top of page

2022年4月 キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金の改正点について



厚生労働省の助成金は約70種類あり、毎年改正などが行われます。

今回は、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金の2022年4月1日の改正についての概要を解説します。


キャリアアップ助成金


キャリアアップ助成金は、企業内の正社員以外の従業員(有期契約労働者、パートタイマー、派遣労働者など)のキャリアアップが進むよう処遇改善の取組を実施した企業に対して支給される助成金です。取組内容は7コースに分かれており、それぞれに定められた要件があります。今回は支給申請が多い「正社員化コース」の改正点を記載しています。


【キャリアアップ助成金 コース一覧】



キャリアアップ助成金(正社員化コース)


正社員以外の従業員(有期契約労働者、パートタイマー、派遣労働者など)を正社員へ転換させたときに対象となる助成金です。改正の適用は2022年4月1日、10月1日の2段階に分かれています。


【2022年4月1日から適用】

1 有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換が廃止

以前は、勤務時間が通常より短い有期契約のパートタイマーを無期雇用契約に転換させたときなどが助成金の対象となっており、比較的、利用しやすい制度でした。

2 正社員転換を行う前に訓練を実施すると助成金が加算される対象の拡充

人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」の対象となる訓練を修了後、正社員へ転換したときに助成金が加算されます。



加算額

有期契約労働者から正社員へ転換:95,000円(120,000円)/人

無期雇用労働者から正社員へ転換:47,500円(60,000円)/人

※()は生産性要件を満たしたときの受給額です。

詳細はパンフレットを参考にしてください。



【2022年10月1日から適用】

2022年10月1日以降は以下の内容を就業規則に規定しなければなりません。


1 正社員の定義の変更

賞与または退職金、昇給について就業規則に記載がないときは制度の導入が必要です。



【賞与】

賞与は、支給を前提とした制度が必要です。


OK例:賞与は原則として〇月に支給する。ただし業績によって支給しないことがある。

NG例:賞与は支給しません。ただし業績によって支給することがある。


【昇給】

昇給は、客観的な基準がある制度の導入が必要です。運用上、賃金の据え置きや降給の可能性があったとしても対象になります。


OK例:昇給は勤務成績が良好な従業員に対して毎年〇月〇日をもって行う。ただし、会社の業績の低下その他やむを得ない事由があるときは行わないこととする。

NG例:会社が必要と判断したときは、賃金の昇降給を行う。


【退職金】

退職金は、法令等で定められている適用される範囲、支給要件、金額の計算方法、支払時期などの記載が必要です。


2 対象者の要件の変更

正社員、正社員以外で異なる基本給、賞与、退職金、各種手当などについて、1つ以上を就業規則に記載しておかなければなりません。正社員以外の賃金の記載が「個別の契約書による」になっているなど、賃金の額や計算方法が明確に記載されていないときは助成金の対象外となります。


キャリアアップ助成金(正社員化コース)の加算

2021年12月21日以降に人材開発支援助成金の訓練を終了後、正社員転換を実施したときは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額に以下の額が加算されます。



対象となる訓練は定められていますので、2つの助成金を活用するときは事前に助成金の窓口(都道府県労働局、ハローワーク)などにご相談ください。



人材開発支援助成金


人材開発支援助成金とは、企業が従業員に対して行う訓練(OJT、OFF-JT)の経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。対応者や訓練内容によって8コースあり、共通で改正される内容、各コースごとに改正される内容で分かれます。


【改正内容一覧】



1 訓練施設の変更

2022年3月31日までは訓練を実施する施設に制限がありませんでした。そのため、グループ企業内での訓練や訓練を実施する企業の役員と、訓練施設の役員が同じケースのときなども助成金の対象でした。2022年4月1日以降は対象外となります。


2 訓練講師の要件の変更

外部講師を招いて訓練を実施するときの要件が明確になりました。また今後は、企業内講師のみ提出が必要だった講師要件確認書の提出が必要になります。



3 OJTの助成額変更など

2022年4月1日以降に訓練の計画書を提出、OJTを実施したときの賃金助成が、1時間あたりではなく一律で支給に変更になりました。一律支給の額は以前の有期実習型訓練のOJTの賃金助成約130時間分(1時間760円換算)です。そのためOJTの時間数が多い企業(500時間など)は、以前に比べて受給額が大きく下回ります。OJTの指導者が1日に指導できる人数も制限されますので、訓練を行うときは詳細なスケジュールの作成が必要です。



4 対象訓練の統廃合

コースの統廃合が行われました。新たに訓練計画書の提出を行うときは制度の内容確認を行ってください。また、訓練計画書を提出するまでにセルフキャリアドック制度の導入が必要です。制度を就業規則または事業内職業訓練能力開発計画、労働協約に定めてください。



5 「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更

対象者の要件になる「5年を経過していない労働者」の起算日が、雇用保険加入日に変更になりました。雇用保険加入要件を満たしていない期間を含めないため、対象労働者が広がりました。



6 助成対象訓練の変更 

職務に関連した接遇やマナー講習などの訓練時間数に占める割合を、半分未満にしなければならなくなりました。今までは時間数の制限がなかったため、接客業、サービス業などはOFF-JTに接遇やマナー講習の割合が大半を占めるケースがある場合も助成金対象になっていました。今後、訓練計画書を提出するときは内容の見直しが必要になるケースがあります。


7 計画書提出時の書類の変更

訓練計画書提出時の書類が変更・廃止になっています。申請書類をダウンロードするときは対象期間が含まれている書類を使用してください。



eラーニング、通信制による訓練が助成金対象になります


OFF-JTは「対面」での実施が必要なため、複数の従業員を同じ日時で受講させるにはシフトの調整などが難しく、訓練実施まで至らないケースがありました。今後は「eラーニング」「通信制」での訓練が認められるようになり、個人の勤務状況に合わせて受講できるので企業の負担が軽減され、従業員は訓練を受けやすくなります。



まとめ


助成金利用は、雇用継続や育成期間中の訓練費用の負担軽減に繋がり、企業も大きなメリットを得られますが、助成金は毎年改正、廃止などがあるため申請には詳細の確認が必要。

記載の内容以外にも細かな要件があります。案内資料(パンフレットなど)はありますが種類や量が多く、分かりにくい部分もありますので、申請をすすめるときにはご注意ください。


Comments


bottom of page