障害者の雇用義務人数と比較する「企業の実雇用人数」
「企業の実雇用人数」とは、企業で働く、障害をもつ従業員の数です。
障害者雇用率制度の対象となる常用雇用で働く従業員や、
その従業員のうち障害をもつ従業員(企業の実雇用人数)の算定は
少し複雑です。
次の「常用雇用で働く従業員数と企業の実雇用人数を
算定するために理解すること」で細かく説明します。
常用雇用の従業員数と実雇用人数の算定に必要な理解
「常用雇用で働く従業員」と「常用雇用で働く障害をもつ従業員の数
(企業の実雇用人数)」を算定するためには
制度上の対象者と従業員数の算定方法を理解する必要があります。
1 制度上の対象者を知る
制度上の対象者は、雇用形態に関係なく「常用雇用」の従業員です。
役員は含みません。
「常用雇用」とは、雇用期間の定めのない方や
1年以上雇用される見込みがある、または1年以上雇用されている方です。
パート・アルバイト、兼務役員、外務員、出向労働者、海外勤務労働者、
外国人労働者、派遣労働者(派遣元)、在宅勤務者、休職中の従業員も含まれます。
2 制度上の従業員数の算定方法を知る
1週間の所定労働時間数や障害の度合いによって算定方法が異なります。
具体的には、従業員1人を「1」「0.5」「2」という数で算定します。
【常用雇用で働く従業員数(常用雇用労働者・短時間労働者)】
常用雇用で働く従業員数は、常用雇用労働者と短時間労働者を
合計した数です。
常用雇用労働者と短時間労働者の違いは、1週間の労働時間数です。
1週間の労働時間が短い「短時間労働者」は、1人を「0.5」とみなして算定します。
すべての従業員数なので、障害をもつ従業員も加えてください。
【常用雇用で働く障害をもつ従業員数(企業の実雇用人数)】
常用雇用で働く障害をもつ従業員数は、1週間の労働時間数だけではなく、障害の度合いによって算定方法が異なります。
ポイント1 重度の身体障害者と重度の知的障害者は「2」で算定する
身体障害者と知的障害者で重度に該当するときは、1人を「2」とみなして算定します。
精神障害者には1人を「2」とみなす取扱いはありません。
(重度の身体障害者)身体障害者手帳1級、2級 および 3級相当の障害が2つ以上ある方
(重度の知的障害者)療育手帳区分A、または地域障害者職業センターなどで
重度の知的障害者と判定された方
ポイント2 特例措置の延長、20時間以上30時間未満の精神障害者は「1」で算定する
精神障害者の職場定着を進める観点から、20時間以上30時間未満の
精神障害者を 特例措置として1人を「1」とみなし算定してきました。
措置期限が2022年度末まででしたが、当面の間、雇入れ期間等に関係なく
「1」とみなす特例措置を延長することになりました。
ポイント3 2024年4月以降、1週間の労働時間が特に短い
一部の障害者も算定の対象になる
2024年4月以降、1週間の労働時間が10時間以上20時間未満であっても
重度の身体障害者、重度の知的障害者、精神障害者に該当するときは、
1人を「0.5」とみなし算定できるようになります。
障害者の雇用義務人数と企業の実雇用人数の算定例
常用雇用で働く従業員の勤務時間や障害者の障害種別などをふまえて算定すると
以下のようになります。
【除外率なしA企業の例】
1 障害者の雇用義務人数 4人
算定方法
常用雇用労働者150人+(短時間労働者50人×0.5)=175人
175人×2.3%=4.025人(小数点以下切り捨て)
2 企業の実雇用人数 4.5人
内訳 重度身体障害者「2」+身体障害者「1」+知的障害者「0.5」+精神障害者「1」
3 「1」障害者の雇用義務人数と「2」企業の実雇用人数の比較
障害者の雇用義務人数4人 < 企業の実雇用人数4.5人
→A企業は、障害者の法定雇用率を達成しています。
障害者雇用率が未達成のとき
障害者の法定雇用率で算定した障害者の雇用義務人数と
企業の実雇用人数を比較して、障害者の法定雇用率が未達成の場合は
障害者雇用納付金の徴収やハローワークによる行政指導など以下の対応がなされます。
【未達成のときのデメリット】
・常用雇用で働く従業員数が101人以上の企業のとき
障害者雇用納付金※を納付しなければならない
・ハローワークによる、法定雇用率達成に向けた行政指導が実施される
・障害者雇入れ計画の適正実施勧告に対し、改善されないとき企業名が公表される
※障害者雇用納付金
障害者の法定雇用率が未達成の企業のうち、常用雇用で働く従業員数が
101人以上の企業は、法定雇用率で雇用するべき障害者数に足りていない
人数1人につき月額50,000円の納付金を納付しなければなりません。
まとめ
障害者の法定雇用率の段階的引き上げにより、対象となる企業規模が拡大します。
すでに対象となっている企業も、障害者の雇用義務人数が増える可能性があります。
今回の記事をもとに、障害者の法定雇用率にともなう正しい算定の仕方を
早い段階で確認し、まずは対象かどうかと雇用義務人数を把握してください。
そして採用計画などの見直しが必要であればハローワークや高齢・障害者・求職者雇用支援機構などの情報を活用し、自社にあった障害者雇用を検討してください。
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