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2023年度、地域別最低賃金の全国加重平均が1,004円に



先日、2023年度の最低賃金額と改定(発行)年月日が正式発表されました。

全国加重平均額が1,004円となり、はじめて1,000円を超えました。

全国加重平均額の引上げ額は43円で、前年を上回る過去最高の引上げ額です。


最低賃金には、都道府県ごとの物価などに合わせて定められる「地域別最低賃金」と、

特定の産業で定められる「特定最低賃金」の2種類があります。

今回の記事は、毎年10月ごろに改定が行われている地域別最低賃金

(以下、最低賃金)についてです。


47都道府県の最低賃金額と改定(発行)年月日は以下をご確認ください。


なお、全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数×地域別最低賃金で計算した

全国の合計を、総労働者数で割った額です。



最低賃金の引上げはなぜ必要



最低賃金は、従業員の賃金の保障や労働条件の改善、

生活の安定の確保のためだけではなく、企業間の取引条件を改善し

公正な競争を促すためにも必要です。


2016年6月2日の「ニッポン一億人総活躍プラン」では、

年率3%程度を目途として、全国加重平均額1,000円を目指すと閣議決定されていました。2023年度でついに政府の目標は達成され、全国加重平均額が

1,000円を超えることになりました。



最低賃金とは



最低賃金とは、法令で定められている、労働に対して支払わなければならない

1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。


企業は、正社員、パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、

すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。


雇用契約書が最低賃金を下回っていたとしてもその部分は無効となり、

法令等で定めている最低賃金が適用されます。


最低賃金を下回る賃金を支払っていた場合は、50万円以下の罰金が

科せられることもあります。



最低賃金に含まれる賃金とは



支払われる賃金が最低賃金額以上であるかの確認は、1時間あたりの賃金を計算し、

事業場の最低賃金額と比較します。

最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や

各種手当です。


【1時間あたりの賃金の計算方法】

時給制のとき:時給額

日給制のとき:日給額 ÷ 1日の所定労働時間

月給制のとき:月給額 ÷ 1か月の所定労働時間

歩合給のとき:歩合給 ÷ 1か月の総労働時間


以下のサイトで具体的な計算事例が紹介されています。


暦日数の関係やシフト制、変形労働時間制を適用している場合など、

1か月の所定労働時間が変動することがあります。


月給制で月によって所定労働時間が変動するときは、1年間における

1か月の平均所定労働時間を使い計算してください。


また、1か月の平均所定労働時間に少数点以下の端数がでたときは、

端数処理は行わず計算の結果算出された時間を使って最低賃金を計算します。


【事業場の最低賃金額】

以下のサイトで事業場の最低賃金額をご確認ください。


ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。


【最低賃金から除外される賃金】

①慶弔手当など臨時的に支払われるもの

②賞与

③残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当

④精皆勤手当

⑤通勤手当

⑥家族手当


1時間あたりの賃金計算は残業代の計算にも使用しますが、

最低賃金と残業代とでは「含まれる賃金」「除外される賃金」が異なりますので

ご注意ください。


残業代の賃金計算のときは、④を含めます。反対に、残業代の賃金計算では除外される

「住宅手当」は、最低賃金が地域における従業員の生活の安定の確保も目的のひとつと

なっているため、最低賃金には含まれます。


また、④〜⑥の賃金について、従業員に一律で支給しているときは最低賃金と

残業代いずれの賃金にも含めます。


【例】

・遅刻、早退、欠勤などがあっても精皆勤手当を満額支給(減額なし)している

・扶養家族がいる、いないにかかわらず家族手当を支給している など



最低賃金で企業がおさえておく3つのポイント



1 最低賃金の改定(発行)年月日をまたぐ勤務について

3交代勤務制などでは、夜勤シフトの従業員が最低賃金の改定(発行)年月日を

またいで勤務することがあります。


最低賃金は、都道府県ごとの改定(発行)年月日以降に勤務する賃金から適用します。

そのため、最低賃金の改定(発行)年月日をまたいで勤務をしたときは、

0時より新しい最低賃金の適用となるように賃金を計算してください。


【例】

勤務日:9月30日

勤務時間:21:00 ~ 翌朝5:00

最低賃金改定日:10月1日

改定前の最低賃金を適用する時間:21:00 ~ 0:00

改定後の最低賃金を適用する時間:0:00 ~ 5:00


2 遠方で自宅テレワークする従業員の最低賃金について

企業の所在地から離れた自宅を就業場所として、テレワーク勤務をしている従業員もいます。

最低賃金の適用は事業場の場所によって決まりますが、

事業を行う独立性を有する一つの事業場と認められないときは

所属する事業場の所在地を対象と考えます。


そのため、自宅でテレワーク勤務を行う従業員に適用する最低賃金は

テレワークを行う場所がどこかにかかわらず、テレワーク勤務を行う従業員の

所属する事業場の所在地がある都道府県になります。


【例】

企業の所在地:大阪府

テレワーク勤務者の自宅:沖縄県

最低賃金の適用:大阪府の最低賃金


3 最低賃金の従業員への周知

最低賃金は、従業員へ周知しなければならないと法令等で定められています。

周知方法は、作業場の見えやすい場所に掲示する、書面で従業員へ交付するなどです。


【最低賃金に関する周知内容】

・最低賃金の適用を受ける従業員の範囲

・最低賃金の適用を受ける従業員にかかる最低賃金額

・最低賃金から除外される賃金

・改定(発行)年月日


周知していないときは、30万円以下の罰金が科せられることもあります。


例年、以下のサイトで都道府県別の周知用リーフレットが更新されます。

9月20日時点では2022年度のリーフレットとなっています。

年度を確認のうえ、ぜひご活用ください。




最低賃金の減額の特例許可制度とは



最低賃金には、特定の従業員について最低賃金を下回る賃金を支払うことができる

減額の特例許可制度が定められています。

申請先は、管轄の労働基準監督署です。

減額できる対象者は以下になります。


・精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者

・試用期間中の者

・基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者

・軽易な業務に従事する者

・断続的労働に従事する者


いずれも一定の条件を満たす必要があります。

また、許可は、対象となる従業員の労働条件を特定してから行いますが

最低賃金をどこまで減額ができるかは、それぞれ異なります。

以下のサイトに対象ごとのリーフレットがあるため参考にしてください。



減額を検討するときは、事前に管轄の労働基準監督署へご相談ください。



最低賃金・賃金引上げの支援策



最低賃金の引上げにより賃金が上がると、労働保険料(労災保険、雇用保険)、

社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の負担も増えます。

最低賃金の引上げに伴う対象従業員、企業の負担差額などは早めに確認をして

賃金引上げに向けての準備をしてください。


厚生労働省では、賃金引上げに向けた取組事例や地域・業種・職種ごとの

平均的な賃金を検索できるツールを盛り込んだ特設サイトを設けたり、

中小企業向けに業務改善助成金や補助金、税制など、最低賃金・賃金引上げ支援の

マニュアルを公開しています。





おわりに



毎年、労働基準関係法令違反での送検や、企業名の公表が行われています。

公表されている中には「賃金が最低賃金以上の金額で支払われておらず、

行政指導に応じない」などの事案もあります。

今回の記事を参考に、最低賃金が適正に支払われるようにご対応ください。


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