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賞与計算方法の基本。


初めて賞与を支給するときに知っておきたい、計算方法の基本を解説します。


賞与とは、毎月定期的に支給される給与とは別に、年1~2回、臨時で支給される賃金です。一般に「ボーナス」と呼ばれることも多いです。

賞与は通常の給与とは計算方法が異なるため、違いを理解することが必要です。



給与と賞与の違い



毎月の給与と賞与は、どちらも「賃金」になります。

給与と賞与の大きな違いは、「企業が支払義務を負うか否か」という点になります。


給与は、法令等で「毎月1回以上」「一定期日に」「全額を」「通貨で」「従業員に直接」支払わなければならないとされています。

月に一度支払日を定めて、その日に給与を支払うことは企業の義務です。


対して賞与には法的な支払義務はありません

賞与を設けていない、賞与を支給しないとしても、法令違反とはなりません。


ただし、就業規則の給与規程や雇用契約書に「毎年6月末日と12月末日に、賞与を全従業員に支払う」など明確な規定がある場合は、企業は従業員に対する賞与の支払義務を負います。


これまで賞与を支給していた企業が、業績悪化によって賞与の支給時期を延期したり、不支給としても問題はありません。

その際は、あらかじめ「会社の業務状況などにより支給時期の延期、または支給しないことがある」などの規定が必要です。



賞与計算の基本



賞与計算の基本的な流れです。


1 賞与の支給額を決定する

企業において賞与で支給できる資金(賞与の原資額)を決定します。

次に賃金規程等に基づき、基本給や査定期間中の企業・個人の業績などに応じた査定を行います。

すべての従業員が納得できる評価制度を整備し、公正に実行することが重要です。


2 社会保険料を計算する

賞与支給時に控除する社会保険料は、給与計算時と一部異なります。


社会保険料を計算する際には、「標準賞与額」を使用します。


標準賞与額とは、総支給額(社会保険・税金などを控除する前)から1,000円未満の端数を切り捨てた額です。


(例)賞与総支給額:525,500円

   標準賞与額 :525,000円


健康保険料(介護保険料)と厚生年金保険料は、従業員と企業が半額ずつ保険料を負担します。

ここからは、従業員負担分についての計算方法を説明します。


【健康保険料(介護保険料含む)】 


標準賞与額に健康保険料率を掛けて計算します。

賞与支払月に40歳以上の従業員に対しては、賞与からも介護保険料を徴収する必要があります。


健康保険料率(介護保険料率含む)は、加入している健康保険の種類や都道府県などによって異なります。


都道府県ごとの保険料率、介護保険料率は、以下サイトの保険料額表よりご確認ください。


参考・ダウンロード|協会けんぽ『都道府県ごとの保険料額表』(令和4年3月分から)


(大阪府の場合)


【厚生年金保険料】



標準賞与額に厚生年金保険料率(現在は18.3%)を掛けて計算します。


端数処理は、健康保険料(介護保険料)と厚生年金保険料ともに、原則50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げです。

ただし、労使間でこれまで慣習的な取り扱いなど特約がある場合は、すべて切り捨てしても差し支えありません。


【雇用保険料】

雇用保険料については、賞与支給額に雇用保険料率を掛けて求めます。

雇用保険料率は、通常の給与支給時と同じものになります。


3 所得税の計算をする

源泉徴収税率は、「前月の給与の総支給額から社会保険料を差し引いた金額」と「扶養人数」によって決まるため、人によって異なります。


源泉徴収税率は、国税庁のホームページに掲載されています。

参考|国税庁『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表』


(例)

所得税を計算する人の情報

① 前月の給与の総支給額-社会保険料を差し引いた金額を求める

300,000円-44,280円=255,720円


② 255,720円と扶養人数2人の条件を満たす場合の源泉徴収税率を、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で確認をする


③(525,500円-26,827円-48,037円-2,627円)×2.042%=9,148円←所得税


算出した所得税に小数点以下の端数が出た場合、1円未満の端数は切り捨てます。



賞与計算時の注意点



賞与計算時の注意点と対応についてご紹介します。


1 退職予定者・退職者がいる場合の社会保険料の取扱い

退職を予定している従業員や、すでに退職している従業員に賞与を支払う場合には、退職日や支給日によっては健康保険料と厚生年金保険料を徴収しないことがあります。


企業が賞与から健康保険料と厚生年金保険料を徴収しなければならないのは、従業員の資格喪失日が属する月の前月までとなっています。


資格喪失日とは、退職日の翌日です。

退職が月末の場合、資格喪失日は翌月1日となり、それ以前に支給される賞与からは健康保険料と厚生年金保険料を徴収します。

退職が月末以外の場合には、退職月に支給される賞与からの保険料徴収は不要です。


(例1)賞与支給日:8月5日 退職日:8月20日

資格喪失日が8月21日になるため、8月5日に支払われる賞与から社会保険料を徴収しない


(例2)賞与支給日:8月5日 退職日:8月31日

資格喪失日が9月1日になるため、8月5日に支払われる賞与から社会保険料を徴収する


賞与支払届については、資格喪失日までに支払われた賞与については届出をしてください。


雇用保険料については、退職のタイミングにかかわらず、退職予定者や賞与支払時点で退職している従業員からも徴収をします。


2 産前産後休業・育児休業中の従業員に賞与を支払う場合

2022年9月30日以前に開始した産前産後休業・育児休業の場合、休業期間に末日が含まれる月に支給された賞与については、社会保険料は企業・従業員ともに徴収されませんでした。


2022年10月1日以降に開始した育児休業等については、賞与の支払った月の末日を含んだ連続した1か月を超える育児休業を取得したとき、賞与の社会保険料が免除になります。

1か月を超えるかは暦日で判断し、土日等の休日も期間に含みます。


(出典)日本年金機構『育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。』


3 賞与を年4回以上支給する場合

年4回以上賞与を支給する場合は、標準報酬月額の対象になります。

通常の賃金と合わせて社会保険料の計算を行う必要があるため、「被保険者報酬月額算定基礎届」を作成する際は注意する必要があります。


詳細は、以下をご覧ください。

参考|日本年金機構『算定基礎届の記入・提出ガイドブック ケース⑥賞与などが年4回以上支給されたとき』P11


4 社会保険料計算時の賞与額の上限の確認

社会保険料がかかる賞与の上限額が法令等で定められています。


【健康保険料(介護保険料):4月1日~翌年3月31日までの賞与の累計額573万まで】


(例) 8月200万円、12月300万円、3月100万円の賞与を支給する場合

    8月200万円+12月300万円+3月100万円=600万円

   →600万円ー573万円(上限額)=23万円


 累計573万円を超えているため3月支給分のうち23万円には、健康保険料(介護保険料)はかかりません。


【厚生年金保険料:1か月の賞与額150万円まで】


(例) 8月200万円、12月300万円、3月100万円の賞与を支給する場合

 ①8月200万円-上限額150万円=50万円

 ②12月300万円ー上限額150万円=150万円


8月、12月は上限額150万円を超えているため、①50万円分、②150万円分には厚生年金保険料がかかりません。  


賞与支払届については、社会保険料計算時の賞与額の上限を超えていても、支払った金額で届出をしてください。



まとめ



賞与は毎月の給与と違い支給回数が少ないため、計算時に基本の流れと注意点を確認しながら進められれば、難しいものではありません。

現在では給与計算ソフト等で処理を進めることもできますが、従業員から質問が来た際にスムーズに回答ができるよう、基本の流れについて改めて確認されることをおすすめします。



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