厚生労働省の外国人雇用状況によると、外国人労働者は約173万人(2021年10月時点)と
なり、過去最高となっています。
労働人口の減少による人手不足は深刻化しているため、今後も外国人労働者の受け入れは
増加が予測されます。
今回の記事では、外国人が働ける在留資格や不法就労リスクなど、外国人を雇用するときの注意点についてお伝えします。
外国人が働ける在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に滞在するための資格です。
ビザとは外国から日本へ入国するための許可を指します。
就労をするためには就労ができる在留資格が必要で、「就労ビザ」と呼ばれることもあります。
在留資格は29種類あり、在留資格ごとに活動内容が決まっています。
大きくは、「就労が認められている在留資格」と「就労が認められない在留資格」に
分けられます。
就労が認められない在留資格であっても、出入国在留管理庁から資格外活動許可を
受けたときは、認可の内容に沿った就労時間や就労場所の範囲内で働くことができます。
不法就労者を雇用したときの罰則
不法就労とは、日本で就労が認められていない外国人が日本で働いている状態です。
【不法就労となる例】
・在留資格の有効期限が切れている
・退去強制を命じられている
・就労できる在留資格がない
・在留資格で認められた職種以外で働いている
・資格外活動許可の範囲を超えている など
不法就労をしたときは、在留資格の取り消しの他、出国命令や退去強制となったり一定期間日本への入国ができなくなります。
罰則は、不法就労をした本人だけでなく、不法就労となる外国人の雇用を勧めた人や企業の関係者、そして不法就労となる外国人を雇用した企業も対象となります。
企業は「就労できないと認識していなかった」などを理由に罰則を逃れられません。就労ができるかどうかの確認を怠った結果、不法就労があったとされるときは責任を問われます。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
懲役「または」罰金となっていますが、両方科せられることもあります(企業に罰則の適用がある場合は罰金刑のみ)。
外国人を雇用するときの基本対応
1 在留カードで在留資格と在留期間を確認する
特別永住者を除き、原則在留カードを所持していない方は就労ができません。
外国人を雇用するときは、在留カードを確認してください。
外国人留学生を新規採用するときは、「留学」から卒業後の在留資格へ変更の手続きが必要です。
在留資格の変更が許可されるまでは2か月程度かかり、手続きも煩雑です。
変更手続き後、入社日までに新しい在留資格の許可が間に合わないときは働かせることができませんので、内定から入社までの間に変更ができているか確認をしてください。
【在留カードの確認ポイント】
(表面)
・「在留資格」就労が認められている在留資格であるか
・「就労制限の有無」が以下いずれかであるか
①在留資格に基づく就労活動のみ可
②指定書に指定された就労活動のみ可(指定書の確認が必要)
➂就労制限なし
・「在留カード番号」が失効していないか
・「在留期間」が切れていないか
(裏面)
表面で「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」となっている場合
「資格外活動許可欄」で以下いずれかの記載があるときは就労ができます。
①許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)
②許可(教育、技術・人文知識・国際業務、技能に該当する活動・週28時間以内)」
➂許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
2 ハローワークに雇用状況を届け出る
外国人(外交、公用、特別永住者を除く)の雇入れと退職があったときは、すべての企業で、ハローワークへの雇用状況の届出が法令等で義務付けられています。
正社員だけではなく、パート・アルバイト、契約社員など名称にかかわらず、すべての外国人労働者が対象となります。届出を怠ると、指導、勧告の対象となるほか、30万円以下の罰金の対象になります。
届出方法は、対象となる外国人労働者が雇用保険の加入要件を満たす働き方をするか否かで異なります。
雇用保険の加入要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合です。
【雇用保険に加入のとき】
届出様式:雇用保険被保険者資格取得届
届出期限:雇入れた日の属する月の翌月10日まで
退職のときは、雇用保険被保険者喪失届で届出します。
【雇用保険に未加入のとき】
届出様式:外国人雇用状況届出書
届出期限:雇入れ、退職ともに翌月末日まで
アルバイト期間が短期のときなどは雇入れと退職をまとめて届出できます。
届出の記載方法は以下のパンフレットを参考にしてください。
3 労働関係法令は国籍を問わず外国人にも適用
労働基準法や社会保険、雇用保険の適用などの労働関係法令は、国籍にかかわらず適用されます。
外国人労働者と労働契約を締結するときは、労働条件を書面で交付します。
日本の労働慣習に慣れていない外国人労働者にとって、労働時間や給与、残業などの理解不足はトラブルに繋がりやすいため、平易な日本語や母国語を使うなどして、外国人労働者が労働条件を理解できるように努めなければなりません。
また、外国人労働者が使用する機械などは取扱方法が確実に理解できるように、安全衛生教育を実施ください。
その他、労働災害防止のために必要な日本語教育の実施や、労災防止の標識や掲示物に図解を用いるなど、外国人労働者の内容理解のための工夫も必要です。
4 外国人労働者を常時10人以上雇用するときは雇用労務責任者の選任
外国人を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者が適切な労働条件や安全衛生のもと能力を発揮して働けるよう、雇用管理の改善に関する責任者を選任する必要があります。
ハローワークなどへの届出の必要はありません。
外国人留学生の「資格外活動許可」と労働時間管理
外国人留学生は、原則就労ができません。
しかし本来の在留資格で許可された留学での学業を妨げないことを前提として
「資格外活動許可」を取得すると、1週間28時間以内で就労ができます(風営法の規制対象は除く)。
1週間28時間とは残業時間も含めた実際に働いた時間を指します。
1週間はどの曜日から区切っても28時間以下とならなければなりません。
繁忙期や急な人手不足であっても1週間28時間を超えて働くと不法就労になりますので、正しい労働時間管理が必要です。
また、外国人留学生が複数の企業で働く場合は、合計時間が28時間以下にならなければいけません。自社以外の企業で働くときは、事前に相談してもらうようにお伝えください。
【1週間28時間の範囲で就労するための企業対策】
・28時間より短い時間で勤務の予定を組む
・曜日と労働時間を決めてシフトを組む
・自社以外で働くときは事前に相談してもらう など
学校が決めている長期休暇中に限り、28時間を超えて(1日8時間、週40時間まで)労働ができます。休学や中退となったときは「留学」の在留資格で日本に滞在ができないため、資格外活動の許可が無効になります。
このように、外国人留学生を雇用するときは労働時間の上限や在留資格の変更にも注意が必要です。そのため外国人留学生に、法令等で定められた労働時間の上限や、在留資格・資格外許可変更時の報告について理解を求め、日本で働く上で守るべきルールについて説明し、書面(資格外活動に関わる誓約書」など)にしておくことをおすすめします。
まとめ
外国人労働者は、人手不足の日本にとって貴重な労働力です。
しかし、在留資格によって就労できる職種や働ける時間が異なるなど、在留資格制度は複雑でわかりにくく、制度を理解せずに雇用を進めた結果、トラブルや早期離職に繋がるケースも見受けられます。
今回の記事を参考に、法令等違反にならないように企業が正しく法令等を理解し、外国人労働者の労務管理にご活用ください。
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