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従業員の育児休業から復帰手続き

更新日:8月24日




従業員が育児休業から復職するときには、企業は社会保険の手続が必要となります。


今回の記事では、その中でも従業員からの申出を確認しなくてはならない

「育児休業等終了時の月額変更」と「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」に

ついて、基礎知識と手続の流れを解説します。



育児休業等終了時の月額変更とは



復職後の残業免除や減少、短時間勤務の取得などで育児休業前と働き方が異なる場合、

育児休業前よりも給与が下がることがあります。


そのとき、随時改定の要件をすべて満たしていれば、月額変更届を提出することで低下した

給与に応じて標準報酬月額が改定され、負担する社会保険料も下がります。




しかし、育児休業からの復職後は、随時改定の要件をすべて満たさないために対象と

ならず、標準報酬月額の改定が行われないことが少なくありません。


そこで、育児をしながら働く従業員の社会保険料の負担を少しでも軽減する制度として「

育児休業終了時の月額変更」があります。



育児休業等終了時の月額変更の要件



3歳未満の子どもを養育している従業員が申出をし、以下の要件をすべて満たした場合、

育児休業等終了時の月額変更の対象となります。



なお、育児休業等終了時の月額変更では、随時改定の要件である固定的賃金の変動や

賃金体系の変更は伴う必要はありません。


育児休業等終了時の月額変更の要件について詳しく説明します。


1 支払基礎日数が17日以上ある月が1か月以上ある

復職日が属する月以降3か月間で、支給された給与の支払基礎日数が17日以上ある月が

少なくとも1か月以上あることが必要です。


【復職日が属する月以降3か月間とは】

復職日が属する月以降3か月間とは、復職日が属する月、復職日が属する月の翌月、

復職日が属する月の翌々月を指します。

復職日が月中である場合でも、復職日が属する月を1か月とします。


(例)10月5日に復職する場合

復職日が属する月    :10月

復職日が属する月の翌月 :11月

復職日が属する月の翌々月:12月

この場合、復職日が属する月以降3か月間は「10月」「11月」「12月」となります。


【支払基礎日数とは】

支払基礎日数とは、賃金計算の対象となる日数です。完全月給制や日給月給制、週給制の

場合は暦日数、日給制や時給制の場合は出勤日数(年次有給休暇なども含む)が支払基礎

日数となります。


ただし、日給月給制で欠勤があった場合は、就業規則等で定められた日数から欠勤日数を

差し引いた日数になります。


育児休業等終了時の月額変更においては、支払基礎日数が17日以上ある月が少なくとも

1か月以上あることが必要です。




2 標準報酬月額に1等級以上の差がある

「従前の標準報酬月額」と「改定後の標準報酬月額」の等級差が1等級以上ある場合には

育児休業等終了時の月額変更の対象となります。


【等級差が1等級以上ある】

「従前の標準報酬月額」と「改定後の標準報酬月額」をくらべて1等級以上の差が生じた

か確認します。




確認は以下①②の手順で行います。


①「改定後の標準報酬月額」を確認する

(1)復職日が属する月以降の3か月間に支給された給与の支払基礎日数が17日以上の月の

報酬月額を算出します。


(2)報酬月額を加入する保険者の保険料額表にあてはめ、該当する行の標準報酬月額が

「改定後の標準報酬月額」となります。





②等級の差を確認する

保険料額表により、「改定後の標準報酬月額」と「従前の標準報酬月額」をくらべます。

1等級以上の差が生じていれば要件に該当します。




育児休業等終了時の月額変更の手続



育児休業時等終了時の月額変更の要件を満たした従業員が発生した場合、従業員本人に

届出の希望を確認します。従業員本人が届出を希望した場合は、日本年金機構に届出を

します。


提出時期:速やかに

届出様式:健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届 

添付書類:なし

届出先 :事務センターまたは管轄の年金事務所

届出方法:郵送または管轄の年金事務所へ持参、電子申請(事務センターのときは

郵送のみ)



改定後の標準報酬月額の適用は、復職日の属する月の4か月後からとなります。




育児休業終了時の月額変更のメリットとデメリット



従業員にとって、育児休業等終了時の月額変更にはメリットとデメリットがあります。

手続の中で従業員本人の希望を確認する理由があるのも、メリットとデメリットを踏まえた

上で従業員本人の意向を反映させるためです。


労務担当者は、制度の内容だけではなくメリットとデメリットを従業員へ説明し、

従業員の希望に合わせて届出を行うことが大切です。



なお、デメリットである将来受け取るはずの年金額が少なくなる点は、「養育期間の従前

標準報酬月額のみなし措置」を利用することで解消できます。


「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」については次の章で詳しく説明します。



養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは



残業の免除や減少、短時間勤務の取得などで育児休業前よりも給与が下がり、育児休業等

終了時の月額変更で標準報酬月額が下がると、将来受け取る年金額も下がります。


育児で報酬月額が下がった場合でも将来受け取る年金額を下げずに安心して育児をして

もらうために、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」の制度があります。


具体的には、子どもが3歳になるまでのあいだで標準報酬月額が下がっても、将来受け取る

年金額については、従前の標準報酬月額の社会保険料を支払ったものとみなすことができる

制度です。




養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の対象となるのは、3歳未満の子どもを養育する

従業員が申出をした場合です。


3歳未満の子を養育する従業員には、子を出産し養育する従業員本人はもちろん、配偶者が

出産した従業員も含まれます。

したがって、子の出生日以降であればいつでも申請は可能です。


養育開始月の前月より前1年以内に前職を退職し、養育開始後に就職した従業員で

あっても、対象となります。


なお、育児休業等終了時の月額変更の対象とならなくても、3歳未満の子どもを養育して

いる期間中に標準報酬月額が低下した場合は、この特例は適用されます。



養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の手続



養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置の対象者が発生した場合、従業員本人が希望した

場合は、日本年金機構に届出をします。


提出に期限はなく、申出が遅れても養育開始月の証明書類を添付することで申出日の

前月までの2年間以内であればさかのぼることができます。


提出時期:被保険者から申出があったとき

届出様式:厚生年金 養育期間標準報酬月額特例申出書

添付書類:戸籍謄本または戸籍記載事項証明書、住民票の写し

届出先 :事務センターまたは管轄の年金事務所

届出方法:郵送または管轄の年金事務所へ持参、電子申請(事務センターのときは

郵送のみ)



【戸籍謄本または戸籍記載事項証明書について】

従業員が世帯主の場合は、従業員と養育する子どもの身分関係が確認できる住民票の

写しでも代用可能です。


なお、法改正により、2025年1月1日からは企業が従業員と子どもの身分関係を確認した

場合、「戸籍謄本または戸籍記載事項証明書」の添付が省略可能となります。


【住民票の写しについて】

育児休業終了日の翌日が属する月の初日以降で、申出日からさかのぼって90日以内に

発行されたものに限ります。


なお、申出書に従業員と子どものどちらもマイナンバーを記載している場合は、添付不要

です。



おわりに



育児休業から復職した従業員は、育児と仕事の両立で戸惑うことも多く、職場のサポートが

不可欠となります。


特に育児休業からの復職が初めての場合は、申出が必要となる養育中の社会保険の制度を

知らない従業員も多いため、丁寧に制度内容の説明を行い、メリットとデメリットを

踏まえたうえで手続を進めていく必要があります。


従業員の状況に応じて、今回紹介した制度を上手に活用していきましょう。

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