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- 労災申請のために企業が準備しておくこと
労災保険とは、労働者が業務中や通勤途中の災害によりケガや病気にかかったときに、治療費や休業中の生活補償、障害が残ったときの年金などを受けることができる制度をいいます。 今回の記事では、労災申請のために準備しておく企業対応と業務中の労災発生から給付までの流れをお伝えします。 スムーズな労災認定のために企業が準備しておくこと 1 労災が起こった現場等の詳細な記録 各種労災保険の申請書類には、ケガなどが起きたときの災害の原因および発生状況を記入する箇所があります。申請書類に不明な点があれば、労働基準監督署から本人や勤務先、医療機関に対し、文書照会や電話による問合せが行われます。必要に応じて、実地調査が行われることもあります。 そのため発生直後に現場写真の撮影や労災情報などを速やかにまとめ、情報の整理をしておくことをおすすめします。 2 災害発生時の関係者のヒアリング 急な労災事故では、ケガをした従業員は記憶が曖昧になる可能性が出てきます。情報不足の場合は、上司、同僚等からの聴取を行うこともあります。 より詳細な状況把握と原因分析のためにも、本人以外に災害発生状況を目撃した上司や同僚がいるときは、災害発生時の関係者ヒアリングを行い書面にまとめておくことをおすすめします。 3 同じ労働災害が起きないように再発防止の対策を検討する 労働災害が発生したときは、本人や関係者のヒアリングをもとに災害の原因を分析します。今後、同じ労働災害が起きないよう対策を実施するためにも、労働災害の発生事実と今後の防止対策について書面にまとめ、すべての従業員へ周知することをおすすめします。 4 労働時間の的確な把握 過労死等事案などの労災認定のときには、労働時間の的確な把握がもとめられます。タイムカードだけでなく、勤務場所の入退場記録、パソコンの使用時間の記録など、客観的な資料を可能な限り収集し、上司・同僚など関係者からの聴取により始業・終業時刻および休憩時間を詳細に特定することがあります。 労務担当者は、実態とタイムカードにズレが生じないよう、正しい打刻がされるように日頃から指導されることをおすすめします。 5 手当や割増賃金など就業規則にそった給与計算 休業補償の1日あたりの日額を正しく計算するため、労働基準監督署では割増賃金に含めるべき手当が含まれているかどうかや各種手当について、就業規則などで確認することがあります。 就業規則に沿った給与計算は、スムーズな労災認定にとって重要です。提出資料に算定内訳や企業の給与計算方法についてあらかじめ追記しておけば、不要な問合せは減少します。 業務中の労災発生から給付までの流れ 業務中の労災発生から申請、認定までの流れは以下のとおりです。今回は、第三者の行為などによって生じる災害以外の一般的なケースを例にお伝えします。 1 業務中に労災が発生したことの連絡を受ける 業務中に労災が発生したときは、ケガや病気をした本人もしくは現場にいた従業員から以下の状況を確認します。 ①疾病状況の確認 ②病院への搬送の必要性 ③従業員への家族へ連絡の必要性 ④事故が起きた状況 ⑤警察や消防署への連絡の必要性 また、死亡や重大な事故が発生したときは、管轄の労働基準監督署へ電話速報します。 2 治療費に関する労災保険の書類を作成し病院に提出する 業務中のケガなどで治療が必要なときは、労災保険により治療費が支払われます。そのため、ケガや病気をした本人もしくは付き添っている従業員(または家族)に、医療機関にたいし業務中のケガや病気であることを伝えてもらう必要があります。 すべての医療機関が労災保険に対応しているわけではありません。労災保険に対応している医療機関なのかを確認し、治療費に関する労災保険の書類を作成します。労災保険に対応している医療機関かどうかで、書類の様式が異なります。 【労災指定病院で治療を受けたとき】 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第5号) 【労災指定病院以外で治療を受けたとき】 療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第7号) 治療費に関する労災保険の書類ができたら、治療を受けた医療機関へ提出をしてください。治療費については、労災指定病院以外のときは一旦全額負担(10割)します。 3 休業中の補償に関する労災保険の書類を作成し、労働基準監督署へ提出する 業務中のケガなどで休業が必要なときは、休業4日目から休業補償が支給されます。休業中の補償に関する労災保険の書類を作成します。直近3か月の賃金台帳やタイムカード等の添付が必要です。 【業務中のケガなどで休業が必要なとき】 休業補償給付支給請求書 複数事業労働者休業給付支給請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第8号) 様式は以下よりダウンロードください。 参考|厚生労働省『労災保険給付関係請求書等』 また、休業3日目までは、企業が平均賃金の60%以上の休業補償を支払わなければなりません。 4 業務中に労災が発生したことを労働基準監督署へ報告する。 業務中に労災が発生したら、労働基準監督署へ報告をする必要があります。労災による休業が4日以上と4日未満のときで報告書の様式と報告するタイミングが異なります。 【休業が4日以上のとき】 労災が発生してからできる限り早いタイミングで、「労働者死傷病報告(様式第23号)」を労働基準監督署長に報告することが義務付けられています。 【休業が1日から3日のとき】 1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月までの期間の労災発生状況について、「労働者死傷病報告(様式第24号)」をそれぞれの期間の最終月の翌月末日までに労働基準監督署長へ報告することが義務付けられています。 様式は以下よりダウンロードください。 参考|厚生労働省『労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。』 5 提出した労災申請の労働基準監督署の審査結果を待つ 労働基準監督署は、保険給付の決定のため申請書類の審査を行います。審査期間は申請内容によって異なりますが、2か月から6か月程度です。精神心疾患など審査に時間がかかるものもあります。 請求後、審査が3か月を経過するような場合は、労働基準監督署の担当者から労働者に対して電話にて処理状況などの連絡をすることになっています。 6 労災保険の支給・不支給の決定が行われ、給付が行われる。 労災保険の認定・不認定の決定が行われたあと、労働者本人に対し、支給(不支給)決定通知が送付されます。認定されると給付が行われます。また、脳・心臓疾患や精神障害等による給付申請や長期未決事案が不支給となったときは、請求を行った労働者の納得性を高めるため、労働基準監督署が支給要件の概要や不支給決定理由のポイントなどを分かりやすく説明をすることになっています。 その他のケガや病気の不支給のときは、不支給決定通知書が送付されますが、不支給理由が知りたい場合は、管轄の労働基準監督署へお問合せください。 まとめ いつ労災が起きるかはわかりません。雇入れ時や作業内容変更のときの安全教育などで安全ルールが決まっていても、日々の体調管理が災害に繋がることもあります。 労災発生からの給付の流れを理解し、労災発生時に慌てず申請ができるよう、社内で労災対応フローを見直すことをおすすめします。
- 2022年4月 キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金の改正点について
厚生労働省の助成金は約70種類あり、毎年改正などが行われます。 今回は、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金の2022年4月1日の改正についての概要を解説します。 キャリアアップ助成金 キャリアアップ助成金は、企業内の正社員以外の従業員(有期契約労働者、パートタイマー、派遣労働者など)のキャリアアップが進むよう処遇改善の取組を実施した企業に対して支給される助成金です。取組内容は7コースに分かれており、それぞれに定められた要件があります。今回は支給申請が多い「正社員化コース」の改正点を記載しています。 【キャリアアップ助成金 コース一覧】 (出典)厚生労働省サイト『キャリアアップ助成金』 キャリアアップ助成金(正社員化コース) 正社員以外の従業員(有期契約労働者、パートタイマー、派遣労働者など)を正社員へ転換させたときに対象となる助成金です。改正の適用は2022年4月1日、10月1日の2段階に分かれています。 【2022年4月1日から適用】 1 有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換が廃止 以前は、勤務時間が通常より短い有期契約のパートタイマーを無期雇用契約に転換させたときなどが助成金の対象となっており、比較的、利用しやすい制度でした。 2 正社員転換を行う前に訓練を実施すると助成金が加算される対象の拡充 人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」の対象となる訓練を修了後、正社員へ転換したときに助成金が加算されます。 加算額 有期契約労働者から正社員へ転換:95,000円(120,000円)/人 無期雇用労働者から正社員へ転換:47,500円(60,000円)/人 ※()は生産性要件を満たしたときの受給額です。 詳細はパンフレットを参考にしてください。 (出典)厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」 【2022年10月1日から適用】 2022年10月1日以降は以下の内容を就業規則に規定しなければなりません。 1 正社員の定義の変更 賞与または退職金、昇給について就業規則に記載がないときは制度の導入が必要です。 【賞与】 賞与は、支給を前提とした制度が必要です。 OK例:賞与は原則として〇月に支給する。ただし業績によって支給しないことがある。 NG例:賞与は支給しません。ただし業績によって支給することがある。 【昇給】 昇給は、客観的な基準がある制度の導入が必要です。運用上、賃金の据え置きや降給の可能性があったとしても対象になります。 OK例:昇給は勤務成績が良好な従業員に対して毎年〇月〇日をもって行う。ただし、会社の業績の低下その他やむを得ない事由があるときは行わないこととする。 NG例:会社が必要と判断したときは、賃金の昇降給を行う。 【退職金】 退職金は、法令等で定められている適用される範囲、支給要件、金額の計算方法、支払時期などの記載が必要です。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内』P29 2 対象者の要件の変更 正社員、正社員以外で異なる基本給、賞与、退職金、各種手当などについて、1つ以上を就業規則に記載しておかなければなりません。正社員以外の賃金の記載が「個別の契約書による」になっているなど、賃金の額や計算方法が明確に記載されていないときは助成金の対象外となります。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内』P17 キャリアアップ助成金(正社員化コース)の加算 2021年12月21日以降に人材開発支援助成金の訓練を終了後、正社員転換を実施したときは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給額に以下の額が加算されます。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金が使いやすくなりました』 対象となる訓練は定められていますので、2つの助成金を活用するときは事前に助成金の窓口(都道府県労働局、ハローワーク)などにご相談ください。 人材開発支援助成金 人材開発支援助成金とは、企業が従業員に対して行う訓練(OJT、OFF-JT)の経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。対応者や訓練内容によって8コースあり、共通で改正される内容、各コースごとに改正される内容で分かれます。 【改正内容一覧】 (出典)厚生労働省『令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います』 1 訓練施設の変更 2022年3月31日までは訓練を実施する施設に制限がありませんでした。そのため、グループ企業内での訓練や訓練を実施する企業の役員と、訓練施設の役員が同じケースのときなども助成金の対象でした。2022年4月1日以降は対象外となります。 2 訓練講師の要件の変更 外部講師を招いて訓練を実施するときの要件が明確になりました。また今後は、企業内講師のみ提出が必要だった講師要件確認書の提出が必要になります。 (出典)厚生労働省『令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います』 3 OJTの助成額変更など 2022年4月1日以降に訓練の計画書を提出、OJTを実施したときの賃金助成が、1時間あたりではなく一律で支給に変更になりました。一律支給の額は以前の有期実習型訓練のOJTの賃金助成約130時間分(1時間760円換算)です。そのためOJTの時間数が多い企業(500時間など)は、以前に比べて受給額が大きく下回ります。OJTの指導者が1日に指導できる人数も制限されますので、訓練を行うときは詳細なスケジュールの作成が必要です。 (出典)厚生労働省『令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います』 4 対象訓練の統廃合 コースの統廃合が行われました。新たに訓練計画書の提出を行うときは制度の内容確認を行ってください。また、訓練計画書を提出するまでにセルフキャリアドック制度の導入が必要です。制度を就業規則または事業内職業訓練能力開発計画、労働協約に定めてください。 (出典)厚生労働省『人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース)のご案内(詳細版)』P14 5 「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更 対象者の要件になる「5年を経過していない労働者」の起算日が、雇用保険加入日に変更になりました。雇用保険加入要件を満たしていない期間を含めないため、対象労働者が広がりました。 (出典)厚生労働省『令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います』 6 助成対象訓練の変更 職務に関連した接遇やマナー講習などの訓練時間数に占める割合を、半分未満にしなければならなくなりました。今までは時間数の制限がなかったため、接客業、サービス業などはOFF-JTに接遇やマナー講習の割合が大半を占めるケースがある場合も助成金対象になっていました。今後、訓練計画書を提出するときは内容の見直しが必要になるケースがあります。 7 計画書提出時の書類の変更 訓練計画書提出時の書類が変更・廃止になっています。申請書類をダウンロードするときは対象期間が含まれている書類を使用してください。 (出典)厚生労働省『令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います』 eラーニング、通信制による訓練が助成金対象になります OFF-JTは「対面」での実施が必要なため、複数の従業員を同じ日時で受講させるにはシフトの調整などが難しく、訓練実施まで至らないケースがありました。今後は「eラーニング」「通信制」での訓練が認められるようになり、個人の勤務状況に合わせて受講できるので企業の負担が軽減され、従業員は訓練を受けやすくなります。 (出典)厚生労働省『人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)』P45 まとめ 助成金利用は、雇用継続や育成期間中の訓練費用の負担軽減に繋がり、企業も大きなメリットを得られますが、助成金は毎年改正、廃止などがあるため申請には詳細の確認が必要。 記載の内容以外にも細かな要件があります。案内資料(パンフレットなど)はありますが種類や量が多く、分かりにくい部分もありますので、申請をすすめるときにはご注意ください。
- 賃金を支払うときに気をつけるポイントについて。
企業は、毎月従業員に賃金の支払いを行いますが、賃金を支払う際には法律等で定められたルールがあります。入社の手続きが多く発生するこの時期に改めて、対応に誤りがないかを確認してください。 賃金とは 労働基準法では賃金は「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されています。 従業員が働いたことに対する対価として、企業から従業員に支払うものは賃金とされ保護されなければなりませんし、賃金を支払うときには、労働基準法で定められた賃金支払の原則を守らなければなりません。 賃金支払いの原則 1 通貨払いの原則 賃金は現金で支払わなければなりません。ただし、従業員の同意を得た場合は、銀行振込み等の方法によることができます。 2 直接払いの原則 賃金は労働者本人に払わなければなりません。未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。 3 全額払いの原則 賃金は全額残らず支払われなければなりません。賃金の一部を控除(天引き)して支払うことは原則禁止されています。 ただし、以下の場合は認められています。 ・所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除 ・裁判所からの仮差押え、差押え等の法的手続きがなされた場合 ・労使によって「賃金控除に関する協定」が結ばれた場合 4 毎月1回以上払いの原則 賃金は、毎月1回以上支払わなければなりません。「毎月」とは、歴月をいうため、毎月1日から月末までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。ただし、臨時の賃金や賞与は例外です。 5 一定期日払いの原則 賃金は毎月一定の期日を定めて支払わなければなりません。「一定の期日」とは、期日が特定される必要があります。ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。 企業が特に注意すべきこと 1 銀行口座による賃金の支払を行う場合、同意書が必要 賃金は、原則として現金払いとなりますが、従業員の同意を得た場合は、指定する銀行その他の金融機関に振込を行うことができます。従業員による振込先の指定があれば、特段の事情のない限り従業員の同意が得られているものとなります。従業員の同意を取り、振込先の指定をしてもらうため、入社時等に口座を指定する書類を従業員から提出してもらうことをおすすめします。 参考・ダウンロード|銀行口座申請書 2 振込期限に注意 振込みとは、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出せるよう行わなければなりません。賃金支払い日の朝10時までに引き出せるようにしなければならないとされています。 3 賃金から控除を行う場合、労使協定を締結 原則としては、法定で定められているもの以外を賃金の一部から控除(天引き)をして支払うことは禁止されていますが、賃金控除に関する協定書を労使間で締結することにより、社宅料、駐車場代、購買代金等の控除を行っても労働基準法の罰則は適用されません。賃金控除に関する協定書については届出の義務はありません。 4 口座振込手数料は、企業負担 給与を銀行振込みをするときは、振込手数料は企業が負担しなければなりません。振込手数料を従業員が負担したときは、賃金を全額支払っていないとみなされ、法令等違反になります。 5 賃金の支払日は、毎月1回以上一定期日 賃金の支払いは毎月1回以上支払う必要があり、一定の期日を定めて支払わなければなりません。 【一定の期日となる例】 ・月給の場合「月の末日」 ・週給の場合「金曜日」 【一定の期日とならない例】 ・毎月15日から20日の間 ・毎月第4金曜日 支払日が休日にあたる場合は払出しができないため、前日または休日明けに支払うことは違法にはなりません。ただし、就業規則などで支払日が休日の場合の定めを設け、前日に支払うのか翌日に支払うのかを明確にしておく必要があります。 まとめ 賃金の支払いのルールは従業員が安心して生活ができるよう定められています。企業と従業員との信頼関係にも影響する、大切な取り決めです。また、賃金支払いの原則については労働基準法第24条で定められており、違反した場合は、企業には30万円以下の罰金刑が課されます。口座振込に同意書が必要ということを知らず口座振込をされている、給料日の10時までに引き出せるようにする必要を知らない企業もあり、当日の夕方などに振り込みをされているケースも見受けられます。 ルールが守られているか、就業規則に適切に記載されているかなどを確認し、給与処理をスムーズにされることをおすすめします。
- 職場における腰痛予防対策について。
腰痛は、特定業務に限らず多くの業種および作業において発生します。 休業が4日以上にわたる労働災害のうち、約4割を腰痛が占めています。腰痛は作業効率が落ち、仕事に制限がかかるなどの業務への影響、また日常生活にも影響がでます。企業は腰痛予防の推進に努めなければなりません。 厚生労働省では「職場における腰痛予防サイト」「転倒予防・腰痛予防の取組」サイトをオープンしており、腰痛予防等について動画でわかりやすく解説しています。厚生労働省サイトを参考にして腰痛予防の対策を進めてください。 参考|厚生労働省サイト『職場における腰痛予防サイト』 参考|厚生労働省サイト『転倒予防・腰痛予防の取組』 参考|厚生労働省『業務上疾病発生状況(業種別・疾病別)』 労災が認められるとき 腰痛になったときは、労災が認められることもあります。 労災が認められるには、業務と死傷病の間に一定の因果関係がある「業務起因性」、雇用され働いているときに起きた災害が原因で傷病が発生する「業務遂行性」の2つの認定基準があり、 どちらにも該当すると労災となり治療費や休業中の補償を受けられます。 また、認定基準に該当するかどうかを労働基準監督者が判断するため、傷病ごとに認定基準が詳細に定められています。 腰痛は労災が認められるのか 腰痛で労災が認められる認定基準は「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」の2つに分かれており、それぞれに要件が定められています。 (出典)厚生労働省サイト『腰痛の労災認定』 腰痛が労災と認められる具体的なケース 腰痛が認められる具体的なケースは以下になります。 1 災害性の原因による腰痛 腰に受けた外傷によって生じた腰痛のほか、外傷はなく突発的で急激な力が腰にかかったことが原因で筋肉等(筋、筋膜、靭帯など)が損傷して生じた腰痛をいいます。 【具体的なケース】 ・重量物を運搬作業中の転倒など、突発的な出来事により急激な強い力が腰にかかったことによる腰痛 ・持ち上げる重量物が予想以上に重い、または軽かったときに重量物にあわない姿勢で持ち上げたことにより、腰に急激な強い力が突発的にかかり腰に異常が生じた腰痛 など ※「ぎっくり腰(急性腰痛症)など)」は、日常的な動作の中で生じるため、業務中に発症したとしても労災事故とは認められません。ただし、発症時の動作や姿勢などが異常で腰に強い力がかかることが原因であるときは、労災が認められることがあります。 2 災害性の原因によらない腰痛 日々の業務による腰への負担が徐々に影響し発症した腰痛をいいます。 業務に比較的短期間(約3か月以上)従事していたことが原因で筋肉等の疲労が原因で発症する「筋肉等の疲労を原因とした腰痛」、重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)継続して従事したことが原因で起こる「骨の変化を原因とした腰痛」の2つに区分されて判断されます。 【具体的なケース(筋肉等の変化を原因とした腰痛)】 ・約20㎏以上の重量物を繰り返し中腰の姿勢で取り扱っていたことが原因で発症する腰痛 ・長時間にわたり同じ姿勢を持続して行う業務が原因で発症する腰痛 など 【具体的なケース(骨の変化を原因とした腰痛)】 ・約30㎏以上の重量物を取り扱う業務に労働時間の1/3程度以上従事したことが原因で骨に変化が起きておきる腰痛 ・約20㎏以上の重量物を取り扱う業務に労働時間の1/2程度以上従事したことが原因で骨に変化が起きておきる腰痛 など 労災保険から受けられる給付内容 労災のときは、厚生労働省の指定を受けている労災指定病院で治療を受けると、治療費などが労災から支払われるため窓口での費用負担がありません。労災指定病院以外で治療を受けたときは、一旦、治療費などの立替を行い、後日、企業の管轄の労働基準監督署へ支払った治療費の請求の手続きを行うことなります。 腰痛が労災と認定されたときは以下の「療養(補償)等給付」「休業(補償)等給付」が受けられます。 【療養(補償)等給付】 労災指定病院や労災指定の薬局等で無料で治療(入院など含む)や薬剤の支給を受けられる「療養の給付」をいいます。受けられる期間は傷病が治ゆ(完全に治る、症状が固定したなど)するまでです。 ※労災指定病院や労災指定の薬局等でないときは「療養の費用の支給」になります。 【休業(補償)等給付】 業務または通勤が原因で起きた傷病のため、労働ができず休業して、企業から賃金が支給されないときに休業補償として支給されます。支給される期間は休業した4日目からになります。支給額は以下の計算式「休業補償給付」「休業特別支給金」の合計です。 休業補償給付、休業給付 = (給付基礎日数の60%)× 休業日数 休業特別支給金 = (給付基礎日額の20%)× 休業日数 ※通勤が原因のときは「休業給付」になります。 ※最初の3日間は待機期間となり企業が休業補償(1日あたり平均賃金の60%)の支払いが必要です。 参考|厚生労働省『休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続』 労災保険ではなく健康保険証を使ったときはどうなるのか 労災で発生した傷病には健康保険証は使えません。健康保険証は業務や通勤以外で発生した傷病に対して使える保険です。そのため、労災で健康保険証を使用すると、後日加入している健康保険より、負担した治療費の7割(70歳以上のときは収入によって8割)の請求が本人へ届きます。支払後、企業の管轄する労働基準監督署へ治療費の請求を行うことになります。労災に健康保険証を使用すると、一時的ですが治療費を本人が立て替える状態になるため負担が大きいです。 また、労災の傷病に健康保険証を使用したときは「労災かくし(法令違反)」となり企業が50万円以下の罰金や送検されることがあります。労災かどうか不明なときは、病院へ受診する前に企業の管轄する労働基準監督署へご相談ください。 労災が不認定のとき 労災として治療を受けていたが、後日、労災不認定となったときは健康保険証が使えます。不認定が出る前に受けていた治療に関しては、遡って自己負担分3割(70歳以上のときは収入によって2割)の支払いが発生します。自己負担分の支払いなどは 医療機関(病院)から請求書が届きます。 支払いなどについては、治療を受けた医療機関(病院など)にご相談ください。 腰痛が企業の責任でないが本人が申請を求めたとき 業務に関連性がない腰痛で、本人が労災保険の申請を企業に求めてきたときは、拒むこともできます。一般的に企業が労災保険の手続きを行うことが多いですが、本人が行う手続きになります。本人が手続きを行うときは、企業は証明などの協力をしてください。 まとめ 腰痛は身近な傷病で発生原因は多岐にわたります。 重量物を運ぶだけではなく、長時間の振動(運転など)、同じ姿勢(事務や立ちっぱなしなど)、気温(体が冷える状態など)なども腰痛を発生させる原因の1つになります。 そのため、作業的な部分以外の労働環境にも予防対策は必要です。腰痛は1度発生すると慢性化したり、長期間に渡り続くため、心身に影響があります。腰を痛めたら速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
- 2022年4月から、在職定時改定制度が導入されます。
2020年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月5日に公布されました。今後は、より長く、多様な働き方をする方が増えると見込まれます。社会・経済の変化を年金制度に反映させ、長期化する高齢者の経済基盤の充実を図るため、厚生年金保険法の一部が改正されます。 2022年4月、在職定時改定制度が導入されます。在職定時改定制度とは、65歳以上の在職者で老齢厚生年金を受給している方の年金額を毎年10月に改定し、在職中に納めた保険料を反映する制度です。 年金制度について 年金制度には、国民年金と厚生年金があり、「年金の加入」「保険料の支払い」「年金の受給」の3つがあります。年金の受給額は、どのくらい加入していたか、いくら保険料を支払ったかで変わります。 また、受給できる年金には種類があります。一定の年齢になったら受給できる「老齢年金」、生活や仕事が制限されるときなどに受給できる「障害年金」、被保険者が死亡したときに遺族が受給できる「遺族年金」です。老齢年金の加入期間は、国民年金は原則60歳、厚生年金は原則70歳です。老齢年金を受給するためには10年以上の受給資格期間※(保険料納付済期間、保険料免除期間などの合計)が必要です。 ※受給資格期間の詳細については、以下をご覧ください。 参考|日本年金機構『必要な資格期間が25年から10年に短縮されました』 2000年から、在職老齢年金の制度の法改正は続いています。 2000年の法改正により、2002年4月1日から65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給権者で厚生年金の被保険者に対し、65歳以降の年金と賃金(報酬)の合計が一定額以上のときに年金の全部または一部の支給停止を行う在職老齢年金の制度が導入されました。また、改正により2006年から70歳以上の方にも適用になっています。 現在の在職老齢年金の制度では、60歳台前半(60歳から65歳未満)と65歳以上から受給する老齢厚生年金で、停止額の計算方法などが異なります。 2022年4月1日から導入される在職定時改定 65歳以上の在職者で老齢厚生年金を受給している方の年金額を毎年改定し、在職中に納めた保険料を反映する在職定時改定制度が導入されます。 【年金額の改定時期】 10月(前年9月から当年8月までの厚生年金の加入実績に応じて年金額が反映され改定) 【改定された年金の支払いの時期】 12月(年金は2か月に1回、偶数月に支給) 改正前は、退職などにより厚生年金の被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金は改定されませんでした。改正後は、毎年支払った保険料が年金額にきちんと反映されるようになり、年金を受給している方にとって経済的な充実が図られます。 (出典)厚生労働省サイト『令和4年4月から在職定時改定制度が導入されます』 2022年4月1日から60歳台前半の老齢厚生年金と賃金(報酬)の調整が拡大されます(在職老齢年金) 厚生年金の被保険者が在職しながら賃金(報酬)と老齢厚生年金を受給しているときは、年金の全部または一部が停止されるときがあります。今まで、60歳台前半は「基本月額」と「総報酬月額相当額」それぞれに制限があり、老齢厚生年金の停止がされやすい状態でした。それに比べ、65歳以上は「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が47万円まで停止されないため、老齢厚生年金の受給がしやすいという現状がありました。 2022年4月1日からは、60歳台前半の支給停止の基準が65歳以上の支給停止の基準と同じになります。つまり、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えないときは、老齢厚生年金が全額支給されます。60歳台前半、65歳以上ともに老齢厚生年金の支給停止額の計算式は以下になります。 【用語説明】 基本月額:加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生(退職共済)年金の月額 総報酬月額相当額: (その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 【例:年金の基本月額が10万円で総報酬月額相当額が26万円、合計額36万円の場合】 参考|厚生労働省サイト『令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されます。』 まとめ 年金制度は、賃金や物価変動、現役世代の保険料の負担能力などを検討し、随時見直しが行われます。しかし、高齢者の生活に密接に関係する年金制度はわかりにくく、内容を知らずにいる方も多くいます。制度を知らないと気づかないうちに損をしていることもありますので、不明点などあれば年金事務所や当社へご相談ください。
- 雇用保険料率の引上げ案を含む法律案が国会に提出されました。
2022年3月、会期中の国会に提出されている『雇用保険法等の一部を改正する法律案』は、企業として押さえておきたい改正法案のひとつです。 【改正の概要】 1 失業等給付に係る暫定措置の継続等 2 求人メディア等のマッチング機能の質の向上 3 地域のニーズに対応した職業訓練の推進等 4 雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等 (引用)厚生労働省『雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要(2月1日国会提出)』 法案は現在、衆議院で審議中です(3月16日時点)。今回は、「4 雇用保険料率の暫定措置及び雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等」の雇用保険料率の変更について、変更内容や背景を解説していきます。 雇用保険料率は、2022年4月、2022年10月の2段階で引き上げが予定されています。国会で成立されると、以下サイトにて正式な雇用保険料率の変更リーフレットが公開されますので、確定情報に注目してください。 参考|厚生労働省『雇用保険料率について』 この記事は、事前の情報収集と、料率が正式公開された後のスムーズな対応のためにお役立てください。 雇用保険料率はどのように変更される予定なのか 雇用保険料率は、法令等で定められています。現在の雇用保険料率は、2017年〜2021年度まで法令等で定められた率よりも暫定的に引き下げる措置が講じられ、以下の雇用保険料率が適用されています。 2022年4月以降、労使の負担感を考慮し、現在の雇用保険料率より2段階での引き上げが予定されています。 【現在の雇用保険料率】 【2022年4月1日~2022年9月30日までの雇用保険料率】 雇用保険二事業の保険料率(企業負担のみ)が0.5/1000引き上げられます。従業員の雇用保険料率に変更はありません。 【2022年10月1日~2023年3月31日までの雇用保険料率(予定)】 失業等給付・育児休業給付の保険料率が労働者・事業主負担ともに2/1000引き上げられます。従業員の雇用保険料率も変更になるため、2022年10月分の給与から雇用保険料率を変更する必要があります。 ここでは、法律案の内容通りに国会で成立した場合の雇用保険料率をお伝えしています。正式な雇用保険料率については、厚生労働省の発表をお待ちください。 雇用保険の費用負担の内訳 事業主および被保険者が費用負担している雇用保険料と国庫負担金によって、雇用保険事業は賄われています。雇用保険事業は大きく3つで構成されています。 1 失業等給付(保険料:労使折半) 労働者が失業したときや労働者の雇用継続が困難となる事由が生じたとき、労働者が自ら教育訓練を受けたときに、生活および雇用の安定と就職の促進のための給付を行っています。 2 育児休業給付(保険料:労使折半) 労働者が子どもを養育するために休業をしたときに、生活および雇用の安定と就職の促進のための給付を行っています。 3 雇用保険二事業(保険料:企業負担のみ) 雇用調整助成金などの失業の予防、雇用機会の増大、労働者の能力開発などを図るため雇用安定事業や能力開発事業を行っています。 これらの事業の収支状況や雇用情勢等に応じて、雇用保険料率や国庫負担率などが、引き上げ・引下げ・変更なしと見直しされ財政運営がなされているのです。 なぜ雇用保険料率が引き上げられるのか 雇用保険事業では、雇用・失業情勢が悪化したときにも安定的な失業等給付を行うために、好況期には必要な積み立てを行い、不況期にはこれを財源として使用するための積立金と、雇用安定事業を目的とした不況期に機動的・集中的に支出するために平常時に積み立てる雇用安定資金という仕組みがとられています。 2020年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、雇用・失業情勢が悪化しました。日本では、雇用維持策や新型コロナウイルス感染症の影響により離職した方への基本手当の給付日数の延長に関する特例措置や、雇用調整助成金の拡充などが速やかに行われ、結果、諸外国に比べ、日本の失業率の上昇を一定程度緩やかなものに止めるなど大きな効果を発揮しました。 その結果、雇用保険財政では、雇用安定資金残高および積立金が枯渇するという極めて厳しい収支状況となりました。 新型コロナウイルス感染症等の影響による労使の負担感も考慮しつつ、今後の安定的な財政運営の確保のため、現在暫定措置とされている失業等給付の雇用保険料率や国庫負担割合の見直しが行われることになりました。 参考|職業安定分科会雇用保険部会『参考資料(財政運営関係)』 企業が注意すべきこと 2022年4月、2022年10月の2段階の雇用保険料引き上げにより、企業が注意することは以下のとおりです。 1 従業員負担分の雇用保険料率変更の漏れ防止 雇用保険料は、例年4月分の保険料率から変更になっています。しかし、今回は2段階で料率変更が行われ、従業員給与の雇用保険料率の変更は10月分からになる予定です。給与計算担当者は、正式に雇用保険料率の変更発表後は、変更時期と変更率をあらかじめスケジュールにメモしておくなど、対応漏れのないようご注意ください。 2 2022年度の年度更新対応 2022年度の年度更新は、2021年度確定保険料と2022年度概算保険料を申告・納付します。現時点で、2022年度概算保険料の申告については、2022年度を前期(2022年4月1日~同年9月30日まで)と後期(2022年10月1日~2023年3月31日まで)にわけて、賃金集計した賃金総額の1/2に相当する額と該当期間の料率で計算した額を2022年概算保険料として申告・納付することが予定されています。正式な具体的な計算方法や様式については、厚生労働省の発表をお待ちください。 まとめ 今回は、雇用保険料率の変更についてお伝えさせていただきました。 現在、法律案は審議中です。雇用保険事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とともに雇用保険事業の役割は大きく、日本の失業率の上昇を一定程度緩やかなものに止めるなどの効果をもたらしました。ただ、その代償は大きく、雇用保険財政は厳しい状況です。 まだ、新型コロナウイルス感染症の影響はしばらく続くことが予測され、保険料率引き上げなどの負担に不満を持たれる方も一定数考えられますが、雇用保険事業は、働く人すべてに必要不可欠なセーフティーネットとして機能するものです。
- 協会けんぽより、令和4年度の健康保険料率が公表されました。
協会けんぽより、令和4年度の都道府県単位健康保険料率が発表されました。令和4年度の健康保険料率では、すべての都道府県で引上げ・引下げいずれかの変更があります。 介護保険料率は、全国一律で令和3年度1.80%より0.16%引下げされ、令和4年度は1.64%となります。 【令和4年度の健康保険料率(令和4年3月分の保険料から適用)】 引用|協会けんぽ『令和4年度都道府県単位保険料率』 健康保険料の額とは 健康保険料の額は、次の計算式で求めることができます。 従業員が40歳から64歳までの場合は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料を支払うことになります。 上記で求めた保険料額を企業と従業員で折半します。 【標準報酬月額】 標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするため、報酬月額の区分ごとに設定されている基準となる金額をいいます。現在、58,000円(第1級)から1,390,000円(第50級)までに区分されています。 標準報酬月額の決定方法は、下記の5種類があります。 ・定時決定 ・資格取得時決定 ・随時改定 ・育児休業等を終了したときの改定 ・産前産後休業を終了したときの改定 【標準賞与額】 標準賞与額とは、賞与にかかる保険料を計算するもととなる金額で、賞与の支給総額から、1,000円未満を切り捨てて算出します。標準賞与の対象となる賞与は、名称に関係なく従業員に対して労働の対象として支払う年3回以下のものをいいます。 【端数処理について】 従業員負担分に端数が生じた場合は 端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円とします。 (例) 12,345.50円 ⇒12,345円を控除 12,345.51円 ⇒12,346円を控除 ただし、企業と従業員の間で「端数は企業負担とするなどの特約」がある場合は、特約に基づき端数処理ができます。 都道府県単位の保険料率とは 協会けんぽの健康保険料は、各都道府県により保険料率が異なります。各都道府県の保険料率は、地域の加入者の医療費に基づいて算出されており、都道府県ごとに必要な医療費(支出)が異なるため、保険料率に差が生じます。つまり、疾病予防などの取り組みにより都道府県の医療費が下がれば、その分都道府県の保険料率も下がることになります。 保険料率は毎年度改定され、都道府県によって「引上げ」「据え置き」「引下げ」に分かれます。医療費を下げる取り組みが、保険料の負担を左右するのです。 なお、健康保険組合は各組合によって保険料率が定められていますので、都道府県単位の保険料率が適用されているのは協会けんぽのみとなります。下記のサイトより、各都道府県の保険料率を反映した保険料額表が公開されています。 参考|協会けんぽ『令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)』 保険料の納付手続きと納付期日 企業は、企業負担分と従業員負担分をあわせた保険料を協会けんぽに納付する義務があります。この場合、従業員の負担する分については、企業は従業員に支払う給与から保険料を控除することができます。従業員の負担する保険料を給与から控除したときは、給与明細等に記載しそれを従業員に知らせなければなりません。 【納付期日と納付方法】 納付期日:翌月の末日 納付方法:銀行・郵便局等金融機関窓口、口座振替 納付日までに納付を行わない場合、期限を指定した督促状が送られてきます。督促状の期限までに納めないと、延滞金が課され、また財産差押えなどの滞納処分を受けることにもなります。 まとめ 協会けんぽの健康保険料率は、都道府県によって異なります。給与計算ソフト等を導入している場合は、3月分の保険料を徴収する給与計算が始まる前に令和4年度の健康保険料率に置き換える処理を行う必要があります。 また、3月に賞与を支給する場合は、令和4年度の健康保険料率で保険料を算出する必要があります。各都道府県の健康保険料率を確認し、正しい健康保険料率で従業員から保険料を徴収を行ってください。
- 2022年4月1日より社用車のアルコールチェックが義務化されます。
2022年4月1日より、道路交通法の改正に伴い、 乗車定員が11名以上の自動車を1台以上 または乗車定員に限らず5台以上を使用する事業所の運転者に対して、 酒気帯びの有無を確認するアルコールチェックが義務化されます。 アルコールチェックは事業所の安全運転管理者が実施し、 実施記録を1年間保存しておかなければなりません。 義務化は2段階で行われます。 2022年4月1日から「目視による酒気帯びの有無」、 そして2022年10月1日から「アルコール検知器を使用しての酒気帯びの有無」の確認が必要になります。 【アルコールチェック義務化のスケジュール】 アルコールチェックは、運転する前後に実施します。 使用するアルコール検知器は、定期的に機器の点検を行い、 いつでも正常に使用できる状態で備え付けておかなければなりません。 アルコールチェックで確認した記録について アルコールチェックを実施したときは 以下の内容を記録(任意書式)し、1年間保存してください。 【記録する内容】 ・実施者名 ・運転者 ・運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、 番号など ・実施日 ・実施の方法 ・酒気帯び運転の有無 ・指示事項 ・その他必要な事項 安全運転管理者の選任 安全運転管理者は、事業所で使用する自動車の乗車定員が11名以上の自動車を1台以上、 または乗車定員に限らず5台以上のときに選任が必要です。 安全運転管理者は選任後15日以内に事業所の管轄の警察署への届出と、 毎年1回の講習が義務づけられています。 自動車を20台以上使用しているときは、 安全運転管理者以外に副安全運転管理者の選任も必要です。 また、選任は企業単位ではなく、事業所単位(本店、支店、営業所など)で行います。 選任をしていないときは5万円以下の罰金の対象になります。 届出や講習については管轄の警察署へお問合せください。 安全運転管理者の業務については、 下記の「安全運転管理者が実施しなければいけないこと」を参考にしてください。 【安全運転管理者の選任が必要になる車の台数】 (出典)大阪府警サイト『安全運転管理者制度とは』 安全運転管理者の選任 安全運転管理者等は、資格要件を満たす人を選任しなければいけません。 【安全運転管理者と副安全運転管理者の資格要件】 (出典)大阪府警サイト『安全運転管理者制度とは』 安全運転管理者が実施しなければいけないこと 安全運転管理者が実施しなければならない業務は法令で定められています。 【安全運転管理者の業務】 1 運転者の適性、技能、知識や運転者が道路交通法などの 規定を遵守しているかの状況把握 2 最高速度違反、積載量の重量オーバー、過労運転の防止などに留意した運行計画の作成 3 長距離運転、夜間運転を行うときに安全運転が行えるよう交替要員を配置 4 異常気象等のときの安全確保に必要な指示や措置 5 点呼等による安全運転の確保 6 運転者へ運転状況の把握ために必要な運転日誌の記録指導 7 運転者へ技能、知識など安全運転ができるよう必要な事項についての指導 8 酒気帯びの有無の確認および記録の保存(2022年4月1日施行) 9 アルコール検知器の使用等(2022年10月1日施行) 今回の改正で新たに「8 酒気帯びの有無の確認および記録を保存」 「9 アルコール検知器の使用等」の実施が必要になります。 企業のリスク軽減のための必要なこと 業務上、自動車を使用することもあると思いますが、 交通事故を起こした企業には「刑事上の責任」「行政上の責任」 「民事上の責任」「社会的責任」が問われ、大きな代償を支払います。 そうならないよう、事前対策を取ることをおすすめします。 【リスク軽減の対策】 ・車両管理規程の作成 ・運転者の教育・指導 ・運転者の「累積点数等証明書※」の取り寄せ ・交通事故や交通違反があったときの連絡方法 ・車両の管理方法 など ※累積点数等証明書とは、過去5年間の交通事故や交通違反などの履歴を自動車安全運転センターから発行してもらえる証明書です。 定期的(1年に1回など)に企業から取り寄せる、または本人から提出してもらい、過去の運転の記録を確認し、違反などがあれば指導などの実施を行うことをおすすめします。企業から取り寄せるときは、本人の委任状(任意書式)が必要です。 参考|自動車安全運転センター『各種証明書のご案内』 まとめ 交通事故は他人事のように思われている方もいますが、いつ発生するかわかりません。 交通事故は企業、本人、被害者の方の人生を大きく変えてしまいます。 だからこそ交通事故を起こさないようにすることが大事です。 改正を機会に運転について振り返り、今後の対策を取られることをおすすめします。