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【2024年改正】育児・介護休業法ポイント

更新日:8月24日




2024年5月31日、改正育児・介護休業法等が公布されました。


この改正では、育児・介護と仕事の両立を目的に、特に多様化する育児期の

働き方のニーズや介護の両立支援制度の認知度向上に対応するための制度が

拡充されました。


それに伴い、就業規則や労使協定の見直しが必要な場合もあるため注意が必要です。

今回の記事では、2024年の改正法の内容と、企業が注意すべきポイントを解説します。



育児と仕事の両立支援



今回の改正では、主に3歳以降の子をもつ従業員を対象とした制度の新設・変更が

行われています。


背景としては、既存の制度が3歳までを対象としているものが多いことや、子の成長に

合わせてフルタイムで働きながら両立を行いたいというニーズが増えることなどが

挙げられ、これらに対応するための改正となっています。


改正に合わせて、就業規則や育児・介護休業規程などの見直しも必要となりますので、

注意してください。


 



【育児①】子の看護休暇の見直し(2025年4月施行)



病気やケガ、予防接種など、子の世話を行う従業員に与えられる「子の看護休暇」の要件が

2025年4月1日から拡大されます。


新型コロナウイルスの流行による学校等の休校や学級閉鎖に伴い、仕事を休まざるを

得なかった従業員も多くいたことから、取得事由に感染症による学級閉鎖入園式・

卒園式・入学式の参加が追加されます(詳細は今後の省令で公表されます)。


これに伴い、名称が「子の看護等休暇」に変更されます。

また、休暇を取得できる子の年齢も小学校3年生の修了までに延長されます。


 


なお、現在の制度では労使協定の締結により、子の看護休暇の取得が適用除外と

されている範囲は以下のとおりです。


・継続して雇用された期間が6か月に満たない従業員

・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員


しかし、2025年4月1日以降は、労使協定の適用除外の範囲のうち「継続して雇用された

期間が6か月に満たない従業員」は撤廃されます。


施行日以前に当該労使協定を結んでいる企業は、見直しが必要となりますので注意して

ください。



【育児②】残業免除(所定外労働の制限)の延長(2025年4月施行)



子を養育する従業員が残業の免除(所定外労働の制限)を受けることができる制度の

対象が2025年4月1日から拡大されます。


3歳未満の子をもつ従業員から、小学校入学前の子をもつ従業員へと拡大され、

さらに柔軟な働き方に対応できるようになります。



【育児③】柔軟な働き方のための措置の義務化(施行日未定)



子の年齢に応じて、育児と仕事を両立しながらフルタイムで働くニーズが増えていく

ことを踏まえ、既存の制度では対応できていない3歳から小学校入学前の子をもつ

従業員に対し、柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されます。


企業は、以下の制度から2つ以上を選択して措置を講じる必要があります。

なお、詳細は今後省令で公表されます。


 



2022年の調査では、育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度を導入している

企業の71.6%が短時間勤務制度を実施しています。


今回の改正では、フルタイムの労働と育児の両立が大きな目的とされていますので、

短時間勤務制度に加えて他の措置の導入も積極的に検討されることをおすすめします。


【注意点】

企業が措置を選択するときには、従業員の過半数労働組合または過半数代表者に

意見を聴く必要があります。


また、3歳になるまでの適切な時期に、企業は従業員への制度の周知と利用の意向を

確認するための面談などの措置を講じる必要があります。


加えて、制度の利用中にも従業員のニーズを把握するため、継続的に面談などを行う

ことをおすすめします。



【育児④】個別の意向聴取・配慮の義務化(施行日未定)



従業員の仕事と育児の両立支援の多様なニーズに対応するため、個別の意向確認と配慮

企業に義務付けられます。


意向確認を行う時期は、従業員から妊娠・出産の申出があったときに行う

「育児休業などの取得確認のための面談等(2022年4月施行)」のときと、

3歳になるまでのあいだに行う「柔軟な働き方のための措置」の周知や意向確認の

ための面談等のときです。


企業は、育児と仕事の両立困難による従業員の離職を防ぐため、勤務地などの

別の意向を確認し、自社の状況に応じて配慮を行う必要があります。


 


法定の時期以外にも、育児休業からの復帰時や従業員から申出があったときには

その都度意向を確認することが大切です。


さらに障害をもつ子を養育する場合やひとり親の場合には、従業員の希望に応じ、

より柔軟な制度運用が望まれます。



【育児⑤】テレワークの努力義務化(2025年4月施行)



2025年4月1日から、育児を行う従業員がテレワークを選択できるように取り組むことが

企業の努力義務となります。

対象となる従業員は、3歳未満の子を養育する従業員です。



【育児⑥】育児休業の取得状況の公表義務の拡大(2025年4月施行)



男性の育児休業の取得を促進するため、2023年4月から従業員数が1,000人を超える

企業には男性従業員の育児休業の取得状況の公表が義務付けられています。


今回の改正により、2025年4月1日から従業員数が300人を超える企業へと

対象が拡大されます。



【育児⑦】育児休業などの状況把握・数値目標設定の義務化(2025年4月施行)



仕事と育児の両立支援に関する企業の取り組みを促進する目的で、2025年4月1日から

従業員数が100人を超える企業には一般事業主行動計画の策定時に以下のことが

義務付けられます。




義務化の対象となる行動計画は、施行日以降に開始されるものとなります。



介護と仕事の両立支援



介護休業や介護休暇など、介護と仕事の両立支援制度は法律で定められています。

しかし、介護を理由に離職した人の中には、仕事を続けたかったにもかかわらず

両立支援制度を利用できずに離職した人が一定数います。


このような状況を防ぐために、今回の改正では、企業が両立支援制度の周知や

雇用環境の整備を行うことが盛り込まれています。



【介護①】個別の周知・意向確認の義務化(2025年4月施行)



育児休業制度の個別周知・意向確認の仕組み(2022年4月施行)のように、

介護に関する両立支援制度についても、家族の介護に直面した従業員の申出があった場合、

制度の個別周知と意向確認が2025年4月1日から企業に義務付けられます。


面談や書面の交付などが予定されていますが、詳細は省令で公表されます。

なお、個別周知と意向確認は、従業員に利用を控えさせるような形で行わないように

注意してください。



【介護②】制度に関する早期の情報提供の義務化(2025年4月施行)



従業員が介護に直面する前に両立支援制度について知り、内容を理解するため、

40歳等の早い段階で情報提供を行うこと2025年4月1日から企業に義務付けられます。



【介護③】雇用環境の整備の義務化(2025年4月施行)



両立支援制度の利用の円滑化のため、2025年4月1日から企業は両立支援制度に関して、

研修や相談窓口設置など一定の措置の中からいずれかを講じる必要があります。

(詳細は省令で公表されます。)



【介護④】介護休暇の労使協定に関する変更(2025年4月施行)



要介護状態の家族を介護するための介護休暇は、労使協定を締結することで

雇用期間が6か月未満の従業員を対象から除外できますが、日常的な介護のニーズは

雇用期間にかかわらず存在するため、2025年4月1日からこの仕組みは廃止されます。



【介護⑤】テレワークの努力義務化(2025年4月施行)



育児と仕事の両立支援制度と同様に、2025年4月1日から、介護を行う従業員が

テレワークを選択できるように取り組むことも企業の努力義務となります。


対象となる従業員は、要介護状態の家族を介護する従業員です。



おわりに



今回の改正では多くの制度が新設・変更されていますので、既存の社内制度を

今一度確認し、必要があれば就業規則などの変更の準備を行ってください。


現時点で、企業が独自に法を上回る内容を定めている場合でも、改正により、

その内容レベルまで義務の基準が引き上げられることも考えられます。


これを機に社内制度の見直しを図ることは、さらなる職場環境の充実に効果的といえます。

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