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正社員化コースの拡充と育休代替支援、電子申請で手軽に


企業を対象とした助成金のうち、厚生労働省が提供する雇用関係助成金には、

雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などを

目的とした多種類の助成金があります。


なかでも、キャリアアップ助成金や両立支援等助成金は企業が活用しやすい助成金です。


今回の記事は、2024年に改正された助成金のうち、キャリアアップ助成金「正社員化コース」と両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース」について解説するとともに、

助成金の電子申請についてもご紹介します。



キャリアアップ助成金「正社員化コース」の拡充



キャリアアップ助成金とは、有期雇用や無期雇用の契約社員、パート・アルバイトなど

非正規雇用の従業員(以下、有期雇用労働者等)に対し、企業内でキャリアアップ促進の

ための取り組みを実施した企業に支給される助成金です。


正社員化コースは、有期雇用労働者等を正社員に転換した場合に支給される助成金です。

正社員化コースでは、今回の改正で以下の4点が変更となりました。

2024年の支給申請は、変更前・変更後のどちらの支給要件が適用されるか確認のうえ

申請してください。


【変更の適用開始時期】

2023年11月29日以降に正社員化した従業員の支給申請から


【変更内容】

・支給対象期間と支給額の変更

・対象となる有期雇用労働者の要件緩和

・正社員転換制度の導入に対する加算措置の新設

・多様な正社員制度規定に関する加算額の増額


ここからは、変更内容について解説します。


1 支給対象期間と支給額の変更

支給対象期間の延長とともに、支給額が変更されました。また、支給申請が2期制となります。

 


【支給対象期間の延長】

正社員化した日から起算する支給対象期間が、6か月から12か月に延長されました。

正社員化した従業員の確実な定着を目的としています。


【支給額の変更】

有期雇用の契約社員やパート・アルバイト(以下、有期雇用労働者)を正社員に転換した

場合の支給額が、1人あたり57万円から80万円に増額されました。

(さらに一定の要件を満たすと加算措置が適用されます。)


今回は、新たに加算措置の新設や加算額の増額も行われています。

(「3 正社員転換制度導入に対する加算措置の新設」「4 多様な正社員制度規定に関する加算額の増額」を参照)


【支給申請が2期制へ】

今後は支給対象期間12か月分の申請を2期に分けて行います。

・第1期の支給申請期間:正社員転換後6か月分の賃金支給日の翌日から2か月以内

・第2期の支給申請期間:第1期後の6か月分の賃金支給日の翌日から2か月以内



2 対象となる有期雇用労働者の要件緩和

有期雇用労働者から正社員に転換する場合、これまで助成金の対象者は雇用期間が

「6か月以上3年以内の者」に限られていました。これが改正により要件緩和され、

今後は「6か月以上の者」となります。

 


3 正社員転換制度の導入に対する加算措置の新設

正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合の企業への支援を強化

するため、加算措置が新設されました。

1人目の対象者に対する支給額に加算されます。

 


4 多様な正社員制度規定に関する加算額の増額

多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合の企業への加算額が

増額されました。


多様な正社員制度とは、勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員への転換制度です。

選択肢を設けることで、従業員のより確実な定着を図ります。

 


なおキャリアアップ助成金の申請には、これまでと同様に、あらかじめキャリアアップ

計画書を管轄の都道府県労働局へ提出する必要があります。


キャリアアップ計画書は2023年10月よりチェックボックス式に変更され、記載方法が

簡素化されています。


支給申請書および計画書などの様式は、以下の厚生労働省のサイトからダウンロード

できます。

様式は取り組み時期などによって異なるためご注意ください。




両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース」の新設

(対象:中小企業)



育児休業の取得者や育児のための短時間勤務制度(以下、育児短時間勤務制度)の利用者が

いる職場では、他の従業員の仕事が増えるなど周囲に大きな負担がかかっているケースも

見受けられます。


育児休業や育児短時間勤務制度を利用しやすくするためには、制度を利用する従業員の

業務を代替する体制の整備が欠かせません。


こうした職場環境の整備に取り組む企業の支援を強化するため、2024年1月より両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」が新設されました。

支給対象となる企業は中小企業のみとなっています。


【適用開始時期および対象】

2024年1月1日以降に開始された育児休業(産後休業から引き続き休業する場合は産後休業)または育児短時間勤務


【コースの種類】

・業務代替者への手当支給等(育児休業)

・業務代替者への手当支給等(短時間勤務)

・業務代替者の新規雇用(育児休業)


【支給の上限】

上記3つのコースをあわせて支給の上限があります。

・1事業主につき、一年度で育児休業取得者または育児短時間勤務者をあわせて10人まで

・初回の対象者が出てから5年以内


1 業務代替者への手当支給等(育児休業)

育児休業取得者の業務を代替する従業員(以下、業務代替者)に手当を支給した場合に

助成金が支給されます。さらに「4 支給額の加算」に該当する場合は支給額が加算されます。

業務代替者への手当の規定など、あらかじめ就業規則等の整備も必要です。

 


2 業務代替者への手当支給等(短時間勤務)

育児短時間勤務中の業務代替者に手当を支給した場合に助成金が支給されます。

さらに「4 支給額の加算」に該当する場合は支給額が加算されます。

業務代替者への手当の規定など、あらかじめ就業規則等の整備も必要です。



3 業務代替者の新規雇用(育児休業)

育児休業取得者の業務代替者を新規雇用した場合に助成金が支給されます。

派遣による新たな受け入れも対象です。さらに「4 支給額の加算」に該当する場合は

支給額が加算されます。

 


4 支給額の加算(すべてのコース共通)

以下の要件に該当した場合、支給額が加算されます。


①有期雇用労働者加算

育児休業取得者または育児短時間勤務者が有期雇用の場合、支給額に1人あたり10万円

加算されます。(ただし、業務代替期間が1か月以上であること)


②育児休業等に関する情報公表加算

育児休業取得状況等に関する情報を指定のサイト上で公表した企業に対し、支給額に1

回限り2万円が加算されます。



【そのほかの両立支援等助成金について】

両立支援等助成金では、2024年4月から「柔軟な働き方選択制度等支援コース」も

新設されています。

この助成金は、育児を行いながら働く従業員がより柔軟な働き方を選択できるよう支援することを目的としています。




助成金も電子申請が可能に



2023年度から、キャリアアップ助成金や両立支援等助成金など雇用関係助成金で、

電子申請ができるようになりました。


1 電子申請のメリット

電子申請の一番のメリットは時間短縮による業務の効率化です。そのほか、業務の

ペーパーレス化、通信費や用紙代などのコスト削減なども図ることができます。


現在申請中の助成金の進捗状況や過去の申請履歴なども確認できるため、助成金の管理が

しやすくなります。


 


2 電子申請の手順

電子申請は、厚生労働省のサイト「雇用関係助成金ポータル」から行います。



助成金の申請を検討する段階で、その助成金は計画届の提出が必要か確認します。

(例)

・キャリアアップ助成金:計画届(キャリアアップ計画書)の提出が必要

・両立支援等助成金:計画届の提出は不要


計画届の提出の要・不要により電子申請の手順が異なります。


 


【GビズIDの取得】

電子申請の準備で必要となるのがGビズIDの取得です。

と、ひとつのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできるようになります。



【企業、社会保険労務士どちらでも申請が可能】

助成金の電子申請は、企業だけでなく企業から申請代行の依頼を受けた社会保険労務士も

行うことができます。


申請準備(GビズIDの取得も含む)から助成金の支給申請までの詳しい操作手順に

ついては、厚生労働省のマニュアルや動画を参考にしてください。




おわりに



助成金の活用は、資金調達だけではなく、職場環境の改善や優秀な人材確保にもつなげられます。

ただし助成金を申請するためには、就業規則等の整備や適切な労務管理などが必要です。

不十分である場合は、速やかに労務整備を行うことをおすすめします。

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