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労災申請のために企業が準備しておくこと



労災保険とは、労働者が業務中や通勤途中の災害によりケガや病気にかかったときに、治療費や休業中の生活補償、障害が残ったときの年金などを受けることができる制度をいいます。

今回の記事では、労災申請のために準備しておく企業対応と業務中の労災発生から給付までの流れをお伝えします。


スムーズな労災認定のために企業が準備しておくこと


1 労災が起こった現場等の詳細な記録

各種労災保険の申請書類には、ケガなどが起きたときの災害の原因および発生状況を記入する箇所があります。申請書類に不明な点があれば、労働基準監督署から本人や勤務先、医療機関に対し、文書照会や電話による問合せが行われます。必要に応じて、実地調査が行われることもあります。

そのため発生直後に現場写真の撮影や労災情報などを速やかにまとめ、情報の整理をしておくことをおすすめします。


2 災害発生時の関係者のヒアリング

急な労災事故では、ケガをした従業員は記憶が曖昧になる可能性が出てきます。情報不足の場合は、上司、同僚等からの聴取を行うこともあります。

より詳細な状況把握と原因分析のためにも、本人以外に災害発生状況を目撃した上司や同僚がいるときは、災害発生時の関係者ヒアリングを行い書面にまとめておくことをおすすめします。


3 同じ労働災害が起きないように再発防止の対策を検討する

労働災害が発生したときは、本人や関係者のヒアリングをもとに災害の原因を分析します。今後、同じ労働災害が起きないよう対策を実施するためにも、労働災害の発生事実と今後の防止対策について書面にまとめ、すべての従業員へ周知することをおすすめします。


4 労働時間の的確な把握

過労死等事案などの労災認定のときには、労働時間の的確な把握がもとめられます。タイムカードだけでなく、勤務場所の入退場記録、パソコンの使用時間の記録など、客観的な資料を可能な限り収集し、上司・同僚など関係者からの聴取により始業・終業時刻および休憩時間を詳細に特定することがあります。

労務担当者は、実態とタイムカードにズレが生じないよう、正しい打刻がされるように日頃から指導されることをおすすめします。


5 手当や割増賃金など就業規則にそった給与計算

休業補償の1日あたりの日額を正しく計算するため、労働基準監督署では割増賃金に含めるべき手当が含まれているかどうかや各種手当について、就業規則などで確認することがあります。

就業規則に沿った給与計算は、スムーズな労災認定にとって重要です。提出資料に算定内訳や企業の給与計算方法についてあらかじめ追記しておけば、不要な問合せは減少します。


業務中の労災発生から給付までの流れ


業務中の労災発生から申請、認定までの流れは以下のとおりです。今回は、第三者の行為などによって生じる災害以外の一般的なケースを例にお伝えします。


1 業務中に労災が発生したことの連絡を受ける

業務中に労災が発生したときは、ケガや病気をした本人もしくは現場にいた従業員から以下の状況を確認します。


①疾病状況の確認

②病院への搬送の必要性

③従業員への家族へ連絡の必要性

④事故が起きた状況

⑤警察や消防署への連絡の必要性


また、死亡や重大な事故が発生したときは、管轄の労働基準監督署へ電話速報します。


2 治療費に関する労災保険の書類を作成し病院に提出する

業務中のケガなどで治療が必要なときは、労災保険により治療費が支払われます。そのため、ケガや病気をした本人もしくは付き添っている従業員(または家族)に、医療機関にたいし業務中のケガや病気であることを伝えてもらう必要があります。

すべての医療機関が労災保険に対応しているわけではありません。労災保険に対応している医療機関なのかを確認し、治療費に関する労災保険の書類を作成します。労災保険に対応している医療機関かどうかで、書類の様式が異なります。


【労災指定病院で治療を受けたとき】

療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第5号)


【労災指定病院以外で治療を受けたとき】

療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第7号)


治療費に関する労災保険の書類ができたら、治療を受けた医療機関へ提出をしてください。治療費については、労災指定病院以外のときは一旦全額負担(10割)します。


3 休業中の補償に関する労災保険の書類を作成し、労働基準監督署へ提出する

業務中のケガなどで休業が必要なときは、休業4日目から休業補償が支給されます。休業中の補償に関する労災保険の書類を作成します。直近3か月の賃金台帳やタイムカード等の添付が必要です。


【業務中のケガなどで休業が必要なとき】

休業補償給付支給請求書 複数事業労働者休業給付支給請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第8号)


様式は以下よりダウンロードください。


また、休業3日目までは、企業が平均賃金の60%以上の休業補償を支払わなければなりません。


4 業務中に労災が発生したことを労働基準監督署へ報告する。

業務中に労災が発生したら、労働基準監督署へ報告をする必要があります。労災による休業が4日以上と4日未満のときで報告書の様式と報告するタイミングが異なります。


【休業が4日以上のとき】

労災が発生してからできる限り早いタイミングで、「労働者死傷病報告(様式第23号)」を労働基準監督署長に報告することが義務付けられています。


【休業が1日から3日のとき】

1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月までの期間の労災発生状況について、「労働者死傷病報告(様式第24号)」をそれぞれの期間の最終月の翌月末日までに労働基準監督署長へ報告することが義務付けられています。


様式は以下よりダウンロードください。


5 提出した労災申請の労働基準監督署の審査結果を待つ

労働基準監督署は、保険給付の決定のため申請書類の審査を行います。審査期間は申請内容によって異なりますが、2か月から6か月程度です。精神心疾患など審査に時間がかかるものもあります。

請求後、審査が3か月を経過するような場合は、労働基準監督署の担当者から労働者に対して電話にて処理状況などの連絡をすることになっています。


6 労災保険の支給・不支給の決定が行われ、給付が行われる。

労災保険の認定・不認定の決定が行われたあと、労働者本人に対し、支給(不支給)決定通知が送付されます。認定されると給付が行われます。また、脳・心臓疾患や精神障害等による給付申請や長期未決事案が不支給となったときは、請求を行った労働者の納得性を高めるため、労働基準監督署が支給要件の概要や不支給決定理由のポイントなどを分かりやすく説明をすることになっています。

その他のケガや病気の不支給のときは、不支給決定通知書が送付されますが、不支給理由が知りたい場合は、管轄の労働基準監督署へお問合せください。


まとめ


いつ労災が起きるかはわかりません。雇入れ時や作業内容変更のときの安全教育などで安全ルールが決まっていても、日々の体調管理が災害に繋がることもあります。

労災発生からの給付の流れを理解し、労災発生時に慌てず申請ができるよう、社内で労災対応フローを見直すことをおすすめします。


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