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雇用保険料率の引上げ案を含む法律案が国会に提出されました。


2022年3月、会期中の国会に提出されている『雇用保険法等の一部を改正する法律案』は、企業として押さえておきたい改正法案のひとつです。


【改正の概要】

1 失業等給付に係る暫定措置の継続等

2 求人メディア等のマッチング機能の質の向上

3 地域のニーズに対応した職業訓練の推進等

4 雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等

(引用)厚生労働省『雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要(2月1日国会提出)』


法案は現在、衆議院で審議中です(3月16日時点)。今回は、「4 雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等」の雇用保険料率の変更について、変更内容や背景を解説していきます。

雇用保険料率は、2022年4月、2022年10月の2段階で引き上げが予定されています。国会で成立されると、以下サイトにて正式な雇用保険料率の変更リーフレットが公開されますので、確定情報に注目してください。

参考|厚生労働省『雇用保険料率について』


この記事は、事前の情報収集と、料率が正式公開された後のスムーズな対応のためにお役立てください。



雇用保険料率はどのように変更される予定なのか



雇用保険料率は、法令等で定められています。現在の雇用保険料率は、2017年〜2021年度まで法令等で定められた率よりも暫定的に引き下げる措置が講じられ、以下の雇用保険料率が適用されています。

2022年4月以降、労使の負担感を考慮し、現在の雇用保険料率より2段階での引き上げが予定されています。


【現在の雇用保険料率】




【2022年4月1日~2022年9月30日までの雇用保険料率】

雇用保険二事業の保険料率(企業負担のみ)が0.5/1000引き上げられます。従業員の雇用保険料率に変更はありません




【2022年10月1日~2023年3月31日までの雇用保険料率(予定)】

失業等給付・育児休業給付の保険料率が労働者・事業主負担ともに2/1000引き上げられます。従業員の雇用保険料率も変更になるため、2022年10月分の給与から雇用保険料率を変更する必要があります。




ここでは、法律案の内容通りに国会で成立した場合の雇用保険料率をお伝えしています。正式な雇用保険料率については、厚生労働省の発表をお待ちください。



雇用保険の費用負担の内訳



事業主および被保険者が費用負担している雇用保険料国庫負担金によって、雇用保険事業は賄われています。雇用保険事業は大きく3つで構成されています。


1 失業等給付(保険料:労使折半)

労働者が失業したときや労働者の雇用継続が困難となる事由が生じたとき、労働者が自ら教育訓練を受けたときに、生活および雇用の安定と就職の促進のための給付を行っています。


2 育児休業給付(保険料:労使折半)

労働者が子どもを養育するために休業をしたときに、生活および雇用の安定と就職の促進のための給付を行っています。


3 雇用保険二事業(保険料:企業負担のみ)

雇用調整助成金などの失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発などを図るため雇用安定事業や能力開発事業を行っています。


これらの事業の収支状況や雇用情勢等に応じて、雇用保険料率や国庫負担率などが、引き上げ・引下げ・変更なしと見直しされ財政運営がなされているのです。



なぜ雇用保険料率が引き上げられるのか



雇用保険事業では、雇用・失業情勢が悪化したときにも安定的な失業等給付を行うために、好況期には必要な積み立てを行い、不況期にはこれを財源として使用するための積立金と、雇用安定事業を目的とした不況期に機動的・集中的に支出するために平常時に積み立てる雇用安定資金という仕組みがとられています。

2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、雇用・失業情勢が悪化しました。日本では、雇用維持策や新型コロナウイルス感染症の影響により離職した方への基本手当の給付日数の延長に関する特例措置や、雇用調整助成金の拡充などが速やかに行われ、結果、諸外国に比べ、日本の失業率の上昇を一定程度緩やかなものに止めるなど大きな効果を発揮しました。

その結果、雇用保険財政では、雇用安定資金残高および積立金が枯渇するという極めて厳しい収支状況となりました。

新型コロナウイルス感染症等の影響による労使の負担感も考慮しつつ、今後の安定的な財政運営の確保のため、現在暫定措置とされている失業等給付の雇用保険料率や国庫負担割合の見直しが行われることになりました。

参考|職業安定分科会雇用保険部会『参考資料(財政運営関係)』



企業が注意すべきこと


2022年4月、2022年10月の2段階の雇用保険料引き上げにより、企業が注意することは以下のとおりです。


1 従業員負担分の雇用保険料率変更の漏れ防止

雇用保険料は、例年4月分の保険料率から変更になっています。しかし、今回は2段階で料率変更が行われ、従業員給与の雇用保険料率の変更は10月分からになる予定です。給与計算担当者は、正式に雇用保険料率の変更発表後は、変更時期と変更率をあらかじめスケジュールにメモしておくなど、対応漏れのないようご注意ください。


2 2022年度の年度更新対応

2022年度の年度更新は、2021年度確定保険料と2022年度概算保険料を申告・納付します。現時点で、2022年度概算保険料の申告については、2022年度を前期(2022年4月1日~同年9月30日まで)と後期(2022年10月1日~2023年3月31日まで)にわけて、賃金集計した賃金総額の1/2に相当する額と該当期間の料率で計算した額を2022年概算保険料として申告・納付することが予定されています。正式な具体的な計算方法や様式については、厚生労働省の発表をお待ちください。



まとめ


今回は、雇用保険料率の変更についてお伝えさせていただきました。

現在、法律案は審議中です。雇用保険事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とともに雇用保険事業の役割は大きく、日本の失業率の上昇を一定程度緩やかなものに止めるなどの効果をもたらしました。ただ、その代償は大きく、雇用保険財政は厳しい状況です。

まだ、新型コロナウイルス感染症の影響はしばらく続くことが予測され、保険料率引き上げなどの負担に不満を持たれる方も一定数考えられますが、雇用保険事業は、働く人すべてに必要不可欠なセーフティーネットとして機能するものです。

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