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2022年度、最低賃金は過去最高の引き上げとなる予定です。


最低賃金には、都道府県ごとの物価等に合わせて定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業で定められる「特定最低賃金」の2種類があります。

今回の記事は、毎年改定が行われている地域別最低賃金についてです。

先日、2022年度の地域別最低賃金の引上げ額が、地域によって30円~33円になる予定であると発表されました。

正式な公示はまだ先ですが、改定日については10月1日から10月中旬の間に順次発表される予定です。


その他、47都道府県の地域別最低賃金の答申状況は以下をご確認ください。

2022年度の全国加重平均額は31円で、過去最高の引き上げ額となり、大変注目が集まっています。

全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数×地域最低賃金で計算した、全国の合計を総労働者数で割った額です。


◆最低賃金とは

最低賃金とは、法令で定められている、労働に対して支払わなければならない1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。

企業は、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金を下回る賃金を支払っていたときは、50万円以下の罰金が課せられることもあります。


◆最低賃金に含まれる賃金とは

月給制や月額手当があるときは、1時間あたりの賃金を計算し、最低賃金を上回っているかを確認する必要があります。

最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や各種手当です。

ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。最低賃金と残業代とでは含める賃金が異なりますのでご注意ください。


【最低賃金から除外される賃金】

①慶弔手当など臨時的に支払われるもの②賞与

➂残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当

④精皆勤手当

⑤通勤手当

⑥家族手当


1時間あたりの賃金計算は、残業代の計算にも使用しますが、残業代の賃金計算のときは、④を含めます。

また、④~⑥の賃金について、従業員に一律で支給しているときは最低賃金と残業代いずれの賃金にも含めます。


(例)

・遅刻、早退、欠勤などがあっても精皆勤手当を満額支給(減額なし)している

・扶養家族がいる、いないにかかわらず家族手当を支給している など


◆最低賃金で企業がおさえておく3つのポイント

1 最低賃金の発行(改定)年月日をまたぐ勤務について

3交代勤務制などでは、夜勤シフトの従業員が最低賃金の改定日をまたいで勤務することがあります。

最低賃金は、都道府県ごとの発行(改定)年月日以降に勤務する給与から適用します。

そのため、最低賃金の改定日をまたいで勤務をしたときは、0時より新しい最低賃金の適用となるように給与を計算してください。


(例)勤務日:9月30日

   勤務時間:21:00 ~ 翌朝5:00

   最低賃金改定日:10月1日

   改定前の最低賃金を適用する時間:21:00 ~ 0:00

   改定後の最低賃金を適用する時間:0:00 ~ 5:00


2 遠方で自宅テレワークする従業員の最低賃金について

インターネットの普及や新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の所在地から離れた自宅でテレワーク勤務している従業員もいます。

最低賃金の適用は事業場の場所によって決まりますが、事業を行う独立性を有する一つの事業場と認められないときは、所属する事業場の所在地を対象と考えます。

そのため、自宅でテレワーク勤務を行う従業員に適用する最低賃金は、テレワークを行う場所がどこかにかかわらず、テレワーク勤務を行う従業員の所属する事業場の所在地がある都道府県になります。


(例)企業の所在地:大阪府

   テレワーク勤務者の自宅:沖縄県

   最低賃金の適用:大阪府の最低賃金


3 毎月、所定労働時間が変動する場合の月給者の最低賃金の計算方法について

暦日数の関係やシフト制、変形労働時間制を適用している場合など、1か月の所定労働時間が変動することがあります。

月給者の最低賃金は、1年間における1か月の平均所定労働時間を使い計算してください。


また、1か月の平均所定労働時間に少数点以下の端数がでたときは、端数の切り上げ・切り捨てを行わず、計算の結果算出された時間を使って最低賃金を計算します。

◆最低賃金の減額の特例許可制度とは

最低賃金には、特定の従業員について最低賃金を下回る賃金を支払うことができる減額の特例許可制度が定められています。

申請先は、管轄の労働基準監督署です。 減額できる対象者は以下になります。


・精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者

・試の使用期間中の者

・基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者

・軽易な業務に従事する者

・断続的労働に従事する者


いずれも一定の条件を満たす必要があります。また、許可は、対象となる従業員の労働条件を特定してから行いますが、最低賃金をどこまで減額ができるかは、それぞれ異なります。以下のサイトに対象ごとのリーフレットがありますので参考にしてください。



減額を検討するときは、事前に管轄の労働基準監督署へご相談ください。


◆業務改善助成金(通常コース)の活用

事業場内の賃金の引き上げに伴い、生産性の向上の効果が認められる設備などを導入したときに経費の一部が助成されます。 賃金の引き上げによって助成率が異なり、30万円〜最大600万円支給されます。


◆業務改善助成金(通常コース)の対象と流れ

業務改正助成金は事業場ごとに申請をします。

事業場とは企業全体ではなく、本社、支社、店舗など一定の範囲で業務を独立して行っている場所です。


業務改善助成金の対象や申請の流れは以下の通りです。


【対象事業場】

対象となる事業場は以下のすべてを満たす必要があります。

・地域別最低賃金と事業場内最低賃金の差が30円以下

・申請時点での事業場規模が100人以下

・以下の表のいずれかに該当する中小企業


【対象となる経費】

生産性や労働能率向上の効果が認められる以下の設備などです。


【賃金引上げの対象労働者】

入社から3か月経過している従業員


【申請期限など】

業務改善助成金は、交付申請(計画書)以外にも報告などが必要です。


1 交付申請(計画書の提出)

2023年1月31日


どのような設備を導入するのか、どの従業員にいくら賃金を引き上げるかなど、期間を決めて計画書を提出します。

※申請期限内に予算がなくなったときは、申請を早めに打ち切られることがあります。

※設備などを導入する1か月前までには提出をしてください。


2 事業実施報告(計画書の報告)

以下のいずれか早い方です。

a. 計画完了後1か月以内

b. 2023年4月10日

※1の交付申請時に届出した計画の完了後1か月以内になります。


3 支払請求書

事業実施報告書を提出後、労働局で審査を行い助成額を確定します。

その後、企業へ交付額確定通知書が届きます。

受け取り後は速やかに支払請求書を労働局へ提出します。

提出後、労働局より助成金が支給されます。


【業務改善助成金の届出・相談先】

業務改善助成金は、就業規則の変更も必要になります。

導入する設備などが対象になるかどうかも含め、申請を検討されるときや助成金に関する不明点があるときは、業務改善助成金コールセンターへお問合せください。



業務改善助成金の申請先は、各都道府県労働局の雇用環境・均等室です。


◆まとめ

最低賃金の引き上げにより賃金が上がると、労働保険料(労災保険、雇用保険)、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の負担も増えます。

どのくらい負担が増えるのか早めに確認をして、対策を検討してください。


また毎年、労働基準関係法令違反での送検や、企業名の公表が行われています。

公表されている中には「賃金が最低賃金以上の金額で支払われておらず行政指導に応じない」などの事案もあります。

今回の記事を参考に、最低賃金が適正に支払われるようにご対応ください。

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