障がい者雇用が増えている今、企業が対応すべきこと。


厚生労働省では、毎年「障害者雇用状況」の集計を行っています。

障害者雇用はすべての企業規模で増加しています。法令等では従業員数に応じて一定数の障害者雇用を義務づけしていますが、2021年6月1日時点で企業の達成割合は47%です。

障害者雇用の増加により、2021年度にハローワークに寄せられた合理的配慮の提供に関する相談件数は増加(前年度比:6.8%増)していますが、障害者差別に関する相談は減少(前年度比:20.3%減)しています。


◆企業を取り巻く障害者雇用の環境

従業員が一定数以上いる企業は、法令等で定められた従業員数に占める障害者の割合(法定雇用率)以上の雇用義務があります。

障害者を募集・採用するときや雇用時にはルールを守り、障害を理由に他の従業員との「差別」が行われないようにしなければなりません。


【募集・採用について】

募集・採用時には、障害を理由に求人への応募を認めない、業務上必要でない条件をつけて障害者に応募機会を与えないなどの差別的な行為は禁止されています。

障害がある、ないにかかわらず、募集・採用では均等な機会を与えなければいけません。

障害を理由に応募を断ったり、採用基準を満たしている中から障害がない人を優先的に採用を行うことなども、均等な機会を与えているとはいえず、障害について差別的な取り扱いをしていることになります。


【採用後について】

障害を理由に、業務上必要な能力を適正に判断せず、賃金、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などの待遇で他の従業員と異なる差別的取扱いをすることは禁止されています。


採用後に差別と考えられる事例は以下になります。

・障害を理由に賞与を支給しない

・障害を理由に昇格をさせない

・業務遂行能力等に沿って判断せず、障害を理由に障害者のみ配置転換を実施

・業務遂行能力等にかかわらず障害を理由に雇用形態の変更(正社員から契約社員など)

・障害を理由に労働契約の更新をしない

・昇給にあたり障害者のみ試験を実施 など


業務を行う上での必要な能力や知識、技術などを適切に判断しなければいけません。


【法定雇用率】

2021年3月1日以降、民間企業の法定雇用率は2.3%です。従業員数43.5人以上雇用している企業は障害者を1人以上雇用しなければなりません。


法令等で定められた法定雇用率に含まれる障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者です。他の障害者については法定雇用率に含められません。

業種によっては障害者雇用が難しいケースもあるため、一定の業種(建設、運送業、医療業など)には法令等で除外率が定められています。


従業員数が100人を超える企業が法定雇用率を満たさないときは納付金(障害者雇用納付金)の支払いが発生します。


逆に法定雇用率を超えているときは超えている人数に応じて給付金(障害者雇用調整金)が支給されます。給付金は申請が必要です。


詳細については以下を参考にしてください。

参考|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『事業主の皆様へ 令和4年度版ご案内』


◆障害の特性は様々

【法定雇用率】

障害の特性は様々で、先天性だけではなく後天的に障害者になることもあります。

脳梗塞などが原因の運動障害や高次脳機能障害や、腎臓、膀胱、直腸などの内臓器官の機能が通常のように働かない内部障害、緑内障による視覚障害などがあります。

どのような障害があるのかは、見た目ではわからないこともあります。

また障害の特性や等級などが同じでも、個人ごとの状況は異なります。

そのため企業は、採用や募集、採用後に必要な措置(合理的配慮)を講じなければなりません。


【合理的配慮とは】

募集や採用時に、障害者とそうでない人との均等な機会を保つための措置です。採用後、業務を行う上で支障になっている事情を確認し、支障を取り除いて能力を発揮してもらえる措置が必要です。措置は特性に応じて話合いで決めますが、企業に過重な負担(費用面や、施設の状況上設置が難しい設備など)がない範囲で実施をします。


(募集・採用時の措置例)

・労働条件を読み上げる

・質疑応答時間を長くする

・入社試験の時間を長くする

・面接試験の場所がわかるよう入口に目立つ物を置く など


(採用後の措置例)

・時差出勤を認める

・社内レイアウトの変更

・危険箇所が目立つようにシールを貼る

・柔軟な休憩・休暇の取得 など


障害者の雇用や、設備の購入などは、助成金の対象になることがあります。

雇入れや継続雇用を目的とする助成金の窓口は、都道府県労働局やハローワークです。設備や障害者支援を目的とする助成金の窓口は、独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構となり、異なるので注意が必要です。


◆障害者雇用を進める上で行うこと

障害者雇用を進めるためには、準備が必要です。

障害者雇用についての相談や課題の分析などは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の地域障害者センター(各都道府県にあります)で行われています。


(相談例)

・障害の特性の理解

・個人情報の保護

・社内研修

・担当者の選定

・相談窓口の設置

・就業規則の整備(賃金体系含む) など


相談先は、以下になります。

参考|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『地域障害者職業センタ―』


◆合理的配慮に必要な設備など助成金があります

障害者の雇用や、設備の購入などは、助成金の対象になることがあります。

雇入れや継続雇用を目的とする助成金の窓口は、都道府県労働局やハローワークです。

設備や障害者支援を目的とする助成金の窓口は、独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構となり、異なるので注意が必要です。

障害者雇用でよく使われているのは以下の助成金です。


【特定求職困難者雇用開発助成金】

原則ハローワーク経由で障害者を雇用したときに対象になる助成金です。6か月ごとに申請を行います。申請書類はハローワークから企業へ郵送で届きます。

受給額は80万円(30万円)〜240万円(100万円)※です。


※( )は中小企業以外の企業に対する受給額です。


合理的配慮やバリアフリーのための設備の導入などに使える助成金は以下になります。内容に応じて細かく分かれており、表記以外の助成金もありますので、検討されるときは助成金窓口へご相談ください。


参考|厚生労働省サイト『事業主の方のための雇用関係助成金』


助成金は細かな要件がありますので、進めるときは助成金窓口へご相談ください。


(雇用に関する助成金窓口)

参考|雇用関係各種給付金申請等受付窓口一覧


(設備等に関する助成金窓口)

参考|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 都道府県支部


◆最低賃金の減額申請ができます

最低賃金は原則雇用形態(正社員、パートなど)にかかわらず事業場で働くすべての従業員に適用されますが、障害が業務遂行に直接支障を与えるときなどは、最低賃金の減額申請(特例許可申請)が認められることがあります。ただし支障が軽度のときなどは認められません。

手続きは所定様式(精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者の最低賃金の減額の特例許可申請書(様式第1号))に必要事項を記載の上、管轄の労働基準監督署へ提出をしてください。

詳細については、管轄の労働基準監督署または社会保険労務士へご相談ください。


参考|厚生労働省『最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領』


◆まとめ

合理的配慮は障害者の方が能力を発揮するための対策に見えますが、他の従業員の働きやすさにつながったり、負担が軽減されるなど、副次的なメリットが生まれるケースもあります。

障害をひとつの個性とみなせば、少しの配慮やサポートで能力を発揮してもらえ、継続勤務も可能になります。少しの配慮やサポートは、お互いを助け合える職場環境づくりにおいても大切なことです。

採用を検討されるときは、ハローワークに専門の窓口がありますのでご相談ください。