パターン別【離職証明書の書き方】
- 2023年4月14日
- 読了時間: 8分
更新日:1 時間前

従業員の退職時に離職票の発行を希望された場合、
企業は「離職証明書」を作成し、ハローワークへ提出しなければなりません。
離職証明書の左側にある
「離職日以前の賃金支払い状況」は、
退職者の勤務形態や給与体系によって記入方法が大きく異なるため、ミスが起きやすい難所です 。
本記事では、実務でよく遭遇する5つのイレギュラーパターンを取り上げ、それぞれの具体的な記入ルールと背景を分かりやすく解説します 。
パターン1:日給月給制で「欠勤控除」があった月
完全月給制(欠勤しても減額なし)とは異なり、
遅刻や欠勤に応じて基本給からマイナスする
「日給月給制」の場合は注意が必要です 。
基礎日数のカウント: 「⑨欄(被保険者期間算定対象期間の基礎日数)」および「⑪欄(賃金支払対象期間の基礎日数)」には、歴日数から実際の欠勤日数を差し引いた日数を記入します 。
賃金額の記入: 「⑫欄(賃金額)」には、欠勤控除を行った後の実際に支給された金額を記載します 。
備考欄への明記: 「⑬欄(備考)」には、欠勤日数を必ず書き添えてください 。
💡 知っておきたい実務ポイント: 離職した月の給与がまだ確定していないタイミングで提出する場合は、⑫欄に「未計算」と記入すればハローワークに受け付けてもらえます 。
【見本】日給月給制・欠勤控除がある場合の記入例
【前提条件】
離職日:2023年9月30日
給与体系:日給月給制(欠勤控除あり)
給与締切日:毎月25日
基本給:月額 250,000円
欠勤:6月5日〜6月9日の5日間(マイナス50,000円支給)
⑧ 被保険者期間 算定対象期間 | ⑨ 賃金支払 基礎日数 | ⑩ 賃金支払対象期間 | ⑪ 基礎日数 | ⑫ 賃金額(A欄) | ⑬ 備考 |
9月1日 〜 9月30日 | 5日 | 9月26日 〜 9月30日 | 5日 | 未計算 | (離職月・未確定) |
8月1日 〜 8月31日 | 31日 | 8月26日 〜 9月25日 | 31日 | 250,000 | |
7月1日 〜 7月31日 | 31日 | 7月26日 〜 8月25日 | 31日 | 250,000 | |
6月1日 〜 6月30日 | 30日 | 6月26日 〜 7月25日 | 30日 | 250,000 | |
5月1日 〜 5月31日 | 26日 | 5月26日 〜 6月25日 | 26日 | 200,000 | 欠 5日 |
4月1日 〜 4月30日 | 30日 | 4月26日 〜 5月25日 | 30日 | 250,000 | |
3月1日 〜 3月31日 | 31日 | 3月26日 〜 4月25日 | 31日 | 250,000 |
パターン2:離職日の翌日に応答する日が「存在しない月」がある場合
離職証明書の「⑧欄(被保険者期間算定対象期間)」は、
原則として離職日から1か月ずつさかのぼって期間を記入していきます 。
しかし、退職日が「30日」の場合、翌日は「31日」となるため、
31日が存在しない月(2月、4月、6月、9月、11月)の扱いに迷うことがあります 。
月によって日付がない時のルール: 31日がない月については、一律で「その月の末日」を記入すれば問題ありません 。
うるう年の注意点: 記入対象となる年にうるう年が含まれている場合は、2月の末日を「29日」とするのを忘れないようにしましょう 。
【見本】離職日の翌日に応答する日がない月の記入例
【前提条件】
離職日:2023年10月30日 (離職日の翌日:10月31日 )
給与体系:日給制(日額 6,000円、残業代あり)
給与締切日:毎月20日
⑧ 被保険者期間 算定対象期間 | ⑨ 賃金支払 基礎日数 | ⑩ 賃金支払対象期間 | ⑪ 基礎日数 | ⑫ 賃金額(A欄) |
10月1日 〜 10月30日 | 6日 | 10月21日 〜 10月30日 | 6日 | 47,850 |
8月31日 〜 9月30日 | 21日 | 9月21日 〜 10月20日 | 21日 | 167,475 |
7月31日 〜 8月30日 | 24日 | 8月21日 〜 9月20日 | 24日 | 191,400 |
6月30日 〜 7月30日 | 18日 | 7月21日 〜 8月20日 | 18日 | 143,550 |
5月31日 〜 6月29日 | 24日 | 6月21日 〜 7月20日 | 24日 | 191,400 |
4月30日 〜 5月30日 | 21日 | 5月21日 〜 6月20日 | 21日 |
パターン3:「残業代(変動給)のみ翌月払い」にしている場合
「基本給は当月払い、残業代などの変動給は集計の都合上、翌月に支給する」
という企業は少なくありません 。
ここで重要なのは、離職証明書は給与の「支払い月基準」ではなく、
「その期間に実際に働いた分の賃金」を記入するという原則です 。
割り戻しの計算: 翌月に支払われた残業代は、実際にその時間外労働を行った対象期間の賃金(⑫欄)に組み戻して合算・記入しなければなりません 。
例)6月15日支給の内訳 = 6月の基本給:210,000円・5月の残業手当:20,000円
7月15日支給の内訳 = 7月の基本給:210,000円・6月の残業手当:5,000円
6月の欠勤控除:-10,000円
→ 離職証明書に記入する6月分賃金 = 205,000円
退職月の未確定分: 直近(退職月など)の残業代がまだ計算できていない場合は、前述の通り該当欄を「未計算」として処理します 。
パターン4:在職中に「月給制から日給制」へ変更があった場合
異動や雇用形態の変更にともない、途中で給与体系が変わったケースです 。
基礎日数のカウント方法が変わるだけでなく、金額の書き分けが必要になります 。
A欄・B欄の使い分け: * 月給制の期間: 賃金はすべて「A欄」に記入します 。
日給制への変更後: 毎月定額で支給される手当は「A欄」、日給分や残業代などの変動給は「B欄」へと分けて記入します 。
変更内容の明記: 支払い形態が変わった最初の月の「⑬欄(備考)」には、「日給制へ切替」と記入し、ハローワーク側に変更があった旨が伝わるようにします 。
【見本】月給制から日給制に変更があった場合の記入例
【前提条件】
離職日:2023年9月30日 / 給与締切日:毎月末日
6月30日まで(変更前・月給制):
基本給 210,000円、通勤手当 5,000円、家族手当 10,000円(合計 225,000円)
7月1日から(変更後・日給制):
日額 9,000円、通勤手当 5,000円、家族手当 10,000円 + 残業代あり
⑧ 被保険者期間 算定対象期間 | ⑨ 賃金支払 基礎日数 | ⑩ 賃金支払対象期間 | ⑪ 基礎日数 | ⑫ 賃金額(A欄)※月決め固定手当 | ⑫ 賃金額(B欄)※日給分・残業代 | ⑫ 賃金額(計) | ⑬ 備考 |
9月1日 〜 9月30日 | 21日 | 9月1日 〜 9月30日 | 21日 | 15,000 | 197,000 | 212,000 | |
8月1日 〜 8月31日 | 21日 | 8月1日 〜 8月31日 | 21日 | 15,000 | 197,000 | 212,000 | |
7月1日 〜 7月31日 | 22日 | 7月1日 〜 7月31日 | 22日 | 15,000 | 207,500 | 222,500 | 日給制に切替 |
6月1日 〜 6月30日 | 30日 | 6月1日 〜 6月30日 | 30日 | 225,000 | 0 | 225,000 | |
5月1日 〜 5月31日 | 31日 | 5月1日 〜 5月31日 | 31日 | 225,000 | 0 | 225,000 | |
4月1日 〜 4月30日 | 30日 | 4月1日 〜 4月30日 | 30日 |
パターン5:途中で「給与の締切日」を変更した場合
会社の規定改定などで、算定対象期間の途中に給与の締め日が変わった場合です 。
このときは、締め日が変わった前後の期間を正しく区切る必要があります 。
期間の区切り方: 新旧それぞれの給与締切日に基づいて、各期間を1行ずつ記入していきます 。
完全月の確保: 雇用保険の基本手当(失業保険)の計算対象となる、「賃金支払基礎日数が11日以上ある満1か月の期間(完全月)」がしっかり6か月分確保されているかを確認してください 。
備考欄への記載: 締切日を変更した該当の期間には、⑬欄へ「締切日変更」と明記します
【見本】給与の締切日に変更があった場合の記入例
【前提条件】
離職日:2023年10月15日 / 給与体系:日給月給制(基本給 月額300,000円)
7月まで: 「毎月末日」締め
8月以降: 「毎月20日」締め に変更
※8月1日〜8月20日の日割り給与は250,000円とする。
⑧ 被保険者期間 算定対象期間 | ⑩ 賃金支払対象期間 | ⑪ 基礎日数 | ⑫ 賃金額(A欄) | ⑬ 備考 |
9月16日 〜 10月15日 | 9月21日 〜 10月15日 | 25日 | 未計算 | (離職月・未確定) |
8月16日 〜 9月15日 | 8月21日 〜 9月20日 | 31日 | 300,000 | |
8月15日(※期間調整用) | 8月1日 〜 8月20日 | 20日 | 250,000 | 締切日変更 |
7月16日 〜 8月14日 | 7月1日 〜 7月31日 | 31日 | 300,000 | |
6月16日 〜 7月15日 | 6月1日 〜 6月30日 | 30日 | 300,000 | |
5月16日 〜 6月15日 | 5月1日 〜 5月31日 | 31日 | 300,000 |
産休・育休や病気欠勤で「30日以上給与がない」期間の特例
ケガ、病気、あるいは産前産後休業・育児休業といった理由で、引き続き30日以上給与が支払われなかった期間がある場合、一定の要件(最長4年まで)でその期間を算定対象期間に加算することができます 。
さらに、以下の証明書類(写し)を添付することで、
給与が支払われなかった期間の「⑧〜⑫欄」の記入を省略することが可能です 。
休職の理由 | 必要な添付書類(写し) | ハローワークへの特記事項 |
病気・ケガ(傷病) | 医師の診断書、または傷病手当金支給申請書など | ⑬欄(備考)に給与がなかった期間、日数、原因(「疾病の為」など)を記入 |
産休・育休 | 原則不要(育児休業給付金の受給履歴でハローワークが確認できるため)※受給していない場合は母子手帳や産休申請書など | ⑬欄(備考)に「産前産後休業の為」「育児休業の為」などと記入 |
⚠️ 注意:最終の退職月は省略不可
たとえ長期欠勤のまま退職した場合であっても、離職日を含む最後の1マスの期間だけは記入を省略できません 。
その期間の「基礎日数」は0日、「賃金額」は0円として必ず作成・提出してください 。
まとめ
今回の記事では、パターン別の離職証明書の書き方と記入例をご紹介しました。
離職証明書は、従業員の失業保険の受給額に直結するだけでなく、
記載内容一つで助成金の受給資格を失ったり、後の労働トラブルに発展したりするリスクも含んでいます。
「この離職理由で本当に問題ないか?」
「複雑な賃金計算でミスをしていないか?」
と不安を感じる場合は、
一人で抱え込まずに専門家へ相談することをおすすめします。
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