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職場の受動喫煙に関する基本知識と、求人票への明示。


受動喫煙とは、他人の喫煙によって発生したタバコ(加熱式タバコも含む)から発生する煙に、自分の意思とは関係なくさらされることをいいます。


タバコの煙には大きく3種類あります。

【主流煙】吸い口のフィルター部分から吸い込んだ煙

【副流煙】タバコの先端から発生する煙

【呼出煙】喫煙者が喫煙後に吐き出す煙


これらの煙にはニコチンやタール、一酸化炭素など多くの有害化学物質も含まれており、喫煙者への影響はもちろんのこと、受動喫煙による健康への影響も科学的に証明されています。


受動喫煙は、肺がんや脳卒中、虚血性心疾患などの疾患の原因となったり、死亡や障害を引き起こすなど、健康上や子どもの発育上のリスクを高めます。


今回の記事では、学校や病院、行政機関を除く企業や個人事業主等(以下、企業等)に求められる、受動喫煙に関する基本知識や求人票への明示について解説します。



2020年4月、原則屋内喫煙禁止



2020年4月に全面施行された改正健康増進法では、のぞまない受動喫煙をなくすため、2人以上が同時または入れ替わり利用するオフィス、事務所、工場、飲食店などで、一定の基準を満たす場所を除き屋内での喫煙を禁止しています。


なお、改正健康増進法には罰則があります。


喫煙禁止場所での喫煙や喫煙器具・設備等の撤去がなされていないときや、一定の基準を満たさない喫煙室を設置しているときなどの義務違反時には、法令等で指導や命令等、50万円以下の過料が課せられる可能性があります。



企業が行う施設・設備面での受動喫煙防止策



企業には、敷地内全面禁煙、屋内全面禁煙のほか、事業内容や経営規模への配慮をもとにした空間分煙などの喫煙室の設置が認められており、いずれかを選択します。

現状にあわせて、施設・設備面の対策を検討ください。


1 敷地内全面禁煙

企業等の屋外も含めて、敷地内すべてを禁煙にします。

受動喫煙を完全に防止でき、設備投資が不要というメリットがあります。

喫煙者である従業員への周知と理解が必要になります。


2 屋内全面禁煙(屋外喫煙所の設置)

法令等では、企業等の施設は原則屋内禁煙になっていますが、敷地内は禁止ではないため、屋外喫煙所の設置は可能です。

喫煙室を設けるよりも受動喫煙防止の効果は高いです。

しかし、屋外に喫煙所を設ける必要があるため、タバコの煙が屋内や近隣への流入や、就業場所からの距離があることで労働時間ロスが発生しないかなどを考え、設置場所には注意が必要です。


3 喫煙専用室(すべての企業等の施設で可能)

受動喫煙防止のため、施設内の一部で一定の基準を満たし、空間分煙をする方法です。

設備投資や換気装置の電気代などの維持費が必要になりますが、喫煙者と非喫煙者の双方の理解を得やすいです。


喫煙専用室は、オフィス、事務所、工場、飲食店などでタバコの煙の流出防止にかかる技術的基準を満たせば施設の一部に設置できます。

喫煙はできますが、喫煙専用室内での飲食はできません。


【タバコの煙の流出防止にかかる技術的基準】



4 加熱式タバコ専用喫煙室(すべての企業等の施設で可能)

喫煙専用室と同じく空間分煙をする方法です。

加熱式タバコ専用喫煙室は、加熱式タバコのみの喫煙に限定し、オフィス、事務所、工場、飲食店などで加熱式タバコの煙の流出防止にかかる技術的基準を満たせば、施設の一部に設置できます。飲食を行うことも認められています。

加熱式タバコの煙の流出防止にかかる技術的基準は、喫煙専用室の技術的基準と同様です。


5 喫煙目的室 (喫煙をする場所を提供することを主な目的の施設のみ可能)

喫煙目的室は、喫煙をする場所の提供を主な目的としているシガーバーや、店内で喫煙可能なタバコ販売店、公衆喫煙所をいいます。

施設の営業のために広告や宣伝を打つときは、喫煙目的室設置施設であることを明らかにしなければなりません。

飲食を行うこともできますが、米飯類、パン類、麺類など主食と認められる食事はできません。


6 喫煙可能室(既存特定飲食提供施設のみ可能)

規模の小さい飲食店については、飲食を提供できる喫煙可能室を設置できるという経過措置があります。


喫煙可能室の設置は、以下のすべてに該当する飲食店のみです。

①2020年4月1日時点で、営業している飲食店である

②個人または資本金 5,000万円以下の中小企業が経営している

➂客席面積が100㎡以下である


施設の営業のための広告や宣伝を打つときは、喫煙可能施設であることを明らかにしなければなりません。

また、既存特定飲食提供施設の要件に該当することを証明する書類を備え、保存しなければなりません。






20歳未満の従業員は喫煙室へは立入禁止



いずれの喫煙室へも20歳未満は立入禁止です。

タバコには依存性があり、喫煙開始年齢が低いほど健康への悪影響が大きくなります。

来店客のほか、従業員であっても接客や清掃など喫煙を目的としない業務を理由に喫煙室に立ち入らせることはできません。20歳未満の従業員を雇用する企業等は、勤務シフトや勤務フロア、導線など喫煙区域に立ち入る必要のないように工夫が必要です。

20歳未満の者の喫煙室への立入禁止に違反した場合は、行政指導や助言の対象になります。



施設内に喫煙室を設置するときは標識の掲示が義務付け



施設内に喫煙室を設置する企業等は必ず「施設内の喫煙室」「施設に喫煙室があること」を示す標識の提示をしなければなりません。


【「施設内の喫煙室」を示す標識】

喫煙室の出入口の扉の表側など、見やすい箇所に掲示してください。



【「施設に喫煙室があること」を示す標識】

施設に入るときに掲示された標識が目につくよう、受付や施設玄関横の外壁部分などの箇所に掲示してください。また、喫煙可能エリアへの20歳未満立入禁止の表示もあわせて表示ください。


必要事項が識別できれば、施設の様態にあわせた独自の配色で作成しても差し支えありません。

しかし、紛らわしい標識の提示や標識の汚損等については禁止されており、罰則(指導および50万円以下の過料)の対象になります。


以下のサイトの標識を参考にしてください。



すべての企業等は求人票には受動喫煙防止対策の明示が必要



すべての企業等は、求人票に就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項を明示する必要があります。

屋内禁煙にしている企業も含みます。




【特記事項への記載例】

・施設の敷地内または屋内を全面禁煙としている

・施設の敷地内または屋内を原則禁煙とし、喫煙専用室を設けている

・施設の屋内で喫煙が可能である など



働く従業員への受動喫煙対策


改正健康増進法や労働安全衛生法では、企業に対し受動喫煙防止のための措置が求められています。


【受動喫煙防止対策の取組例】

・企業内の喫煙に関する実情の把握

・職場の受動喫煙防止推進計画の策定

・企業の状況に応じて喫煙禁止場所の特定、喫煙室の検討

・喫煙や受動喫煙による健康への影響など講習会

・禁煙外来の費用補助の制度化

・勤務シフト、施設内レイアウトの工夫 など



まとめ


2019年の厚生労働省の調査によれば、20歳以上の人のうち、16.7%の人たちが習慣的に喫煙しています。

健康への意識の高まりもあり、喫煙者数は10年前の23.4%に比べ減少傾向にあります。

今回は、2020年4月に全面施行された改正健康増進法をもとに、受動喫煙の基本知識をご紹介しました。

企業内の喫煙者と非喫煙者がともに働きやすい職場環境となるよう、受動喫煙についての正しい知識を身につけ、企業内での受動喫煙防止にお役立てください。

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