法令等ではすべての求人を受理しなければならないとなっています。
しかし、法令等に違反している求人は心身の健康や定着、円滑なキャリア形成の面などで、求職者の職業生活に長期的な影響を及ぼす恐れがあります。
そこでハローワークや職業紹介事業者等(以下、ハローワーク等という)では、悪影響を未然に防ぐため、不受理の対象となる求人は受理しないことができると法律で定められています。
2022年4月、育児・介護休業法が改正されました。
この育児・介護休業法の改正に未対応のときも、求人不受理の対象になる可能性があります。
今回の記事では、どのようなときに求人が不受理の対象となるかをお伝えしていきます。
求人不受理とは
求人不受理とは、ハローワーク等が一定の労働関係法令違反のある求人者からの求人申し込みなどを受理しないことができる仕組みです。
2016年、新卒者向けの求人について、一定の労働関係法令違反の求人者の求人をハローワーク限定で受理しないことができる仕組みがスタートしました。
求人の不受理は、法令等上「できる」規定となっています。
そのため実際不受理とするか否かについてはハローワークの判断となりますが、厚生労働省の集計では、2019年までのハローワークにおける求人不受理の取扱件数は544事業所あったと報告されています。
その後、2020年、新卒者向け求人からすべての求人へと範囲拡大し、ハローワーク限定から民間の職業紹介事業所等も加えられました。
不受理の対象となる求人
以下のいずれかに該当するとき、求人の申し込みが受理されない可能性があります。
①②③は、求人票に対しての項目です。
④⑤⑥は、求人者である企業に対しての項目です。
上記のうち、①②③では以下のようなケースが見受けられます。
【不受理の対象となる求人例】
・定年年齢が60歳を下回っている
・実際の待遇に比べて過大な基本給を明示しているが、実際は固定残業代が含まれている
・雇用期間や就業場所、労働時間、賃金など働く上で必要な条件が明示されていない など
不適当な求人には、誤解を生じる内容や虚偽の表示なども含まれます。
求人票には事実を記載し、最新の内容となるよう見直しをされることをおすすめします。
また、④一定の労働関係法令違反のある求人者とは、対象となっている労働関係法令に違反し、かつ、各法令により「同一の違反に対し是正指導を複数回受けた場合」や「是正を求める勧告に従わず公表された場合」などに該当したケースをいいます。
求人が不受理になると、ハローワーク等で一定期間求人を受け付けてもらえません。
不受理の対象となる規定
求人不受理の対象となる規定は、法令等(労働基準法、育児・介護休業法、職業安定法など)により定められています。
たとえば労働基準法の中には、過重労働の制限などに対する規定があります。
長時間労働や賃金不払い残業などに関する法違反は、求職者の職業生活のキャリア形成に支障をきたす恐れがあるため、対象とされました。
その他、求人の募集段階から労働条件に変更が生じやすいことから、就業前の労働条件確認が重要であるとし、募集・求人の申し込みと労働契約締結時の労働条件の明示などの規定も対象となっています。
【労働基準法の不受理の対象となる規定】
その他の法律の対象規定は、以下のパンフレットをご覧ください。
新たに追加された育児・介護休業法の対象となる規定とは
求人不受理の対象となる規定は、法改正などにより規制が増えると対象規定も増え、今回の育児・介護休業法の改正も一部対象となっています。
今まで、仕事と育児などの両立を理由とした不適切な取扱いがあれば、求職者の継続就業が困難になるため、仕事と育児などの両立などに関する規定も対象となっていました。
2022年4月施行により、雇用環境の整備、個別の周知・意向確認等の規定が新設されました。それに伴い、求人不受理の対象となる以下の規定が追加されています。
【2022年4月に追加された規定】
・妊娠や出産等についての申出を理由とした不利益取扱いの禁止(法第21条第2項)
この規定に違反し、是正を求める勧告に従わず公表されたとき、ハローワーク等では求人の申し込みを不受理とすることができる条項が追加されています。
また、2022年10月の育児・介護休業法施行により以下の規定も追加される予定です。
【2022年10月追加予定の規定】
・出生時育児休業申出に関する企業の雇用管理上の義務(改正法第9条の3第1項)
・出生時育児休業申出をしたことなどを理由とした不利益取扱いの禁止(改正法第10条)
法改正の対応をしていないと求人がすぐに受け付けてもらえないというわけではありませんが、違反の指摘がされてからでは求人不受理のリスクが高まるため、早めに改正育児・介護休業法の対応をされることをおすすめします。
ハローワーク等から求められる自己申告とは
ハローワーク等は求人の申し込みに対し、不受理の対象となる求人かどうかを確認するために、求人者に対して自己申告書を求めます。
求人者は、ハローワーク等から自己申告の求めがあったときは、正当な理由がない限り応じなければならないとされています。
正当な理由なく自己申告を行わないときは求人の申込が受理されないことがあり、また、事実に相違する報告をしたときは、都道府県労働局による勧告や公表などの対象となる可能性があるため、正しい内容の自己申告をお願いします。
まとめ
法改正により新たに加わる求人不受理の対象規定は、ハローワーク等でも対応確認をされる可能性もありますので、採用の面でも注目が必要です。
必要なときに求人の申し込みをスムーズに行うためにも、求人票が事実と正しく最新の内容となっているか随時見直しを行うほか、労働関係法令が守られているか改めて確認されることをおすすめします。
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