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社会保険の扶養範囲と、健康保険証発行の基本的な流れ。




扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。


この記事では、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に加入しているときの社会保険上の扶養について説明をしています。


婚姻や出産、配偶者や親族を扶養にしたいときなど、従業員から連絡を受けてからの手続と、健康保険証が発行されるまでの基本的な流れをお伝えします。



基本的な扶養手続の流れ



1 従業員・役員から扶養追加の依頼を受ける

婚姻や出産などの理由により、配偶者や親族を扶養追加したいと連絡があったときは、扶養情報を確認します。

扶養家族の氏名や異動日の間違い防止のためにも、以下の確認事項を記載した任意書式(扶養家族異動届など)を準備し、提出してもらうことをおすすめします。


また、年金事務所へ届出をするときは、扶養家族のマイナンバーがあると手続がスムーズです。

扶養追加する人のマイナンバーの収集も行ってください。


【扶養情報の確認事項】

 ①扶養追加日

 ②扶養追加の理由

 ③扶養追加したい人の名前(ふりがな)

 ④生年月日

 ⑤性別

 ⑥従業員本人との続柄

 ⑦同居の有無

 ※別居時は住所の確認をしてください。

 扶養家族が海外に留学しているときなどは「日本に住んでいない理由」を確認ください。

 ⑧扶養者の職業と年間収入

 ⑨夫婦共働きにより共同扶養のときは、共同扶養者の今後1年間の年間収入見込み


2 扶養家族に該当するかを確認する

健康保険では、被保険者(従業員本人)に扶養されている家族を被扶養者といいます。

被扶養者に該当するには「被扶養者の範囲」と「被扶養者の収入基準」のいずれも満たす必要があります。


【被扶養者の範囲】

被保険者の収入により生計を維持する、以下のいずれかに該当する家族です。

 ・配偶者(内縁関係含む)

 ・子ども、孫、兄弟、姉妹

 ・本人の父母、祖父母(配偶者の父母、祖父母は含みません。)

 ・同居の3親等内の親族 (伯叔父母、甥姪とその配偶者など)

 ・同居の内縁関係の配偶者の父母および子ども




【被扶養者の収入基準】

年間収入が130万円未満(60歳以上または障害年金受給者は180万円未満)で、かつ、同居の有無に応じて以下に該当する家族です。


同居のとき:被扶養者が被保険者の収入の半分未満

別居のとき:被扶養者の年収が被保険者からの仕送り額未満


※被扶養者の年間収入に何が入るかは、以下「被扶養者の年間収入に含まれるもの」をご覧ください。


3 必要書類の案内をする

被保険者に、年金事務所へ届出するときに必要な書類を案内します。


【続柄確認ができるもの】

被扶養者の90日以内に発行された戸籍謄(抄)本、または住民票

(コピー不可、マインナンバーの記載がないもの)

※住民票は、被保険者が世帯主で扶養者と同居のときに限ります。

ただし被保険者、被扶養者のマイナンバーが届出できるときは必要ありません。


【被扶養者の年間収入がわかるもの】

①年金額がわかる書類(年金額の改定通知書など)

②課税(非課税)証明書

③給与明細書

④離職票 など


同居で、被扶養者が学生のときや所得税法上の扶養親族(年収103万円以下)のときは、証明は必要ありません。


また、別居のときは、仕送り額がわかる書類(現金書留の控えや銀行の通帳のコピーなど)が別途必要です。


4 扶養家族の書類を作成し届出する

情報が集まったら、届出に必要な「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を作成し、管轄の年金事務所または事務センターに届出をします。

手続は事実発生から5日以内となっており、手続が遅れると健康保険証の発行が遅れます。


5 健康保険証と通知書が企業へ届く

1~2週間で、協会けんぽから企業宛に「健康保険証」が届きます。

到着後、健康保険証を従業員へ渡してください。健康保険証を紛失したときなどにスムーズに手続するためにも、健康保険証の番号を控えておくことをおすすめします。


3月4月の入退社が多い時期は年金事務所の処理も混雑します。ステップ4の扶養手続の届出日までにステップ1から3の対応を行っておくと、健康保険証をお急ぎの従業員への対応もスムーズにすすめることができます。



被扶養者の年間収入に含まれるもの



被扶養者の収入基準は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害年金受給者は180万円未満)です。被扶養者の年間収入は、働いて得た収入以外にも失業保険、育児休業給付金、年金、不動産収入、障害・遺族年金、傷病手当金など、非課税対象の収入も含まれます。


以下を例に、被扶養者の収入に応じた必要書類を依頼してください。


【給与収入】

直近3か月の給与明細、雇用契約書 など


【事業収入等】

自営業による収入、不動産収入の直近の確定申告書 など


【その他の収入】

失業保険の雇用保険受給資格者証、育児休業給付金支給決定通知書、年金、障害・遺族年金、傷病手当金など受取金額の確認ができる通知書、課税(非課税)証明書 など



毎年確認が行われる「被扶養者状況リスト」とは



協会けんぽでは、毎年、被扶養者資格の再確認を実施しています。


今年は2022年10月上旬から11月上旬にかけて「健康保険被扶養者状況リスト」が企業宛に送付されており、対象は2022年9月10日現在の被扶養者(同年4月1日時点18歳以上)です。


本年の提出期限は2022年11月30日で、多くの企業は対応済みです。

毎年の定例業務のひとつになるため、労務担当者は定期的に従業員の扶養状況を確認することをおすすめします。とくに、大学生だった子どもが社会人になったときなどは、扶養解除の手続きに漏れが生じることがありますのでよくご確認ください。



まとめ



今回は、社会保険上の扶養追加の基本についてお伝えしました。

近年、ライフスタイルや家族構成の変化によって、さまざまなケースでの扶養が増えています。

扶養認定が厳しくなる中、従業員への必要書類のアナウンスに悩むこともあります。


次回の記事では、ケース別の必要書類などをお伝えします。

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