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従業員代表者の選任方法と、不適切な選任によるリスク。



従業員代表者とは、法令等上での「従業員の過半数を代表する者」を指します。


労使協定の締結は、原則として労働者の過半数で組織する労働組合と締結しますが、その労働組合がないときに選出するのが従業員代表者です。


法令で定められた方法で選出しなければ企業にリスクが生じるため、労務担当者は正しい知識を持っておく必要があります。


●従業員代表者の役割


従業員代表者は、労働組合がない企業の従業員の意見を取りまとめる役割です。

就業規則を作成・変更したときに労働基準監督署へ届出時に添付する「意見書」への意見の記載なども行います。


労使の集団的合意が必要なときは、従業員代表者と企業が話し合いを行い、署名または記名・押印をして労使協定を締結します。


法令等上で締結する労使協定は様々(※)ですが、よく知られているのは「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」です。


※企業と従業員代表者が締結する労使協定等の種類

・時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)

・就業規則の意見書

・年次有給休暇の計画的付与

・賃金控除

・育児・介護休業の適用除外

・一斉休憩の適用除外 など



●従業員代表者になれる人


従業員代表者は、正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、事業場の全従業員の過半数の支持を受ける従業員から選出されます。

管理監督者や使用者が一方的に選出した従業員は、選出対象にはなれません。


従業員代表者は「事業場単位」での選任が必要です。

事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等の一定の場所において密接に関連する組織のもとに継続的に行なわれる作業の一体をいいます。


原則として、同一場所にあるものは一つの事業場、場所的に分散しているものは別の事業場と考えられます。


しかし工場内の診療所や食堂など、同じ場所にあっても労働の状態や業態が大きく異なっているときは、別の事業場となります。


また別の場所にあっても、規模が小さいときや一つの事業場としての独立性がないときは、組織的な関連や事務能力などを勘案し、直近上位の事業場とまとめて一つの事業場として扱います。 



●従業員代表者の選出方法


従業員代表者の選出方法には法令等上の定めがあり、労使協定に規定する内容を明確にして選出をしなければなりません。


そのうえで、従業員の話し合いや選挙による投票、持ち回りなど、従業員の過半数から支持されていることが明確な、民主的な方法で選出を行ってください。


使用者が「従業員代表者は〇〇さんで進めてほしい」など選出に意見を述べたり、使用者の意向に沿って選出されたときは、適切に選出されていないと判断されます。


使用者は選任された従業員代表者がスムーズに役割を遂行できるよう、社内のインターネットの使用や事務機器の貸与、事務スペースの提供などの配慮を行う必要があります。


また従業員代表者になろうとした者、従業員代表者として正当な行為をした者に対し、賃金の減額や降格などの不利益な取扱いをしてはいけません。



●適正に従業員代表者が選出されていないときのリスク


労使協定が適正に締結されることにより、企業は法令等違反についての罰則を免除されます。


労使協定が適正に締結されていないと評価されるケースの多くが、「適正に労働者代表者が選出されていない」です。


つまり、適正に従業員代表者を選出しないこと自体についての罰則はありませんが、適正に従業員代表者を選出していなければ労使協定が無効となり、結果として企業は何らかの罰則を受ける結果になってしまいます。


なお、労使協定を締結できる内容は無制限ではありません。

労使協定の締結によって法令上の制限をなくすことができる事項は、法令等で定められたものに限られます。



【例】36協定が無効になったとき

労働基準法違反:罰則6か月以下の懲役または30万円以下の罰金


労働基準法上、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えての労働(時間外労働)や、休日労働(法定休日労働)はできないと定められており、違反すると上記の罰則が適用される可能性があります。


しかし36協定(労使協定)を締結すれば、法定労働時間を超えて労働させたとしても罰則の適用が免除されます。


しかし締結時の従業員代表者の選出が不適切であったと判断されたり、限度時間(月45時間、年間360時間)を超える36協定は無効となり、罰則が適用されます。

※36協定は労使協定を締結後、管轄の労働基準監督署へ届出が必要です。



●従業員代表者と締結した労使協定の効力はどこまであるのか


労使協定の効力は「免罰効果」に留まります。

免罰効果とは、法令違反があったとしても「罰則は適用しない」ということです。


36協定を締結したからといって、当たり前のように残業命令ができるわけではありません。実際に残業命令をするためには、個別の契約で同意をとるか、就業規則に「労使協定に定めた範囲内の時間で残業をさせることがある」などの定めを設ける必要があります。



まとめ


労働組合がない企業にとって、従業員代表者の選出は労使協定を締結するうえで必要です。そのため、企業が優位に労使協定を結べるように、従業員代表者を指名して選出しているケースが見受けられます。


しかし労使協定は従業員の労働環境に影響を及ぼす大切な約束です。従業員が安心して働ける職場づくりのためにも、従業員代表者を適正に選出し、従業員側からの意見を反映できるようにされることをおすすめします。


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