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職場における腰痛予防対策について。

更新日:2022年5月19日



腰痛は、特定業務に限らず多くの業種および作業において発生します。

休業が4日以上にわたる労働災害のうち、約4割を腰痛が占めています。腰痛は作業効率が落ち、仕事に制限がかかるなどの業務への影響、また日常生活にも影響がでます。企業は腰痛予防の推進に努めなければなりません。

厚生労働省では「職場における腰痛予防サイト」「転倒予防・腰痛予防の取組」サイトをオープンしており、腰痛予防等について動画でわかりやすく解説しています。厚生労働省サイトを参考にして腰痛予防の対策を進めてください。




労災が認められるとき



腰痛になったときは、労災が認められることもあります。 労災が認められるには、業務と死傷病の間に一定の因果関係がある「業務起因性」、雇用され働いているときに起きた災害が原因で傷病が発生する「業務遂行性」の2つの認定基準があり、 どちらにも該当すると労災となり治療費や休業中の補償を受けられます。

また、認定基準に該当するかどうかを労働基準監督者が判断するため、傷病ごとに認定基準が詳細に定められています。



腰痛は労災が認められるのか



腰痛で労災が認められる認定基準は「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」の2つに分かれており、それぞれに要件が定められています。






腰痛が労災と認められる具体的なケース


腰痛が認められる具体的なケースは以下になります。


1 災害性の原因による腰痛

腰に受けた外傷によって生じた腰痛のほか、外傷はなく突発的で急激な力が腰にかかったことが原因で筋肉等(筋、筋膜、靭帯など)が損傷して生じた腰痛をいいます。


【具体的なケース】

・重量物を運搬作業中の転倒など、突発的な出来事により急激な強い力が腰にかかったことによる腰痛

・持ち上げる重量物が予想以上に重い、または軽かったときに重量物にあわない姿勢で持ち上げたことにより、腰に急激な強い力が突発的にかかり腰に異常が生じた腰痛 など


※「ぎっくり腰(急性腰痛症)など)」は、日常的な動作の中で生じるため、業務中に発症したとしても労災事故とは認められません。ただし、発症時の動作や姿勢などが異常で腰に強い力がかかることが原因であるときは、労災が認められることがあります。


2 災害性の原因によらない腰痛

日々の業務による腰への負担が徐々に影響し発症した腰痛をいいます。

業務に比較的短期間(約3か月以上)従事していたことが原因で筋肉等の疲労が原因で発症する「筋肉等の疲労を原因とした腰痛」、重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)継続して従事したことが原因で起こる「骨の変化を原因とした腰痛」の2つに区分されて判断されます。


【具体的なケース(筋肉等の変化を原因とした腰痛)】

・約20㎏以上の重量物を繰り返し中腰の姿勢で取り扱っていたことが原因で発症する腰痛

・長時間にわたり同じ姿勢を持続して行う業務が原因で発症する腰痛 など


【具体的なケース(骨の変化を原因とした腰痛)】

・約30㎏以上の重量物を取り扱う業務に労働時間の1/3程度以上従事したことが原因で骨に変化が起きておきる腰痛

・約20㎏以上の重量物を取り扱う業務に労働時間の1/2程度以上従事したことが原因で骨に変化が起きておきる腰痛 など



労災保険から受けられる給付内容



労災のときは、厚生労働省の指定を受けている労災指定病院で治療を受けると、治療費などが労災から支払われるため窓口での費用負担がありません。労災指定病院以外で治療を受けたときは、一旦、治療費などの立替を行い、後日、企業の管轄の労働基準監督署へ支払った治療費の請求の手続きを行うことなります。

腰痛が労災と認定されたときは以下の「療養(補償)等給付」「休業(補償)等給付」が受けられます。


【療養(補償)等給付】

労災指定病院や労災指定の薬局等で無料で治療(入院など含む)や薬剤の支給を受けられる「療養の給付」をいいます。受けられる期間は傷病が治ゆ(完全に治る、症状が固定したなど)するまでです。

※労災指定病院や労災指定の薬局等でないときは「療養の費用の支給」になります。


【休業(補償)等給付】

業務または通勤が原因で起きた傷病のため、労働ができず休業して、企業から賃金が支給されないときに休業補償として支給されます。支給される期間は休業した4日目からになります。支給額は以下の計算式「休業補償給付」「休業特別支給金」の合計です。


休業補償給付、休業給付 = (給付基礎日数の60%)× 休業日数

休業特別支給金 = (給付基礎日額の20%)× 休業日数


※通勤が原因のときは「休業給付」になります。

※最初の3日間は待機期間となり企業が休業補償(1日あたり平均賃金の60%)の支払いが必要です。




労災保険ではなく健康保険証を使ったときはどうなるのか



労災で発生した傷病には健康保険証は使えません。健康保険証は業務や通勤以外で発生した傷病に対して使える保険です。そのため、労災で健康保険証を使用すると、後日加入している健康保険より、負担した治療費の7割(70歳以上のときは収入によって8割)の請求が本人へ届きます。支払後、企業の管轄する労働基準監督署へ治療費の請求を行うことになります。労災に健康保険証を使用すると、一時的ですが治療費を本人が立て替える状態になるため負担が大きいです。

また、労災の傷病に健康保険証を使用したときは「労災かくし(法令違反)」となり企業が50万円以下の罰金や送検されることがあります。労災かどうか不明なときは、病院へ受診する前に企業の管轄する労働基準監督署へご相談ください。



労災が不認定のとき



労災として治療を受けていたが、後日、労災不認定となったときは健康保険証が使えます。不認定が出る前に受けていた治療に関しては、遡って自己負担分3割(70歳以上のときは収入によって2割)の支払いが発生します。自己負担分の支払いなどは 医療機関(病院)から請求書が届きます。

支払いなどについては、治療を受けた医療機関(病院など)にご相談ください。



腰痛が企業の責任でないが本人が申請を求めたとき



業務に関連性がない腰痛で、本人が労災保険の申請を企業に求めてきたときは、拒むこともできます。一般的に企業が労災保険の手続きを行うことが多いですが、本人が行う手続きになります。本人が手続きを行うときは、企業は証明などの協力をしてください。



まとめ



腰痛は身近な傷病で発生原因は多岐にわたります。

重量物を運ぶだけではなく、長時間の振動(運転など)、同じ姿勢(事務や立ちっぱなしなど)、気温(体が冷える状態など)なども腰痛を発生させる原因の1つになります。

そのため、作業的な部分以外の労働環境にも予防対策は必要です。腰痛は1度発生すると慢性化したり、長期間に渡り続くため、心身に影響があります。腰を痛めたら速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

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