毎年、季節性インフルエンザが流行しています。
一般的な風邪と違い、インフルエンザウイルスの感染でかかる病気です。
高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が突然現れます。
季節性インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると短期間で職場内感染が広がるケースも見受けられます。
今回の記事では、季節性インフルエンザ(以下、インフルエンザ)の流行前に企業がおさえておくべきポイントについてお伝えします。
流行前に企業が決めておくこと
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出する時期といわれています。
この時期は人に感染させるリスクが高まりますが、インフルエンザには出勤停止期間を定める法律がないため、企業のルールを就業規則に定めておく必要があります。
インフルエンザの欠勤連絡を受ける度に異なる対応になったり、対応の遅れで業務への支障が出ないよう事前の対策をおすすめします。
【流行前に決めておきたい項目】
・出勤停止期間
・従業員やその家族がインフルエンザに感染したときの企業への申告方法
・有給休暇の当日・事後取得の可否
・発熱した従業員へのインフルエンザ検査の命令基準
・受診命令した時の賃金支払いや受診料の負担
・休業時の連絡方法
・業務の引継ぎ方法 など
インフルエンザに感染した従業員が、出勤停止期間の早い段階で熱が下がり、症状が快復することもあります。
働ける健康状態であっても、感染防止のため出社を控えてもらうときは休業手当の支払が必要になります。
出勤停止期間を検討するうえで、学校保健安全法の出席停止期間も参考になります。
厚生労働省のインフルエンザQ&A(Q17)をご覧ください。
休んだときに利用できる傷病手当金
インフルエンザに感染して仕事ができないとき、社会保険の被保険者は傷病手当金の支給対象になります。
ここでは、協会けんぽの傷病手当金について記載しています。
傷病手当金とは、業務外の理由による病気やケガで仕事ができず、企業から給与の支払いがないときに、健康保険から生活保障として支給される手当です。
支給を受けられるのは、休業している期間が4日以上あるときです
欠勤した日から最初の3日間(待期期間)は支給されず、4日目から支給されます。
支給額は以下の計算式で算出した額になります。
【傷病手当金の支給額の計算】
傷病手当金は同一の疾病に対して通算1年6か月支給されます。
しかし、インフルエンザは原因となるウィルスが複数あるため、感染するたびに「別の疾病」の扱いになり、感染の都度、傷病手当金を受けられます。
有給休暇と傷病手当金のどちらを取得するのか
同じ日に有給休暇と傷病手当金の両方を選択することはできません。
どちらを取得するかは企業が一方的には決められず、企業のルールを踏まえ、最終的には本人の判断に委ねられます。
判断のポイントは以下の通りです。支給額や支給される日が異なります。
【有給休暇】
取得日ごとに1日分の賃金が企業から支給されます。
企業の公休日は有給休暇を取得できないため、賃金の支給はありません。
【傷病手当金】
1日分の賃金より低い額になります(上記【傷病手当金の支給額の計算】を参照)。
企業の公休日も支給されます。
有給休暇を事前申請としている企業では、当日申請や事後申請を受け付けていないケースもありますので、有給休暇のルールは就業規則を確認してください。
有給休暇がない従業員は、傷病手当金の申請を進めることになります。
待期期間の3日間を有給休暇、4日目から傷病手当金など組み合わせることもできます。
家族がインフルエンザにかかったとき
本人ではなく同居している家族がインフルエンザに感染するケースがあります。
対応例については以下の通りです。
【対応例】
・一定期間、休業をさせる(業務命令の休業になるため休業手当の支払が必要)
・テレワークが対応可能か検討する
・特別休暇を取得させる
・本人の希望があれば有給休暇を取得させる
・小学校就学前の子どもが感染したときは「子の看護休暇」の利用を推奨する など
感染予防のための企業内周知
何より、インフルエンザに感染しないことが大切です。
1人1人が「感染しない」「感染させない」意識を持ち、咳エチケットや手洗いなどを徹底しましょう。
疲労が溜まっていたり、睡眠不足のときは免疫力が低下します。
普段から十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけることで免疫力も高まり、感染予防に繋がります。
厚生労働省の「今冬のインフルエンザ総合対策」のサイトでは、感染防止やワクチンなどの情報がまとめて掲載されており、予防啓発のためのポスターも用意されています。
まとめ
インフルエンザは感染力も強く、毎年約10人に1人が感染しています。
インフルエンザで急に欠勤する従業員が出たときのため、業務の引継ぎや連絡方法などをあらかじめ決めておくと、従業員の不安も軽減されます。労務担当者として、事前に対応策を準備しておくことをおすすめします。
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