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労務担当者が知っておくべき退職時に必要な手続と注意点。


従業員の退職時にはさまざまな手続があり、退職者とのトラブルを避けるためにも正しい流れでの手続が必要です。


しかし退職時の手続は退職者がコントロールできることではありません。

法令で決まっていることも多くあるため、企業内の労務担当者の知識が求められます。


この記事では退職時に必要な手続と、注意点を解説します。



退職届を提出してもらう



退職届の提出は、法令等では義務ではありません。

しかし従業員から退職の意思を明確に受け取り、トラブルを防止するという観点からも、提出を求めてください。


退職届は任意書式のため、あらかじめフォーマットを作成し、就業規則で退職届の提出日(退職日の〇日前)を明確にしておきます。

従業員から退職届を受け取った後は、退職日や引継ぎのスケジュールなどを決めて進めていきます。


退職理由欄に「一身上の都合」と記載してくるケースが多く見られますが、妊娠、育児、介護、疾病などが理由のときは、その旨を記載してもらいます。


離職票作成時に退職理由の記載が必要となり、理由によっては失業保険をもらえる日数などが優遇される場合があるからです。



退職時に貸出している備品などの返却してもらう



退職する従業員に貸与している備品や、名刺・社員証など従業員であることを証明するものを返却をしてもらいます。


その際、会社支給のパソコンや携帯電話などが返却されていないことを理由に、最後に支給する給与などから一方的な備品費用の控除はできません


事前に労使協定で「退職時にパソコンを返却しなかったときは〇〇円支払う」などの合意を取っていたとしても、法令違反となります。



雇用保険の手続



雇用保険に加入していた従業員の退職時には、雇用保険の資格喪失と離職票の発行の手続が必要ですが、本人が希望しないときは離職票を発行しなくても差し支えありません。

しかし退職時に59歳以上のときは、本人が希望しなくても発行が必要です。


雇用保険の資格喪失手続は退職日の翌日から10日以内に管轄のハローワークで行います。

最終月の給与が確定していない(未計算)ときでも手続は進められます。



社会保険の手続



社会保険(厚生年金・健康保険)に加入していた従業員の退職時は、社会保険の資格喪失の手続が必要です。

手続は退職日の翌日から5日以内に管轄の年金事務所または事務センターで行います。


健康保険は退職日の翌日から20日以内に本人が手続を行えば「任意継続」でき、

今までと同じ保険者(協会けんぽなど)に加入できます。


ただし、厚生年金には任意継続の制度がないため、退職後は転職先の厚生年金または国民年金に加入になります。



退職証明書



退職証明書は、退職者(退職予定者)から希望があったときに企業が発行する書類(任意書式)です。


証明の項目は以下になり、本人が希望した項目のみ証明します。

本人から発行の依頼があれば退職後2年間は対応しなければなりません。


企業が発行を拒んだときは法令等違反となり30万円以下の罰金に課せられる可能性があります。


【退職証明の項目】

・ 使用期間

・ 業務の種類

・ その業務における地位

・ 賃金

・ 退職の事由(解雇のときはその理由)



源泉徴収票



年度途中で退職した従業員には源泉徴収票を発行する必要があります。

本人が発行を希望しなくても、退職日から1か月以内に発行し、本人へ渡さなければなりません。


企業が源泉徴収票の発行を行わなかったときは法令等違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。



住民税



住民税の納付方法は2種類あり、毎月の給与から控除して本人に代わって市町村に納付する「特別徴収」と、本人が直接市町村に納付する「普通徴収」があります。


特別徴収がされているときは、退職月などによって処理が異なります。


【1月1日~5月31日の間に退職するとき】

本人の希望の有無にかかわらず、残りの住民税を退職時の給与や退職金などから一括徴収し、本人に代わり企業が市町村に納付します。


ただし、一括徴収する額が給与や退職金などを超えるときは、普通徴収に切り替えることができます。


【6月1日~12月31日の間に退職するとき】

退職月の翌月以降は普通徴収になるため、企業が市町村に納付しなくてもよくなります。


ただし本人が退職時に希望すれば翌年5月までの住民税を一括徴収し、企業が市町村に納付することもできます。


【退職後、すぐに就職するとき】

すでに転職先が決まっている従業員から「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の発行を依頼されるケースがあります


発行された「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を転職先の会社から市区町村へ提出してもらうと、特別徴収が継続されるため、転職後の住民税の納付がスムーズになります。


発行依頼があったときは、作成し渡すようにしてください。



退職手続で注意すべきこと



1 有給休暇の買い取りはしなければならないのか

有給休暇の買い取りは原則できません

ただし、退職日が決まっており、退職の申出から退職日までのあいだに有給休暇の残日数分の出勤日がなく、有給休暇を取得しきれなかったときは企業が取得しきれなかった有給休暇を買い取ることは可能です。


2 退職代行を使われたときの注意点

最近、従業員の代わりに退職意思を企業に伝える「退職代行」が増えています。


退職代行の運用者は、弁護士、労働組合(ユニオン)、民間企業の3つに分けられます。

退職代行から連絡があったときは、まずは弁護士かどうかを確認してください。


弁護士であれば退職手続(有給休暇の消化、退職日、退職金などの条件)の話ができますが、それ以外のときは手続の話ができません。

弁護士以外の退職代行業者ができるのは、本人の退職意思を伝える使い(使者)の範囲です。


弁護士以外が退職の条件交渉などの行為を行うことは、法令等違反にあたります。

弁護士かどうかを確認した後は、退職の意思をもつ従業員が誰かと、本人からの依頼かどうかの確認(書面で提出してもらうなど)を行い、退職届を郵送、FAXなどで本人から提出してもらってください。



まとめ



退職時は手続や確認項目が多いため、スケジュール表やチェックリストを作成し、管理をしておくと便利です。

手続が遅れると、退職者にとっては、次の就職先へ必要な情報が提供できず、国民健康保険などへの手続が遅れるなどの不利益が生じます。

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