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「」に対する検索結果が102件見つかりました

  • 【離職証明書の書き方】パターン別

    従業員の退職時に離職票の交付を希望された場合、 企業は離職証明書を作成し、ハローワークへ届け出なければなりません。 今回は自己都合退職した従業員の用紙での申請を例に 離職証明書の書き方や記入に至る背景を解説しながら、 具体的なパターンを説明していきます。 離職票発行の流れと、離職証明書の基本的な書き方は 過去の記事をご確認ください。 過去の記事『離職票発行の流れと基本の書き方』 離職証明書について 離職証明書とは、企業が離職票発行のために ハローワークへ提出する書類です。 離職証明書の用紙左側は 従業員の離職日以前の賃金支払い状況を記入し、 用紙右側は 離職理由を記入する仕様になっています。 特に用紙左側は従業員の勤務形態や在職時の勤務状況によって 書き方が大きく異なるため、正確な手続のためにも 労務担当者は離職証明書の書き方をおさえておく必要があります。 この記事では、用紙左側に該当する 「離職日以前の賃金支払い状況」の欄について紹介しています。 離職証明書では各記入欄に番号が振られています。 記事内でも実際の番号に従って紹介していきますので 以下の内容をご参考ください。 【離職証明書左側の見本】 ⑧欄:被保険者期間算定対象期間 ⑨欄:被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数 ⑩欄:賃金支払対象期間 ⑪欄:賃金支払対象期間の基礎日数 ⑫欄:賃金額 ⑬欄:備考 ⑭欄:賃金に関する特記事項 日給月給制で欠勤があったとき 給与体系にはさまざまな種類があります。 月給制にも完全月給制や日給月給制などがあり、 遅刻や欠勤をした場合に給与から控除する方法が異なるため 離職証明書への記入にも注意が必要です。 たとえば、従業員が体調不良などの理由で欠勤した場合、 日給月給制であれば基本給から欠勤分を減額します。 「⑨欄」「⑪欄」には歴日数から欠勤日数を除いた日数を記入し、 「⑫欄」には欠勤による減額後の賃金額 「⑬欄」には欠勤日数を記入しなければなりません。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 なお、離職月の賃金が確定していない場合、 「⑬欄」に「未計算」と記入することで ハローワークへ提出が可能になります。 離職日の翌日に応答する日が各月にないとき 離職証明書は、離職日や離職日の翌日に応答する日をもとに 雇用保険の被保険者期間が離職日を含む以前の 2年間で12か月以上 (特定理由離職者と特定受給資格者は離職日を含む以前1年間で6か月以上)を 確認するために月日を記入しなければなりません。 従業員が「1月、3月、5月、7月、8月、10月、12月の30日」に 退職した場合、離職日の翌日は各月の31日となります。 離職証明書の「⑧欄」は、離職日から1か月ずつさかのぼって記入するため、 離職日の翌日に応答する日で31日がない月(2月、4月、6月、9月、11月)は その月の末日を記入してください。 また、記入する年がうるう年のときは、末日の日付に注意してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 残業代のみ翌月に支払うとき 集計作業などの事務負担を減らすため、 固定給は当月に支払い、残業代などの変動給は 翌月に支払うケースもあります。 離職証明書は支払いベースではなく、 あくまでもその期間の実労働分の賃金を記入しなければなりません。 そのため、残業代などの変動給部分は実際に残業をした期間に 割り戻して賃金額を記入します。 (10月分の給与が確定する前に提出するときは、「⑬欄」に未計算と記入します) 上記のケースにおける離職証明書の記入例は以下のとおりです。 月給制から日給制に変更となったとき 企業の人員配置や業務内容の変更、または従業員からの 雇用形態の変更希望などの理由から、 給与の支払い形態を変更することがあります。 たとえば、月給制から日給制に支払い形態が変更になると 「⑨欄」「⑪欄」の基礎日数も変わるため、記入の際は注意が必要です。 「⑫欄」にはA欄B欄の2つの記入欄がありますが 月給制の期間はA欄に記入し、 日給制に切り替わる月以降は月決め手当をA欄に記入し、 それ以外の日額や残業代はB欄に分けて記入してください。 変更後の支払い形態が分かるように 支払い形態が変更された月の「⑬欄」に 「日給制へ切替」と記入してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 給与の締切日に変更があったとき 給与の締切日が変更になることは多くはありませんが 事業拡大で従業員が増加したことにより 給与計算や支給の管理が煩雑になるような場合に、 給与の締切日を変更することがあります。 【給与の締切日が変更となるケース】 ・事業拡大で従業員が増加したことにより、給与計算や支給の管理が煩雑になるとき ・企業の再編や合併により、新しい企業の給与締切日にあわせるとき ・締切日から支給日までの日数が少なく、給与担当者の業務負担が大きいとき など この場合、「⑩欄」は締切日ごとに、 「⑪欄」の日数が11日以上ある完全月※を6か月分記入します。 「⑪欄」「⑫欄」も対象期間の基礎日数と賃金額を記入してください。 また、締切日が変更された期間が分かるように「⑬欄」へ「締切日変更」と記入します。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 ※完全月とは 給与締切日の翌日から次の給与締切日までの期間が満1か月であり、 かつ賃金支払基礎日数が11日以上ある月のことです。 以下のときは、完全月に含まれないため、注意してください。 ・給与締切日の途中で入社した場合の入社月 ・給与締切日の途中で離職した場合の離職月 (上記【例】9月21日~離職日10月15日) ・給与締切日の途中で給与の支払い形態の変更があった月 ・給与締切日の変更により、完全な1か月ではない月 (上記【例】8月1日~8月20日) ・欠勤や休職、産休育休の取得により、賃金支払基礎日数が10日以下のとき ケガや病気で給与の支払いが30日以上なかったとき 従業員がケガや病気で仕事を休んだ場合、 労災保険の休業補償や健康保険の傷病手当金などの 生活保障を受けることがありますが、 企業では欠勤扱いとなり、給与の支払いがないことがほとんどです。 離職証明書の手続において、原則離職日を含む以前の2年間までが算定対象期間ですが、 そのあいだにケガや病気、出産などの理由で、 引き続き30日以上給与の支払いを受けられなかったときは その日数を算定対象期間に加算することができます(最長4年間)。 長期欠勤の期間があると離職証明書へ記入する期間も多くなりますが、 給与支払いがなかった期間の事実を証明する書類を添付できるときは 「⑧〜⑫欄」の記入を省略できます。 この場合、医師の診断書や傷病手当金支給申請書などの写しの添付が必要です。 「⑬欄」には、「給与支払いがなかった期間」「日数」 および「その原因」を記入します。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 賃金支払対象期間について、「⑬欄」への記入と傷病手当金支給申請書などの 写しを添付することで、以下の青枠「⑧〜⑫欄」(2023年2月21日~2023年10月20日)を 省略しています。 なお、「⑧〜⑫欄」1段目の離職日までの最後の期間 (上記2023年10月21日~離職日11月20日)の記入は省略できません。 傷病により長期欠勤のまま退職するケースもあるため、 その場合「⑨欄」「⑪欄」は0日、「⑫欄」は0円と記入してください。 産休育休で給与の支払いが30日以上なかったとき 厚生労働省の実施した令和3年度の雇用均等基本調査によると、 過去1年間に育児休業を終了し、復職した女性の9割以上が 6か月以上の育児休業を取得しています。 キャリア形成の観点から仕事と育児の両立に関する制度の見直しが進み、 多くの従業員が産前産後休業、育児休業を取得しています。 離職日を含む以前の2年間までの算定対象期間に、 産休育休の取得により給与の支払いがなかった場合も ケガや病気で給与の支払いが30日以上なかったときと同様に 離職証明書を作成してください。 離職証明書の記入例は以下のとおりです。 なお、「⑧〜⑫欄」1段目の離職日までの最後の期間 (上記2023年8月1日~離職日8月31日)の記入は省略できません。 「⑨欄」「⑪欄」は0日、「⑫欄」は0円として記入してください。 また、省略期間に育児休業をしていた子どもの育児休業給付金を受給していた場合、 ハローワークで事実確認ができるため添付書類は原則不要です。 ただし、産休育休取得後に雇用保険に加入したため 育児休業給付金を受給していなかったなどの場合は、 母子健康手帳の写しや産前産後休業申請書(任意様式)など、生日と休業期間が証明できる書類を添付してください。 まとめ 今回の記事では、パターン別の離職証明書の書き方と記入例をご紹介しました。 離職証明書は、従業員の勤務状況や賃金額を証明する書類であり、 失業保険を受給する際の支給額に大きく影響します。 離職証明書は労働者にとっても、労務担当者にとっても重要な役割を持つものです。 スムーズな手続が求められるため、正確かつ丁寧な作成を心掛けましょう。 用紙での申請では以下の作成ツールなどを使い、用紙への転記などにお役立てください。 参考・ダウンロード | ハローワーク名古屋東『離職証明書記入見本作成ツール(excelファイル)』

  • 【介護休業】押さえておくべき基本

    日本では高齢化が更に進み、「団塊の世代」の全員が75歳以上となる2025年には、 およそ5.5人に1人が75歳以上の高齢者となり、認知症の高齢者の割合や 世帯主が高齢者の単独世帯・夫婦のみの世帯の割合が 増加していくと推計されています。 企業でも、従業員が介護者になることが増えていくでしょう。 介護は育児と異なり突発的に問題が発生し 介護を行う期間・方策も多種多様であることから、 仕事と介護の両立が困難となるケースも考えられます。 今回は、仕事と介護の両立支援制度でもある「介護休業」について 企業が知っておきたい基本をご紹介します。 介護休業の基本 介護休業とは、労働者が要介護状態(※)にある家族を介護するための休業をいいます。 ※「要介護状態」とは 負傷や疾病、あるいは身体上や精神上の障害により、2週間以上 常時介護を必要としている状態です。 要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得ます。 【常時介護を必要とする状態に関する判断基準】 「常時介護を必要とする状態」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。 しかし企業としてはこの基準に厳密に従うことにとらわれず 従業員の介護休業の取得が制限されないよう、 介護をしている従業員の個々の事情にあわせて 仕事と介護を両立できるよう柔軟に運用することが望まれます。 ・介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。 ・状態①〜⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。 (出典)厚生労働省『男女雇用機会均等法、育児・介護休業法のあらまし』P8 介護休業の対象者・対象家族 介護休業の対象となる労働者、介護休業取得の対象となる家族について説明します。 【対象労働者】 要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。 パート・アルバイトなど、期間を定めて雇用されている労働者は 申出時点において、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6 か月を経過する日までに契約期間が満了し、 更新されないことが決まっていないことが要件となります。 (出典)厚生労働省『介護休業について』 【対象とならない労働者】 ・日雇い労働者 ・労使協定を締結している場合 (入社1年未満の労働者、申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者、 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者) 【対象家族】 対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、 孫になり、同居・扶養要件はありません。 (出典)厚生労働省『介護休業について』 介護休業の取得にあたって 介護休業を取得するにあたって、利用期間・回数、申出方法についてご紹介します。 【利用期間・回数】 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。 日数(93日間)は通算で数えるため、土曜日・日曜日・祝日も含まれます。 【申出方法】 1 従業員は、休業開始予定日の2週間前までに企業に書面等で申出をします。 申出内容は、下記の内容になります。 ① 申出の年月日 ② 従業員の氏名 ③ 申出に係る対象家族の氏名および従業員との続柄 ④ 申出に係る対象家族が要介護状態にあること ⑤ 休業を開始しようとする日および休業を終了しようとする日 ⑥ 申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数 参考・ダウンロード | 厚生労働省『社内様式例 介護休業申出書』 企業は、要介護状態の証明書類の提出を求めることができますが、提出を制度利用の条件とすることはできません。 2 企業は、介護休業の申出がされたときは、下記の内容を従業員に通知します。 ① 介護休業の申出を受けた旨 ② 介護休業開始予定日および介護休業終了予定日 ③ 介護休業の申出を拒む場合には、その旨およびその理由 参考・ダウンロード | 厚生労働省『社内様式例 〔(出生時)育児・介護〕休業取扱通知書』 介護休業中の賃金と、介護休業給付金について 介護休業中の賃金が有給なのか無給なのかは、 法令等の定めはなく、企業の規定によります。 また雇用保険の被保険者である従業員が介護休業を取得したときは 収入の減少を補うため、 支給要件を満たした場合には介護休業給付金の支給を受けることができます。 【介護休業給付金申請手続の基本的な流れ】 介護休業給付金の手続は、原則として企業を経由して行います。 介護休業給付金の対象となる1回の介護休業期間は、最長3か月となります。 【支給対象者】 介護休業を取得した雇用保険の被保険者で以下にあてはまる場合、支給対象者となります。 ・介護休業を開始する時点で、介護休業終了後に退職することが予定されていない ・介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上ある月が12か月以上ある 【支給対象となる介護休業】 以下の①および②を満たす介護休業では、支給対象となる同じ家族について 93日を限度に3回までに限り支給されます。 ①要介護状態にある対象家族を、介護するための休業である ②被保険者が介護休業の期間の初日および末日とする日を事業主に 申出を行っており、実際に介護休業を取得していること 【支給要件】 介護休業開始日から起算して1か月ごとに区切った場合の 各期間(支給単位期間)について、以下の要件をすべて満たしている場合に 支給対象となります。 ①支給単位期間の初日から末日まで継続して被保険者である ②支給単位期間に、就業している日数が10日以下 ③支給単位期間に支給された賃金額が、休業開始時賃金月額の80%未満 【支給額】 各支給対象期間ごとの支給額は、原則下記のとおりとなります。 要介護状態の対象家族を2人体制で介護するケースが増えています。 介護体制が2人であっても、それぞれ介護休業・介護休業給付金の要件を満たしていれば介護休業の同時取得ができ、ともに介護休業給付金を受け取れます。 参考 | 厚生労働省『介護休業給付の内容及び支給申請手続について』 企業が留意しておきたい介護休業のポイント 従業員から介護休業の申出があった際に、知っておきたいポイントを2つご紹介します。 1 介護休業の申出があった場合、拒否することはできない 介護休業は法令等で定められた従業員の権利であり、従業員が必要とする場合には 法令等で定められた要件を満たせば取得できます。 就業規則で介護休暇や介護休業に関する規定が定められていなくても 取得の申し出は受けなければなりません。 2 介護休業中は、社会保険料が免除されない 介護休業については、従業員・企業の社会保険料の免除制度がないため、 介護休業の期間中も通常どおり保険料を納付しなければなりません。 まとめ 経験を積んだ熟練従業員や管理職など企業の中核となる人材が 仕事と介護の両立に悩み離職してしまうことは、企業にとって大きな損失になります。 企業による仕事と介護の両立支援は、離職する従業員や心身ともにストレスを抱える 従業員を減らす取り組みにつながります。 介護休業を取得する従業員が発生する前に、どのような対応を行っていくのかを 事前に確認されることをおすすめします。

  • 【労務担当者必見】出産育児一時金の給付額引上げ

    出産育児一時金は、妊娠4か月以上の健康保険の被保険者および 被扶養者が出産したとき(死産・流産も含む)に、 健康保険から支払われる出産費用の負担を軽減するための制度です。 この記事では、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)に加入しているときの 出産育児一時金について説明をしています。 なぜ出産育児一時金の知識が必要なのか 近年は、地域や医療機関による出産費用のばらつきが多く 費用も年々増加していることが問題視されています。 これらを考慮し、2023年4月から本人への出産費用の給付額を 80,000円引き上げることになり、出産にかかる経済的負担の軽減が期待できます。 出産育児一時金は、医療機関が直接・代理で受け取る方法が多く利用されており、 企業の労務担当者の手続はあまり発生しません。 育児休業取得促進のための個別周知でも、出産育児一時金は 必須の周知項目にはなっていません。 しかし企業の労務担当者は、産前から育児休業復帰までの 従業員にとって身近な相談者のひとりです。 出産育児一時金について従業員から相談がある可能性もありますので、 出産育児一時金の基本情報を押さえてください。 【出産費用(正常分娩)の増加推移】 (出典)厚生労働省『医療保険制度改革について 』P4 大幅引き上げの出産育児一時金 2023年4月1日以降に生まれる子どもは、1人の分娩につき50万円が支給されます。 出産育児一時金は、出産費用の負担を補助する給付と 産科医療補償制度(※)の掛金で構成されています。 出産育児一時金の支給総額50万円の内訳は、以下に変更となります。 以下のときは、産科医療補償制度の掛金を除く、出産費用の給付のみとなります。 ・産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産するとき ・産科医療補償制度に加入の医療機関で妊娠週数22週未満で出産するとき ※「産科医療補償制度」とは 出産時に何らかの理由で重度脳性麻痺となった子どもと その家族の経済的負担を補償する制度です。 全国の分娩機関の制度加入率は99.9%とされており 制度加入済の分娩機関で出産をする妊産婦は すべてこの制度の対象となります。 出産育児一時金の一部が掛金となるため、妊産婦の掛金負担はありません。 産科医療補償制度に加入している医療機関かどうかは、以下より確認できます。 参考|公益財団法人 日本医療機能評価機構『産科医療補償制度 加入分娩機関検索』 出産育児一時金を全世帯で支えあう仕組み 今回、出産育児一時金の引き上げとともに 後期高齢者医療制度が出産育児一時金に係る費用の 一部を支援する仕組みを導入することになりました。 給付は現役世代ではなく高齢者中心で 負担は現役世代中心という社会保障の構造から、 負担能力に応じてすべての世代で医療費を公平に 支えあう仕組みになるように見直しされます。 高齢者だけではなく、子どもたちや子育て世代、 現役世代まで広く安心できる社会保障を目指すものです。 具体的には、出産育児一時金の総額の7%を 後期高齢者が負担するというものです。 介護保険の「後期高齢者1人当たりの保険料」と 「現役世代1人当たりの高齢者支援金」の伸び率を参考に、 7%を起点に高齢者負担率の設定方法を見直していくことになります。 所得に応じた負担能力を考慮したうえで 経済的措置により2024年、2025年は出産育児一時金の 2分の1の7%分を負担するなど、段階的な負担となる検討もされています。 出産育児一時金の受け取り方 出産育児一時金の受け取り方は 「医療機関が直接・代理で受け取る方法」と 「被保険者が受け取る方法」があります。 1 医療機関が直接・代理で受け取る方法 あらかじめまとまった現金を用意せず安心して出産ができるため 医療機関が直接・代理で受け取る方法が多く利用されています。 さまざまな医療機関に対応するため2種類の制度があります。 【直接支払制度】 被保険者が、事前に直接支払制度を医療機関に申出し 協会けんぽが出産した医療機関に対して直接、 出産育児一時金の金額を上限として出産費用を支払う制度です。 直接支払制度の利用については、医療機関に確認してください。 【受取代理制度】 診療所や助産所など、直接支払制度への対応が困難な小規模医療施設もあります。 直接支払制度が利用できないときは、受取代理制度を利用することができます。 受取代理制度とは、被保険者が協会けんぽへ申請することで 出産育児一時金の金額を上限に、本人に代わって小規模医療施設が 協会けんぽから出産費用を受け取れる制度です。 申請を希望するときは、出産予定日前(2か月以内)に届出が必要です。 利用できる小規模医療施設は、厚生労働省へ届出を行った医療施設に 限られますので事前に医療施設に確認をしてください。 受取代理制度を利用するときの申請様式は以下よりダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|協会けんぽ『出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)』 2 被保険者が受け取る方法 出産後に被保険者から協会けんぽに出産育児一時金支給申請書を申請し、 被保険者が出産育児一時金を受け取る方法です。 直接・代理で医療機関が受け取る方法を希望しない場合や 出産した医療機関等が直接支払制度や受取代理制度の利用ができない場合に利用します。 海外で出産したときは、こちらの方法で出産育児一時金を申請します。 申請様式や添付書類については、以下のサイトをご覧ください。 参考|協会けんぽ『健康保険出産育児一時金支給申請書』 出産費用が出産育児一時金を下回るとき 出産費用は、地域や医療機関によってばらつきがあります。 2022年度の厚生労働省の統計では、公的病院の正常分娩を 都道府県別にしたところ全国平均値は454,994円でした。 一番高い地域は東京都(平均値565,092円)、 一番低い地域は鳥取県(平均値357,443円)となっています。 参考|厚生労働省『第157回社会保険審議会医療保険部会資料 医療保険制度改革について』P28 2023年4月1日以降、出産育児一時金の支給額が50万円になることで 出産費用が下回るケースの増加が見込まれます。 直接支払制度を利用する被保険者は、出産育児一時金と出産費用の差額の支給を 受けるため手続をしなければなりません。 手続は「協会けんぽから届く申請書で申請する方法」と 「協会けんぽの申請書を待たずに、出産後すぐに申請する方法」の2種類があり、 それぞれ申請様式や添付書類が異なります。 1 協会けんぽから届く申請書で申請する方法 通常、出産後2~3か月で医療機関等へ直接出産育児一時金が支払われます 医療機関等への支給終了後、差額があるときは支給決定通知書と一緒に 申請用紙が被保険者の自宅に送付されます。 届出様式:健康保険出産育児一時金差額申請書 添付書類:なし 届出先 :事業所を管轄の協会けんぽ 2 協会けんぽの申請書を待たずに、出産後すぐに申請する方法 差額支給を急ぐときは、協会けんぽの申請用紙を待たずに 指定の届出様式に添付書類を添えて申請してください。 届出様式:出産育児一時金等内払金支払依頼書 添付書類:医療機関等から交付される出産費用の領収・明細書のコピー、 医療機関等から交付される直接支払制度に係る代理契約に関する文書のコピー など 届出先 :事業所を管轄の協会けんぽ 申請様式や添付書類については、以下のサイトをご覧ください。 参考|全国健康保険協会『健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書』 その他、会社が知っておくこと 1 退職後の出産育児一時金 退職後の出産育児一時金は、1年以上の被保険者期間があり 退職日の翌日から6か月以内の出産であれば給付を受けることができます。 退職後の給付は被保険者であった本人の出産が対象です。 被扶養者であった家族の出産は対象外です。 同じ出産に対して出産育児一時金の支給は1回のみとされているため 退職後に配偶者の健康保険の扶養に入る場合は 「退職後の出産育児一時金」か「配偶者の家族出産育児一時金」の ちらかを選択して給付を受けてください。 2 海外で出産したときの出産育児一時金 海外赴任者などが海外で出産したときは、 一旦、海外の医療機関へ出産費用を全額支払うことになりますが、 その後出産育児一時金の申請ができます。 申請には、海外の医療機関が発行する出産に関する証明書や それらを翻訳した書類などが必要になるため、 海外で出産予定の従業員がいるときは 出産前に加入している協会けんぽへ必要書類について 確認することをおすすめします。 参考|協会けんぽ『海外で出産した場合でも出産育児一時金の申請はできますか?』 まとめ 今後、出産育児一時金の引き上げと同時に、出産費用の見える化が進みます。 具体的には、妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて 適切に医療機関等を選択できる環境の整備を目的とし、 サイトなどで外部公開を行うものです。 2024年4月の公開を目途に公表項目等の詳細について検討が行われます。 出産・育児休業イベントに関わる法律がめまぐるしく見直され、改正されています。 今後も出産・育児休業に関する情報に注目ください。

  • 育介法改定に伴う出生時育児休業給付金について

    2022年10月1日に育児・介護休業法が施行され、 新しく「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」ができました。 それに伴い、休業中の所得保障として 「出生時育児休業給付金」が新設されました。 育児休業中に支給される「育児休業給付金」と ほぼ同じ内容ですが、申請のタイミングなどが異なります。 この記事では、出生時育児休業給付金の制度や 育児休業給付金との違いなどを記載しています。 出生時育児休業(通称:産後パパ育休)とは 出生時育児休業とは、男性の育児休業を促進するため 従来の育児休業とは別に2022年10月1日から新たにできた制度で 子の出生日から生後8週間となる日のあいだで 4週間(最大28日)取得でき、2回まで分割が可能です。 つまり1回目10日、2回目5日(合計28日未満でも取得可能)などの 短期間での取得ができるようになりました。 また、労使協定が締結されていれば休業中に就業ができます。 【出生時育児休業のまとめ】 従来の育児休業との違い 「出生時育児休業」と、従来からある「育児休業」の 制度の違いは大きく3点です。 【制度の違い】 出生時育児休業中の就業の上限 出生時育児休業では、労使協定を締結すれば休業中の就業ができますが、 育児・介護休業法では上限が決まっており、以下のすべてを満たす必要があります。 ただし、育児・介護休業法の就業の上限と出生時育児休業給付金が受給できる 就業の上限は異なります。 出生時育児休業給付金については下記の 「出生時育児休業給付金と育児休業給付金の要件と相違点」の表を 参考にしてください。 就業は企業や従業員が一方的に決めることはできず 従業員から就業日、時間の申出をしてもらい、 それを元に企業が就業を認める日や時間を通知します。 【例】 出生時育児休業日数:14日間・・・A 出生時育児休業中の所定労働日数:10日・・・B 1日の所定労働時間:8時間・・・C 休業中の就業可能日数:5日(B 10日 ÷ 1/2 = 5日)・・・D 休業中の就業可能時間:40時間(B 10日 × C 8時間 × 1/2 = 40時間) 休業開始日、終了日の就業時間:8時間未満 出生時育児休業給付金とは 企業は、出生時育児休業を取得して就労していない時間については 賃金を支払う義務はありません。 そのため休業中の生活を守るための所得保障として 出生時育児休業給付金があります。 申請先などは以下になります。 ※賃金支払基礎日数: 賃金や報酬の支払対象日になり 出勤し労働をした日、年次休暇取得日などをいいます。 上記の表の内容は、従来からある育児休業給付金と 出生時育児休業給付金の共通事項になります。 ただし支給額は同じですが、出生時育児休業休業給付金、 育児休業給付金の支給率は通算180日までは67%、 181日目以降は50%になります。 要件などは育児休業給付金と異なる点がありますので 以下を参考にしてください。 【出生時育児休業給付金と育児休業給付金の要件と相違点】 参考 | 厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』 出生時育児休業は最大4週間(28日)取得できますが、 それより短い期間で取得したり、就業したときなどは 「支給単位期間の就業日数等」は10日(80時間)以下ではなく 按分で計算されます。 なお、小数点以下の端数処理は計算方法によって異なります。 【休業期間が28日未満のときの按分計算など】 就業日数等は実際の就業状況が「就業可能日数」 または 「就業可能時間数」のどちらかに収まっていれば 支給要件を満たします。 【例】 就業日数:6日 就業時間:28時間30分 出生時育児休業の取得日数:10日 (出典)厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』P4 (就業可能日数 4日) 10日(原則)× 10日(取得日数)÷ 28日(休業の最大日数)= 3.75日 小数点以下切り上げのため「4日」で処理をします。 (就業可能時間 28.57時間) 80時間(原則)× 10日(取得日数)÷ 28日(休業の最大日数)= 28.57時間 端数処理がないため「28.75時間」で処理をします。 実際の就業状況が就業可能日数、就業可能時間数に収まっているかを確認をします。 ①就業日数:6日 >就業可能日数:4日・・・就業可能日数を超えている ②就業時間数:28時間<就業可能時間数:28.75時間・・就業可能時間数以下 ①は就業日数が就業可能日数を超えているため要件を満たしていません。 しかし②では就業時間数が就業可能時間数以内に収まっているので 出生時育児休業給付金の要件を満たします。 不支給になるのはどんなとき 出生時育児休業は2回まで取得ができる制度です。 そのため3回目の休業を取得したときは給付金は支給されません。 また休業中に賃金が支払われているときは、 給付金と調整があり賃金の額によっては支給されなくなります。 【出生時育児休業期間中に事業主から賃金が支払われたとき】 ※休業開始時賃金日額とは、休業開始前6か月間の賃金(賞与を除く)÷ 180 (出典)厚生労働省『育児休養給付金の内容と申請手続き 2022(令和4)年10月1日施行版』P4 まとめ 育児・介護休業法の改正があり、手続に関連する雇用保険、 健康保険、厚生年金保険の改正も行われています。 出生時育児休業と育児休業は別の制度になり 本人が希望すれば各2回ずつ取得できるので 最大4回取得することも可能です。 そのため手続だけではなく管理なども煩雑になり、 対応が遅れている企業も少なくありません。 複数の制度が絡みあっているので、どこから対応をしていいのか 迷われているときは専門家の社会保険労務士へご相談ください。

  • 【厚労省発表】労働に関する現状・課題

    厚生労働省から毎年発表される、前年の労働に関する現状や課題を まとめた「労働経済の分析」で、2021年についての発表がありました。 新型コロナウイルス感染症の影響がまだまだ残ってはいるものの、 緊急事態宣言の解除以降は、就業者数、雇用者数や求人について 回復に向けた動きがでてきています。 この記事では、厚生労働省の発表を元に、今後の労働経済の動向などをまとめました。 労働時間・有給休暇の動向 【労働時間】 2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために発出された 緊急事態宣言の影響もあり、一般労働者(短時間労働者以外)の年間出勤数が 2019年より減少し、それに伴い所定内労働時間、所定外労働時間も減少となっています。 2021年は緊急事態宣言等の期間が限定的だったため、年間出勤日数が増加し 所定内労働時間、所定外労働時間が増加となりました。 しかし、感染拡大前の2019年以前と2021年の月間総実働労働時間を比較してみると 2019年以前より低い水準となっており、要因としては働き方改革の進展等に加えて 新型コロナウイルス感染症による影響も考えられます。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』P69 【年次有給休暇】 年次有給休暇の取得状況では、働き方改革の取り組みなどが功を奏し取得率が 50%を超えています。 企業規模が大きくなるにつれて取得率が高くなっており、男女別の取得状況は 男性が55%、女性が60.1%です。 業種別では「情報通信業」「製造業」などの取得率が高く、「建設」「卸売業、小売業」 「宿泊業、飲食サービス業」などは取得率の平均値を下回っていますが 年次有給休暇を年5日取得義務化がスタートした2019年以降は 取得率は上昇傾向にあります。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』P71 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』P72 賃金の動向 2021年の現金給与総額は増加となりましたが、特別給与(賞与など)の減少などが 影響し、新型コロナウイルス感染症拡大前と比較すると低い水準となっています。 現金給与総額とは、税金や社会保険料等の給与から控除する前の金額です。 【最低賃金はどこまで上がるのか】 最低賃金は毎年上がり続けており、2021年度と2022年度を比較すると 全国加重平均額が31円アップの961円となっています。 2016年の閣議決定では「年率3%程度、全国加重平均1,000円を目指す」とされましたが 2022年の閣議決定では「できるだけ早く全国加重平均1,000円以上になることを目指し、 引き上げに取り組む」とされたため、2023年も引き上げが予想されます。 引き上げ額は、生活費、賃金、企業の賃金支払能力などを考慮しながら決定されます。 全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数に最低賃金を掛けて平均した金額です。 【例】 A県:最低賃金 1,000円・・a 労働者数 150名・・・b B県:最低賃金 900円・・・c 労働者数 100名・・・d (a 1,000円 × b 150名)+(c 900円 × d 労働者数100名)=240,000円・・・e e 240,000円 ÷(b 150名+d 100名)=960円・・・全国加重平均額 求人等の状況 2021年9月末に緊急事態宣言等が解除されて以降は、就業者数、雇用者数や 求人で回復に向けた動きがみられました。 2021年は新規求人数は年平均で前年を上回り、有効求人数も増加しており 有効求職者数(ハローワークに登録している求職者数)も増加しています。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析〔概要〕令和4年9月』P3 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』P41 転職者、転職希望者の状況 転職者、転職希望者の状況は男女で傾向が異なります。 転職希望者の割合は55歳以上を除いたいずれの年齢階級でも男性より 女性の割合が高く、男女ともに年齢が上がるにつれて低下傾向にあります。 転職希望者のうち実際に転職活動をしている者(転職活動移行者)の割合は 男女ともにおおむね低下、2年以内に転職を実現させている割合は男女ともに 54歳以下までは低下となっており、55歳以上では上昇しています。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析〔概要〕令和4年9月』P9 転職希望者の割合を役職別にみると、男性の転職希望者は「役職なし」と比較して 「係長・主任クラス」「課長クラス」「部長クラス」は低下しており、 役職が上がるにつれては転職希望者も低下しています。 「係長・主任クラス」「課長クラス」では、転職希望者のうち転職活動への 移行や2年以内に転職を実現した者が少ない傾向が見られます。 女性では、男性と同様に役職が上がるにつれて転職希望者が低下し、 2年以内の転職者については「係長・主任クラス」「課長クラス」の役職者が 低くなっています。 転職活動移行者の割合は「役職なし」と比較すると低下はみられません。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析〔概要〕令和4年9月』P9 キャリア形成に向けた課題とは キャリアの見通しや、そのための自己啓発は個人だけでできる取り組みではなく、 環境が重要です。 キャリアの見通しの取り組みとしてキャリアコンサルティングがあります。 キャリアコンサルティングは労働者の職業選択、職業設計、職業能力の開発・向上に かかわる相談に対して助言・指導を行います。 キャリアコンサルティングを通して労働者が自身の適正や能力、関心などに気づき、 自己理解を深めることにより「自らの職業設計を考えていきたい」と考える割合が 高くなります。 またキャリアコンサルティングを受けた経験がある者は、現在の仕事内容や 職業生活全般の満足度や自己啓発の意識が高い傾向にあります。 労働力の需要が見込まれる人材 少子高齢化に直面している状況下では介護人材の確保、第4次産業革命の進展には IT人材の確保が必要となります。 どちらも中長期的に大きな課題です。 介護人材の必要数は2040年には280万人と推計されており、IT人材は市場規模の成長が 低かったとしても16万人程度、高かったときは79万人程度不足すると推計されています。 2030年までには16万人〜79万人程度の人材が不足すると推計されており 育成が課題になってきています。 (出典)厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析〔概要〕令和4年9月』P6 介護人材の離職率低下や人材の確保のため、以前からさまざまな対策が取られており 毎年対策が検討されています。 【介護人材への対策】 ・介護職員の処遇改善加算(賃金水準の改善) ・外国人材の受入れ ・研修費用の貸付 など IT人材については、育成費用が対象になる助成金ができており、上乗せがある助成金も 用意されています。 比較的よく利用される助成金を以下に記載しています。 【人材開発支援助成金】 従業員に対して、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるために 計画にそった訓練等を実施したとき、かかった経費や訓練期間中の賃金の一部が 助成されます。 助成金の対象となる訓練は9コースに分かれており、IT人材の育成に伴い新しいコースが 追加されました。 コースや要件の詳細は厚生労働省サイトを参照にしてください。 参考 | 厚生労働省『人材開発支援助成金』 【キャリアアップ助成金 正社員化コース】 有期契約労働者等を正社員へ転換したときに対象になる助成金です。 正社員コースの受給額には加算制度があり、人材開発支援助成金のうち 一定の訓練を終了した有期契約労働者等が対象となります。 加算額については以下の表を参考にしてください。 ※無期雇用契約から正社員へ転換するときは助成額が1/2になります。 ※生産性要件を満たせば助成額に別途上乗せがあります。 助成金は要件が細かいため進めるときは事前に、管轄の窓口(労働局、ハローワーク) または社会保険労務士へご相談ください。 まとめ 新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、感染症を踏まえた働き方、事業活動が 定着しつつあります。 企業の倒産件数は2009年の15,480件以降減少で推移しており、2021年は6030件と なっています。 これは、1964年の4,212件に次ぐ57年ぶりの低水準です。 その背景には、雇用調整助成金の特例措置などの各種支援策の下支えがあったものと 考えられます。 労働市場は変化していきますので、支援策などの情報を取得しながら対策を 取られることをおすすめします。

  • 離職票発行の流れと作成手順

    従業員の退職時には、さまざまな手続や確認事項が発生します。 その中でも離職票は、退職後の基本手当(いわゆる失業保険)の手続に必要な、 従業員にとって重要な書類の一つです。 今回の記事では、企業の労務担当者向けに、離職票の発行手続や書類の基本的な 書き方について説明します。 離職票とは 正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、雇用保険に加入していた従業員が 会社を退職後、ハローワークで失業保険の申請をするときに必要な書類です。 離職票は「雇用保険被保険者離職票-1(資格喪失確認通知書)」と 「雇用保険被保険者離職票-2」の2枚で構成されます。 (出典)ハローワーク インターネットサービス『雇用保険の具体的な手続き(雇用保険被保険者離職票-1、雇用保険被保険者離職票-2)』 「離職票-1」には、退職者が雇用保険を喪失した旨が記載されており 「離職票-2」には、離職日以前に支払った賃金の状況や離職理由が記載されています。 なお、離職票は、ハローワークへ提出するまでと交付以降で言い方が変わります。 この記事でも離職証明書と離職票を使い分けてお伝えします。 離職証明書:企業が離職票発行のためにハローワークへ提出する書類 離職票  :企業から提出された離職証明書を受けて、ハローワークが 退職者の離職を公的に証明する書類 離職票の発行が必要になるとき 従業員に離職票の交付を希望された場合、企業は離職票の発行手続を行います。 以下の場合は、従業員が離職票の交付を希望しなかった場合でも 必ず発行が必要となるため、注意してください。 【退職日時点で59歳以上の従業員が退職するとき】 雇用保険の加入期間や従業員の希望の有無にかかわらず、離職票の発行が必要です。 「高年齢雇用継続給付」を申請する場合、給付金額の算定にあたって 離職票が必要となるからです。 なお、退職した数か月後に退職者から企業へ交付を希望する連絡があり、 急いで発行手続をしなければならないなど、対応が後手後手になるケースもあります。 退職に関する業務は多岐に渡るため、タスクを管理するためにも 事前に離職票の希望を聞いたり、一律で離職票を発行するなど、 企業ルールを決めて対応されることをおすすめします。 離職票発行の流れ 1 必要書類を準備する 離職証明書は専用の用紙を使用するため、インターネットからの ダウンロードはできません。 ハローワークの窓口で、離職証明書の用紙を受け取ってください。 用紙は、1枚目が「事業主控」、2枚目が「安定所提出用」、 3枚目が退職した従業員に交付される「離職票-2」の3 枚綴りの複写式となっています。 離職証明書には、離職日以前に支払った賃金の状況などを記入します。 原則、離職の日以前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要となるため 離職日を含む月以前12か月分の出勤簿(タイムカード)と賃金台帳を準備しておくと 以降の手続がスムーズです。 なお、最終月の給与計算が完了していなくても、提出は可能です。 参考 | 東京ハローワーク『被保険者に関するQ&A』Q15 2 離職証明書を作成する 1で用意した書類を元に、従業員の氏名、住所などの基本情報や 賃金支払い状況を記入します。 3 従業員に離職証明書の確認・署名をしてもらう 離職証明書は、失業保険の受給資格、給付金額などの 決定の基礎となる重要な書類です。 従業員が離職証明書を確認し、事実に相違がなければ、 離職証明書2枚目(安定所提出用)の 「⑮離職者氏名」「⑯異議の有無および離職者氏名」の2か所に署名をしてもらいます。 特に離職理由の欄は、失業保険の給付日数や給付制限に影響を与える場合があります。 企業と従業員のあいだで離職理由の合意が取れていないなどの理由で トラブルが起こることも多いため、内容については必ず事前に 従業員の確認を取ってください。 なお、2020年12月25日より、離職証明書を届け出るときは、本人の押印が原則不要となりました。 参考 | 奈良労働局『雇用保険関係の届出に係る押印見直しについて』 4 ハローワークに提出する 雇用保険被保険者資格喪失届に離職証明書を添えて、以下の方法で提出します。 提出期限:被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内 提出先 :事業所の所在地を管轄するハローワーク 提出方法:郵送または持参 添付書類:出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、離職理由の確認できる書類など 参考 | 東京ハローワーク『被保険者に関するQ&A』Q16 5 交付された離職票を退職者に渡す ハローワークでの手続が完了すると、 退職者に交付する「離職票-1」「離職票-2」の2点と、 企業控えである「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)」 「離職証明書(事業主控)」の2点が企業に交付されます。 企業控えの2点は企業の確認用として社内で保管し 「離職票-1」「離職票-2」を退職者に郵送します。 必要に応じて以下のようなパンフレットも同封してください。 (出典)厚生労働省『離職されたみなさまへ』 離職証明書の書き方 離職証明書の用紙左側は従業員の離職日以前の賃金支払い状況を記入し、 用紙右側は離職理由を記入する仕様になっています。 【離職証明書(安定所提出用) 記入例】 離職理由で最も多い、自己都合退職を例に離職証明書の基本的な書き方を説明します。 【離職証明書(安定所提出用)左側の書き方】 ①欄は、従業員の氏名、住所などの記入および事業主の証明をする欄です。 失業保険の手続は、離職票に記入された従業員の住所を管轄する ハローワークで行うため、記入する住所は事前に確認しましょう。 離職日を含んだ日以前の賃金の支払い状況を②欄以降に記入します。 ②被保険者期間算定対象期間 離職日から1か月ずつ遡り、上の段から下の段へ月日を記入する欄です。 離職日以前2年間において、「③欄」の日数が11日以上の完全月を12か月分記入します。 賃金を支払う基礎となった日数が10日以下の場合でも 労働時間数が80時間以上ある月は1か月とします。 備考欄に労働時間数を記入してください。 記入方法は、以下のリーフレット2枚目を参考にしてください。 参考 | 大阪労働局『失業等給付の受給資格を得るために必要な 「被保険者期間」の算定方法が変わります』 ③被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数 「②欄」の期間で賃金支払の基礎となった日数を記入する欄です。 有給休暇や半日休暇の取得日も1日として日数に含めます。 月給者については、月給制の種類によって「③欄」「⑤欄」の日数の書き方が異なります。就業規則に定められた内容で正しく記入してください。 【月給制の種類と算定方法】 ④賃金支払対象期間 賃金締切日の翌日から賃金締切日までの期間を記入する欄です。 「⑤欄」の日数が11日以上ある完全月を6か月分記入します。 「②欄」と同様に、10日以下の場合でも労働時間数が80時間以上ある月は1か月とします。 なお、「完全月」とは、賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間が 満1か月であり、かつ賃金支払基礎日数が11日以上ある賃金月のことです。 ⑤賃金支払対象期間の基礎日数 「④欄」の期間で賃金支払の基礎となった日数を記入する欄です。 有給休暇取得時の取扱いや月給者ごとの基礎日数の記入方法は、「③欄」と同様です。 ⑥賃金額 「④欄」の期間に支払った賃金額を記入する欄です。 【離職証明書に記入する賃金】 (出典)厚生労働省『雇用保険事務手続きの手引き【令和4年10月版】』P78 記入欄はA欄とB欄の2か所ありますが、給与の支払い体系によって記入欄が異なります。月給制・週給制の場合はA欄に、日給制・時間給制・出来高制の場合は B欄に記入してください。 ⑦備考 離職証明書の作成時点で離職月の賃金が決定していないときなど、 「④欄」「⑤欄」「⑥欄」について説明が必要なときに記入する欄です。 離職月の賃金が決定していない場合は、備考欄等に「未計算」と記入します。 【離職証明書(安定所提出用)右側の書き方】 ⑧離職理由(事業主記入欄) 離職理由に該当するものを「離職理由」の1~5から1つ選び、〇を記入してください。 1~5に該当する離職理由がない場合は、6の「その他」に〇を記入し、 離職理由を簡潔に記入してください。 自己都合退職の場合は 離職理由の『5(2)労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合、転職希望等)』に〇を記入します。 ⑨具体的事情記載欄(事業主用) 離職理由を具体的に記入する欄です。 離職に至った原因とその経緯を詳細に記入します。 自己都合退職であれば、記入例のように『自己都合による退職』と記入してください。 まとめ 離職票の発行手続は、企業と従業員とのあいだで行う重要な手続です。 失業保険の内容にも大きく関わるため、企業と従業員が合意のうえで手続を進めなければ、退職後のトラブルにも繋がります。 スムーズな手続のためにも、従業員との円滑なコミュニケーションを取りながら、適切に対応してください。 また、離職証明書は従業員の勤務形態や、在職時の勤務状況によって書き方が異なります。パターン別の離職証明書の書き方についても、今後の記事で紹介していきます。

  • 令和5年4月 雇用保険料率の変更

    令和5年2月2日、令和5年度の雇用保険料率が公表されました。 昨年に引き続き、雇用保険料率が引き上げとなっています。 【令和5年度の雇用保険料率】 (出典)厚生労働省『令和5年度雇用保険料率のご案内』 雇用保険とは 雇用保険は、自身の労働により給与を得て生計を立てている労働者が 離職後の生活の安定や雇用の継続を図るための制度です。 雇用保険料は、失業や育児休業、介護休業の給付金だけでなく、 雇用調整助成金など失業を予防したり 雇用機会を増やすための「雇用安定事業」や、 労働者のスキルアップを支援する「能力開発事業」 にも利用されています。 雇用保険料の料率変更のタイミング 雇用保険料は、毎月の給与時に従業員ごとに計算して徴収しなければいけません。 雇用保険料の料率変更のタイミングは 「4月1日以降に最初に到来する締め日により支給される給与」となり、 賃金締日を基準にして変更することになります。 賃金締日が雇用保険料率の改定日の前後いずれにあるかにより 雇用保険料率を変更する時期が決まります。 (例)当月締/当月支払いの場合 締 日:4月20日 支払日:4月30日 →賃金締日が4月1日以降なので、4月30日支払給与より 新しい雇用保険料率で計算します。 (例)末日締/翌月支払いの場合 締 日:3月31日 支払日:4月25日 →賃金締日が3月中なので、4月25日の支払給与は 従前の雇用保険料率で計算します。 そして、5月25日の支払給与より、新しい雇用保険料率で計算します。 雇用保険の加入要件 雇用保険の加入要件は以下のとおりです。 【雇用保険の適用対象者の要件】 以下のいずれにも該当する従業員です。 ①1週間の所定労働時間が20時間以上であること ②31日以上の雇用見込みがあること 現在の制度では、2か所以上の雇用関係にある労働者は 1か所でしか雇用保険に加入できません。 ただし、令和4年1月に雇用保険マルチジョブホルダー制度が 新設され、65歳以上の労働者で以下の適用対象者の要件を 満たしたときは、本人の申出があれば雇用保険の被保険者となることができます。 【雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者の要件】 ①複数の企業に雇用される65歳以上の労働者であること ②2つの企業(1企業あたり週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の 労働時間を合計して、週の所定労働時間が20時間以上であること ➂2つの企業のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること 参考|厚生労働省『「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します』 また、令和3年1月には、従業員として勤務しつつ 個人事業主やほかの企業の役員などその他の収入がある方に ついての雇用保険の適用要件が見直しされています。 従業員としての収入と個人事業主等での収入のどちらが 多いかに関わりなく、従業員として雇用保険の加入要件に 該当していれば加入する必要があります。 参考|広島労働局『従業員の方が自営業を営んでいる場合の雇用保険の取扱い』 雇用保険料の対象となる賃金とは 雇用保険料の対象となる賃金は、賃金、給与、手当、賞与など 名称にかかわらず、労働の対象として企業が従業に支払うすべてです。 結婚祝金や休業補償、解雇予告手当などは賃金には含まれません。 (出典)厚生労働省『雇用保険料の対象となる賃金』 雇用保険料の計算方法 雇用保険料の対象となる賃金は、税金や健康保険料などの社会保険料を 控除する前の総支給額に雇用保険料率を掛けて求めます。 上記で計算したときに従業員負担分に端数が出たときは以下のように処理します。 【雇用保険料の計算例】一般の事業の従業員(令和5年4月~)の給与から控除するとき 基本給255,600円 / 扶養手当20,000円 / 通勤手当10,000円 / 出張旅費20,000円 (計算方法) 255,600円+20,000円+10,000円=285,600円(※) 285,600円 × 6/1,000 = 1,713.6円 →雇用保険料:1,714円(端数切り上げ) ※出張旅費など実費弁償と考えられるものは雇用保険料の対象賃金には含めません。 雇用保険料の申告と納付方法 雇用保険料の申告は、毎年6月1日から7月10日までのあいだに 申請する年度更新で行います。 年度更新では、雇用保険と労災保険の2つの保険の総称である 労働保険の保険料を計算します。 具体的には、前年度4月1日から3月31日のあいだに 支払われた賃金(支払義務が具体的に確定した賃金を含む)を 月ごとに集計し、保険料率を掛けて計算します。 雇用保険料の従業員負担分は毎月の給与で従業員から徴収し、 年度更新のタイミングで支払うことになります。 年度更新で計算した労働保険料の納付は 「現金納付」「口座振替」「電子納付」の方法があります。 納付期限は、現金納付と電子納付のときは毎年7月10日(休日のときは翌日)です。 口座振替による納付の場合は、保険料の引落に最大2か月のゆとりができます。 毎回、金融機関の窓口に行く手間や待ち時間の解消ができ 納付漏れも防止できるのでおすすめです。 参考|厚生労働省『労働保険料は口座振替が便利です!』 まとめ 今回は、雇用保険料率の変更や雇用保険の基本について お伝えさせていただきました。 昨年に引き続き、雇用保険料率が引き上げとなっていますが 働く従業員の生活や安定雇用の維持に欠かせない大切な保険です。 正しい計算方法と雇用保険料率の変更のタイミングを知り 適切に給与から徴収してください。 計算された雇用保険料が給与明細へ正しく反映されるかも確認ください。

  • 協会けんぽ 令和5年度 健康保険料率公表

    協会けんぽより、令和5年度の都道府県単位健康保険料率が発表されました。 令和5年度の健康保険料率では、静岡県を除く46都道府県で変更 (引き下げが33道県、引き上げが13都府県)が発生します。 介護保険料率は、全国一律で令和4年度の1.64%から0.18%引上げされ 令和5年度は1.82%となります。 【令和5年度の保険料率(令和5年3月分の保険料から適用)】 引用|協会けんぽ『令和5年度都道府県単位保険料率』 健康保険料の額とは 健康保険料の額は、次の計算式で求めることができます。 従業員が40歳から64歳までの場合は、健康保険料に上乗せする形で 介護保険料を支払います。 上記で求めた保険料額を企業と従業員で折半します。 【標準報酬月額】 標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするため、 報酬月額の区分ごとに設定されている基準となる金額をいいます。 現在、58,000円(第1級)から1,390,000円(第50級)までの 全50等級に区分されています。 標準報酬月額の決定方法は、下記の5種類です。 ・資格取得時決定 ・定時決定 ・随時改定 ・育児休業等を終了したときの改定 ・産前産後休業を終了したときの改定 【標準賞与額】 標準賞与額とは、賞与にかかる保険料を計算するときの元となる金額で 賞与の支給総額から、1,000円未満を切り捨てて算出します。 標準賞与の対象となる賞与は、名称に関係なく従業員に対して 労働の対象として支払う年3回以下のものをいいます。 【端数処理について】 従業員負担分に端数が生じた場合は端数が50銭以下の場合は切り捨て、 50銭を超える場合は切り上げて1円とします。 (例) 12,345.50円 ⇒ 12,345円を控除 12,345.51円 ⇒ 12,346円を控除 ただし、企業と従業員のあいだで「端数は企業負担とする」などの特約がある場合は、特約に基づき端数処理ができます。 都道府県単位の保険料率とは 協会けんぽの健康保険料は、各都道府県により保険料率が異なります。 各都道府県の保険料率は、地域の加入者の医療費に基づいて算出されており 都道府県ごとに必要な医療費(支出)が異なるため、保険料率に差が生じます。 つまり、疾病予防などの取り組みにより都道府県の医療費が下がれば その分都道府県の保険料率も下がることになります。 保険料率は毎年度改定され、都道府県によって 「引上げ」「据え置き」「引下げ」に分かれます。 医療費を下げる取り組みが、保険料の負担を左右するのです。 なお、健康保険組合では各組合によって保険料率が定められているため、 都道府県単位の保険料率が適用されているのは協会けんぽのみです。 下記のサイトより、各都道府県の保険料率を反映した保険料額表が公開されています。 参考|協会けんぽ『令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)』 保険料の納付手続と納付期日 企業は、企業負担分と従業員負担分をあわせた保険料を 協会けんぽに納付する義務があります。 この場合、従業員が負担する分については 企業は従業員に支払う給与から保険料を控除できます。 従業員の負担する保険料を給与から控除したときは 給与明細などに記載し従業員に通知しなければなりません。 【納付期日と納付方法】 納付期日:翌月の末日 納付方法:銀行・郵便局等金融機関窓口、口座振替 納付日までに納付を行わない場合、期限を指定した 督促状が送られてきます。 督促状の期限までに納めないと、延滞金が課され、 財産差押えなどの滞納処分を受けることにもなります。 まとめ 協会けんぽの健康保険料率は、都道府県によって異なります。 3月分の保険料を徴収する給与計算が始まる前に 令和5年度の健康保険料率に置き換える処理を行う必要があります。 また、3月に賞与を支給する場合は令和5年度の健康保険料率で 保険料を算出する必要があります。 各都道府県の健康保険料率を確認し、正しい健康保険料率で 従業員から保険料の徴収を行ってください。

  • 2023年4月 給与のデジタル払い解禁

    2023年4月から給与のデジタル払いが解禁になり、 従業員の給与を銀行振込と同じようにデジタルマネーでの 支払いができるようになります。 給与のデジタル払いができるのは 厚生労働省の指定を受けた 資金移動業者(デジタルマネーの運用をしている企業)に 限られており、指定の受付は2023年4月1日からスタートします。 そのため実際に資金移動業者を通して 給与のデジタル払いができるようになるまでには 数か月かかる可能性があります。 この記事では給与のデジタル払いを行うにあたっての メリット・デメリット、必要なことなどをお伝えしていきます。 給与のデジタル払いとは デジタルマネーとは紙幣や硬貨の実物がない通貨、 デジタル払いとはデジタルマネーによる決済のことを指します。 電子マネー決済やスマホ決済が一般的です。 給与のデジタル払いとは、決済アプリや電子マネーなどを 利用して給与が振り込まれる制度です。 労働基準法では、給与は現金支払いが原則となっており、 銀行振込による給与の支払いは本人の同意を得たときにのみ 認められる例外的な取扱いです。 デジタル払いも銀行振込と同様に 労働者の同意によって行う例外的な取扱いで、 これらの例外的な取扱いは法令等によってのみ 認められており、デジタル払いの解禁も 法令等の改正によって実現します。 国が法令等を改正してまでデジタル払いを 進めているのには、以下のような理由があります。 ①「新たな生活様式」に対応した規制改革の推進 ②外国人労働者の受け入れの拡充施策 ③キャッシュレス決済の推進 ④実態調査で一定のニーズがあった (出典)厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払について』P40 デジタル払いを解禁するにあたって、 厚生労働省は指定要件の1つとして 少なくとも月1回は無料で現金の引き出しができるよう 資金移動業者に求めています。 その他、資金移動業者が破産などにより 労働者に支払いができない状況にならないよう 保証を仕組み化したり、残高の変動した日から 10年以上口座を使えるようにしておくことなどの要件を設け、 労働者の給与が保護されるよう進めています。 企業のメリット・デメリット 給与をデジタル払いを導入すると どのようなメリット・デメリットがあるかを 以下にまとめています。 【メリット】 ・銀行口座を持たない従業員への振込が可能になる ・銀行口座開設までの暫定措置となる ・銀行振込手数料の削減になる ・給与の支払い方の選択肢が広がる など 特に銀行口座の開設が難しい外国人労働者にとっては、 デジタル払いが可能になることによって給与の受け取りがスムーズになります。 【デメリット】 ・デジタル払いと銀行振込の2重運用が発生する ・個人の資金移動業者のアカウントの管理が発生する ・振込できる上限額が決まっている ・就業規則の変更が必要になる など 給与のデジタル払いができる 資金移動業者の口座の受入れ上限額は、 100万円までと設定されています。 そのため上限を超えたときは、超過分の受取口座(銀行口座など)が必要です。 企業が準備をすること 給与のデジタル払い導入には、以下の準備が必要になります。 1 従業員への説明 デジタル払いが対応できるのは 厚生労働省の指定がある資金移動業者の口座です。 従業員の希望する資金移動業者であっても 厚生労働省の指定がなければデジタル払いができないことや、 デジタル払いを行う給与の範囲、リスク(資金移動業者の破綻など)などを伝えます。 2 就業規則の整備 デジタル払いができる旨を追記した就業規則を 労働基準監督署へ届け出る必要があります。 (従業員数10名未満は届出不要) 3 労使協定の締結 労使協定に記載をしなければならない項目は以下になります。 ・対象となる従業員の範囲 ・対象となる給与(賃金)の範囲 ・取扱指定資金移動業者の範囲 ・実施開始時期 給与を銀行振込するために すでに労使協定を締結している企業でも、 デジタル払いに関する内容を追記して 締結をしなおす必要があります。 4 個別同意の取得 デジタル払いは企業による 一方的な実施はできず、従業員の同意が必要です。 法令では書面での同意までは必要とされていませんが、 口頭での同意ではトラブル発生時に リスクが高くなることが予想されます。 同意を取得していることが客観的にわかるよう、 書面または電磁的記録を用いて残してください。 またデジタル払いにかかわる 留意事項(資金移動業者口座の取扱い、換金など)の 説明を行い、本人が理解したうえで 同意を取得するようにしてください。 同意書のひな形、留意事項については厚生労働省サイトに様式例がありますので参考にしてください。 参考・ダウンロード | 厚生労働省『資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書(参考例)』(留意事項は2ページ目にあります) 運用にあたっての注意点 デジタル払いを導入するときは デジタル払い以外に銀行口座(証券取引口座含む)も 選択できるようにしておかなければなりません。 デジタル払い以外が現金支給のみの選択は デジタル払いの強制にあたるため認められていません。 【例】給与の支払い方法 OK:デジタル払い、銀行口座振込、現金から選択 NG:デジタル払い、現金から選択 デジタル払いができる資金移動業者は 厚生労働省サイトの「指定資金移動業者一覧」で アップされる予定です。 指定の受付が2023年4月1日からのため、2023年2月15日現時点ではアップされていません。 (出典)厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について』 デジタル払いについてよくある質問についても厚生労働省サイトにアップされていますので参考にしてください。 (出典)厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について 3.よくあるご質問への回答(労働者、使用者向け)』 まとめ 給与のデジタル払いはまったく新しい制度で、 まだ資金移動業者も決まっていません。 しかし従業員の給与の受け取り方の選択肢や利便性は広がります。 メリット・デメリットはありますが、 導入を検討されているのであれば 制度設計、事務処理、管理などを見直し、 総合的な判断をされることをおすすめします。

  • 出産手当金の基礎知識。(「出産手当金支給申請書」書き方ガイド付)

    従業員の出産に伴い、企業にはさまざまな手続や対応が求められます。 健康保険にも数々の給付がありますが、その一つに出産手当金があります。 今回の記事は、協会けんぽの出産手当金の制度概要や手続きの流れについて説明します。 出産手当金とは 出産手当金とは、健康保険の被保険者である従業員が 出産のために仕事を休み、そのあいだに給与の支払いを 受けられない場合に生活保障として受けることができるお金です。 出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日) 以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの 休んだ期間、出産手当金が支給されます。 出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。 なお、出産日は産前期間に含まれます。 (出典)協会けんぽ『協会けんぽ GUIDE BOOK』P51 出産手当金の支給条件と支給額の計算方法 出産手当金の支給条件や支給額の計算方法を説明します。 【支給条件】 以下のすべての条件を満たす場合は、出産手当金が支給されます。 (出典)協会けんぽ『健康保険 出産手当金支給申請書 記入の手引き』 【1日あたりの支給額の計算方法】 出産手当金の支給額は、支給開始日を含んだ月以前の 継続した12か月間の標準報酬月額をもとに、1日あたりの金額を計算します。 1日あたりの支給額の計算には、以下のようなパターンがあります。 例1 支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額がすべて同じだった場合 ① 28万円 ÷ 30日 = 9,333.333 ≒ 9,330円(1の位を四捨五入) ② 9,330円 × 2/3 =6,220円 1日あたりの支給額:6,220円 例2 支給開始日以前の12か月間で標準報酬月額が変更している場合の1日あたりの支給額 ①(26万円 × 5か月 + 28万円 × 7か月)÷ 12か月 ÷ 30日 = 9,055.555円 ≒ 9,060円 ② 9,060円× 2/3 = 6,040円 1日あたりの支給額:6,040円 例3 支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合 入社まもない従業員など、支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たないときは、次の(A)と(B)を比べていずれか低い方の標準報酬月額を使用して計算します。 (A)支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額を平均した額 28万円 × 7か月 ÷ 7 = 28万円 (B)当該年度の前年度9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額を平均した額 30万円(2022年度の9月30日時点における全被保険者の標準報酬月額の平均額) ※年度により平均額が変更となりますので、協会けんぽのサイトにて確認ください。 (A)と(B)を比べて低い方の標準報酬月額を計算に使用→28万円 ① 28万円 ÷ 30日 = 9,333.333 ≒ 9,330円(1の位を四捨五入) ② 9,330円 × 2/3 =6,220円 1日あたりの支給額:6,220円 出産手当金の申請手続の流れ 1 従業員の出産予定日と産後休業期間を確認する 従業員に出産予定日を聞いて、産前産後休業期間を計算します。 法令で定められた産前産後休業は、産前42日(6週間)から産後56日(8週間)です。 【例】 出産予定日:2023年10月4日 産前休業期間:8月24日~10月4日 産後休業期間:10月5日~11月29日 産前産後休業期間の確認は、以下のサイトをご活用ください。 参考 | 厚生労働省『産休・育休はいつから?産前・産後休業、育児休業の自動計算』 産前休業は従業員の申出により開始されます。 体調がよければ出産日近くまで働くことを希望する従業員もいます。 また、母子の健康状態によっては主治医から法令等の基準よりも 早めに休業に入るよう指示を受ける場合があり、 そのときは指示に従い産前休業を取得させる必要があります。 産前産後休業申請書など、書面(任意書式)で提出してもらうと聞き間違いなどを防止できるためおすすめです。 参考・ダウンロード | 産前・産後休業申請書 2 出産手当金の申請書を準備する 「出産手当金支給申請書」は3枚で1セットです。 産後休業終了1週間前までに、従業員へ「健康保険出産手当金申請書」の1 枚目(被保険者記入用)、2枚目(被保険者・医師・助産師記入用)を渡します。 申請書2枚目は医師・助産師の証明が必要になるため 従業員が医療機関に持参し、医師等に記入してもらいます。 出産手当金を産前分で申請をするときは、「よくある質問 3 出産手当金の分割申請」をご覧ください。 3 出産日を確認し、申請書を作成する 従業員から出産の連絡を受けたら、出産日を確認し、産後休業期間を確定させます。 そして、2で渡した「健康保険出産手当金申請書」2枚を 従業員から受け取り、3枚目(事業主記入用)を作成し申請書を完成させます。 4 協会けんぽに申請する 「健康保険出産手当金申請書」の3枚すべての記入ができたら、以下の方法で申請します。 申請期限:出産のため働くことができなかった日ごとにその翌日から2年以内 申請先:協会けんぽ 申請方法:郵送 企業控が必要なときは、コピー1部と切手を貼った 返信用封筒を同封しておきます。 窓口でも受付をしていますが、時期によっては混雑することがあるため 郵送での手続をおすすめします。 5 支給開始 申請してから支給決定までは、約1〜2か月かかります。 支給決定がされたら、従業員本人の自宅に通知書が届き、 支給決定から1週間以内には従業員の振込口座に出産手当金が振り込まれます。 ただし、年末年始などの混み合う時期は遅れる可能性があるため注意が必要です。 よくある質問 出産手当金の申請のときに、企業や従業員が悩むポイントを3つご紹介します。 1 退職後の継続給付 退職後であっても、以下3つの要件をすべて満たす場合は、出産手当金の支給を受けることができます。 ①被保険者の資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間がある ただし「継続して1年以上」の被保険者期間に、任意継続被保険者であった期間は含みませんのでご注意ください。 ②被保険者の資格喪失日の前日(退職日)が、出産手当金の支給期間内である 出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までに退職していれば、退職後の継続給付の対象になります。 ③被保険者の資格喪失日の前日(退職日)に働いていないこと 退職日当日に働いていた場合は、退職後の継続給付を受けることはできません。つまり退職日当日は、欠勤や有給休暇などで仕事を休んでいれば、継続給付の対象になります。 参考 | 協会けんぽ『協会けんぽ GUIDE BOOK』P51 2 傷病手当金との調整 妊娠時の体調には個人差があり、母子の健康状態により主治医から 法令等の基準よりも早めに休業に入るよう指示を受ける場合があります。 産前休業前に休業するときは、傷病手当金が申請できます。 ただし、傷病手当金と出産手当金は併給できず、出産手当金が優先して支給されます。 出産手当金の額が傷病手当金の額よりも少ない場合には 傷病手当金を申請することにより、出産手当金との差額が支給されます。 3 出産手当金の分割申請 出産手当金は、産前分、産後分など複数回に分けて申請できます。 ただし、事業主の証明欄については、申請ごとに証明が必要です。 なお、1回目の申請が出産後、かつ申請書2枚目の 「医師・助産師の証明」により出産日などが確認できるときは、 2回目以降の申請で「医師・助産師の証明」を省略することができます。 協会けんぽの「出産手当金支給申請書」の書き方 2023年1月より、協会けんぽの17の各種申請書(届出書)が変更となり、 出産手当金についても新様式が発表されています。 出産手当金支給申請書は、旧様式と比べてさまざまな箇所が変更となっています。 新様式に対応した「出産手当金支給申請書の書き方ガイド」を活用し、スムーズな手続を行ってください。 参考・ダウンロード|『健康保険 出産手当金支給申請書 書き方ガイド』 なお、旧様式での申請も可能ですが、新様式を使用したときと比べて 事務処理等に時間を要することがあるため、新様式での申請をおすすめします。 まとめ 出産に伴う手続や対応は多岐に渡りますが、出産手当金は 手続きの流れをおさえれば難しいものではありません。 今まで出産手当金の手続がなかった企業や男性従業員のみの企業でも、 女性従業員を雇用した際は、手続の可能性が出てきます。 この記事や書き方ガイドを活用いただき、日々の業務にお役立てください。

  • 2023年4月、中小企業も月60時間超の時間外労働の割増賃金率が引き上げになります。

    2010年4月の改正労働基準法により、 1か月60時間超の時間外労働の割増賃金率は 25%から50%に引き上げられました。 ただし、割増賃金の引き上げが適用となったのは大企業のみで 中小企業は2023年3月31日まで適用が猶予されています。 この猶予措置の期間が終了し、2023年4月1日以降からは 中小企業でも割増賃金の引き上げが適用されます。 (出典)厚生労働省『月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます』 猶予措置が終了する中小企業 猶予措置が終了する中小企業は、以下の①②のいずれかを満たす企業です。 事業所単位ではなく企業単位で判断します。 (出典)厚生労働省『月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます』 時間外労働が1か月60時間を超えたときの企業対応 1か月60時間超の対象となる時間外労働とは 原則1日8時間、週40時間を超えた労働時間です。 法定休日に働いた労働時間は、1か月60時間に含めません。 「猶予措置が終了する中小企業」に該当する企業では 従業員の時間外労働を1か月の起算日から累計して 60時間に達した時点より後に行われた時間外労働に対して いずれかの対応が必要です。 1 割増賃金率を50%以上へ引き上げる 60時間に達した時点より後に行われた時間外労働分から 割増賃金率50%以上の残業代を支払います。 【計算例】1か月70時間の時間外労働の残業代 (1か月の所定労働時間160時間、月給32万円の従業員) 〈2023年3月31日まで〉 32万円÷160時間=2,000円(時間単価) 70時間×2,000円×125%=175,000円 残業代合計 175,000円の支払 〈2023年4月1日以降〉 32万円÷160時間=2,000円(時間単価) 60時間までの残業 :60時間×2,000円×125%=150,000円 60時間を超えた残業:10時間×2,000円×150%=30,000円 残業代合計 180,000円の支払 2 代替休暇制度を設定する 代替休暇制度とは、1か月60時間を超え 25%から50%以上に引き上げられた割増賃金の代わりに 有給の休暇を付与する制度です。 労使協定の締結が必要です。 代替休暇制度を検討する場合は、以下パンフレットの2ページ以降を参考にしてください。 参考|福井労働局『令和5年4月1日から中小企業(※)も 時間外労働の割増賃金率を引き上げる必要があります!』 2023年4月以降、考えられる割増賃金率パターン 法令で定められている労働時間の限度時間は 原則1日8時間、週40時間です。 企業が原則の限度時間を超えての 労働や休日労働を従業員に命じるときは 事前に届出している36協定で定めた 時間外・休日労働の範囲内で労働させることができます。 2023年4月1日以降の割増賃金率は以下のとおりです。 上記の割増賃金率が複雑に組み合わさる計算例をご紹介します。 【計算例】1か月70時間の時間外労働、 うち5時間は60時間を超えて深夜勤務をした残業代 1か月所定労働時間160時間、月給32万円の従業員) 〈2023年4月1日以降〉 32万円÷160時間=2,000円(時間単価) 60時間までの残業 :60時間×2,000円×125%=150,000円 60時間を超えた残業:5時間×2,000円×150%=15,000円 60時間を超えた深夜残業:5時間×2,000円×175%=17,500円 残業代合計 182,500円 給与を正しく計算するために 割増賃金率の引き上げの対象となる時間外労働を 労働時間から正しく抽出する必要があります。 1か月60時間の労働時間管理の起算日は 1か月の起算日は、就業規則で定めることにより 「毎月1日」「賃金計算期間の初日」 「36協定における一定期間の起算日」などの設定ができます。 なお、就業規則で1か月の起算日の定めがない場合には 賃金計算期間の初日を起算として取扱います。 基本給の賃金計算期間と割増賃金の 賃金計算期間が異なる場合は、 割増賃金の計算期間の初日を起算日として差し支えありません。 施行日をまたぐ1か月の60時間はどうカウントするのか 賃金計算期間は末日締めばかりではありません。 15日締めや20日締めなど企業によってさまざまです。 そのため、賃金計算期間が 2023年4月1日の施行日をまたぐ中小企業も出てきます。 施行日をまたぐ1か月については 2023年4月1日から時間外労働を累積し 60時間を超えるか確認します。 たとえば、賃金計算期間が毎月21日から20日である場合 2023年4月1日から2023年4月20日までの時間外労働が 60時間を超えた部分について50%の割増賃金を支払います。 2023年4月までに企業が行うこと 1 現状の時間外労働の実態把握をする 割増賃金率の引き上げは、長時間労働の抑制、 従業員の健康の保持、労働環境の整備などの 課題の解消のために行われています。 時間外労働の実態を把握し 業務内容や工程に発生する ムリ・ムダ・ムラがないかの見直しと 時間外労働になっている要因の 洗い出しや残業抑制のための 業務改善を検討ください。 2 就業規則を改定する 就業規則(賃金規程)では 賃金の計算方法や支払方法に関する事項を定めています。 割増賃金率の変更に伴い、料率の変更を行ってください。 【記載例】 3 労働条件通知書や雇用契約書を変更する 労働条件通知書や雇用契約書には 賃金の計算方法や支払方法に関する事項があります。 割増賃金率の変更のためだけに 労働条件通知書等を作成する必要はありません。 2023年4月1日以降に締結する労働契約より 労働条件通知書や雇用契約書の割増賃金率が 正しく明示されるように対応ください。 【記載例】 4 勤怠システムの設定を変更する 適正な時間管理のため、 1か月60時間超の対象となる時間外労働を 実労働時間から正しく抽出する必要があります。 勤怠管理システムを利用しているときは 60時間超の時間外労働が集計され、 設定項目に反映されるか確認ください。 勤怠システムによっては時間外労働のアラート機能もあります。 長時間労働者を自動検知したアラートが出せれば 企業や部署内の残業抑制の指導や 人員配置の見直しにも役立ちます。 5 給与計算ソフトの設定を変更する 給与計算が複雑化し、給与計算ミスや 給与計算工数が増加するリスクも考えられます。 給与計算ソフトを利用しているときは、 1か月60時間超の割増率が初期値で設定されているものは少ないため 対象となる給与計算前に割増賃金率の設定を変更してください。 計算された残業代が給与明細へ正しく反映されるかも確認ください。 まとめ 2023年4月1日以降、中小企業も60時間超の割増賃金率が50%になります。 時間外労働は、事前に届出している36協定で定めた 時間外・休日労働の範囲内で労働させられます。 現在、1か月の時間外労働の上限を 60時間を超えて設定している企業は 割増賃金率の対応が必要になります。 計算例にもあるように、残業代がアップすることになり 企業の経済的負担も大きくなります。 1か月の時間外労働を60時間以下に設定すると 割増賃金率は今までどおり25%となるため、 複雑な労働時間管理や給与計算をする必要はなくなります。 長時間労働の見直しを行う機会にもなりますので 後回しにせず、早めに準備をすすめてください。

  • 従業員代表者の選任方法と、不適切な選任によるリスク。

    従業員代表者とは、法令等上での「従業員の過半数を代表する者」を指します。 労使協定の締結は、原則として労働者の過半数で組織する労働組合と締結しますが、その労働組合がないときに選出するのが従業員代表者です。 法令で定められた方法で選出しなければ企業にリスクが生じるため、労務担当者は正しい知識を持っておく必要があります。 ●従業員代表者の役割 従業員代表者は、労働組合がない企業の従業員の意見を取りまとめる役割です。 就業規則を作成・変更したときに労働基準監督署へ届出時に添付する「意見書」への意見の記載なども行います。 労使の集団的合意が必要なときは、従業員代表者と企業が話し合いを行い、署名または記名・押印をして労使協定を締結します。 法令等上で締結する労使協定は様々(※)ですが、よく知られているのは「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」です。 ※企業と従業員代表者が締結する労使協定等の種類 ・時間外労働・休日労働に関する協定(36協定) ・就業規則の意見書 ・年次有給休暇の計画的付与 ・賃金控除 ・育児・介護休業の適用除外 ・一斉休憩の適用除外 など ●従業員代表者になれる人 従業員代表者は、正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、事業場の全従業員の過半数の支持を受ける従業員から選出されます。 管理監督者や使用者が一方的に選出した従業員は、選出対象にはなれません。 従業員代表者は「事業場単位」での選任が必要です。 事業場とは、工場、鉱山、事務所、店舗等の一定の場所において密接に関連する組織のもとに継続的に行なわれる作業の一体をいいます。 原則として、同一場所にあるものは一つの事業場、場所的に分散しているものは別の事業場と考えられます。 しかし工場内の診療所や食堂など、同じ場所にあっても労働の状態や業態が大きく異なっているときは、別の事業場となります。 また別の場所にあっても、規模が小さいときや一つの事業場としての独立性がないときは、組織的な関連や事務能力などを勘案し、直近上位の事業場とまとめて一つの事業場として扱います。 ●従業員代表者の選出方法 従業員代表者の選出方法には法令等上の定めがあり、労使協定に規定する内容を明確にして選出をしなければなりません。 そのうえで、従業員の話し合いや選挙による投票、持ち回りなど、従業員の過半数から支持されていることが明確な、民主的な方法で選出を行ってください。 使用者が「従業員代表者は〇〇さんで進めてほしい」など選出に意見を述べたり、使用者の意向に沿って選出されたときは、適切に選出されていないと判断されます。 使用者は選任された従業員代表者がスムーズに役割を遂行できるよう、社内のインターネットの使用や事務機器の貸与、事務スペースの提供などの配慮を行う必要があります。 また従業員代表者になろうとした者、従業員代表者として正当な行為をした者に対し、賃金の減額や降格などの不利益な取扱いをしてはいけません。 ●適正に従業員代表者が選出されていないときのリスク 労使協定が適正に締結されることにより、企業は法令等違反についての罰則を免除されます。 労使協定が適正に締結されていないと評価されるケースの多くが、「適正に労働者代表者が選出されていない」です。 つまり、適正に従業員代表者を選出しないこと自体についての罰則はありませんが、適正に従業員代表者を選出していなければ労使協定が無効となり、結果として企業は何らかの罰則を受ける結果になってしまいます。 なお、労使協定を締結できる内容は無制限ではありません。 労使協定の締結によって法令上の制限をなくすことができる事項は、法令等で定められたものに限られます。 【例】36協定が無効になったとき 労働基準法違反:罰則6か月以下の懲役または30万円以下の罰金 労働基準法上、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えての労働(時間外労働)や、休日労働(法定休日労働)はできないと定められており、違反すると上記の罰則が適用される可能性があります。 しかし36協定(労使協定)を締結すれば、法定労働時間を超えて労働させたとしても罰則の適用が免除されます。 しかし締結時の従業員代表者の選出が不適切であったと判断されたり、限度時間(月45時間、年間360時間)を超える36協定は無効となり、罰則が適用されます。 ※36協定は労使協定を締結後、管轄の労働基準監督署へ届出が必要です。 ●従業員代表者と締結した労使協定の効力はどこまであるのか 労使協定の効力は「免罰効果」に留まります。 免罰効果とは、法令違反があったとしても「罰則は適用しない」ということです。 36協定を締結したからといって、当たり前のように残業命令ができるわけではありません。実際に残業命令をするためには、個別の契約で同意をとるか、就業規則に「労使協定に定めた範囲内の時間で残業をさせることがある」などの定めを設ける必要があります。 まとめ 労働組合がない企業にとって、従業員代表者の選出は労使協定を締結するうえで必要です。そのため、企業が優位に労使協定を結べるように、従業員代表者を指名して選出しているケースが見受けられます。 しかし労使協定は従業員の労働環境に影響を及ぼす大切な約束です。従業員が安心して働ける職場づくりのためにも、従業員代表者を適正に選出し、従業員側からの意見を反映できるようにされることをおすすめします。

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