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【厚労省発表】労働に関する現状・課題



厚生労働省から毎年発表される、前年の労働に関する現状や課題を

まとめた「労働経済の分析」で、2021年についての発表がありました。


新型コロナウイルス感染症の影響がまだまだ残ってはいるものの、

緊急事態宣言の解除以降は、就業者数、雇用者数や求人について

回復に向けた動きがでてきています。


この記事では、厚生労働省の発表を元に、今後の労働経済の動向などをまとめました。



労働時間・有給休暇の動向



【労働時間】

2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために発出された

緊急事態宣言の影響もあり、一般労働者(短時間労働者以外)の年間出勤数が

2019年より減少し、それに伴い所定内労働時間、所定外労働時間も減少となっています。


2021年は緊急事態宣言等の期間が限定的だったため、年間出勤日数が増加し

所定内労働時間、所定外労働時間が増加となりました。


しかし、感染拡大前の2019年以前と2021年の月間総実働労働時間を比較してみると

2019年以前より低い水準となっており、要因としては働き方改革の進展等に加えて

新型コロナウイルス感染症による影響も考えられます。





【年次有給休暇】

年次有給休暇の取得状況では、働き方改革の取り組みなどが功を奏し取得率が

50%を超えています。

企業規模が大きくなるにつれて取得率が高くなっており、男女別の取得状況は

男性が55%、女性が60.1%です。


業種別では「情報通信業」「製造業」などの取得率が高く、「建設」「卸売業、小売業」

「宿泊業、飲食サービス業」などは取得率の平均値を下回っていますが

年次有給休暇を年5日取得義務化がスタートした2019年以降は

取得率は上昇傾向にあります。





賃金の動向



2021年の現金給与総額は増加となりましたが、特別給与(賞与など)の減少などが

影響し、新型コロナウイルス感染症拡大前と比較すると低い水準となっています。

現金給与総額とは、税金や社会保険料等の給与から控除する前の金額です。


【最低賃金はどこまで上がるのか】

最低賃金は毎年上がり続けており、2021年度と2022年度を比較すると

全国加重平均額が31円アップの961円となっています。


2016年の閣議決定では「年率3%程度、全国加重平均1,000円を目指す」とされましたが

2022年の閣議決定では「できるだけ早く全国加重平均1,000円以上になることを目指し、

引き上げに取り組む」とされたため、2023年も引き上げが予想されます。


引き上げ額は、生活費、賃金、企業の賃金支払能力などを考慮しながら決定されます。

全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数に最低賃金を掛けて平均した金額です。


【例】

A県:最低賃金 1,000円・・a

   労働者数 150名・・・b

B県:最低賃金 900円・・・c

  労働者数 100名・・・d


(a 1,000円 × b 150名)+(c 900円 × d 労働者数100名)=240,000円・・・e

e 240,000円 ÷(b 150名+d 100名)=960円・・・全国加重平均額



求人等の状況



2021年9月末に緊急事態宣言等が解除されて以降は、就業者数、雇用者数や

求人で回復に向けた動きがみられました。


2021年は新規求人数は年平均で前年を上回り、有効求人数も増加しており

有効求職者数(ハローワークに登録している求職者数)も増加しています。







転職者、転職希望者の状況



転職者、転職希望者の状況は男女で傾向が異なります。

転職希望者の割合は55歳以上を除いたいずれの年齢階級でも男性より

女性の割合が高く、男女ともに年齢が上がるにつれて低下傾向にあります。


転職希望者のうち実際に転職活動をしている者(転職活動移行者)の割合は

男女ともにおおむね低下、2年以内に転職を実現させている割合は男女ともに

54歳以下までは低下となっており、55歳以上では上昇しています。




転職希望者の割合を役職別にみると、男性の転職希望者は「役職なし」と比較して

「係長・主任クラス」「課長クラス」「部長クラス」は低下しており、

役職が上がるにつれては転職希望者も低下しています。


「係長・主任クラス」「課長クラス」では、転職希望者のうち転職活動への

移行や2年以内に転職を実現した者が少ない傾向が見られます。


女性では、男性と同様に役職が上がるにつれて転職希望者が低下し、

2年以内の転職者については「係長・主任クラス」「課長クラス」の役職者が

低くなっています。

転職活動移行者の割合は「役職なし」と比較すると低下はみられません。





キャリア形成に向けた課題とは



キャリアの見通しや、そのための自己啓発は個人だけでできる取り組みではなく、

環境が重要です。

キャリアの見通しの取り組みとしてキャリアコンサルティングがあります。

キャリアコンサルティングは労働者の職業選択、職業設計、職業能力の開発・向上に

かかわる相談に対して助言・指導を行います。


キャリアコンサルティングを通して労働者が自身の適正や能力、関心などに気づき、

自己理解を深めることにより「自らの職業設計を考えていきたい」と考える割合が

高くなります。


またキャリアコンサルティングを受けた経験がある者は、現在の仕事内容や

職業生活全般の満足度や自己啓発の意識が高い傾向にあります。



労働力の需要が見込まれる人材



少子高齢化に直面している状況下では介護人材の確保、第4次産業革命の進展には

IT人材の確保が必要となります。

どちらも中長期的に大きな課題です。


介護人材の必要数は2040年には280万人と推計されており、IT人材は市場規模の成長が

低かったとしても16万人程度、高かったときは79万人程度不足すると推計されています。


2030年までには16万人〜79万人程度の人材が不足すると推計されており

育成が課題になってきています。




介護人材の離職率低下や人材の確保のため、以前からさまざまな対策が取られており

毎年対策が検討されています。


【介護人材への対策】

・介護職員の処遇改善加算(賃金水準の改善)

・外国人材の受入れ

・研修費用の貸付 など


IT人材については、育成費用が対象になる助成金ができており、上乗せがある助成金も

用意されています。


比較的よく利用される助成金を以下に記載しています。


【人材開発支援助成金】

従業員に対して、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるために

計画にそった訓練等を実施したとき、かかった経費や訓練期間中の賃金の一部が

助成されます。


助成金の対象となる訓練は9コースに分かれており、IT人材の育成に伴い新しいコースが

追加されました。

コースや要件の詳細は厚生労働省サイトを参照にしてください。



【キャリアアップ助成金 正社員化コース】

有期契約労働者等を正社員へ転換したときに対象になる助成金です。

正社員コースの受給額には加算制度があり、人材開発支援助成金のうち

一定の訓練を終了した有期契約労働者等が対象となります。

加算額については以下の表を参考にしてください。



※無期雇用契約から正社員へ転換するときは助成額が1/2になります。

※生産性要件を満たせば助成額に別途上乗せがあります。


助成金は要件が細かいため進めるときは事前に、管轄の窓口(労働局、ハローワーク)

または社会保険労務士へご相談ください。



まとめ



新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、感染症を踏まえた働き方、事業活動が

定着しつつあります。


企業の倒産件数は2009年の15,480件以降減少で推移しており、2021年は6030件と

なっています。

これは、1964年の4,212件に次ぐ57年ぶりの低水準です。


その背景には、雇用調整助成金の特例措置などの各種支援策の下支えがあったものと

考えられます。

労働市場は変化していきますので、支援策などの情報を取得しながら対策を

取られることをおすすめします。

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