特定業務従事者の健康診断の実施と、二次健康診断の適正な対応について。



法令等で、企業は従業員に対して医師の健康診断を実施し、従業員は健康診断を受けなければならないと定められています。


健康診断は大きくは「一般健康診断(定期健康診断など)」と「特殊健康診断(有害業務が対象)」の2つに分けられ、それぞれに健康診断の種類があります。


この記事では一般健康診断に含まれる「特定業務従事者の健康診断(22時以降の残業含む)」と、その結果によって実施される「二次健康診断」についてお伝えします。



特定業務従事者の健康診断とは



特定業務に携わる従業員に対しては、年1回の定期健康診断とは別に、6か月以内ごとに1回の健康診断の実施が必要です。これを「特定業務従事者の健康診断」といいます。


6か月以内に1回ですが、健診項目が定期健康診断と同じであり、定期健康診断と合わせて実施ができるため、実際のところは年2回の実施になります。


また定期健康診断と同じように、実施後には本人へ結果を通知し、結果は企業内で保管しておかなければなりません。


なお特定業務従事者の健康診断の未実施や、従業員へ健康診断の結果を通知していない、健康診断の結果を保管していないときは、法令等でそれぞれ50万円以下の罰則が課せられる可能性もあります。


【法令等で定まっている健診項目】



(出典)厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』



特定業務とは



特定業務は法令等で定められており、従業員が携わる業務業務中に扱う有機溶剤等によって対象になるかどうかが決まります。企業の業種で判断されるわけではありません。

特定業務の中には「深夜業を含む業務」が含まれており、これは所定労働時間に22時~5時の時間帯を含んでいるかだけではなく、残業で22時以降に勤務した日も含まれます。

健康診断が必要になるのは、特定業務従事者の健康診断実施日前に1週に1回以上、または平均して月4回以上の深夜業があるときです。業種問わず対象になる可能性があります。


【対象となる特定業務】


(出典)厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』



二次健康診断とは



二次健康診断は脳・心臓疾患の予防を目的とし、定期健康診断と特定業務従事者の健康診断(以下、一次健康診断)の結果で一定の項目に異常所見があった従業員が、医療費の負担なく再度、健診や特定保険指導を受けられる制度です。


定期健康診断と異なり、本人が受ける・受けないを決められるため、未実施であっても罰則はありません。

しかし、脳・心臓疾患の早期予防、早期発見につながるため、対象となった従業員へは健診を受けるよう働きかけてください。


健診を受けられる期間は一次健康診断を受けた日から3か月以内、回数は一年度(4月1日〜翌年3月31日)につき1回です。

また、脳・心臓疾患の持病がある、症状が出ている(病気の診断がある)従業員は対象になりません。


【異常所見とは】

一次健康診断の結果の数値が正常でない状態をいいます。一次健康診断の結果表に、異常なし以外の「要医療等」「要再検査」などの記載があったときは該当します。


二次健康診断の対象者は、以下のすべての項目で異常所見があると判定された従業員です。ただし異常なしと診断されているときでも、産業医等の意見により対象となることがあります。

 1 血圧検査

 2 血中脂質検査

 3 血糖検査

 4 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定


【特定保健指導とは】

脳・心臓疾患を予防するため、二次健康診断の結果に基づき、以下の保険指導を行います。

 栄養指導:適切なカロリーの接種等の食生活にかかわる指導

 運動指導:必要な運動にかかわる指導

 生活指導:飲酒、喫煙、睡眠等の生活習慣にかかわる指導



二次健康診断の勧奨



一次健康診断の結果を従業員へ通知後、二次健康診断の対象となる従業員へ口頭または「二次健康診断指示書(任意書式)」などで受診を促します。


二次健康診断は労災保険制度の1つで、費用はかかりません。従業員が健診を受けるときは、企業が「二次健康診断等給付請求書」を作成し、従業員から病院へ提出を行います。


参考・ダウンロード|厚生労働省『二次健康診断等給付請求書』

参考|厚生労働省『二次健康診断等給付の請求手続』


二次健康診断を受けられる病院は都道府県ごとに決まっています。以下のサイトより確認をしてください。

参考|厚生労働省サイト『労災保険二次健康診断等給付医療機関名簿』


二次健康診断の結果は、一次健康診断と異なり、病院から企業への結果の報告がありません。

健診結果を企業が知るためには本人からの報告が必要になりますが、結果は個人情報にあたるため企業は報告の強制ができません。

従業員は企業へ健診結果の報告義務がないので、報告を拒むケースもでてきます。そのときは、報告がなければ業務上の配慮などの対策ができないことなどを伝えて、提出を促します。



特定業務従事者の健康診断、二次健康診断の実施後の措置



特定業務従事者の健康診断、二次健康診断実施後に企業が行わなれければならない措置は以下になります。ただし二次健康診断については、従業員から企業に結果報告されたときに限ります。


1 健康診断個人票へ記載

健康診断個人票は健康診断の結果を個人ごとに記録する書類で、法令等で作成が義務付けられています。


2 医師等への意見聴取

特定業務従事者の健康診断で異常所見があると診断された従業員、二次健康診断を実施した従業員については、医師へ就業に関する意見を聞く必要があります。


3 健康を保持するために必要な措置

医師より就業に関する措置が必要と診断されたときは、診断内容に応じて就業場所や職務の変更、労働時間の短縮(時間外・休日労働の禁止、就業時間の制限など)、深夜業の回数削減などを行います。


(出典)愛知労働局『労働安全衛生法の定める健康診断事後措置等のあらまし』



まとめ



特定業務従事者の健康診断に深夜残業が含まれているのを知らずに、未実施になっているケースや、二次健康診断の受診を本人任せにして企業が実施を促せていないケースも散見されます。


健康診断は病気の「予防」「早期発見」が目的です。

健康維持は従業員が自ら行う必要もありますが、症状が出ていないと健康診断を受けるきっかけがなく病気になってしまい、勤務が難しくなることもあります。

また企業は従業員の健康状態を把握し、必要な措置を取らなければ安全配慮義務違反に問われる可能性も出てくるでしょう。


よいパフォーマンスを発揮できる健康状態は、企業・従業員双方にとって大切なことです。単に法令等で定められているからではなく、病気予防の一歩として健康診断に取り組まれることをおすすめします。