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「」に対する検索結果が110件見つかりました

  • 労働時間等設定改善委員会とは?

    厚生労働省の人口動態統計によれば、2022年中の出生率は 79.9万人で7年連続減少しており、統計開始以来はじめて80万人を下回りました。 日本の少子化が加速しています。 少子化の進行と人口減少が進む中、多様な人材が長期にわたって 活躍できる環境が求められています。 そのためには長時間労働の改善や、年次有給休暇が取得しやすい 環境整備などについて企業と従業員が深く話し合うこと、 また働きやすい職場環境の実現のため労使が協力し共に取り組む姿勢が必要です。 企業の労使協議の場には「衛生委員会」「労使委員会」などがありますが、 企業内で労働時間や休日、休憩、年次有給休暇など労働環境の改善を 中心に話し合うための専門チームとして、 「労働時間等設定改善委員会」の設置をおすすめします。 労働時間などの改善についての法律 企業が自ら労働時間などの改善に取り組み、働く人たちがスキルや能力を 最大限に発揮でき、健康で充実した生活の実現を目指す法律に 「労働時間等設定改善法(正式名称:労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)」 があります。 労働時間等設定改善法は2006年4月1日に施行された法律で 1992年に制定された「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」が 基盤となって誕生しました。 この法律では、企業における労働時間や休日、休憩、年次有給休暇など (以降「労働時間等」という)の問題を、 企業の自主的な取り組みで改善することを努力義務として定めています。 勤務間インターバル制度の導入や、取引先に対する短納期発注や 発注内容の頻繁な変更の回避などもこの法律がもとになっています。 労働時間等設定改善委員会とは 企業の労働時間等の問題を改善するためには、企業経営の実情や 従業員の抱える事情を考慮に入れた検討が必要です。 企業と従業員が十分に意見を出しあうことができる体制を整えることも 労働時間等設定改善法における企業の努力義務の一部とされています。 その体制のひとつとして、労働時間等設定改善委員会があげられます。 この委員会は、事業場ごとに設置します。 労働時間等設定改善委員会の設置をおすすめする理由は2つです。 ➀労働時間等の問題を労使で熟慮し 解決策を見つけるための専門チームを発足できる ➁一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会の設置で 労働基準法の適用の特例がある 2019年3月31日まで、衛生委員会や安全衛生委員会を 労働時間等設定改善委員会とみなす規定がありましたが、 現在は廃止されています。 労働基準法の適用の特例 一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会を設置した場合、 委員の5分の4以上の多数による決議により 労働基準法の各労使協定の締結に代替することができます。 また、行政官庁への労使協定の届出義務がある制度での届出免除など、 労働基準法の適用の特例があります。 要件を満たさないまま労働基準法の各制度を適用するときは 労使協定の締結および届出義務が発生し、 各種制度の労働基準法違反となる可能性があります。 正しく委員会を設置し決議をするようにしてください。 (※)36協定については届出義務の免除はありません。 委員会の決議により労使協定の代替をしたときは、届出様式が「時間外・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届」になるためご注意ください。 参考・ダウンロード|厚生労働省『時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届(様式第9号の7)』 一定の要件を満たす労働時間等設定改善委員会とは 労働基準法の適用の特例を受けるためには 一定の要件を満たした委員会を設置する必要があります。 一定の要件は、次の3つです。 1 委員の半数は従業員側のメンバーで構成する 委員は、事業主側(使用者)と従業員側のメンバーで構成しますが 委員の半数は従業員側のメンバーである必要があります。 また従業員側のメンバーは、事業場の過半数で組織する労働組合、 または、従業員の過半数を代表する者の推薦に基づいて 指名されていることが要件です。 この委員会は、労働時間等に関して企業と従業員の十分な話し合いや 問題の改善を行うことが目的のため、 従業員側のメンバーを選出するポイントとしては、企業で働く従業員が抱える 多様な事情が反映されるよう、性別、年齢、家族構成、育児・介護、自発的な 職業能力開発等の経験や知見に配慮することをおすすめします。 2 委員会の議事録を作成し5年間保存する 委員会開催の都度、議事録を作成します。 いずれかを起算日として5年間(当分の間3年)保存しなければなりません。 ・委員会の開催の日 ・決議にかかる内容の完結の日 3 委員会の運営規程を定める 委員会の運営に必要な事項に関する規程を定める必要があります。 規程の作成や、変更については、委員会の同意を得なければなりません。 【労働時間等設定改善委員会の運営規程 内容例】 ・委員会の目的 ・委員会で調査審議する内容 ・構成員の選出方法、人数 ・構成員の任務、任期 ・委員会の開催頻度 ・委員会の定足数 ・議事録の作成方法 ・その他、委員会の運営に必要なこと など 労働時間等設定改善委員会の役割の整理 労働時間等設定改善委員会では、事業所で働く従業員の勤怠データなどの 情報をもとに労働環境を把握し、解決すべき問題点について 中長期的な措置の計画を立てていきます。 1 現状を把握する 事業場で働く従業員の、労働時間等の実態について適正に把握します。 【把握する内容】 ・時間外・休日労働の時間数 ・始業時刻・終業時刻、終業から始業までの時間 ・年次有給休暇の取得率 ・深夜労働の回数および時間数 ・時間当たりの業務負担の度合 など 特に労働時間等の配慮を必要とする従業員がいるかも把握します。 【特に労働時間等の配慮を必要とする従業員】 ・健康診断の結果や医師等の意見を踏まえた、健康面に気を付けなければならない人 ・育児・介護を行っている人 ・公民権の行使または、公の職務の執行をする人 ・自発的な職業能力開発を図る人 ・地域活動やボランティア活動をする人 など 2 労働時間等の設定の改善にかかる措置の検討 労働時間等の設定の改善にかかる措置を委員会で検討します。 把握した現状の内容をもとに、時間外・休日労働の削減率や年次有給休暇の取得率の目標づくりなど、具体的な数値目標、措置の内容、実施スケジュールなども踏まえて計画を立てて取り組むことが大切です。 【措置 例】 ・業務の特性に応じた柔軟な労働時間の導入:変形労働時間制、フレックスタイム制など ・年次有給休暇を取得しやすい環境の整備:時間単位有給、計画的付与など ・時間外・休日労働の削減:ノー残業デーの導入、休日労働したときの代休付与など ・多様な働き方の選択肢の拡大:短時間正社員制度、テレワークの活用など ・終業および始業の時刻に関する措置:勤務間インターバル制度、深夜業の回数制限など 厚生労働省のガイドラインを参考にしてください。 参考|厚生労働省『労働時間等設定改善法 労働時間等見直しガイドラインについて』 まとめ 労働時間等設定改善法は強制的に委員会設置を義務付ける法律ではありません。 あくまで、企業の自主的な取り組みを促進し、働きやすい職場環境を 実現するための法律です。 多様な人材が長期にわたり活躍できるよう、働きやすい職場環境づくりの 専門チーム「労働時間等設定改善委員会」の設置をご検討ください。

  • 【新法】労働者協同組合法とは?

    2022年10月1日、労働者協同組合の設立、運営、管理について定められた 「労働者協同組合法」という新しい法律が施行されました。 少子高齢化が進む中、人口の減少地域では介護・障害福祉、地域づくりなどの 幅広い分野で担い手が必要とされています。 しかし今の法人格制度では、出資ができない、営利法人である、 財産が個人名義になるなど、多様な働き方を実現しつつも 地域貢献できる組織運営には向いていません。 そこで組合員が出資し、組合の事業を自ら主体となって行えるよう 新しい法人格として労働者協同組合ができました。 2023年5月10日時点では、19都道府県で計39法人が設立され、 それぞれの生活スタイルに応じてNPOや企業組合などの法人格を利用し 任意団体として活動されています。 地域で求められていることを実現するために 児童デイサービスや就労支援などの活動を通じ、 地域との繋がりを増やしている労働者協同組合もあります。 労働者協同組合とは 労働者協同組合とは、雇われて働くのではなく、同じ志を持った人たちが集まり、組合員として出資をし、それぞれの意見を反映しながら事業を行うことを基本原理とする組織です。組織を通して働く場所を生み出し、地域の需要に応じたさまざまな事業を促進し、活力ある地域社会への実現に向けて役立つことを目的としています。 【基本原理】 通常想定されている雇用関係は「使用者」と「労働者」の2つに分けられますが、 労働者協同組合では「使用者」と「労働者」が明確に分けられていません。 労働者協同組合の組合員として地域の課題に取り組み、 持続可能な活力ある地域社会の実現を目指すため働き、貢献します。 (出典)厚生労働省『労働者協同組合法について』 労働者協同組合は法人なのか 労働者協同組合では、出資・経営・労働のすべてを組合員自身で行うため、 事業に自分たちの意見を反映できます。 組合員が主体となり、事業を通して地域の活性化実現に繋げます。 労働者協同組合と株式会社との違い 労働者協同組合と株式会社がどのように違うのか、概要を以下にまとめています。 【労働者協同組合と株式会社の違い】 労働契約はどうなるのか 労働者協同組合の事業に従事する組合員は 労働者協同組合と労働契約を締結する労働者であることから、 労働者保護のための法律(例えば労働基準法や最低賃金法)の適用を受けます。 これにより、週1回の休日の保障や最低賃金以上での賃金額が保障されます。 なお、労働者協同組合の業務執行の職務のみを行う組合員は 労働者としての保護は受けられません。 社会保険等の適用について 労働者協同組合は社会保険(厚生年金・健康保険)、雇用保険、労災保険の 適用事業所になるため、それぞれ手続が必要になります。 労働契約を締結した組合員も、加入要件を満たしているときは加入しなければなりません。 【社会保険等一覧】 労働者協同組合にはルールがある 労働者協同組合を運営していくにあたり、一般企業にはないさまざまなルールがあります。 【主なルール】 ・事業の種類 労働者協同組合の基本原理に沿って行われる事業であれば どんな種類の事業でも原則自由に行えます。 許認可等が必要な事業(介護事業、保育所など)のときは許認可等の取得が必要で、 規制も受けます。 ただし労働者派遣事業は、労働者協同組合にはできません。 他人の指揮命令を受けて当該他人のための労働に従事する事業は、 労働者協同組合の基本原理に沿わないためです。 ・組合員の出資金 出資一口あたりの金額や出資口数は、それぞれの労働者協同組合で決めます。 組合員1人の出資口数は総口数の25/100以下(3名以下の労働者協同組合のときは適用外)となっており、譲渡できないことが法令で定められています。 仮に労働者協同組合が破産したときの責任は、組合員の出資額までです。 ・人数要件 労働者協同組合の事業に従事する組合員の割合などは 法令で以下のように定められており、①②を満たさなければなりません。 ①総組合員の4/5以上は組合の事業に従事しなければならない 組合員は労働者協同組合事業に従事しなければなりませんが、 従事する意思はあるものの、家庭の事情(育児、介護)などにより 従事できないケースもでてきます。 そのため1/5の組合員までであれば、事業に従事しないことが認められています。 労働者協同組合業務を行う理事は、事業に従事している組合員に含まれますが 監事は労働者協同組合への関わり方や定款により異なります。 どちらに含まれるかは窓口へご相談ください。 (窓口) 厚生労働省 雇用環境・均等局 勤労者生活課 労働者協同組合業務室 電話番号:03-3595-3189(直通) ②労働者協同組合の事業に従事する者の3/4以上は組合員でなければならない 労働者協同組合の事業に従事するのは「組合員」ですが 1/4は組合員以外も認められています。 組合員になれるのは、出資金の全額の払い込みが完了したときと法令で定められています。 定款上で出資金の分割払いが認められているときは、従事しながら組合員に なろうとする人や、事業の繁忙期に一時的にアルバイトとして雇用される人などが 想定されます。 ・配当金 組合員への配当は、事業に従事した程度に応じて行います。労働者協同組合を健全に運営するため、一定の積立金などを控除した後の剰余金が配当の対象になります。 ・議決権、選挙権 組合員は、出資額の多い・少ないにかかわらず、平等に1人1票の議決権と選挙権を 持っています。 労働者協同組合と労働契約を締結した組合員が、過半数の議決権を保有している 状態にしておかなければなりません。 ・労働者協同組合への加入、脱退 労働者協同組合への加入・脱退は任意ですが 組合員になれるのは「個人」のみで、団体や法人などの組織は組合員になれません。 また組合員として加入を希望する人を「正当な理由なく」拒否できません。 「仕事の空きがない」「仕事を行うのに必要な資格がない」などのときは 「正当な理由」として拒否できます。 メリット・デメリット 労働者協同組合には、以下のようなメリット・デメリットがあります。 設立の流れなど 労働者協同組合は3人以上の発起人がいれば設立できます。 設立の流れなどは厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。 企業組合やNPOから労働者協同組合への変更も可能ですが 組織変更などの手続が必要になります。 【設立の流れ】 (出典)厚生労働省『労働者協同組合法って?』 ※厚生労働省では専門サイト『「はたらく」をつくる。みんなでつくる労働者協同組合法』が開設されており、設立までの流れや事例、Q&Aなどが掲載されています。 まとめ 過疎化や高齢化など、地域によって抱える課題はさまざまです。 労働者協同組合は地域の皆で意見を出し合い、地域の課題解決を進めるために つくられました。 株主や経営者に左右されず、自分たちで意見を出し合い、事業に取り組むことができます。まだまだ新しい制度のため、リスクも含めて設立を検討されることをおすすめします。

  • 【2023年度版】助成金制度のポイント

    前回の【2023年度版】助成金制度ポイント①~③ に続き 今回は申請実績数が多い「両立支援等助成金」の概要について紹介します。 ◆両立支援等助成金 1 概要 働きながら子育てや介護を行う従業員の雇用の継続を図るために 就業環境の整備を行った企業に支給する助成金です。 職業生活と家庭生活の両立支援の取り組みを促進し、 雇用の安定を図ることを目的としています。 ここでは、男性が短期間の育児休業を取得したときに利用できる 「出生時両立支援コース」と 男性・女性問わず長期間の育児休業を取得したときに利用できる 「育児休業等支援コース」について記載しています。 2 出生時両立支援コース(中小企業のみ対象) 男性従業員でも育児休業を取得しやすい環境の整備や業務体制の整備を行い、 男性従業員が実際に育児休業を取得したら支給される助成金です。 助成金には第1種と第2種があり、第2種の受給は第1種を受給していることが 条件になっています。 ※「ポイント」とは%のことをいいます(30ポイント→30%)。 (出典)厚生労働省『2023年度 両立支援等助成金のご案内』 (1)第1種について 第1種を受給するためには、以下の要件を満たさなければなりません。 ①育児・介護休業法に定められている雇用環境整備の措置を複数行っている ②就業規則に、育児休業取得者の業務を代替する従業員の 業務見直しに関する規定を設けている (※従業員が10人以上の場合は就業規則の労働基準監督署への届出が必要です) ③②の規定に基づき業務体制を整備をしている ④子の出生時後8週間以内に男性従業員が育児休業を5日以上連続して取得している (育児休業をした日のうち、4日以上が所定労働日でなければなりません) (2)第1種の支給額と加算について 第1種の支給額は20万円です。また、以下の加算が行われます。 ①代替要員加算 「代替要員加算」として代替要員を1人または2人確保した場合はさらに20万円の加算が、 3人以上を確保した場合は45万円の加算が行われます。 ②育児休業等に関する情報公表加算 2023年度から自社の育児休業の取得状況を 「両立支援のひろば」サイトに公表することで 「育児休業等に関する情報公表加算(2万円)」が加算されます。 この加算は出生時両立支援コースだけではなく 後で説明する育児休業等支援コースも対象です。 「両立支援ひろば」は厚生労働省が運営するサイトで、 企業の仕事と家庭の両立支援に関する取組みを紹介しています。 参考|厚生労働省 仕事と家庭の両立を支援するサイト『両立支援のひろば』 (3)第2種について ①支給要件 第2種が支給されるための条件は次のとおりです。 ア 第1種を受給していること イ 第1種を受給した年度の対象となる男性労働者の育児休業取得率を 3事業年度以内に30%以上上昇させること、 または第1種を申請時において対象となる男性従業員が 4人以下の場合は取得率が70%以上であり、 かつ翌事業年度以降で、2事業年度以上連続で70%以上であること ウ 対象となる男性労働者の育児休業取得者が2名以上いること ②支給額 支給額は以下のアまたはイのいずれかです。 ア 対象となる男性従業員の育児休業取得率を30%上昇させることに 1事業年度しかかからなかった場合は、60万円が支給されます。 30%上昇させることに2事業年度かかったときは40万円に、 3事業年度かかったときは20万円に減額されます。 イ 第1種を申請時に対象となる男性従業員が4人以下で かつ、取得率が70%以上であった場合は 翌年度および翌々年度の取得率も70%以上であれば40万円が支給されます。 翌年度の取得率が70%未満であっても、翌々年度と3事業年度後で 取得率が70%以上であれば20万円が支給されます。 (出典)厚生労働省『2023年度 両立支援等助成金のご案内』 3 育児休業等支援コース(中小企業のみ対象) (1)概要 従業員のスムーズな育児休業取得と職場復帰のため 「育休復帰支援プラン(以下「プラン)」を作成し、 そのプランに沿って取り組みを行っている企業で 育児休業取得者が生じたときに支給される助成金です。 プランの作成に必要な書式やマニュアルは厚生労働省サイトに掲載されています。 参考|厚生労働省『育休復帰支援プラン策定のご案内』 育児休業等支援コースは「育休取得時・職場復帰時」「業務代替支援」「職場復帰後支援」の3つに分かれており、支給額などが異なります。 (2)育休取得時・職場復帰時 育児休業を取得する従業員に対して、育休の取得時および職場復帰時に 以下の措置を講じた場合に助成金が支給されます。 ①支給要件 それぞれの要件は以下になります。 ②支給額 「育休取得時」と「職場復帰時」で助成金の申請が分かれているため 2回申請を行います。 また「職場復帰時」の申請を行うためには「育休取得時」を受給していることが必要です。 昨年度は育休取得時、職場復帰時の支給額がそれぞれ285,000円でしたが、 今年度から以下のとおり増額されています。 (3)業務代替支援 ①概要 育児休業を取得する従業員に代わってその従業員が担当していた業務を引き継ぐ者を、 以下のいずれかにより補充した場合にも助成金が支給されます。 ただし、対象者が原職等に復帰した後においても 雇用保険の対象となる労働条件で6か月以上継続して勤務している必要があります。 ア 新たに従業員を雇用するまたは派遣労働者を受け入れることによって 代替要員を確保した場合には50万円が支給されます。 イ 育児休業を行う者が担当していた業務を他の従業員に引き継がせるにあたり、 その業務を代替する期間について、就業規則等に従い月額1万円以上の手当を 支給した場合には10万円が支給されます。 ウ ア、イともに、育児休業取得者が有期雇用労働者であった場合には さらに10万円が支給されます。 (出典)厚生労働省『2023年度 両立支援等助成金のご案内』 (4)職場復帰後支援 育児休業から復帰後、仕事と育児を両立することが困難な状況にある 従業員を支援するために、 育児・介護休業法で定める「子の看護休暇制度」超える休暇制度の導入や 法律上、導入の義務が課されていない「保育サービス費用補助制度」を導入し、 実際にその制度が活用された場合にも以下のとおり、助成金が支給されます。 (出典)厚生労働省『2023年度 両立支援等助成金のご案内』 まとめ 両立支援等助成金は、長年にわたって存在する助成金です。 名称や要件、受給額などが変更されてきましたが 助成金自体は10年以上前から続いており、認知度が高く 多くの企業が利用しています。 ただし上記以外にも細かな要件があるため、申請手続にミスなどがあると 不支給になることもあります。 助成金を検討するときは、現状の要件や手順を確認したうえで 専門家の社会保険労務士に相談されることをおすすめします。

  • 【2024年4月】障害者雇用率引上げ ポイント②

    障害者の雇用義務人数と比較する「企業の実雇用人数」 「企業の実雇用人数」とは、企業で働く、障害をもつ従業員の数です。 障害者雇用率制度の対象となる常用雇用で働く従業員や、 その従業員のうち障害をもつ従業員(企業の実雇用人数)の算定は 少し複雑です。 次の「常用雇用で働く従業員数と企業の実雇用人数を 算定するために理解すること」で細かく説明します。 常用雇用の従業員数と実雇用人数の算定に必要な理解 「常用雇用で働く従業員」と「常用雇用で働く障害をもつ従業員の数 (企業の実雇用人数)」を算定するためには 制度上の対象者と従業員数の算定方法を理解する必要があります。 1 制度上の対象者を知る 制度上の対象者は、雇用形態に関係なく「常用雇用」の従業員です。 役員は含みません。 「常用雇用」とは、雇用期間の定めのない方や 1年以上雇用される見込みがある、または1年以上雇用されている方です。 パート・アルバイト、兼務役員、外務員、出向労働者、海外勤務労働者、 外国人労働者、派遣労働者(派遣元)、在宅勤務者、休職中の従業員も含まれます。 2 制度上の従業員数の算定方法を知る 1週間の所定労働時間数や障害の度合いによって算定方法が異なります。 具体的には、従業員1人を「1」「0.5」「2」という数で算定します。 【常用雇用で働く従業員数(常用雇用労働者・短時間労働者)】 常用雇用で働く従業員数は、常用雇用労働者と短時間労働者を 合計した数です。 常用雇用労働者と短時間労働者の違いは、1週間の労働時間数です。 1週間の労働時間が短い「短時間労働者」は、1人を「0.5」とみなして算定します。 すべての従業員数なので、障害をもつ従業員も加えてください。 【常用雇用で働く障害をもつ従業員数(企業の実雇用人数)】 常用雇用で働く障害をもつ従業員数は、1週間の労働時間数だけではなく、障害の度合いによって算定方法が異なります。 ポイント1 重度の身体障害者と重度の知的障害者は「2」で算定する 身体障害者と知的障害者で重度に該当するときは、1人を「2」とみなして算定します。 精神障害者には1人を「2」とみなす取扱いはありません。 (重度の身体障害者)身体障害者手帳1級、2級 および 3級相当の障害が2つ以上ある方 (重度の知的障害者)療育手帳区分A、または地域障害者職業センターなどで 重度の知的障害者と判定された方 ポイント2 特例措置の延長、20時間以上30時間未満の精神障害者は「1」で算定する 精神障害者の職場定着を進める観点から、20時間以上30時間未満の 精神障害者を 特例措置として1人を「1」とみなし算定してきました。 措置期限が2022年度末まででしたが、当面の間、雇入れ期間等に関係なく 「1」とみなす特例措置を延長することになりました。 ポイント3 2024年4月以降、1週間の労働時間が特に短い 一部の障害者も算定の対象になる 2024年4月以降、1週間の労働時間が10時間以上20時間未満であっても 重度の身体障害者、重度の知的障害者、精神障害者に該当するときは、 1人を「0.5」とみなし算定できるようになります。 障害者の雇用義務人数と企業の実雇用人数の算定例 常用雇用で働く従業員の勤務時間や障害者の障害種別などをふまえて算定すると 以下のようになります。 【除外率なしA企業の例】 1 障害者の雇用義務人数 4人 算定方法 常用雇用労働者150人+(短時間労働者50人×0.5)=175人 175人×2.3%=4.025人(小数点以下切り捨て) 2 企業の実雇用人数 4.5人 内訳 重度身体障害者「2」+身体障害者「1」+知的障害者「0.5」+精神障害者「1」 3 「1」障害者の雇用義務人数と「2」企業の実雇用人数の比較 障害者の雇用義務人数4人 < 企業の実雇用人数4.5人 →A企業は、障害者の法定雇用率を達成しています。 障害者雇用率が未達成のとき 障害者の法定雇用率で算定した障害者の雇用義務人数と 企業の実雇用人数を比較して、障害者の法定雇用率が未達成の場合は 障害者雇用納付金の徴収やハローワークによる行政指導など以下の対応がなされます。 【未達成のときのデメリット】 ・常用雇用で働く従業員数が101人以上の企業のとき 障害者雇用納付金※を納付しなければならない ・ハローワークによる、法定雇用率達成に向けた行政指導が実施される ・障害者雇入れ計画の適正実施勧告に対し、改善されないとき企業名が公表される ※障害者雇用納付金 障害者の法定雇用率が未達成の企業のうち、常用雇用で働く従業員数が 101人以上の企業は、法定雇用率で雇用するべき障害者数に足りていない 人数1人につき月額50,000円の納付金を納付しなければなりません。 まとめ 障害者の法定雇用率の段階的引き上げにより、対象となる企業規模が拡大します。 すでに対象となっている企業も、障害者の雇用義務人数が増える可能性があります。 今回の記事をもとに、障害者の法定雇用率にともなう正しい算定の仕方を 早い段階で確認し、まずは対象かどうかと雇用義務人数を把握してください。 そして採用計画などの見直しが必要であればハローワークや高齢・障害者・求職者雇用支援機構などの情報を活用し、自社にあった障害者雇用を検討してください。

  • 【2024年4月】障害者雇用率引上げ ポイント①

    障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図ることを目的とし、 障害者の雇用の安定を実現するための具体的な方策を定めた法律です。 すべての企業が対象となりますが、企業の従業員数に応じて求められる 責任と義務の範囲が異なります。 2024年4月以降、障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。 これにより、企業に求められる責任と義務の中でも「※」印がある項目は 対象となる企業規模が拡大します。 【企業が求められる責任と義務】 ・障害者雇用率制度(法定雇用率の対象となる企業)※ ・障害者の差別禁止と合理的配慮の提供義務(すべての企業) ・相談体制の整備(すべての企業) ・障害者職業生活相談員の選任(障害者を5人以上雇用する企業) ・障害者雇用状況のハローワークへの報告(法定雇用率の対象となる企業)※ ・障害者雇用推進者の選任(法定雇用率の対象となる企業)※ ・障害者の解雇の届出(すべての企業) 今回の記事では、障害者の法定雇用率を中心にお伝えします。 障害をもつ方を雇用するためには、企業側の対応や環境整備が必要です。 早めに自社の実際の雇用率を把握し、法定雇用率に達していない場合は 十分な時間をかけて採用計画と準備を進めてください。 障害者の法定雇用率とは 障害者雇用率制度とは、常用雇用する従業員数に応じて 一定割合以上の障害をもつ方を雇用することを義務付けている制度で この割合を法定雇用率といいます。 障害者雇用促進法における「障害者」は 身体的、知的、精神的な障害(発達障害も含む)をもち、 仕事のやり方や働く場に長期的な大きな制限があったり 働くことが非常に困難な方をいいます。 障害者のうち、身体障害者、知的障害者、精神障害者で 以下の手帳の交付や判定を受けている方が障害者雇用率制度の対象です。 (身体障害者)身体障害者手帳1~6級の交付を受けている方 (知的障害者)療育手帳、児童相談所や障害者職業センターなどで 知的障害者と判定された方 (精神障害者)精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方 障害者の法定雇用率の段階的な引き上げ 2023年4月現在、民間企業の障害者の法定雇用率は2.3%で、 43.5人以上の従業員がいる企業は少なくとも1人の障害者を 雇わなければなりません。 しかし2024年4月からは、法定雇用率が2.5%に上がり 40人以上の従業員がいる企業が対象となります。 ※支店や営業所 など事業所が複数あるときでも、企業(事業主)全体を一単位とします。 対象となる企業に該当する場合、障害者の雇用だけでなく 以下の義務も対象になります。 ・障害者雇用状況のハローワークへの報告(毎年6月1日時点) ・障害者雇用推進者の選任(努力義務) 法定雇用率から算出する障害者の雇用義務人数 障害者の法定雇用率の引き上げにより、企業の障害者の雇用が必要になる人数 (以降、障害者の雇用義務人数という)が変更になります。 自社の障害者の雇用義務人数を確認してください。 計算した数に小数点がでるときは、小数点以下を切り捨てしてください。 (例)常用雇用で働く従業員数が130人の企業の場合の障害者の雇用義務人数 2023年4月:法定雇用率2.3% の場合 130人 × 2.3% = 2.99 人(小数点以下切り捨て) 障害者の雇用義務人数:2人 2024年4月:法定雇用率2.5% の場合 130人 × 2.5% = 3.25 人(小数点以下切り捨て) 障害者の雇用義務人数:3人 2026年7月:法定雇用率2.7% の場合 130人 × 2.7% = 3.51 人(小数点以下切り捨て) 障害者の雇用義務人数:3人 障害者の法定雇用率の引き上げにより、すでに雇用義務の対象になっている企業は 障害者の雇用義務人数が増える可能性があります。 除外率に該当する業種であるかの確認 障害者の就業が一般的に難しいと認められる業種については 障害者の雇用義務人数を算出するときに、 従業員数から業種ごとの除外率に応じた数を差し引くことができます。 除外率制度自体は、ノーマライゼーション(障害者のある人もない人も 共に生活する社会)の考え方から2004年に廃止されました。 しかし、企業にかかる負担が大きいことから、 段階的な除外率の縮小・廃止を目指し 経過措置として特定の業種で除外率が設定されています。 (例)常用雇用で働く従業員数が500人の企業の障害者の雇用義務人数 2023年4月:法定雇用率2.3%、除外率0%の場合 500人 × 2.3% = 11.5人(小数点以下切り捨て) 障害者の雇用義務人数:11人 2023年4月:法定雇用率2.3%、除外率20%の場合 (500人-100人)× 2.3% = 9.2人(小数点以下切り捨て) 障害者の雇用義務人数:9人 ※全従業員(500人)から除外率20%の従業員(500人×20%=100人)を除く 2023年4月時点で国が定める業種に該当するかは、以下をご覧ください。 参考|厚生労働省『参考資料』P11 除外率設定業種及び除外率 2025年4月以降も、除外率は段階的に引き下げ、縮小されていく方針です。 現在除外率が10%以下の業種は廃止され、その他の業種についても 除外率の引き下げが予定されています。 参考|厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』Point ②

  • 【2023年度版】助成金制度 ポイント③

    ◆人材開発支援助成金 1 概論 人材開発支援助成金とは、企業が従業員の職務に 関連した技能や知識を習得させるため、 職業訓練などを計画に沿って実施したときに 訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部が 支給される助成金です。 対象者(正社員、有期契約労働者など)や訓練内容によって 細かく訓練コースが分かれています。 【訓練コース一覧】 ① 人材育成支援コース ② 教育訓練休暇等付与コース ③ 建設労働者認定訓練コース ④ 建設労働者技能実習コース ⑤ 障害者職業能力開発コース ⑥ 人への投資促進コース ⑦ 事業展開等リスキリング支援コース ひとつのコースの中に複数の異なる訓練が 含まれているコースもあります。 どのコースに該当するのか、訓練カリキュラムが該当するのかなど、 選択をするにも迷いやすい助成金です。 そのため助成金の申請を検討するときは 事前に助成金の申請窓口(労働局またはハローワーク) または社会保険労務士へ相談されることをおすすめします。 2 人材育成支援コースへの統合について ① 統合に伴う要件の変更について 2023年4月1日から複数のコースが 「人材育成支援コース」に統合され利用しやすくなりました。 特に、従来は訓練コースによって OFF-JTの訓練時間数要件が異なりましたが、 今後はOFF-JTの訓練時間数要件が10時間以上で統一されたので 活用しやすくなりました。 (出典)厚生労働省『人材開発支援助成金を利用しやすくするため 令和5年4月1日から制度の見直しを行いました』 ② 助成額および助成率について 人材育成支援コースでは、経費助成、賃金助成、OJT実施助成が行われます。 経費助成とは、講習や教材などにかかった費用に対して行われる助成です。 賃金助成、OJT実施助成とは、従業員に業務として講習を受けさせている時間に 支給する賃金や、OJT期間中の賃金に対して行われる助成です。 それぞれの助成額と助成率は以下のとおりです。 なおOJT実施助成については、従来はOJTの実施時間に応じて 助成額が決まっていましたが、 今年度からは 認定実習併用職業訓練の場合は一律して20万円、 有期実習型訓練の場合は一律して10万円となりました。 【助成額および助成率】 ※()内は大企業の助成額・助成率 (出典)厚生労働省『人材開発支援助成金(人材開発支援コース)のご案内』P28 ③ 経費助成の上限について 経費助成には、下記の表のとおり助成額の上限額が定められています。 なお、「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」は 人材育成支援コースに含まれるため、 下記表では総合して「人材育成支援コ―ス」という表記になっています。 (出典)厚生労働省『人材開発支援助成金(人材開発支援コース)のご案内』P29 3 賃金要件、資格等手当要件の適用 人材開発支援助成金の一部のコース(訓練)には 「賃金要件、資格等手当要件」が適用され、 助成額・助成率が上がる場合があります(加算部分は別途の申請が必要です)。 加算されるための要件は、以下のいずれかを満たすことです。 ① 賃金要件 毎月決まって支払われる賃金(基本給および諸手当)について 訓練終了日の翌日から起算して1年以内に、5%以上増額していること。 なお賃金が5%以上増加したかどうかは、賃金改定後3か月間の賃金総額と改定前3か月間の賃金総額を比較して判断をします。 ② 資格等手当要件 訓練終了後の翌日から起算して1年以内に 実際に資格等手当を支払い、賃金を3%以上増加させること。 資格等手当(毎月決まって支払われる手当)とは、 就業規則、労働協約または労働契約等で規定した手当です。 なお資格等手当の支払いにより賃金が3%以上増加したかどうかは 資格等手当支払い後3か月間と資格等手当支払い前3か月間の賃金総額を比較して 判断をします。 ③ 要件を満たしたときの支給申請期限 助成額・助成率が上がることによって支給される加算部分については 別途の申請が必要です。 その場合の申請期限は、全ての対象者に対して 要件を満たす賃金または資格等手当を支払い始めて 3か月が経った日の翌日から起算して5か月以内になります。 <助成金制度①-③まとめ> 助成金は細かな要件も多く、スムーズに受給するためには 適正な労務管理も必要になります。 助成金は労働関係、社会保険関係の法令違反がないことが前提になります。 そのため、法令に沿った残業代の支給、始業・終業時刻の管理、 帳票類の整備(出勤簿、賃金台帳など)などができていないと 対象者がいたとしても助成金の申請はできません。 助成金は企業にとって雇用継続や育成費用の軽減などメリットが多い制度です。 対象者がでたときに、申請が行えるよう 日頃から労務管理を適切に行うことをおすすめします。

  • 【2023年度版】助成金制度 ポイント②

    ◆キャリアアップ助成金の変更点 1 概要 正社員以外の従業員(有期契約労働者、パートタイマー、派遣労働者など)の キャリアアップが進むような処遇改善の取り組みを実施した企業に 支給される助成金です。 「選択拡大導入時処遇コース」が2022年9月30日に廃止になっているため 2023年度の対象となる取り組みは6コースです。 キャリアアップ助成金の申請では キャリアアップ計画書の事前提出が必要です。 キャリアアップ計画書とは、 キャリアアップ助成金のコースに沿った処遇改善を実施する前に 助成金の窓口(労働局またはハローワーク)へ 届出をしておかなければならない計画書で、 計画期間は3~5年のあいだで企業で決められます。 (出典)厚生労働省サイト『キャリアップ助成金』 2 正社員化コース キャリアアップ助成金の中で最も活用されているのが正社員化コースです。 正社員化コースの概要と変更点は以下のとおりです。 ① 支給額と加算額に関する変更点 有期契約労働者、無期雇用労働者を正社員へ 転換させたときを対象とするコースです。 支給額は以下の表の「1 支給額」に記載された額です。 さらに一定の要件を満たした場合は 「2 加算額」に記載の額が加算されます。 なお、2022年度までは生産性要件を満たしていれば 支給額が増額されてましたが、 今年度からは生産性要件の廃止に伴い増額はなくなりました。 (出典)厚生労働省『(事業主のみなさまへ)キャリアアップ助成金のご案内(令和5年版)』 ② 措置内容 キャリアアップ助成金(正社員化コース)は 後で紹介する人材開発支援助成金の一部のコースと 併せて申請することができます。 この場合、人材開発支援助成金の支給決定書の写しを キャリアアップ助成金 正社員化コースの支給申請時に 添付することにより、キャリアアップ計画書の提出は不要になります。 3 その他のコースの受給額 正社員化コース以外のコースにおいても生産性要件が廃止されており、 支給額および加算額が変更されています。 概要は以下の表のとおりです。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(概要)』 4 申請方法の変更点 キャリアアップ助成金は、従来までは書面での申請に限られていましたが 2023年4月から、電子申請(上記「電子申請一覧」を参照)ができるようになりました。 ただし申請できるのは、キャリアアップ計画書の提出を電子申請で行っており、 かつ以下の条件を満たした場合に限られます。 ① 正社員化コース:2023年4月2日以降に正社員へ転換をした場合 ② 正社員化コース以外 :2023年6月2日以降に取り組みを行った場合

  • 【2023年度版】助成金制度 ポイント①

    厚生労働省の助成金は、毎年4月に大きな改廃があります。 2023年度には、生産性要件が廃止されるほか 電子申請に対応した助成金の拡大があります。 比較的よく利用されている助成金について ポイントをまとめました。 ◆生産性要件の廃止 1 生産性要件の廃止について 2023年3月31日に生産性要件が廃止されました。 生産性要件とは、企業における生産性向上の取り組みを 支援するために、対象となる助成金を利用し、要件を満たせば 助成額または助成率がアップされる制度です。 比較的利用されているキャリアアップ助成金の 正社員コースなども対象になっています。 2 賃金要件、資格等手当要件について 生産性要件の廃止により、企業の賃金加算の実施を支援するために 「賃金要件、資格手当等要件」という新しい要件が設けられました。 対象となる助成金は限られていますが、 この要件を満たす賃金アップを行った事業主に対して 助成額の増額または助成率がアップされます。 人材開発支援助成金の記事に詳細を記載しますが 他にも人材確保等支援助成金などがありますので、 助成金をすすめるときには確認をしてください。 ◆「雇用関係助成金ポータルサイト」開設 2023年4月3日に厚生労働省の「雇用関係助成金ポータル」サイトが 開設され、助成金の電子申請の拡大が行われました。 今後は、従来の助成金に加えキャリアアップ助成金などの 他の助成金でも電子申請ができるようになります。 雇用関係助成金ポータルサイトから電子申請を行うには、 行政サービスにアクセスできる認証システム 「GビズID」のアカウントが必要になります。 社会保険労務士が企業の助成金を代行し電子申請するときも、 企業の「GビズID」のアカウントが必要になります。 なお、助成金によって電子申請受付システムが異なりますので 以下の表を参考にしてください。 【電子申請一覧】

  • 【離職証明書の書き方】パターン別

    従業員の退職時に離職票の交付を希望された場合、 企業は離職証明書を作成し、ハローワークへ届け出なければなりません。 今回は自己都合退職した従業員の用紙での申請を例に 離職証明書の書き方や記入に至る背景を解説しながら、 具体的なパターンを説明していきます。 離職票発行の流れと、離職証明書の基本的な書き方は 過去の記事をご確認ください。 過去の記事『離職票発行の流れと基本の書き方』 離職証明書について 離職証明書とは、企業が離職票発行のために ハローワークへ提出する書類です。 離職証明書の用紙左側は 従業員の離職日以前の賃金支払い状況を記入し、 用紙右側は 離職理由を記入する仕様になっています。 特に用紙左側は従業員の勤務形態や在職時の勤務状況によって 書き方が大きく異なるため、正確な手続のためにも 労務担当者は離職証明書の書き方をおさえておく必要があります。 この記事では、用紙左側に該当する 「離職日以前の賃金支払い状況」の欄について紹介しています。 離職証明書では各記入欄に番号が振られています。 記事内でも実際の番号に従って紹介していきますので 以下の内容をご参考ください。 【離職証明書左側の見本】 ⑧欄:被保険者期間算定対象期間 ⑨欄:被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数 ⑩欄:賃金支払対象期間 ⑪欄:賃金支払対象期間の基礎日数 ⑫欄:賃金額 ⑬欄:備考 ⑭欄:賃金に関する特記事項 日給月給制で欠勤があったとき 給与体系にはさまざまな種類があります。 月給制にも完全月給制や日給月給制などがあり、 遅刻や欠勤をした場合に給与から控除する方法が異なるため 離職証明書への記入にも注意が必要です。 たとえば、従業員が体調不良などの理由で欠勤した場合、 日給月給制であれば基本給から欠勤分を減額します。 「⑨欄」「⑪欄」には歴日数から欠勤日数を除いた日数を記入し、 「⑫欄」には欠勤による減額後の賃金額 「⑬欄」には欠勤日数を記入しなければなりません。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 なお、離職月の賃金が確定していない場合、 「⑬欄」に「未計算」と記入することで ハローワークへ提出が可能になります。 離職日の翌日に応答する日が各月にないとき 離職証明書は、離職日や離職日の翌日に応答する日をもとに 雇用保険の被保険者期間が離職日を含む以前の 2年間で12か月以上 (特定理由離職者と特定受給資格者は離職日を含む以前1年間で6か月以上)を 確認するために月日を記入しなければなりません。 従業員が「1月、3月、5月、7月、8月、10月、12月の30日」に 退職した場合、離職日の翌日は各月の31日となります。 離職証明書の「⑧欄」は、離職日から1か月ずつさかのぼって記入するため、 離職日の翌日に応答する日で31日がない月(2月、4月、6月、9月、11月)は その月の末日を記入してください。 また、記入する年がうるう年のときは、末日の日付に注意してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 残業代のみ翌月に支払うとき 集計作業などの事務負担を減らすため、 固定給は当月に支払い、残業代などの変動給は 翌月に支払うケースもあります。 離職証明書は支払いベースではなく、 あくまでもその期間の実労働分の賃金を記入しなければなりません。 そのため、残業代などの変動給部分は実際に残業をした期間に 割り戻して賃金額を記入します。 (10月分の給与が確定する前に提出するときは、「⑬欄」に未計算と記入します) 上記のケースにおける離職証明書の記入例は以下のとおりです。 月給制から日給制に変更となったとき 企業の人員配置や業務内容の変更、または従業員からの 雇用形態の変更希望などの理由から、 給与の支払い形態を変更することがあります。 たとえば、月給制から日給制に支払い形態が変更になると 「⑨欄」「⑪欄」の基礎日数も変わるため、記入の際は注意が必要です。 「⑫欄」にはA欄B欄の2つの記入欄がありますが 月給制の期間はA欄に記入し、 日給制に切り替わる月以降は月決め手当をA欄に記入し、 それ以外の日額や残業代はB欄に分けて記入してください。 変更後の支払い形態が分かるように 支払い形態が変更された月の「⑬欄」に 「日給制へ切替」と記入してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 給与の締切日に変更があったとき 給与の締切日が変更になることは多くはありませんが 事業拡大で従業員が増加したことにより 給与計算や支給の管理が煩雑になるような場合に、 給与の締切日を変更することがあります。 【給与の締切日が変更となるケース】 ・事業拡大で従業員が増加したことにより、給与計算や支給の管理が煩雑になるとき ・企業の再編や合併により、新しい企業の給与締切日にあわせるとき ・締切日から支給日までの日数が少なく、給与担当者の業務負担が大きいとき など この場合、「⑩欄」は締切日ごとに、 「⑪欄」の日数が11日以上ある完全月※を6か月分記入します。 「⑪欄」「⑫欄」も対象期間の基礎日数と賃金額を記入してください。 また、締切日が変更された期間が分かるように「⑬欄」へ「締切日変更」と記入します。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 ※完全月とは 給与締切日の翌日から次の給与締切日までの期間が満1か月であり、 かつ賃金支払基礎日数が11日以上ある月のことです。 以下のときは、完全月に含まれないため、注意してください。 ・給与締切日の途中で入社した場合の入社月 ・給与締切日の途中で離職した場合の離職月 (上記【例】9月21日~離職日10月15日) ・給与締切日の途中で給与の支払い形態の変更があった月 ・給与締切日の変更により、完全な1か月ではない月 (上記【例】8月1日~8月20日) ・欠勤や休職、産休育休の取得により、賃金支払基礎日数が10日以下のとき ケガや病気で給与の支払いが30日以上なかったとき 従業員がケガや病気で仕事を休んだ場合、 労災保険の休業補償や健康保険の傷病手当金などの 生活保障を受けることがありますが、 企業では欠勤扱いとなり、給与の支払いがないことがほとんどです。 離職証明書の手続において、原則離職日を含む以前の2年間までが算定対象期間ですが、 そのあいだにケガや病気、出産などの理由で、 引き続き30日以上給与の支払いを受けられなかったときは その日数を算定対象期間に加算することができます(最長4年間)。 長期欠勤の期間があると離職証明書へ記入する期間も多くなりますが、 給与支払いがなかった期間の事実を証明する書類を添付できるときは 「⑧〜⑫欄」の記入を省略できます。 この場合、医師の診断書や傷病手当金支給申請書などの写しの添付が必要です。 「⑬欄」には、「給与支払いがなかった期間」「日数」 および「その原因」を記入します。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 賃金支払対象期間について、「⑬欄」への記入と傷病手当金支給申請書などの 写しを添付することで、以下の青枠「⑧〜⑫欄」(2023年2月21日~2023年10月20日)を 省略しています。 なお、「⑧〜⑫欄」1段目の離職日までの最後の期間 (上記2023年10月21日~離職日11月20日)の記入は省略できません。 傷病により長期欠勤のまま退職するケースもあるため、 その場合「⑨欄」「⑪欄」は0日、「⑫欄」は0円と記入してください。 産休育休で給与の支払いが30日以上なかったとき 厚生労働省の実施した令和3年度の雇用均等基本調査によると、 過去1年間に育児休業を終了し、復職した女性の9割以上が 6か月以上の育児休業を取得しています。 キャリア形成の観点から仕事と育児の両立に関する制度の見直しが進み、 多くの従業員が産前産後休業、育児休業を取得しています。 離職日を含む以前の2年間までの算定対象期間に、 産休育休の取得により給与の支払いがなかった場合も ケガや病気で給与の支払いが30日以上なかったときと同様に 離職証明書を作成してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 なお、「⑧〜⑫欄」1段目の離職日までの最後の期間 (上記2023年8月1日~離職日8月31日)の記入は省略できません。 「⑨欄」「⑪欄」は0日、「⑫欄」は0円として記入してください。 また、省略期間に育児休業をしていた子どもの育児休業給付金を受給していた場合、 ハローワークで事実確認ができるため添付書類は原則不要です。 ただし、産休育休取得後に雇用保険に加入したため 育児休業給付金を受給していなかったなどの場合は、 母子健康手帳の写しや産前産後休業申請書(任意様式)など、生日と休業期間が証明できる書類を添付してください。 まとめ 今回の記事では、パターン別の離職証明書の書き方と記入例をご紹介しました。 離職証明書は、従業員の勤務状況や賃金額を証明する書類であり、 失業保険を受給する際の支給額に大きく影響します。 離職証明書は労働者にとっても、労務担当者にとっても重要な役割を持つものです。 スムーズな手続が求められるため、正確かつ丁寧な作成を心掛けましょう。 用紙での申請では以下の作成ツールなどを使い、用紙への転記などにお役立てください。 参考・ダウンロード | ハローワーク名古屋東『離職証明書記入見本作成ツール(excelファイル)』

  • 【介護休業】押さえておくべき基本

    日本では高齢化が更に進み、「団塊の世代」の全員が75歳以上となる2025年には、 およそ5.5人に1人が75歳以上の高齢者となり、認知症の高齢者の割合や 世帯主が高齢者の単独世帯・夫婦のみの世帯の割合が 増加していくと推計されています。 企業でも、従業員が介護者になることが増えていくでしょう。 介護は育児と異なり突発的に問題が発生し 介護を行う期間・方策も多種多様であることから、 仕事と介護の両立が困難となるケースも考えられます。 今回は、仕事と介護の両立支援制度でもある「介護休業」について 企業が知っておきたい基本をご紹介します。 介護休業の基本 介護休業とは、労働者が要介護状態(※)にある家族を介護するための休業をいいます。 ※「要介護状態」とは 負傷や疾病、あるいは身体上や精神上の障害により、2週間以上 常時介護を必要としている状態です。 要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得ます。 【常時介護を必要とする状態に関する判断基準】 「常時介護を必要とする状態」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。 しかし企業としてはこの基準に厳密に従うことにとらわれず 従業員の介護休業の取得が制限されないよう、 介護をしている従業員の個々の事情にあわせて 仕事と介護を両立できるよう柔軟に運用することが望まれます。 ・介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。 ・状態①〜⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。 (出典)厚生労働省『男女雇用機会均等法、育児・介護休業法のあらまし』P8 介護休業の対象者・対象家族 介護休業の対象となる労働者、介護休業取得の対象となる家族について説明します。 【対象労働者】 要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。 パート・アルバイトなど、期間を定めて雇用されている労働者は 申出時点において、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6 か月を経過する日までに契約期間が満了し、 更新されないことが決まっていないことが要件となります。 (出典)厚生労働省『介護休業について』 【対象とならない労働者】 ・日雇い労働者 ・労使協定を締結している場合 (入社1年未満の労働者、申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者、 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者) 【対象家族】 対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、 孫になり、同居・扶養要件はありません。 (出典)厚生労働省『介護休業について』 介護休業の取得にあたって 介護休業を取得するにあたって、利用期間・回数、申出方法についてご紹介します。 【利用期間・回数】 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。 日数(93日間)は通算で数えるため、土曜日・日曜日・祝日も含まれます。 【申出方法】 1 従業員は、休業開始予定日の2週間前までに企業に書面等で申出をします。 申出内容は、下記の内容になります。 ① 申出の年月日 ② 従業員の氏名 ③ 申出に係る対象家族の氏名および従業員との続柄 ④ 申出に係る対象家族が要介護状態にあること ⑤ 休業を開始しようとする日および休業を終了しようとする日 ⑥ 申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数 参考・ダウンロード | 厚生労働省『社内様式例 介護休業申出書』 企業は、要介護状態の証明書類の提出を求めることができますが、提出を制度利用の条件とすることはできません。 2 企業は、介護休業の申出がされたときは、下記の内容を従業員に通知します。 ① 介護休業の申出を受けた旨 ② 介護休業開始予定日および介護休業終了予定日 ③ 介護休業の申出を拒む場合には、その旨およびその理由 参考・ダウンロード | 厚生労働省『社内様式例 〔(出生時)育児・介護〕休業取扱通知書』 介護休業中の賃金と、介護休業給付金について 介護休業中の賃金が有給なのか無給なのかは、 法令等の定めはなく、企業の規定によります。 また雇用保険の被保険者である従業員が介護休業を取得したときは 収入の減少を補うため、 支給要件を満たした場合には介護休業給付金の支給を受けることができます。 【介護休業給付金申請手続の基本的な流れ】 介護休業給付金の手続は、原則として企業を経由して行います。 介護休業給付金の対象となる1回の介護休業期間は、最長3か月となります。 【支給対象者】 介護休業を取得した雇用保険の被保険者で以下にあてはまる場合、支給対象者となります。 ・介護休業を開始する時点で、介護休業終了後に退職することが予定されていない ・介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上ある月が12か月以上ある 【支給対象となる介護休業】 以下の①および②を満たす介護休業では、支給対象となる同じ家族について 93日を限度に3回までに限り支給されます。 ①要介護状態にある対象家族を、介護するための休業である ②被保険者が介護休業の期間の初日および末日とする日を事業主に 申出を行っており、実際に介護休業を取得していること 【支給要件】 介護休業開始日から起算して1か月ごとに区切った場合の 各期間(支給単位期間)について、以下の要件をすべて満たしている場合に 支給対象となります。 ①支給単位期間の初日から末日まで継続して被保険者である ②支給単位期間に、就業している日数が10日以下 ③支給単位期間に支給された賃金額が、休業開始時賃金月額の80%未満 【支給額】 各支給対象期間ごとの支給額は、原則下記のとおりとなります。 要介護状態の対象家族を2人体制で介護するケースが増えています。 介護体制が2人であっても、それぞれ介護休業・介護休業給付金の要件を満たしていれば介護休業の同時取得ができ、ともに介護休業給付金を受け取れます。 参考 | 厚生労働省『介護休業給付の内容及び支給申請手続について』 企業が留意しておきたい介護休業のポイント 従業員から介護休業の申出があった際に、知っておきたいポイントを2つご紹介します。 1 介護休業の申出があった場合、拒否することはできない 介護休業は法令等で定められた従業員の権利であり、従業員が必要とする場合には 法令等で定められた要件を満たせば取得できます。 就業規則で介護休暇や介護休業に関する規定が定められていなくても 取得の申し出は受けなければなりません。 2 介護休業中は、社会保険料が免除されない 介護休業については、従業員・企業の社会保険料の免除制度がないため、 介護休業の期間中も通常どおり保険料を納付しなければなりません。 まとめ 経験を積んだ熟練従業員や管理職など企業の中核となる人材が 仕事と介護の両立に悩み離職してしまうことは、企業にとって大きな損失になります。 企業による仕事と介護の両立支援は、離職する従業員や心身ともにストレスを抱える 従業員を減らす取り組みにつながります。 介護休業を取得する従業員が発生する前に、どのような対応を行っていくのかを 事前に確認されることをおすすめします。

  • 【労務担当者必見】出産育児一時金の給付額引上げ

    出産育児一時金は、妊娠4か月以上の健康保険の被保険者および 被扶養者が出産したとき(死産・流産も含む)に、 健康保険から支払われる出産費用の負担を軽減するための制度です。 この記事では、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に加入しているときの 出産育児一時金について説明をしています。 なぜ出産育児一時金の知識が必要なのか 近年は、地域や医療機関による出産費用のばらつきが多く 費用も年々増加していることが問題視されています。 これらを考慮し、2023年4月から本人への出産費用の給付額を 80,000円引き上げることになり、出産にかかる経済的負担の軽減が期待できます。 出産育児一時金は、医療機関が直接・代理で受け取る方法が多く利用されており、 企業の労務担当者の手続はあまり発生しません。 育児休業取得促進のための個別周知でも、出産育児一時金は 必須の周知項目にはなっていません。 しかし企業の労務担当者は、産前から育児休業復帰までの 従業員にとって身近な相談者のひとりです。 出産育児一時金について従業員から相談がある可能性もありますので、 出産育児一時金の基本情報を押さえてください。 【出産費用(正常分娩)の増加推移】 (出典)厚生労働省『医療保険制度改革について 』P4 大幅引き上げの出産育児一時金 2023年4月1日以降に生まれる子どもは、1人の分娩につき50万円が支給されます。 出産育児一時金は、出産費用の負担を補助する給付と 産科医療補償制度(※)の掛金で構成されています。 出産育児一時金の支給総額50万円の内訳は、以下に変更となります。 以下のときは、産科医療補償制度の掛金を除く、出産費用の給付のみとなります。 ・産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産するとき ・産科医療補償制度に加入の医療機関で妊娠週数22週未満で出産するとき ※「産科医療補償制度」とは 出産時に何らかの理由で重度脳性麻痺となった子どもと その家族の経済的負担を補償する制度です。 全国の分娩機関の制度加入率は99.9%とされており 制度加入済の分娩機関で出産をする妊産婦は すべてこの制度の対象となります。 出産育児一時金の一部が掛金となるため、妊産婦の掛金負担はありません。 産科医療補償制度に加入している医療機関かどうかは、以下より確認できます。 参考|公益財団法人 日本医療機能評価機構『産科医療補償制度 加入分娩機関検索』 出産育児一時金を全世帯で支えあう仕組み 今回、出産育児一時金の引き上げとともに 後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の 一部を支援する仕組みを導入することになりました。 給付は現役世代ではなく高齢者中心で 負担は現役世代中心という社会保障の構造から、 負担能力に応じてすべての世代で医療費を公平に 支えあう仕組みになるように見直しされます。 高齢者だけではなく、子どもたちや子育て世代、 現役世代まで広く安心できる社会保障を目指すものです。 具体的には、出産育児一時金の総額の7%を 後期高齢者が負担するというものです。 介護保険の「後期高齢者1人当たりの保険料」と 「現役世代1人当たりの高齢者支援金」の伸び率を参考に、 7%を起点に高齢者負担率の設定方法を見直していくことになります。 所得に応じた負担能力を考慮したうえで 経済的措置により2024年、2025年は出産育児一時金の 2分の1の7%分を負担するなど、段階的な負担となる検討もされています。 出産育児一時金の受け取り方 出産育児一時金の受け取り方は 「医療機関が直接・代理で受け取る方法」と 「被保険者が受け取る方法」があります。 1 医療機関が直接・代理で受け取る方法 あらかじめまとまった現金を用意せず安心して出産ができるため 医療機関が直接・代理で受け取る方法が多く利用されています。 さまざまな医療機関に対応するため2種類の制度があります。 【直接支払制度】 被保険者が、事前に直接支払制度を医療機関に申出し 協会けんぽが出産した医療機関に対して直接、 出産育児一時金の金額を上限として出産費用を支払う制度です。 直接支払制度の利用については、医療機関に確認してください。 【受取代理制度】 診療所や助産所など、直接支払制度への対応が困難な小規模医療施設もあります。 直接支払制度が利用できないときは、受取代理制度を利用することができます。 受取代理制度とは、被保険者が協会けんぽへ申請することで 出産育児一時金の金額を上限に、本人に代わって小規模医療施設が 協会けんぽから出産費用を受け取れる制度です。 申請を希望するときは、出産予定日前(2か月以内)に届出が必要です。 利用できる小規模医療施設は、厚生労働省へ届出を行った医療施設に 限られますので事前に医療施設に確認をしてください。 受取代理制度を利用するときの申請様式は以下よりダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|協会けんぽ『出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)』 2 被保険者が受け取る方法 出産後に被保険者から協会けんぽに出産育児一時金支給申請書を申請し、 被保険者が出産育児一時金を受け取る方法です。 直接・代理で医療機関が受け取る方法を希望しない場合や 出産した医療機関等が直接支払制度や受取代理制度の利用ができない場合に利用します。 海外で出産したときは、こちらの方法で出産育児一時金を申請します。 申請様式や添付書類については、以下のサイトをご覧ください。 参考|協会けんぽ『健康保険出産育児一時金支給申請書』 出産費用が出産育児一時金を下回るとき 出産費用は、地域や医療機関によってばらつきがあります。 2022年度の厚生労働省の統計では、公的病院の正常分娩を 都道府県別にしたところ全国平均値は454,994円でした。 一番高い地域は東京都(平均値565,092円)、 一番低い地域は鳥取県(平均値357,443円)となっています。 参考|厚生労働省『第157回社会保険審議会医療保険部会資料 医療保険制度改革について』P28 2023年4月1日以降、出産育児一時金の支給額が50万円になることで 出産費用が下回るケースの増加が見込まれます。 直接支払制度を利用する被保険者は、出産育児一時金と出産費用の差額の支給を 受けるため手続をしなければなりません。 手続は「協会けんぽから届く申請書で申請する方法」と 「協会けんぽの申請書を待たずに、出産後すぐに申請する方法」の2種類があり、 それぞれ申請様式や添付書類が異なります。 1 協会けんぽから届く申請書で申請する方法 通常、出産後2~3か月で医療機関等へ直接出産育児一時金が支払われます 医療機関等への支給終了後、差額があるときは支給決定通知書と一緒に 申請用紙が被保険者の自宅に送付されます。 届出様式:健康保険出産育児一時金差額申請書 添付書類:なし 届出先 :事業所を管轄の協会けんぽ 2 協会けんぽの申請書を待たずに、出産後すぐに申請する方法 差額支給を急ぐときは、協会けんぽの申請用紙を待たずに 指定の届出様式に添付書類を添えて申請してください。 届出様式:出産育児一時金等内払金支払依頼書 添付書類:医療機関等から交付される出産費用の領収・明細書のコピー、 医療機関等から交付される直接支払制度に係る代理契約に関する文書のコピー など 届出先 :事業所を管轄の協会けんぽ 申請様式や添付書類については、以下のサイトをご覧ください。 参考|全国健康保険協会『健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書』 その他、会社が知っておくこと 1 退職後の出産育児一時金 退職後の出産育児一時金は、1年以上の被保険者期間があり 退職日の翌日から6か月以内の出産であれば給付を受けることができます。 退職後の給付は被保険者であった本人の出産が対象です。 被扶養者であった家族の出産は対象外です。 同じ出産に対して出産育児一時金の支給は1回のみとされているため 退職後に配偶者の健康保険の扶養に入る場合は 「退職後の出産育児一時金」か「配偶者の家族出産育児一時金」の ちらかを選択して給付を受けてください。 2 海外で出産したときの出産育児一時金 海外赴任者などが海外で出産したときは、 一旦、海外の医療機関へ出産費用を全額支払うことになりますが、 その後出産育児一時金の申請ができます。 申請には、海外の医療機関が発行する出産に関する証明書や それらを翻訳した書類などが必要になるため、 海外で出産予定の従業員がいるときは 出産前に加入している協会けんぽへ必要書類について 確認することをおすすめします。 参考|協会けんぽ『海外で出産した場合でも出産育児一時金の申請はできますか?』 まとめ 今後、出産育児一時金の引き上げと同時に、出産費用の見える化が進みます。 具体的には、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて 適切に医療機関等を選択できる環境の整備を目的とし、 サイトなどで外部公開を行うものです。 2024年4月の公開を目途に公表項目等の詳細について検討が行われます。 出産・育児休業イベントに関わる法律がめまぐるしく見直され、改正されています。 今後も出産・育児休業に関する情報に注目ください。

  • 育介法改定に伴う出生時育児休業給付金について

    2022年10月1日に育児・介護休業法が施行され、 新しく「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」ができました。 それに伴い、休業中の所得保障として 「出生時育児休業給付金」が新設されました。 育児休業中に支給される「育児休業給付金」と ほぼ同じ内容ですが、申請のタイミングなどが異なります。 この記事では、出生時育児休業給付金の制度や 育児休業給付金との違いなどを記載しています。 出生時育児休業(通称:産後パパ育休)とは 出生時育児休業とは、男性の育児休業を促進するため 従来の育児休業とは別に2022年10月1日から新たにできた制度で 子の出生日から生後8週間となる日のあいだで 4週間(最大28日)取得でき、2回まで分割が可能です。 つまり1回目10日、2回目5日(合計28日未満でも取得可能)などの 短期間での取得ができるようになりました。 また、労使協定が締結されていれば休業中に就業ができます。 【出生時育児休業のまとめ】 従来の育児休業との違い 「出生時育児休業」と、従来からある「育児休業」の 制度の違いは大きく3点です。 【制度の違い】 出生時育児休業中の就業の上限 出生時育児休業では、労使協定を締結すれば休業中の就業ができますが、 育児・介護休業法では上限が決まっており、以下のすべてを満たす必要があります。 ただし、育児・介護休業法の就業の上限と出生時育児休業給付金が受給できる 就業の上限は異なります。 出生時育児休業給付金については下記の 「出生時育児休業給付金と育児休業給付金の要件と相違点」の表を 参考にしてください。 就業は企業や従業員が一方的に決めることはできず 従業員から就業日、時間の申出をしてもらい、 それを元に企業が就業を認める日や時間を通知します。 【例】 出生時育児休業日数:14日間・・・A 出生時育児休業中の所定労働日数:10日・・・B 1日の所定労働時間:8時間・・・C 休業中の就業可能日数:5日(B 10日 ÷ 1/2 = 5日)・・・D 休業中の就業可能時間:40時間(B 10日 × C 8時間 × 1/2 = 40時間) 休業開始日、終了日の就業時間:8時間未満 出生時育児休業給付金とは 企業は、出生時育児休業を取得して就労していない時間については 賃金を支払う義務はありません。 そのため休業中の生活を守るための所得保障として 出生時育児休業給付金があります。 申請先などは以下になります。 ※賃金支払基礎日数: 賃金や報酬の支払対象日になり 出勤し労働をした日、年次休暇取得日などをいいます。 上記の表の内容は、従来からある育児休業給付金と 出生時育児休業給付金の共通事項になります。 ただし支給額は同じですが、出生時育児休業休業給付金、 育児休業給付金の支給率は通算180日までは67%、 181日目以降は50%になります。 要件などは育児休業給付金と異なる点がありますので 以下を参考にしてください。 【出生時育児休業給付金と育児休業給付金の要件と相違点】 参考 | 厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』 出生時育児休業は最大4週間(28日)取得できますが、 それより短い期間で取得したり、就業したときなどは 「支給単位期間の就業日数等」は10日(80時間)以下ではなく 按分で計算されます。 なお、小数点以下の端数処理は計算方法によって異なります。 【休業期間が28日未満のときの按分計算など】 就業日数等は実際の就業状況が「就業可能日数」 または 「就業可能時間数」のどちらかに収まっていれば 支給要件を満たします。 【例】 就業日数:6日 就業時間:28時間30分 出生時育児休業の取得日数:10日 (出典)厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』P4 (就業可能日数 4日) 10日(原則)× 10日(取得日数)÷ 28日(休業の最大日数)= 3.75日 小数点以下切り上げのため「4日」で処理をします。 (就業可能時間 28.57時間) 80時間(原則)× 10日(取得日数)÷ 28日(休業の最大日数)= 28.57時間 端数処理がないため「28.75時間」で処理をします。 実際の就業状況が就業可能日数、就業可能時間数に収まっているかを確認をします。 ①就業日数:6日 >就業可能日数:4日・・・就業可能日数を超えている ②就業時間数:28時間<就業可能時間数:28.75時間・・就業可能時間数以下 ①は就業日数が就業可能日数を超えているため要件を満たしていません。 しかし②では就業時間数が就業可能時間数以内に収まっているので 出生時育児休業給付金の要件を満たします。 不支給になるのはどんなとき 出生時育児休業は2回まで取得ができる制度です。 そのため3回目の休業を取得したときは給付金は支給されません。 また休業中に賃金が支払われているときは、 給付金と調整があり賃金の額によっては支給されなくなります。 【出生時育児休業期間中に事業主から賃金が支払われたとき】 ※休業開始時賃金日額とは、休業開始前6か月間の賃金(賞与を除く)÷ 180 (出典)厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』P4 まとめ 育児・介護休業法の改正があり、手続に関連する雇用保険、 健康保険、厚生年金保険の改正も行われています。 出生時育児休業と育児休業は別の制度になり 本人が希望すれば各2回ずつ取得できるので 最大4回取得することも可能です。 そのため手続だけではなく管理なども煩雑になり、 対応が遅れている企業も少なくありません。 複数の制度が絡みあっているので、どこから対応をしていいのか 迷われているときは専門家の社会保険労務士へご相談ください。

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