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出産手当金の基礎知識。(「出産手当金支給申請書」書き方ガイド付)




従業員の出産に伴い、企業にはさまざまな手続や対応が求められます。

健康保険にも数々の給付がありますが、その一つに出産手当金があります。


今回の記事は、協会けんぽの出産手当金の制度概要や手続きの流れについて説明します。



出産手当金とは



出産手当金とは、健康保険の被保険者である従業員が

出産のために仕事を休み、そのあいだに給与の支払いを

受けられない場合に生活保障として受けることができるお金です。


出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)

以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目まで

休んだ期間、出産手当金が支給されます。

 


出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。

なお、出産日は産前期間に含まれます。




(出典)協会けんぽ『協会けんぽ GUIDE BOOK』P51



出産手当金の支給条件と支給額の計算方法



出産手当金の支給条件や支給額の計算方法を説明します。


【支給条件】

以下のすべての条件を満たす場合は、出産手当金が支給されます。


(出典)協会けんぽ『健康保険 出産手当金支給申請書 記入の手引き』


【1日あたりの支給額の計算方法】

出産手当金の支給額は、支給開始日を含んだ月以前の

継続した12か月間の標準報酬月額をもとに、1日あたりの金額を計算します。



1日あたりの支給額の計算には、以下のようなパターンがあります。


例1 支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額がすべて同じだった場合


 ① 28万円 ÷ 30日 = 9,333.333 ≒ 9,330円(1の位を四捨五入)

 ② 9,330円 × 2/3 =6,220円

 1日あたりの支給額:6,220円


例2 支給開始日以前の12か月間で標準報酬月額が変更している場合の1日あたりの支給額


 ①(26万円 × 5か月 + 28万円 × 7か月)÷ 12か月 ÷ 30日 = 9,055.555円 ≒ 9,060円

 ② 9,060円× 2/3 = 6,040円

 1日あたりの支給額:6,040円


例3 支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合

入社まもない従業員など、支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たないときは、次の(A)と(B)を比べていずれか低い方の標準報酬月額を使用して計算します。


 (A)支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額を平均した額

  28万円 × 7か月 ÷ 7 = 28万円


 (B)当該年度の前年度9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額を平均した額

  30万円(2022年度の9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額の平均額)


  ※年度により平均額が変更となりますので、協会けんぽのサイトにて確認ください。


(A)と(B)を比べて低い方の標準報酬月額を計算に使用→28万円

 ① 28万円 ÷ 30日 = 9,333.333 ≒ 9,330円(1の位を四捨五入)

 ② 9,330円 × 2/3 =6,220円

 1日あたりの支給額:6,220円



出産手当金の申請手続の流れ



1 従業員の出産予定日と産後休業期間を確認する

従業員に出産予定日を聞いて、産前産後休業期間を計算します。

法令で定められた産前産後休業は、産前42日(6週間)から産後56日(8週間)です。


【例】

出産予定日:2023年10月4日

産前休業期間:8月24日~10月4日

産後休業期間:10月5日~11月29日

産前産後休業期間の確認は、以下のサイトをご活用ください。

参考 | 厚生労働省『産休・育休はいつから?産前・産後休業、育児休業の自動計算』


産前休業は従業員の申出により開始されます。

体調がよければ出産日近くまで働くことを希望する従業員もいます。


また、母子の健康状態によっては主治医から法令等の基準よりも

早めに休業に入るよう指示を受ける場合があり、

そのときは指示に従い産前休業を取得させる必要があります。


産前産後休業申請書など、書面(任意書式)で提出してもらうと聞き間違いなどを防止できるためおすすめです。

参考・ダウンロード | 産前・産後休業申請書


2 出産手当金の申請書を準備する

「出産手当金支給申請書」は3枚で1セットです。

産後休業終了1週間前までに、従業員へ「健康保険出産手当金申請書」の1

枚目(被保険者記入用)、2枚目(被保険者・医師・助産師記入用)を渡します。


申請書2枚目は医師・助産師の証明が必要になるため

従業員が医療機関に持参し、医師等に記入してもらいます。


出産手当金を産前分で申請をするときは、「よくある質問 3 出産手当金の分割申請」をご覧ください。


3 出産日を確認し、申請書を作成する

従業員から出産の連絡を受けたら、出産日を確認し、産後休業期間を確定させます。

そして、2で渡した「健康保険出産手当金申請書」2枚を

従業員から受け取り、3枚目(事業主記入用)を作成し申請書を完成させます。


4 協会けんぽに申請する

「健康保険出産手当金申請書」の3枚すべての記入ができたら、以下の方法で申請します。


申請期限:出産のため働くことができなかった日ごとにその翌日から2年以内

申請先:協会けんぽ

申請方法:郵送


企業控が必要なときは、コピー1部と切手を貼った

返信用封筒を同封しておきます。

窓口でも受付をしていますが、時期によっては混雑することがあるため

郵送での手続をおすすめします。


5 支給開始

申請してから支給決定までは、約1〜2か月かかります。

支給決定がされたら、従業員本人の自宅に通知書が届き、

支給決定から1週間以内には従業員の振込口座に出産手当金が振り込まれます。


ただし、年末年始などの混み合う時期は遅れる可能性があるため注意が必要です。



よくある質問



出産手当金の申請のときに、企業や従業員が悩むポイントを3つご紹介します。


1 退職後の継続給付

退職後であっても、以下3つの要件をすべて満たす場合は、出産手当金の支給を受けることができます。


①被保険者の資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間がある

ただし「継続して1年以上」の被保険者期間に、任意継続被保険者であった期間は含みませんのでご注意ください。


②被保険者の資格喪失日の前日(退職日)が、出産手当金の支給期間内である

出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までに退職していれば、退職後の継続給付の対象になります。


③被保険者の資格喪失日の前日(退職日)に働いていないこと

退職日当日に働いていた場合は、退職後の継続給付を受けることはできません。つまり退職日当日は、欠勤や有給休暇などで仕事を休んでいれば、継続給付の対象になります。

参考 | 協会けんぽ『協会けんぽ GUIDE BOOK』P51


2 傷病手当金との調整

妊娠時の体調には個人差があり、母子の健康状態により主治医から

法令等の基準よりも早めに休業に入るよう指示を受ける場合があります。

産前休業前に休業するときは、傷病手当金が申請できます。


ただし、傷病手当金と出産手当金は併給できず、出産手当金が優先して支給されます。

出産手当金の額が傷病手当金の額よりも少ない場合には

傷病手当金を申請することにより、出産手当金との差額が支給されます。


3 出産手当金の分割申請

出産手当金は、産前分、産後分など複数回に分けて申請できます。

ただし、事業主の証明欄については、申請ごとに証明が必要です。


なお、1回目の申請が出産後、かつ申請書2枚目の

「医師・助産師の証明」により出産日などが確認できるときは、

2回目以降の申請で「医師・助産師の証明」を省略することができます。



協会けんぽの「出産手当金支給申請書」の書き方



2023年1月より、協会けんぽの17の各種申請書(届出書)が変更となり、

出産手当金についても新様式が発表されています。


出産手当金支給申請書は、旧様式と比べてさまざまな箇所が変更となっています。

新様式に対応した「出産手当金支給申請書の書き方ガイド」を活用し、スムーズな手続を行ってください。

参考・ダウンロード|『健康保険 出産手当金支給申請書 書き方ガイド』


なお、旧様式での申請も可能ですが、新様式を使用したときと比べて

事務処理等に時間を要することがあるため、新様式での申請をおすすめします。



まとめ



出産に伴う手続や対応は多岐に渡りますが、出産手当金は

手続きの流れをおさえれば難しいものではありません。


今まで出産手当金の手続がなかった企業や男性従業員のみの企業でも、

女性従業員を雇用した際は、手続の可能性が出てきます。


この記事や書き方ガイドを活用いただき、日々の業務にお役立てください。


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