の見直しが必要です。


②人件費の増加額の試算

賃金が上がると、労働保険料(労災保険、雇用保険)、社会保険料(健康保険、厚生年金

保険)の負担も増えます。

最低賃金の引上げにより、人件費がどの程度増加するか試算しておくことをおすすめ

します。


③賃金引上げに対する取り組みなどの検討

厚生労働省では、賃金引上げに向けた取り組み事例や地域・業種・職種ごとの平均的な

賃金を検索できるツールを盛り込んだ特設サイトを公開しています。


中小企業向けの業務改善助成金や補助金、税制などの情報や、最低賃金・賃金引上げ

支援のマニュアルも公開しています。





よくある質問



1 最低賃金の改定(発効)年月日をまたぐ勤務の最低賃金はどうなるか

3交代勤務制などでは、夜勤シフトの従業員が最低賃金の改定(発効)年月日をまたいで

勤務することがあります。


最低賃金は、都道府県ごとの改定(発効)年月日以降に勤務する賃金から適用します。

そのため、最低賃金の改定(発効)年月日をまたいで勤務をしたときは、0時より新しい

最低賃金の適用となるように賃金を計算してください。


【例】

勤務日    :9月30日

勤務時間   :21:00~翌朝5:00

最低賃金改定日:10月1日

改定前の最低賃金を適用する時間:21:00~0:00

改定後の最低賃金を適用する時間:0:00~5:00


2 複数の都道府県に事業所を持つ企業の最低賃金はどうなるか

複数の都道府県に事業所を持つ企業の場合、それぞれの事業所の所在地の最低賃金が

適用されます。

転勤などにより最低賃金が下回ることのないよう注意が必要です。


例外として、規模が小さく事務機能がないなどひとつの事業所としての独立性がない

事業所については、直近上位の事業所(※)と同一のものとみなされ、直近上位の

事業所の最低賃金が適用されます。


※直近上位の事業所:組織上、ひとつ上に位置する事業所


【例】

本社Aが大阪府、出張所Bが兵庫県で出張所Bは営業部員が2名のみの場合

→出張所Bは独立性がないとして、本社Aの所在地である大阪府の最低賃金が適用される


3 学生アルバイトも最低賃金が適用されるか

最低賃金は年齢やパート・アルバイトなどの雇用形態によって変わるものではありません。学生アルバイトであっても最低賃金は適用されます。(特例許可制度の対象者を除く)


4 インターンシップも最低賃金が適用されるか

インターンシップにおける実習が、見学や体験的なものであり、企業から業務に関する

指揮命令を受けていないなど使用従属関係が認められない場合は、法令等上の「労働者」に

該当しないため最低賃金は適用外となります。


5 派遣労働者は派遣元企業、派遣先企業のどちらの最低賃金が適用されるか

派遣労働者については、派遣元企業の所在地にかかわらず、派遣先企業の所在地の

最低賃金が適用されます。



おわりに



毎年、労働基準関係法令違反での送検や、企業名の公表が行われています。

公表されている中には「賃金が最低賃金以上の金額で支払われておらず、行政指導に

応じない」などの事案もあります。

今回の記事を参考に、最低賃金が適正に支払われるように対応してください。

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