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【2024年改正】雇用保険法 企業と従業員に与える影響とは?

  • jinzai10
  • 2024年7月19日
  • 読了時間: 6分



2024年5月10日、改正雇用保険法が成立しました。

この改正では、多様な働き方の広がりを支える雇用のセーフティーネットとしての役割を

果たし、政府が掲げる「人への投資」の強化を目的に、対象となる被保険者の拡大や

給付制限の見直しなどが行われます。


雇用保険法には、今回の改正以外にも施行が予定されているものもあります。


今回の記事では、2024年5月の改正法や直近に施行予定のものの中から、企業や従業員への

影響が特に大きい改正内容について解説します。



適用要件の拡大(2028年10月施行)



2024年10月から社会保険の適用拡大が行われますが、今回の改正で雇用保険についても

適用要件が拡大することとなりました。


女性や高齢者などの労働参加による人材の多様化や、働くことに対する価値観やライフ

スタイルの多様化が進む中で、働き方や生計維持のあり方に対応し、雇用のセーフティー

ネットを拡大することが目的です。


これまでは週所定労働時間が「20時間以上」の労働者が雇用保険の対象でしたが、

2028年10月1日からは「10時間以上」の労働者へと対象が広がります。

これにより、約500万人の労働者が新たに雇用保険の対象となります。


また、適用要件の拡大に伴い、20時間を基準として設定されていた他の基準も合わせて

変更されます。

 


改正から施行までの準備期間が長く設定されていることや、新たな対象者数からも分かる

通り、企業や労働者の双方にとって大きな影響のある変更となります。


対象となる可能性のあるパート・アルバイトを雇用している企業は、スムーズに対応できる

よう前々から準備をしておくことが大切です。



自己都合離職者の給付制限緩和(2025年4月施行)



雇用保険の基本手当には、正当な理由がなく自己の都合で離職した者に対して、原則2か月

間の給付制限があります。


これは、自ら失業状態を選ぶのは労働の意思がないからであり、そのような者に基本手当を

支給することは就業の促進を目的とする雇用保険の理念に反するからです。


しかし、近年では転職のために離職する労働者も増加しており、労働の意思を持つ自己都合離職者が増えています。


そこで、転職を目指す労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、2025年4月

1日から給付制限期間が1か月へ短縮されます。

ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合の給付制限期間は3か月となります。


さらに、離職期間中や離職日前1年以内に教育訓練給付制度を利用し教育訓練を行った場合は、給付制限が解除されます。




育児休業給付の延長申請における審査の厳格化(2025年4月施行)



育児休業給付金は、労働者の育児休業の取得を促進するために、休業期間中に賃金の一定額が支払われる制度です。


原則として、子が1歳に達する日までの休業期間に対して支給されます。

しかし、子が1歳に達した日の後の期間であっても、就労を継続するために育児休業が特に

必要と認められる場合には、1歳6か月または2歳に達する日までの延長が例外的に認められています。


この「育児休業が特に必要と認められる場合」として、「保育所などの入所を希望し申込みを行ったが、当面入所できない場合」が規定されており、確認書類として自治体の発行する入所保留通知書が用いられています。


しかし、保育所を利用するつもりがないにもかかわらず、育児休業給付の延長を目的に

申込みを行う者が一定数いるため、入所保留通知書を発行する自治体の手間となっていました。


そこで、以下のように制度が改正されます。

 


改正後に追加される要件によって、育児休業給付の延長だけを目的とした入所意思がない者

に対しては支給されなくなります。


また入所意思の確認のために、申し込んだ保育所までの通所時間や入所内定を辞退した理由

などの申告も必要となり、審査が厳格化されます。


この改正は、2025年4月1日から施行されます。

ただし施行日前に、子が1歳、または1歳6か月にすでに達している場合には、この規定は

適用されないため注意が必要です。

(「パパママ育休プラス」の場合は、施行日前に育児休業の終了予定日に達していると適用されません。)



高年齢雇用継続給付の支給率の縮小(2025年4月施行)



高年齢者雇用継続給付とは、被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者で、

賃金が60歳時点の賃金額の75%未満となった者に対して、賃金の15%を支給する制度です。


2025年4月1日からは、この給付額が60歳以後の各月の賃金の15%から10%へ縮小されます。

なお、賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は、給付額が

10%から逓減されます。

 


高年齢者雇用継続給付金は、これまでも給付率が縮小されてきました。

そして、近年では雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が目指されていることから、

今後段階的に廃止される予定です。


企業としては、公正な待遇の確保のために、賃金制度や処遇の見直しを検討することが

大切です。



出生後休業支援給付・育児時短就業給付の創設(2025年4月)



2025年4月1日から、「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が新たに創設されます。


1 出生後休業支援給付


出生後休業支援給付とは、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、

両親とも14日以上の育児休業を取得すると休業期間の28日間を上限に休業開始前賃金の

13%の額が支給される制度です。


この制度は、収入の低下を懸念する男性に所得を促し、取得率を上げることが目的です。

既存の育児休業給付に出生後休業支援給付が上乗せされることで、休業開始前賃金の80%の

額が支給されることになり、社会保険料の免除を合わせると手取り収入が休業前と変わらなくなります。



2 育児時短就業給付


育児休業だけでなく、育児とキャリア形成の両立を支える制度として短時間勤務制度が

ありますが、利用率は伸び悩んでいます。


そこで、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を支給する「育児時短就業給付」が創設されます。


労働時間の減少に伴う賃金低下を補い、時短勤務の利用を促進することが目的です。

なお、給付金は賃金額と給付額の合計額が時短勤務前の賃金を超えることがないように支給されます。




おわりに



今回の記事以外にも、雇用保険法にはさまざまな改正が予定されています。

内容によっては企業や従業員に大きな影響があるものもありますので、事前に把握することをおすすめします。

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