毎年度実施されている、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)の
「被扶養者資格の再確認」が今年度も行われます。
協会けんぽのまとめによると、2022年度の被扶養者資格を再確認した結果、
約7.8万人が被扶養者から削除となり、約9億円の前期高齢者納付金の負担削減効果が
見込まれています。
こうした数字からも分かるように、被扶養者資格の再確認は、保険給付の適正化や
保険料負担の軽減を図るための非常に大切な手続です。
今回の記事では、協会けんぽに加入している企業の実務担当者が理解しておくべき
ポイントを解説します。
なお、健康保険組合でも同様に被扶養者資格の再確認が実施されますが、実施時期や
確認方法はご加入の健康保険組合にご確認ください。
被扶養者状況リストの到着
2023年10月25日から11月13日にかけて、協会けんぽから企業宛に被扶養者状況リストなどの書類が届く予定です。
企業はこの被扶養者状況リストをもとに、被扶養者資格の再確認を進めていきます。
再確認ができない状態が続く被扶養者については、法令等により被保険者証が無効となる
可能性もありますので必ず提出してください。
なお、再確認の対象となる被扶養者がいない事業所には書類は発送されないため、
今回の再確認および提出は不要です。
1 再確認の対象となる被扶養者
対象は、2023年9月16日現在の被扶養者です。
ただし、以下の被扶養者は対象外のため再確認は不要です。
(被扶養者状況リストの備考欄に「確認不要」の印字がされています。)
・2023年4月1日において18歳未満の被扶養者
・2023年4月1日以降に被扶養者となった人
2 書類の種類
届く書類は以下のとおりです。このうち記入および提出が必須なものは被扶養者状況リスト
です。
①被扶養者状況リスト(2枚複写)
②リーフレット
③被扶養者調書兼異動届
④被扶養者現況申立書
⑤返信用封筒
3 提出期限
2023年12月8日(金)
再確認の実施方法
リーフレットに再確認の手順が記載されています。大まかな流れは以下のとおりです。
①確認区分の確認
②認定要件の確認
③確認結果を被扶養者状況リストに記入
④提出書類の準備
⑤提出書類の郵送
確認区分の確認
協会けんぽでは、マイナンバー情報の照会により取得した被扶養者情報をもとに、
被扶養者を6種類の区分(「同居」「別居」「要同居」「海外在住」「資格重複」
「判定不能」)に分けています。
この区分を確認区分といいます。
確認区分は、被扶養者状況リストの「確認区分」欄に記載されています。
記載の確認区分が現在の状況と異なる場合、二重線で抹消のうえ、正しい確認区分を
記入してください。
認定要件の確認
被扶養者認定要件(以下、認定要件)とは、今後も継続して被扶養者となるために
確認が必要な要件です。
認定要件は確認区分によって異なります。被扶養者ごとに、どの認定要件を確認しなければ
ならないか把握し、被保険者である従業員に対し、文書または口頭により必要事項を
確認してください。
なお、協会けんぽより、文書で確認するときに使用できる調査票が紹介されていますので
参考にしてください。
参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者資格再確認調査票 表(Excel)』
参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者資格再確認調査票 裏(PDF)』
ここからは、確認区分ごとに認定要件の内容を解説します。
1 確認区分:同居の場合
被扶養者の今後の見込み年収額を確認してください。今後も継続して被扶養者となるため
には、年収が以下の範囲内であることが必要です。
被扶養者の年収が、「130万円未満」かつ「被保険者の年収の1/2未満」
2 確認区分:別居の場合
被扶養者の今後の見込み年収額を確認してください。今後も継続して被扶養者となるためには、その年収が以下の範囲内であることが必要です。
被扶養者の年収が、「130万円未満」かつ被保険者からの「仕送り額より少ない」
3 確認区分:要同居の場合
被扶養者が、以下の続柄以外の場合、被保険者と同居していることが必要です。
同居・別居の確認をしてください。
・配偶者(事実婚含む)
・被保険者の直系尊属(※)
・子、孫、兄弟姉妹
※直系尊属とは、父母、祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のこと
なお、事実婚(内縁関係)の配偶者は同居・別居を問いませんが、事実婚の配偶者の父母
および子は同居していることが必要です。
4 確認区分:海外在住の場合
留学生や海外赴任に同行する家族など、以下の海外特例要件を満たす人については、
日本国内に生活の基礎があると認められ、継続して被扶養者となることができます。
5 確認区分:資格重複の場合
被扶養者自身が被保険者として健康保険に加入していないか確認してください。
(例)
・子どもが、就職などにより新たに健康保険の資格を取得している
・配偶者が、以前加入していた国民健康保険を脱退していなかった など
6 確認区分「判定不能」の場合
まず、被扶養者の現在の状況(収入額、同居か、他の保険に加入しているか、など)を
確認し、どの確認区分に該当するかを判断します。
つぎに、その確認区分に従って認定要件の確認を行ってください。
確認結果を被扶養者状況リストに記入
被扶養者の認定要件を確認後、その結果を被扶養者状況リストに記入します。
1 認定要件を満たすとき
「変更なし」の欄にチェックを入れてください。
なお確認区分が「判定不能」の被扶養者が以下に該当する場合は、該当項目にもチェックを
入れます。
①被扶養者が被保険者と別居の場合:「被保険者と別居している」にチェック
②被扶養者が海外に在住(国内に住民票なし)の場合:「海外に在住している」にチェック
2 認定要件を満たさなかったとき
「解除となる」の欄にある以下のいずれかにチェックを入れてください。
①今回扶養から解除となる場合:「被扶養者調書兼異動届を添付」にチェック
②すでに「被扶養者異動届」または「資格喪失届」を提出済の場合:「日本年金機構へ届出済」にチェック
【被扶養者状況リスト】
提出書類の準備
提出書類は、認定要件の確認結果(「変更なし」または「解除となる」)や
被扶養者の確認区分によって異なります。
下図を参考に、被扶養者ごとに必要な提出書類を準備してください。
①「変更なし」にチェックを入れたときの提出書類
②「解除となる」にチェックを入れたときの提出書類
ここからは、各提出書類について解説します。
1 被扶養者状況リスト
ここまで解説した手順に従って、リストを作成してください。
なお、このリストは2枚複写です。
1枚目を提出し、2枚目は事業主控として保管してください。
2 被扶養者現況申立書
被扶養者が以下に該当するときに、現在の状況を申し立てる書類です。
・被保険者と別居
・海外在住
・世帯分離をしているとき
参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者現況申立書』
3 仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
送金者名、受取人名および仕送り額が確認できる書類を提出します。(直近1か月分)
なお、学生は省略可能です。
・振込の場合:預金通帳等の写し、振込明細書など
・送金の場合:現金書留の控えなど
4 被保険者と被扶養者の住民票
世帯分離をしているとき、確認区分が「要同居」と判定されることがあります。
その場合、同じ住所に住んでいることを証明するため、住民票を提出します。
5 海外特例の該当が確認できる書類
該当する海外特例要件ごとに定められた書類を提出します。
6 被扶養者調書兼異動届、被保険者証
確認の結果、扶養解除となる被扶養者がいる場合、被扶養者調書兼異動届を記入のうえ
提出します。
このとき、被扶養者の被保険者証も返却となるため添付してください。
(高齢受給者証や特定疾病療養受療証なども交付されている場合、これらも返却となるため添付)
参考・ダウンロード|協会けんぽ『被扶養者調書兼異動届』
なお、被保険者証を返却できない場合、健康保険被保険者証回収不能届を
添付してください。
参考・ダウンロード|協会けんぽ『健康保険被保険者証回収不能届』
提出書類の郵送
被扶養者状況リストの記入および提出書類の準備ができたら、同封の返信用封筒にて
協会けんぽにご提出ください。【提出期限:2023年12月8日(金)】
なお、2023年12月20日まで、被扶養者資格再確認業務専用ダイヤル
(電話番号:0570-023-123)が設置されています。
不明な点などがあれば、専用ダイヤルまたは協会けんぽ都道府県支部へご相談ください。
おわりに
本来、被扶養者が扶養の要件に該当しなくなったときは、その都度、被保険者である
従業員が企業に報告しなければなりません。
しかし、扶養から外す報告は忘れてしまいがちな報告のひとつです。
そのためにも、たとえば卒業・就職などライフスタイルが変わる人の多い4月前後には
扶養の外し忘れがないよう社内周知するなど、従業員の扶養に関する認識を高めることを
おすすめします。
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