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  • 協会けんぽから令和6年度の健康保険料率が公表されました。

    協会けんぽから、令和6年度の都道府県単位健康保険料率が発表されました。 令和6年度の健康保険料率は神奈川県を除く46都道府県で変更が発生し、引下げが 22都道県、引上げが24府県となっています。 介護保険料率は、全国一律で令和5年度の1.82%から0.22%引下げとなり、令和6年度は 1.60%となります。 令和6年3月分(4月納付分)から適用されます。 (引用)|協会けんぽ『令和6年度都道府県単位保険料率』 健康保険料の額とは 健康保険料の額は、次の計算式で求めます。 従業員が40歳から64歳までの場合は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料を支払います。 上記で求めた保険料額を企業と従業員で折半します。 【標準報酬月額】 標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするために報酬月額の区分ごとに設定 されている、基準となる金額をいいます。 現在、58,000円(第1級)から1,390,000円(第50級)までの全50等級に区分されています。 標準報酬月額の決定方法は、下記の5種類です。 ・資格取得時決定 ・定時決定 ・随時改定 ・育児休業等を終了したときの改定 ・産前産後休業を終了したときの改定 【標準賞与額】 標準賞与額とは、賞与にかかる保険料を計算するときの元となる金額で、賞与の支給総額 から1,000円未満を切り捨てて算出します。 標準賞与の対象となる賞与は、名称に関係なく従業員に対して労働の対象として支払う 年3回以下のものをいいます。 標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日)における 累計額573万円です。 【端数処理について】 従業員負担分に端数が生じた場合は端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は 切り上げて1円とします。 (例) 12,345.50円 ⇒ 12,345円を控除 12,345.51円 ⇒ 12,346円を控除 ただし、企業と従業員のあいだで「端数は企業負担とする」などの特約がある場合は、 特約に基づき端数処理ができます。 都道府県単位の保険料率とは 協会けんぽの健康保険料は、各都道府県により保険料率が異なります。各都道府県の 保険料率は、地域の加入者の医療費に基づいて算出されており、都道府県ごとに必要な 医療費(支出)が異なるため、保険料率に差が生じます。 つまり、疾病予防などの取り組みにより都道府県の医療費が下がれば、その分都道府県の 保険料率も下がることになります。 保険料率は毎年度改定され、都道府県によって「引上げ」「据え置き」「引下げ」に分かれます。医療費を下げる取り組みが、保険料の負担を左右するのです。 なお、健康保険組合では各組合によって保険料率が定められているため、都道府県単位の 保険料率が適用されているのは協会けんぽのみです。 下記のサイトより、各都道府県の保険料率を反映した保険料額表が公開されています。 参考|協会けんぽ『令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)』 保険料の納付手続と納付期日 企業は、企業負担分と従業員負担分をあわせた保険料を協会けんぽに納付する義務が あります。 この場合、従業員が負担する分については、企業は従業員に支払う給与や賞与から保険料を 控除できます。 従業員の負担する保険料を給与や賞与から控除したときは、給与明細などに記載し従業員に 通知しなければなりません。 【納付期日と納付方法】 納付期日:翌月の末日 納付方法:銀行・郵便局等金融機関窓口、口座振替、電子納付(Pay-easy) 納付日までに納付を行わない場合、期限を指定した督促状が送られてきます。 督促状の期限までに納めないと、延滞金が課され、財産差押えなどの滞納処分を受けること にもなります。 まとめ 協会けんぽの健康保険料率は、都道府県によって異なります。給与計算ソフトなどを 導入している場合は、3月分の保険料を徴収する給与計算が始まる前に、令和6年度の 健康保険料率に置き換える処理を行う必要があります。 また、3月に賞与を支給する場合は、令和6年度の健康保険料率で保険料を算出する必要が あります。 各都道府県の健康保険料率を確認し、正しい健康保険料率で従業員から保険料の徴収を行ってください。

  • 2024年4月以降の法改正で、労務担当者がおさえておくべきもの

    2024年にはさまざまな労務関連の法改正が行われます。 企業は改正内容に合わせて、手続の見直しなどの準備をする必要があります。 この記事では、2024年の法改正のうち労務担当者がおさえておきたい改正を選び、 概要をまとめています。 労働基準法 1 労働条件明示事項の追加 2024年4月1日から、企業と従業員との労働契約の締結時や更新時に、法令等上明示 しなければならない労働条件が追加されます。 追加される項目は以下の3点です。 【追加される労働条件明示事項】 (出典)厚生労働省『2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?』 ①就業場所・業務の変更の範囲 正社員か否かを問わず、すべての労働者に対して、これまで明示していた雇入れ直後の 就業場所・業務内容に加え、将来的に人事異動や配置転換で変更の可能性のある就業場所 および業務内容の変更の範囲について、書面での明示が必要になります。 ②更新上限の有無と内容 有期契約労働者との労働契約の締結時と更新時に、有期労働契約の通算期間または有期労働 契約を更新できる回数に上限がある場合については、その内容の書面での明示が必要に なります。 また、更新の上限を新たに設けたり短くする場合には、書面に記載する必要はありませんが、従業員にその理由を説明する必要があります。 ③無期転換申込機会・無期転換後の労働条件 有期契約労働者に対して、無期転換申込権が発生する契約更新のたびに、希望をすれば 無期労働契約へ変更できる旨について明示し、無期労働契約へ変更した後の労働条件に ついても明示する必要があります。 以上の追加された項目は従業員が将来の見通しを立てるために重要なものです。 従業員に労働条件をしっかりと理解してもらえるよう詳細に説明をしてください。 また、これらの変更に合わせて、求人を募集する段階の明示事項にも、以下の3項目が 追加されています。あわせて求人票や募集要項の内容も変更することをおすすめします。 ①業務内容の変更の範囲 ②就業場所の変更の範囲 ③有期労働契約を更新する場合の基準 (有期労働契約の通算期間または更新回数の上限を含む) 2 建設業や自動車運転業務、医師などの時間外労働の上限規制 2019年4月(中小企業は2020年4月)より、働き方改革の一環として、長時間労働の解消 などによる労働環境の改善を目指した「時間外労働の上限規制」が施行されています。 これまで、建設業や自動車運転業務、医師などについては、時間外労働の上限規制の適用が 5年間猶予されてきました。 しかし、2024年4月1日以降、これらの事業・業種についても時間外労働の上限規制が適用 されます。(一部、今後も原則と異なる取扱いもあります。) 今後は原則、月45時間、年360時間が時間外労働の上限となります。 (1年単位の変形労働時間を導入の場合、月42時間、年320時間) 臨時的な特別な事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結・届出することで、 月45時間、年360時間を超えて従業員を労働させることができます。この特別条項についても以下のような上限が設けられています。 ・時間外労働が年720時間以内 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度 ・時間外労働と休日労働の合計は、2か月~6か月までを平均してすべてひと月あたり 80時間以内 (出典)厚生労働省『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』P4 3 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準 タクシーおよびハイヤー、トラック、バスの自動車運転者の時間外労働の上限規制が 適用されることを踏まえ、拘束時間や勤務間に確保しなければならない休息時間 (勤務間インターバル)および運転時間についての基準が設けられます。 これは労働監督行政上の指導指針となっているため、この基準を超えたとしてもすぐに 罰則が課せられるということにはなりませんが、指導の対象にはなります。 基準については、タクシーおよびハイヤーと、トラック、バスで分かれているので、 それぞれ以下の資料を参考にしてください。 参考|厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』 参考|厚生労働省『トラック運転者の改善基準告示が改正されます!』 参考|厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』 4 裁量労働制の見直し 2024年4月1日から、新たに、または継続して裁量労働制を導入するために必要な手続が 変わります。 裁量労働制とは、一定の業種に就く労働者については、業務の進め方や方法、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要があるとしてあらかじめ労使協定で定めた時間数の労働を したものとする制度です。 裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。 今回はそれぞれで改正が行われ、裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年3月末まで)に労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要が出てきます。 参考|厚生労働省『裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です』 【専門業務型裁量労働制の改正点】 ①対象業務の追加 「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく 合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)」が 追加され、対象業務が20種類になります。 ②労使協定の記載事項の追加 導入・継続にあたり締結する労使協定に、以下の事項が追加されます。 ・労働者本人の同意を得なければならないこと ・労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと ・制度の適用に関する同意の撤回の手続 ・同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を保存すること ③健康・福祉確保措置の強化 健康・福祉確保措置として以下の表の①〜③、⑤の措置が追加されました。 健康・福祉確保措置は、以下のいずれかを選択し、1、2から1つずつ以上実施することが 望ましいとされます。 把握した適用労働者の勤務状況およびその健康状態を踏まえ、③の措置を実施することが 労働者の健康確保をはかる上で望ましいとされます。 (出典)厚生労働省『専門業務型裁量労働制について』P3 【企画業務型裁量労働制の改正点】 ①労使委員会の決議事項の追加 労使委員会の決議事項に、以下の事項が追加されます。 ・制度の適用に関する同意の撤回の手続 ・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更の内容の 説明を行うこと ・同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を保存すること ②労使委員会の運営規程の記載事項の追加 労使委員会の運営規定に定める事項に、以下の事項が追加されます。 ・対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に 対する説明に関する事項 ・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項 ・開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること ③定期報告の頻度の変更 初回は6か月以内に1回、その後1年以内ごとに1回に変更 ④健康・福祉確保措置の強化 健康・福祉確保措置として以下の表の①~③、⑤の措置が追加されました。 健康・福祉確保措置は、以下のいずれかを選択し、実施することが適切であり、1、2から 1つずつ以上実施することが望ましいとされます。 このうち特に、把握した適用労働者の勤務状況およびその健康状態を踏まえ、③の措置を 実施することが労働者の健康確保をはかる上で望ましいとされます。 (出典)厚生労働省『企画業務型裁量労働制について』P2 厚生年金保険法・健康保険法 2024年10月1日から、パート・アルバイトをはじめとした短時間労働者に対する社会保険の 適用が拡大され、適用対象となる事業所の規模が「被保険者数51人以上」となります。 適用対象となる事業所のことを「特定適用事業所」といい、特定適用事業所に勤務する 従業員のうち、以下の加入要件すべてを満たす短時間労働者も社会保険に加入することに なります。 短時間労働者の中には、配偶者の扶養の範囲内で勤務時間を調整するなど、家庭との バランスを考慮しながら働く従業員もいます。 そのため、2024年10月からの適用拡大により新たに社会保険に加入する可能性のある 従業員には、あらかじめ労働条件や社会保険の加入について十分に説明しておく必要が あります。 障害者雇用促進法 1 短時間労働者である障害者の実雇用率における算定の特例 2024年4月1日から、障害者の法定雇用率の算定の対象となる障害をもつ従業員について、 週の所定労働時間がとくに短い週10時間以上20時間未満の短時間労働者も対象になります。 週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を雇用した 場合は、1人をもって0.5人とカウントします。 2 障害者の法定雇用率の引上げ 2024年4月1日から、民間企業における障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%へ引き上げ られ、40人以上の従業員がいる企業は少なくとも1人の障害者を雇わなければなりません。 さらに2026年7月には法定雇用率が2.7%に上がり、37.5人以上の従業員がいる企業に拡大 される予定です。 ※支店や営業所など事業所が複数あるときでも、企業(事業主)全体を一単位とします。 対象となる企業に該当する場合、障害者の雇用だけでなく、以下の義務も対象になります。 ・障害者雇用状況のハローワークへの報告(毎年6月1日時点) ・障害者雇用推進者の選任(努力義務) おわりに 今回の記事で紹介した以外にも、2024年にはさまざまな改正が行われます。 たとえば障害者差別解消法が改正され、民間企業にも障害者に対して合理的な配慮を提供 することが義務化されました。 改正には事前に準備を行う必要があるものもありますので、あらかじめ対応することをおすすめします。

  • フレックスタイム制の実務対応(運用のポイント)

    今回の記事では、フレックスタイム制の労働時間の考え方、さまざまな場面での対応方法 など、実務対応を中心に解説します。 なお、フレックスタイム制の仕組みや導入方法については、前回の記事をご確認ください。 前回の記事『フレックスタイム制の基礎知識。(仕組みと導入のポイント)』 フレックスタイム制における労働時間 フレックスタイム制が適用されている従業員は、設定された総労働時間分の労働を しなければなりません。 総労働時間とは、清算期間における所定労働時間で、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で 設定します。 フレックスタイム制における時間外労働の考え方 フレックスタイム制において発生する時間外労働には、以下の2種類があります。 1 法定労働時間の総枠を超えた時間外労働 フレックスタイム制では、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が 時間外労働となります。 日々の始業・終業時刻、労働時間は、原則として従業員が自由に決めることができます。(コアタイムなどを除く)そのため、1日の所定労働時間という概念がなく、たとえ1日 8時間を超えてもただちに時間外労働が発生することはありません。 2 清算期間が1か月を超える場合の時間外労働 清算期間は1か月を超えて設定することもできます。繁忙月は労働時間を増やし、そのほか の月は早めに帰宅させるなど、総労働時間の範囲内で労働時間の調整が可能となります。 しかし総労働時間の範囲内であっても、従業員の健康を守るため、極端な長時間労働になる月を設定することはできません。 以下の①②どちらも満たすように労働時間を調整する必要があり、いずれかの時間を超える と時間外労働となります。 (上記1の法定労働時間の総枠を超えた時間も時間外労働となります。) (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P7 フレックスタイム制における休憩、休日、深夜労働 フレックスタイム制が適用されている場合でも、休憩、休日、深夜労働については通常の 勤務と同じく労働基準法の規定が適用されます。 1 休憩 ・労働時間が6時間を超える場合:少なくとも45分 ・労働時間が8時間を超える場合:少なくとも1時間 原則として、休憩は一斉に与えなければならないため、コアタイムの時間帯に休憩を与え ます。(適用対象外の事業を除く) ただし、労使協定の締結により、休憩する時間帯を従業員にゆだねることもできます。 2 休日 法定休日として、少なくとも週に1回または4週を通じ4日以上の休日を与えなければなり ません。 法定休日に労働した時間は、総労働時間や時間外労働とは分けて取扱います。 そして、35%以上の割増率で計算した割増賃金の支払が必要です。 3 深夜労働 22時〜翌日午前5時の深夜時間に労働した場合、25%以上の割増率で計算した割増賃金の 支払が必要です。 従業員の深夜労働ができるだけ発生しないよう、深夜時間を避けたフレキシブルタイムを 設定する企業も見受けられます。(例:7時~22時など) 給与計算の流れ フレックスタイム制における給与計算の流れを解説します。 1 勤怠情報の集計 実労働時間を集計するとともに、時間外労働や休日労働、深夜労働の時間数を確認します。 とくに、清算期間が1か月を超える場合の時間外労働の集計は煩雑です。 上述「フレックスタイム制における時間外労働」や以下の図を参考にしながら正しく 集計してください。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P16 2 実労働時間と総労働時間の過不足による清算 清算期間における「実労働時間」と「総労働時間」をくらべて過不足があった場合、 以下のように対応します。 【実労働時間が総労働時間を超えた場合】 ①「法定労働時間の総枠を超えた時間」は、時間外労働として割増賃金を支払います。 ②「総労働時間を超えているが法定労働時間の総枠は超えていない時間」は、法定内残業 となります。 法定内残業は通常の賃金の支払が必要ですが、割増賃金の支払は不要です。 ただし、就業規則等に法定内残業も割増賃金を支払う定めがある場合は規定に従います。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P13 【実労働時間が総労働時間より少なかった場合】 以下のいずれかの方法により対応します。どちらの方法を採用するかは企業の任意ですが、 その都度対応が変わることのないよう、あらかじめ労使協定や就業規則等に対応方法を 定めておくことをおすすめします。 ①不足した実労働時間分を賃金から控除する ②不足した実労働時間分を翌月に労働させる(翌月の総労働時間に加算)(※) ※ただし「翌月の総労働時間+加算した時間」が法定労働時間の総枠内であること (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P5 3 賃金の計算 基本給や諸手当、および上記1、2で算出した時間外労働や休日労働、深夜労働による 割増賃金などを計算します。 以下は、時間外労働と法定内残業が発生したときの計算例です。 【シーン別】このようなときどう対応するか フレックスタイム制を運用するなかでは、判断に迷う状況が発生することもあるはずです。ここからは、よくある質問のなかからシーン別に対応方法を解説します。 1 遅刻・早退、欠勤したとき ①遅刻・早退 コアタイムを設定していない企業では、遅刻・早退の概念がないため発生しません。 一方、コアタイムが設定されている場合、設定された時間帯のうち労働できなかった 時間は、遅刻や早退扱いとなります。 ただし、フレックスタイム制の場合、遅刻・早退が発生しても、清算期間内の実労働時間が 総労働時間を満たしている場合、賃金控除はできないため注意が必要です。 ②欠勤 欠勤の場合、出勤すべき日に勤務をしなかったときは欠勤扱いになります。 ただし、遅刻・早退と同様、清算期間内の実労働時間が総労働時間を満たしている場合は 賃金控除はできません。 【不足時間の対応】 遅刻・早退、欠勤により実労働時間が総労働時間に満たなかった場合、企業で定めたルール に従って不足時間の対応をします。 詳しくは、上述「給与計算の流れ」の「2 実労働時間と総労働時間の過不足による清算」 を参考にしてください。 【遅刻などを繰り返す従業員への対応】 遅刻・早退や欠勤を繰り返す従業員に対して何らかの措置を取りたい場合、以下のような 対応が考えられます。 2 清算期間の途中に入社・退職があるとき ①清算期間が1か月を超える場合 以下の期間の実労働時間を平均し、週40時間を超えると時間外労働となり、割増賃金を 支払います。 ・途中入社:入社日~清算期間の末日 ・途中退職:清算期間の起算日~退職日 ②清算期間が1か月以内の場合 法令等による明確な定めはありませんが、実務上、以下のいずれかの対応が考えられます。 ・入社日または退職日を含む清算期間中はフレックスタイム制を適用せず、通常の労働 時間制とする ・上記①の「清算期間が1か月を超える場合」の対応を準用し、週の平均労働時間が40時間 を超えた時間に対し割増賃金を支払う なお、①②ともに、清算期間の途中の入社・退職における対応については、労使協定に定 めておくことをおすすめします。 3 清算期間の途中に産前産後休業や育児休業などの開始・終了があるとき 清算期間の途中に、産前産後休業や育児休業、介護休業、休職などの開始日または終了日を 含む場合、上述「2 清算期間の途中に入社・退職があったとき」の対応を準用します。 4 時間管理ができない従業員がいるとき 欠勤や総労働時間の不足を繰り返すなど、怠惰により時間管理ができない従業員にフレックスタイム制を適用し続けることは、企業にとって弊害となることもあります。 労使協定にフレックスタイム制の適用解除を定め、当該従業員を通常の労働時間制にすると いった方法も対策のひとつです。 5 年次有給休暇を取得したとき 年次有給休暇を取得した場合、その日の賃金は、労使協定で定めた「標準となる1日の 労働時間」を働いたものとみなして賃金を計算します。 6 休日労働したとき(法定休日、法定外休日) ①法定休日に労働した場合 法定休日に労働した時間は、総労働時間とは分けて取扱い、35%以上の割増率で計算した 割増賃金の支払が必要です。 ②法定外休日(所定休日)に労働した場合 法定外休日(所定休日)に労働した時間は、総労働時間に含めます。これにより、総労働時間が清算期間における法定労働時間の総枠を超えると時間外労働となり、割増賃金の支払が必要です。 7 会議の出席を命じたいとき コアタイムの時間帯であれば、企業は会議の出席を命じることができます。 一方、コアタイムを設定していない場合や、コアタイムの時間帯以外については、 会議の出席を命じることはできません。従業員に出席を依頼することは可能ですが、強 制することはできないため出席は従業員の任意となります。 8 残業を命じたいとき 始業・終業時刻の決定は従業員にゆだねるため、企業が残業を命じることはできません。 9 パート・アルバイトもフレックスタイム制で働かせたいとき パート・アルバイトでも対象労働者に含めることで、フレックスタイム制を適用させることができます。ただし業務の性質上、パート・アルバイトはシフト制のほうが適していることが多い傾向にあります。業務指示の出しやすさなども考慮しながら適用すべきか判断することをおすすめします。 おわりに フレックスタイム制による柔軟な働き方は、従業員のワークライフバランスを向上させ、 人生をより豊かにすることが期待されます。企業にとっても、優秀な人材確保、生産性の 向上、ひいては企業の発展へと繋がる可能性があります。 フレックスタイム制の効果を最大限に高められるよう、実務担当者は制度を熟知すると ともに、従業員にしっかりと理解を促しながら運用することをおすすめします。

  • フレックスタイム制の基礎知識(仕組みと導入のポイント)

    近年、政府は「働き方改革」を推進し、多様な働き方を選択できる社会の実現を 目指しています。 その一環として、2019年4月にはフレックスタイム制に関する法改正も行われました。 フレックスタイム制は、従業員がプライベートと仕事とのバランスをとりながら働ける 職場環境づくりを実現するために有効な制度です。 今回の記事では、フレックスタイム制の仕組みや導入方法について解説します。 なお、次回の記事は、フレックスタイム制の実務対応や企業が押さえておきたい ポイントを解説します。 フレックスタイム制とは フレックスタイム制は、働く時間を従業員が自由に決められる制度です。 あらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、従業員が自身の都合や業務量などに 合わせながら働くことができます。 そのため、多様な働き方への取り組みとして導入を検討する企業も増えています。 【適している業種・職種】 情報通信業、金融・保険業、学術研究・専門・技術サービス業などで導入が進んでいます。 情報通信業にはエンジニア、プログラマー、WEBデザイナーなど、パソコンがあれば 時間を問わず作業ができる職種が多く、フレックスタイム制の導入率が高くなっています。 また、金融・保険業など女性の比率が比較的高い業種では、仕事と家庭を両立しやすい 環境づくりの一環として導入を進める企業も多くあります。 【休憩、休日、深夜労働について】 フレックスタイム制は、休憩や休日までも従業員が自由に決めることができる制度では ありません。深夜労働も適用されます。 (詳しくは、次回の記事で解説します。) フレックスタイム制の仕組み フレックスタイム制は、従業員に始業・終業時刻の決定をゆだねます。 しかし自由であるがゆえに、企業によっては「ミーティングを設定しづらい」「 夜だけ労働されるとチーム全体の業務に支障をきたす」などの問題が出てきます。 そのため、一定のルールを決めたうえで運用します。 以下は、フレックスタイム制の導入にあたって労使協定で定めるべき項目です。 これらの項目を中心に社内ルールを決定し、企業にとって最適な仕組みを作ることを おすすめします。 1 対象となる従業員の範囲 法令等による対象者の制限はありません。 全従業員を対象としたり、課ごと・職種ごとなど範囲を設定することもできます。 2 清算期間 総労働時間(※)を設定する単位期間を清算期間といいます。 労使協定には起算日と期間の長さを定め、清算期間のサイクルを繰り返して運用します。 なお、清算期間の上限は3か月です。 業務の繁閑などを考慮しながら期間の長さを検討してください。 ※次の「3 総労働時間」を参照 (例) ・月末月初が忙しく、月の半ばは業務量が少ない場合:1か月 ・繁閑のサイクルが四半期ごとの場合:3か月 【清算期間が1か月を超える場合の注意事項】 従業員の健康を守るため、総労働時間(※)の範囲内であっても極端に長時間労働となる 月を設定することはできません。 そのため、以下の①②のどちらも満たすように労働時間を調整する必要があります。 なお、いずれかの時間を超えると時間外労働となります。 ※次の「3 総労働時間」を参照 3 総労働時間 総労働時間とは、清算期間における所定労働時間です。 従業員は設定された総労働時間分の労働をしなければなりません。 総労働時間は、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で設定します。 上記の計算式をもとに算出した、1か月・2か月・3か月単位の清算期間におけるそれぞれの 法定労働時間の総枠は、以下のとおりです。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P10 なお、総労働時間は、清算期間の所定労働日数にあわせて毎月日数が変動する方法のほか、 「1か月160時間」など各清算期間の総労働時間を一律にする方法もあります。 4 標準となる1⽇の労働時間 フレックスタイム制の対象従業員が年次有給休暇を取得した場合、その日の賃金は、 標準となる1日の労働時間を働いたものとみなして計算します。 「総労働時間÷清算期間中の所定労働⽇数」で算出した時間を基準として定めます。 5 コアタイム コアタイムとは、従業員が必ず働かなければならない時間帯です。設定は任意です。 近年、従業員の自由度をより高めるためコアタイムを設けない企業もあり、スーパー フレックスやフルフレックスなどと呼ばれています。 6 フレキシブルタイム フレキシブルタイムとは、従業員が自由に労働時間を決めることができる時間帯です。 コアタイムと同様に設定は任意です。 たとえば、深夜労働をしないように5時〜22時をフレキシブルタイムに設定する企業も あります。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P3 なお、以下のような場合、実態として従業員が自由に始業・終業時刻を決めることが できません。 そのため、フレックスタイム制と認められない可能性が高く注意が必要です。 ・フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い ・コアタイムの時間が1日の労働時間とほぼ同程度である(例:7時間など) フレックスタイム制のメリット・デメリット フレックスタイム制にはメリットとデメリットがあります。 それぞれ理解したうえで導入を検討することをおすすめします。 1 フレックスタイム制のメリット 2 フレックスタイム制のデメリット フレックスタイム制の導入方法 フレックスタイム制を導入するための手順を解説します。 1 就業規則等への規定 フレックスタイム制を導入するためには、就業規則等に始業・終業時刻の決定を従業員に ゆだねる旨を定めなければなりません。 そのほか、上述の「フレックスタイム制の仕組み」で解説した清算期間や総労働時間などの 各項目も定めます。 ただし、労使協定を就業規則の一部とする場合、「それ以外の項目は、労使協定に定める 内容による。」などとすることも可能です。 就業規則に定めた内容は、従業員に周知しなければなりません。 なお、従業員が10人未満の企業は就業規則等の作成義務はありません。 その場合、就業規則に準ずるものに各項目を定めて従業員に周知します。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P4 2 労使協定の締結 就業規則等への定めとともに、労使協定も締結しなければなりません。 【労使協定で定めるべき項目】(※) ①対象となる従業員の範囲 ②清算期間 ③総労働時間 ④標準となる1⽇の労働時間 ⑤コアタイム(任意) ⑥フレキシブルタイム(任意) ※各項目の詳細は、上述の「フレックスタイム制の仕組み」で解説 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P11 3 労働基準監督署への届出 ①就業規則等 従業員が10人以上の企業が就業規則等を変更した場合、管轄の労働基準監督署へ届出 しなければなりません。 ②労使協定届 清算期間が1か月を超える場合、労使協定届に労使協定書の写しを添付し、管轄の 労働基準監督署へ届出しなければなりません。 違反すると、30万円以下の罰⾦が科せられるおそれがあります。 なお、清算期間が1か月以内の場合、労使協定届の届出は不要です。 参考・ダウンロード|東京労働局『清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届 様式第3号の3』 ③36協定 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合、36協定届を管轄の 労働基準監督署へ届出しなければなりません。 フレックスタイム制の場合、日々の労働時間は従業員の判断にゆだねるため、 36協定の「1日」の延長時間の協定は不要です。 「1か月」および「1年」の延長時間を協定してください。 (出典)厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P13 なお、厚生労働省のパンフレットに36協定届の記載例があります。 参考にしてください。 参考|厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』P19 おわりに フレックスタイム制の導入時は、仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解した うえで、自社に適したルール設定を行ってください。 また、フレックスタイム制は労働時間の取扱いが特殊であるため、実務担当者は十分に 理解しておく必要があります。 次回の記事では、フレックスタイム制の実務対応として、時間外労働の考え方やさまざまな 場面での対応方法を解説します。

  • 【知っておきたい】治療と仕事の両立支援と環境整備

    高齢化や定年の引き上げなどにより、病気を抱えながら働く人が増えています。 病気を抱える従業員のなかには、働く意思があっても治療のために仕事を辞めてしまう 人もいますが、そのようなことを防ぐため「治療と仕事の両立支援」が求められています。 治療と仕事の両立支援とは、病気を抱えながらも働く意欲・能力のある労働者が、 仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として仕事の 継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら生き生きと働き続けられる社会を 目指す取り組みです。 今回の記事では、従業員が安心して治療と仕事を両立できるようにするための 企業でできる取り組みについて解説します。 治療と仕事の両立支援が求められている背景 治療と仕事の両立は、「働く世代」にとっても無関係ではありません。 「平成31年(令和元年) 全国がん登録 罹患数・率 報告」によると、20〜69歳で がんに罹患した人の割合は全罹患数の約37%を占めています。 診断技術や治療方法の進歩により、かつては不治の病とされていた疾病の生存率が上がり、病気と長く付き合う時代に変化しつつあります。 そのため従業員が病気になったからといって、すぐに離職をしなければならない状況が 必ずしも当てはまらなくなってきました。 がん治療のため、仕事を持ちながら通院している者は約44.8万人いるとされています。 主ながんの平均入院日数は短くなりつつあり、治療の副作用や症状等をコントロール しつつ、通院で治療を受けながら仕事を続けるケースが増えています。 (出典)厚生労働省『事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン』P23 治療と仕事の両立支援とは 企業にできる治療と仕事の両立支援は、支援が必要な従業員が、業務で疾病を悪化させる ことがないよう、治療を受けながらも働き続けることができるようサポートすることです。 また従業員が疾病を理由に安易に退職を決めることのないよう、長期的な治療が必要な疾病 に対する理解と、治療と仕事の両立のための環境整備、そして日頃からの従業員との良好な コミュニケーションが求められています。 支援体制の構築には、従業員自身による取り組みはもちろんのこと、治療の状況に応じた 就業上の措置や配慮をはじめ、産業医との連携や上司・同僚の理解と協力も必要です。 そのため、企業内外の関係者が連携して対応することが重要です。 企業側の両立支援の取り組みによる効果 治療と仕事の両立を図るための企業の取り組みは、支援が必要な従業員だけではなく、 すべての従業員にとって以下のような効果があります。 1 継続的な人材の確保 新しい人材を確保して1から教育をすることは企業にとって大きな負担となります。 そのため自社のノウハウを蓄積している従業員のサポート体制を築き、治療と両立して 働き続けてもらうことは大きなメリットとなります。 2 従業員のモチベーション向上による人材の定着・生産性の向上 両立支援を積極的に行うことは、万が一のサポートが充実している企業だという従業員へのメッセージにもなります。これによって、仕事へのモチベーションの向上、離職率の低下や生産性の向上にもつながります。 3 多様な人材の活用による組織や事業の活性化 高い能力や専門性を持っている人が病気や障害を理由に退職してしまうことは大きな損失 です。 両立支援によりそれぞれが能力を発揮できれば、組織や事業の活性化につながります。 企業の両立支援を円滑に進めるための環境整備とは 治療と仕事の両立支援は、私傷病である疾病によるものであるため、従業員本人から支援を 求める申出がされた場合に支援を始めます。 しかし企業で働く従業員がいつ疾病を抱えることになるか予想ができません。 従業員への両立支援が必要な状態になってから検討を始めても、適切な支援ができない恐れ があります。 そのため、治療と仕事の両立支援を円滑に進めるために、事前に企業内の仕組みづくりや 意識啓発などの環境整備に取り組むことをおすすめします。 1 企業として両立支援に取り組むことの表明・周知 治療と仕事の両立支援に取り組むに当たっての基本方針や具体的な対応方法などのルールを 作成し、すべての従業員に周知します。 企業として治療と仕事の両立支援に取り組むことが明確になり、従業員の理解・協力が 得られやすくなります。 2 研修などによる両立支援に関する意識啓発 治療と仕事の両立支援は、いつ・だれが当事者になるかわかりません。 また、両立支援を行うためには当事者の従業員からの申出が必要です。 相談しやすい環境づくりのためにも、当事者やその同僚となり得るすべての従業員に 治療と仕事の両立に関する研修などを通じた意識啓発を行うことをおすすめします。 3 相談窓口等の明確化 治療と仕事の両立支援は、定期健康診断などにより企業が把握した場合を除いては、 従業員からの支援の申出を原則としています。 そのため、支援を必要とする従業員が安心して相談・申出を行うことができるよう相談窓口 を明確にしておき、利用方法などを日頃から周知しておくことが重要です。 相談窓口は設置するだけではなく、従業員の利用しやすさのための工夫も必要です。 4 両立支援に関する制度・体制等の整備 ①休暇制度、勤務制度の整備 通院治療が定期的に繰り返される場合や、体調面で所定労働時間の勤務が難しい場合、 また満員電車などの通勤による負担軽減のために出勤時間をずらす必要がある場合など、 通常とは異なる働き方が必要になることがあります。 そのときは実情に応じて各種勤務制度の検討と導入を行い、治療のための配慮をすることが 望まれます。 ②従業員から支援を求める申出があった場合の対応手順、関係者の役割の整理 従業員から支援を求める申出があった場合に円滑な対応ができるよう、従業員本人、 人事労務担当者、上司・同僚等、産業医や保健師、看護師等の産業保健スタッフ等の関係者 の役割と対応手順をあらかじめ整理しておくことが重要です。 ③関係者間の円滑な情報共有のための仕組みづくり 治療と仕事の両立のためには、関係者が本人の同意を得た上で支援のために必要な情報を 共有し、連携することが重要です。 特に就業継続の可否、必要な就業上の措置および治療に対する配慮に関しては、治療の状況 や心身の状態、就業の状況等を踏まえて主治医や産業医等の医師の意見を求め、その意見に 基づいて対応を行う必要があります。 あらかじめ、必要な情報が提供できるように企業で様式を定めておくことをおすすめ します。 おわりに 現在の社内を見回したとき、健康な人が多いことはとてもよいことです。 しかし病気はいつ、誰に降りかかってくるか分かりません。 現在治療中の従業員がいなくても、すべての企業に起こり得る問題であることを知り、 早めの制度構築を行いましょう。 従業員が病気により働けなくなることは、従業員本人だけでなく企業にとっても大きな 損失です。 また、治療が必要なのに会社に言い出せなかった、ということが起きればトラブルにも つながってしまいます。 できるところから取り組みを始めてみてください。

  • ドライバーの労働時間等の改善基準が変わります。

    2024年4月1日、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が改正されます。 これは、同じく4月の法改正でトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者 (以下、ドライバー)の時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえての見直しと なります。 ドライバーを雇用する企業は働き方の見直しをはじめ、人手不足などさまざまな問題に 直面しており、対応が急がれています。 なかでも、ドライバーを多く抱える物流・運送業の状況は「2024年問題」とも呼ばれ、 2023年の「新語・流行語大賞」のノミネート語にも選ばれるなど、深刻な問題となって います。 今回の改正はドライバーを雇用する企業以外でも、多くの企業に影響をおよぼす可能性が あるため、すべての企業が自分事として対応に取り組むことが求められます。 今回は、この改善基準告示の改正内容と、物流・運送業をはじめとしたドライバーを 雇用する企業およびそれ以外の企業がそれぞれ取り組むべきことを解説します。 改善基準告示とは 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、改善基準告示)は、 ドライバーの労働条件をより良くするため、拘束時間の上限や休息時間など労働時間等の 基準を定めたものです。 ドライバーの長時間労働を防ぐことは、ドライバー自身の健康確保はもちろんのこと、 交通事故の予防など国民の安全確保の観点からも大切です。 【対象業種】 物流・運送業に限らず、ドライバーを雇用するすべての事業に適用されます。 【対象者】 物や人を運搬するため、自動車を運転する時間が労働時間の半分を超えることが見込まれる 従業員が対象です。 そのため、以下のような従業員も対象となります。 (例) トラック運転者:工場など製造業における配達部門のドライバー バス運転者:旅館の送迎用のバスやスクールバスのドライバー なお、企業の役員や個人事業主(以下、個人事業主等)は改善基準告示の対象では ありません。 しかし、道路運送法などの法令等では、ドライバーの過労死防止等の観点からドライバーの 労働時間等についての規定があり、その基準として改善基準告示が引用されています。 この規定はドライバーが個人事業主等である場合も適用されるため、実質的に改善基準告示 に留意する必要があります。 ここからは、トラック運転者、バス運転者、タクシー・ハイヤー運転者ごとに改正内容を 解説します。 ドライバーの労働時間等の定義 ドライバーは、目的地によっては長時間拘束されたり、荷主等の都合による待機時間 (以下、荷待ち時間)や仮眠時間などがあるなど、一般的な労働時間とは異なる時間も 発生します。 以下は、ドライバーの労働時間等の定義です。 ①拘束時間 始業から終業までの、企業に拘束される時間です。(労働時間+休憩時間) ・労働時間:運転や整備、発送準備などの作業時間(荷待ち時間も含む) ・休憩時間:労働時間の合間でドライバーや運行管理者が自己判断で身体を休める時間 (食事や仮眠時間も含む) (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P3 ②休息時間 業務から解放され、次の業務まで完全に自由に過ごすことができる時間です。 睡眠時間を含む、ドライバーの生活時間にあたります。 ③運転時間 労働時間のうち、ドライバーが運転している時間です。 トラックおよびバスの運転者の1日、1週の運転時間を算定するにあたり、以下のように 考えます。 ・1日:2日を平均した1日あたりの時間 ・1週:2週間(バスは4週間)を平均した1週あたりの時間 ④休日 ドライバーの休日の取扱いは「休息時間+24時間」の連続した時間をいいます。 なお、休日は30時間を下回ることはできません。 【トラック運転者】改正後のポイント 物流・運送業では、トラック運転者の人手不足が深刻化しています。 インターネットの通信販売の利用増加による宅配の取扱い個数の増加や再配達の増加、 当日配達サービスなどサービスの高度化により、配達ドライバーが長時間労働をせざるを 得ない状況も一因です。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間 ・1年:原則3,300時間以内(※1) ・1か月:原則284時間以内(※1) ・1日:原則13時間以内(上限15時間)(※2、※3) ※1:労使協定により、年間3,400時間、1か月310時間まで延長可 (ただし、1年のうち6か月まで。かつ284時間超は連続3か月まで) ※2:14時間を超える回数をできるだけ少なくする。(週2回までが目安) ※3:長距離の貨物運送で宿泊を伴う場合、週2回に限り上限16時間まで延長可能の場合あり なお、1か月の時間外労働および休日労働の合計時間数が、100時間未満となるよう努める 必要があります。 (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P4 ②休息時間 基本的に継続11時間以上与えるよう努め、継続9時間を下回ってはいけません。 ただし、長距離の貨物運送で宿泊を伴う場合、週2回に限り継続8時間以上でも可能な場合が あります。 (継続9時間未満になった後は継続12時間以上の休息期間が必要) (出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P7 ③運転時間 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、2週平均で1週あたり44時間以内です。 また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに、1回がおおむね 10分以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。 ④時間外労働および休日労働 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は 2週間に1回までです。 ⑤予期し得ない事態が発生したとき 災害や事故など予測不能な事態により運行が遅延したとき、拘束時間、運転時間から その対応時間を除くことができます。 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『トラック運転者の改善基準告示が改正されます!』 【バス運転者】改正後のポイント バス運転者もトラック運転者同様に不足しています。 このような状況でも路線バスなどが日々のダイヤに合わせた人員配置をするためには、 運転者に長時間労働を強いることとなり、その結果さらに人手不足を招くという悪循環と なっています。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間、休息時間 労務管理などの実態に応じて、拘束時間は「1年・1か月」「52週・4週平均1週(※)」 いずれかの基準を選択します。 ※4週間を平均した1週あたりの時間 (出典)厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 ②運転時間 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、4週平均で1週あたり40時間以内です。 また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに1回がおおむね10分 以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。 ③時間外労働および休日労働 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は 2週間に1回までです。 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』 【タクシー・ハイヤー運転者】改正後のポイント 1 タクシー運転者 タクシー運転者には、以下のような勤務形態があります。 ・日勤勤務:1日の所定労働時間が8時間など一般的な勤務形態です。 昼日勤や夜日勤があります。 ・隔日勤務:2日間を1単位とした勤務形態です。1回の乗務が長時間であるため1日おきに勤務します。 【改正後の改善基準告示】 ①拘束時間、休息時間 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 ②車庫待ち等 「車庫待ち等」は、車庫で待機し、顧客からの呼び出しに応じて出庫する営業形態です。 このうち、一定の要件を満たす場合は「車庫待ち等の自動車運転者」として、以下の拘束 時間が適用されます。 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 2 ハイヤー運転者 ハイヤーは完全予約制で運転手付きの貸切乗用車です。要人や役員などの移動手段に 利用されることも多く、上質なサービスが提供されます。 勤務形態がタクシー運転者とは異なるため、タクシー運転手の拘束時間や休息期間などの 基準は適用されず、以下のように定められています。 (出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P2 そのほか厚生労働省のリーフレットも参考にしてください。 参考|厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』 ドライバーを雇用する企業が対応すべきこと 1 36協定届の様式変更 36協定の対象者にドライバーを含む場合、2024年4月より36協定届の様式が変わります。 ・一般条項のみ:様式第9号の3の4 ・特別条項あり:様式第9号の3の5 (ドライバーの上限は年960時間以内、それ以外の業務は年720時間以内) (出典)静岡労働局『自動車運転者についても、時間外労働の上限規制が適用されます』P1 なお、対象者にドライバーを含まない場合、物流・運送業であっても36協定届は様式 第9号(一般条項のみ)または様式第9号の2(特別条項あり)となります。 様式は以下のサイトからダウンロードできます。 参考・ダウンロード|厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)』 2 業務効率化のためのシステム導入 配車計画システム、ドライバーの勤務形態に対応できる労務管理システムなどの導入に より、時間コストの削減や人的ミスの防止を図ります。 3 配送形態の見直しなど長時間労働対策 1人のドライバーによる長距離運送は、長時間労働の一因につながります。 複数のドライバーがリレー方式で運送するなどの体制の見直しは、従業員の負担軽減に 有効です。 また、健康診断だけでなく、気軽に利用できる相談窓口の設置や日頃の声かけなど、 ドライバーの心身の健康状態の把握に努めることも大切です。 ドライバーが自身の疲労状態を自覚するための「労働者の疲労蓄積度自己診断チェック リスト」などの活用もおすすめします。 参考・ダウンロード|厚生労働省『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)』 4 ドライバーの人材確保 ドライバーは、長時間労働や休日の少なさなどから若年層に敬遠される傾向にあり、 人手不足および高齢化に拍車をかけています。 給与体系の見直しや有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、福利厚生の充実などを行い、 人材確保に努めることが必要です。 また、時短勤務など働き方の多様化を進めることは、女性や副業を希望する方などの新たな 層の採用にもつながる可能性があります。 5 荷主への協力要請 ドライバーの長時間労働の問題は、物流・運送業者である企業の努力だけでは対処しきれないこともあります。 荷主と協力しながら取引環境の改善に向けた取り組みが必要です。 荷主企業への影響、協力できること 「2024年問題」の影響は物流・運送業者だけに限るものではありません。 多くの企業が、荷主として荷物の配送依頼をしたり(発荷主)、荷物を受け取ったり (着荷主)しています。 今後、荷主への影響として「指定した日時に荷物が届かない」「配送を断られる」など、 これまでにない状況が発生する可能性も考えられます。 こうした懸念への対策には荷主の協力が欠かせません。 ドライバーの労働時間の削減や労働環境の改善は、サービス向上にもつながり、荷主にも メリットをもたらします。 物流・運送業者と連携しながら2024年問題に取り組むことが大切です。 なお、長時間の荷待ちがいつまでも改善されない状況が続くなど改善基準告示の違反を 疑われる場合、労働基準監督署から荷主等に対して「要請」が行われる可能性があります。 (出典)厚生労働省『トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!』P4 おわりに 改善基準告示の違反による罰則はないものの、労働基準監督署の指導を受けたり、 状況によっては国土交通省の行政処分を受ける可能性があります。 ドライバーを雇用する企業だけでなく、荷主企業も含めたあらゆる企業が自社ですべき ことを検討し早急に取り組むことが求められています。

  • 厚生労働省から、労働に関する現状や課題についての発表がありました。

    厚生労働省は前年の労働に関する現状や課題をまとめた「労働経済の分析」を 毎年発表しています。 2023年9月に、2022年のデータが発表されました。 今回は、「持続的な賃上げに向けて」をテーマに分析が行われています。 新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着き、求人倍率や転職者数などの雇用情勢は 2019年以前の水準に迫っています。 一方で、賃金に関しては1990年代後半以降伸び悩んでいます。 このマガジンでは、厚生労働省の発表を基に、雇用情勢や企業が人手不足に対応 するためのポイントをまとめています。 現在の雇用情勢 1 雇用の過不足の状況 雇用の過不足の状況を産業別に見てみると、2021年以降はすべての産業で人手が 足りていない状況であることが分かります。 新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出などの影響で経済が停滞 したことにより、2020年・2021年には特に事業の継続が困難だった「宿泊・飲食 サービス」や「製造業」を中心に大量の離職者が発生しました(完全失業率の増加)。 その後完全失業率は低下していますが、現在もこの大量離職の反動で人手不足が 続いています。 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P36 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P15 2 非正規雇用 雇用者に占める非正規雇用者の割合は増加の傾向にあり、2022年には36.9%を記録 しました。 ただし、2020年・2021年は非正規雇用者数が前年に比べて減少していることからも、 新型コロナウイルス感染症による大量離職の影響を見て取ることができます。 (出典)厚生労働省『「非正規雇用」の現状と課題』P1 3 転職者数(求職者数) 2022年の転職者数は、3年ぶりに増加に転じました。 新型コロナウイルス感染症の影響で離職を余儀なくされた労働者が、経済活動の再開に 伴い、新たな仕事に就き始めたことが分かります。 特に転職者に人気なのは「一般事務の職業」で、求人数に対して求職申込件数が大きく 上回っています。 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P40 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P38 4 消費者物価指数 消費者物価指数とは、消費者が日常的に購入する商品やサービスの価格の変動を 示す指標です。 2022年の消費者物価指数はすべての月で前年度から上昇し、12月の上昇率は4%と なりました。 上昇した背景には、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で原材料を輸入する コストが増加したことがあげられます。 特に、「食料工業製品」「電気・都市ガス・水道」は大きな影響を受けています。 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P68 賃金の動向 日本の賃金は、名目賃金(※1)・実質賃金(※2)ともに1990年代後半から横ばいで 推移しています。 賃金が伸び悩んでいる背景には、パート・アルバイトを含む非正規雇用の増加があります。 働く時間の短い非正規雇用者が増えることは、働いた時間に応じて貰える賃金が減少する ことにつながります。 また、実質賃金が伸び悩む背景には、物価の上昇が関係しています。 賃金の上昇率が物価の上昇率と比べて大きくないため、実質賃金は伸び悩んでいます。 ※1 名目賃金とは、支払われた給与額そのものを指します。 ※2 実質賃金とは、名目賃金から物価の上昇率を考慮して算出したものを指します。 (出典)厚生労働省『令和5年版 労働経済の分析』P80 人手不足に対応していくための企業の取り組み 人手不足の現状に対応するために、以下の2つに取り組むことをおすすめします。 1 賃上げを行う 「求人条件による被紹介状況への影響(フルタイム)」の表でも現れているとおり、 企業が求人を行うときに、最低賃金よりも5%以上高い賃金を設定すると、3か月以内に 労働者からの応募を受ける可能性が10%程度上昇します。 また賃金のほかにも、「完全週休2日あり」や「ボーナスあり」などの条件を設定する ことも、労働者からの応募の可能性を上昇させます。 さらに、賃上げは新しい人材を獲得しやすくなる効果だけではなく、既存の従業員に 対しても良い影響を与えます。 1年前より年収が増加した従業員は仕事への満足度が高まる傾向にあります。 また、賃上げを行った企業の約20%が従業員の離職率が低下したと回答しています。 このように、賃金を上げることは新たな人材の獲得と既存の従業員の定着に効果があり、 人手不足への対応策となります。 (出典)厚生労働省『【概要】令和5年版 労働経済の分析』P11 2 企業の安定性をアピールする 新型コロナウイルス感染症の影響で離職または転職を行った方は、雇われても、 またすぐに雇用調整の観点から勤務日数を減らされたり、退職を余儀なくさせられたり することを避けようと、安定した企業を探します。 そのため求人を出すときは離職率が低いことや、毎年の昇給実績があることなどでの アピールが有効です。 まとめ 新型コロナウイルス感染症の影響により発生した大量離職の反動で、労働市場全体で 人材不足が深刻です。 また、離職を余儀なくされた労働者は再び職を失わずに安定して働けることを求めて います。 そのため、賃金は労働者が企業を選ぶときの重要なポイントになります。 もちろん働き甲斐や働きやすさなども重視はされますが、昨今は物価高の影響が大きく、 労働者にとって賃金は重要な要素となります。 企業としても、賃金アップは新たな人材の確保だけでなく、既存の従業員のモチベーション 向上・離職率の低下にもつながります。 しかし、企業も物価高の影響で財政的に厳しい局面を迎えていることから、人件費を簡単に 増やすことは簡単ではありません。 コロナを経て社会情勢が大きく変化した今、賃金体系や人事評価制度の見直しなど 「ヒト」に関する仕組みを新しく構築することを検討してください。

  • 【2024年版】人事労務担当者のための実務カレンダー(法改正付き)

    人事労務担当者は、給与計算など毎月の定例業務のほか、年に1回~数回発生する 年間業務、さらには随時発生する多くの業務にも対応しなくてはいけません。 そのためにも年間の実務スケジュールを把握し、段取りよく業務を進めることが大切です。 今回の記事では、人事労務担当者の業務について、2024年の法改正も交えながら月別に 解説します。 またマガジンの最後にはダウンロード可能な実務カレンダーも添付しておりますので お役立てください。 1月の業務 【法定調書の提出】 2023年の年末調整業務の完了後、源泉徴収票や支払調書などの法定調書を法定調書合計表と ともに提出します。 (提出期限)2024年1月31日(水) (提出先)管轄の税務署 【給与支払報告書の提出】 2023年の年末調整業務の完了後、給与支払報告書を総括表とともに提出します。 (提出期限)2024年1月31日(水) (提出先)2024年1月1日現在(退職の場合は退職日現在)における従業員の住所地の市区町村 【労働保険料の納付期限(第3期)】 労働保険料を3回に分割して納付する企業は、第3期の労働保険料を支払います。 (納付期限)2024年1月31日(水)(※1) (納付場所)管轄の都道府県労働局、労働基準監督署、金融機関など(※2) ※1 労働保険事務組合に委託している場合は、事務組合から連絡される納付の日付を ご確認ください。 ※2 口座振替や電子納付も可能 【労働者死傷病報告の提出(10月〜12月分)】 休業4日未満の労働災害が発生した場合、様式第24号を提出します。 (提出期限)2024年1月31日(水) (提出先)管轄の労働基準監督署 【源泉所得税の納期の特例(7月~12月分)】 従業員10人未満で、納期の特例制度の適用を受けている企業は、7月~12月分の源泉所得税を納付します。 (納付期限)2024年1月22日(月)(※) (納付場所)管轄の税務署、金融機関、キャッシュレス納付 ※原則1月20日。土日祝にあたる場合はその翌日 【36協定の届出】※時期は企業による 36協定の有効期限を迎える場合、再締結および届出を行います。 (届出期限)あらたな有効期間の開始日(例:1月1日) (届出先)管轄の労働基準監督署 3月の業務 【健康保険料率・介護保険料率の改定】 3月分から、健康保険料および介護保険料の料率が変わります。 協会けんぽなど各保険者から発表されるあらたな料率を確認し、給与計算システムの 設定の見直しを行います。 4月の業務 【雇用保険料率の改定】 4月分から、雇用保険料の料率が変わります。 【労働者死傷病報告の提出(1月〜3月分)】 休業4日未満の労働災害が発生した場合、様式第24号を提出します。 (提出期限)2024年4月30日(火) (提出先)管轄の労働基準監督署 【新入社員の入社手続】※時期は企業による ・社会保険・雇用保険の資格取得手続 ・労働条件通知書や労働者名簿などの作成 ・雇入れ時の健康診断の実施 など 【人事異動、昇進や昇格などの対応】※時期は企業による ・辞令交付の準備 ・昇進や昇格・降格などに伴う給与改定 ・社会保険・雇用保険の手続 (転勤などで勤務する事業所が変更したとき。ただし、一括適用されている事業所は 手続不要) 【定期健康診断の実施】※時期は企業による 定期健康診断は、毎年1回従業員に受診させる義務があります。 従業員が50人以上の企業は労働基準監督署に結果報告が必要です。 なお、以下の健康診断も実施義務があるためご留意ください。 (有害な業務を行う従業員には、さらに別の健康診断が必要な場合があります。) (出典)厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~』 【法改正情報】 2024年4月には、以下の法改正が実施されます。 5月の業務 【障害者雇用納付金の申告および納付、障害者雇用調整金などの申請】 従業員が100人を超える企業は、2024年5月15日(水)までに申告・申請および納付が 必要です。(下図の赤枠部分参照) 6月の業務 【労働保険の年度更新】 労働保険料について以下の手続を行います。 ・前年度の確定保険料の申告および概算保険料の精算 ・新年度の概算保険料の申告および納付 (申告および保険料納付の期間)2024年6月3日(月)から2024年7月10日(水) (※1、※2) (申告書の提出先)管轄の都道府県労働局、労働基準監督署、金融機関 (納付場所)管轄の都道府県労働局、労働基準監督署、金融機関など(※3) ※1 原則6月1日から7月10日。土日祝にあたる場合はその翌日 ※2 労働保険料の納付を3回に分割して支払う企業は、第1期の労働保険料を支払います。 ※3 口座振替やe-Govなどによる電子納付も可能 【住民税額の更新】 住民税は、前年の所得にもとづいて1年間の税額が決められます。各市区町村から 「特別徴収税額の決定通知書」が企業に届き、通知された年税額は、6月から翌年5月の 12か月に分けて給与から徴収します。 そのため、あらかじめ給与計算システムの住民税額を更新しておきます。 【住民税の納期の特例(前年12月~5月分)】 従業員10人未満で、納期の特例制度の適用を受けている企業は、前年12月~5月分の 住民税を納付します。 (納付期限)2024年6月10日(月) (納付場所)金融機関、キャッシュレス納付 【高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出】 毎年6月1日現在の高年齢者や障害者の雇用状況を報告します。 2024年4月の法定雇用率の引上げにより、障害者雇用状況報告の提出対象は、従業員40人 以上の企業に変わります。 (提出期間)2024年7月16日(火)(※) ※原則7月15日。土日祝にあたる場合はその翌日 【新規高卒者のハローワークによる求人申込の受付開始】 来春高校卒業予定者の採用を考えている企業は、毎年厚生労働省から発表される 採用選考期日を参考に採用計画を立てることをおすすめします。 (出典)厚生労働省『令和6年3月新規高等学校卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめました』 7月の業務 【算定基礎届の届出(定時決定)】 健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額と現在の報酬とのあいだに大きな差が生じない ように、毎年4月〜6月の報酬月額を届出し、その内容をもとに標準報酬月額の見直しが 行われます。 (届出期限)2024年7月10日(水) (届出先)事務センター、管轄の年金事務所 【賞与の支給、賞与支払届の届出】※時期は企業による 賞与を支払った企業は、「被保険者賞与支払届」を提出します。なお、賞与が不支給 だった場合は、賞与不支給報告書の提出が必要です。 (届出期限)賞与支払日から5日以内 (届出先)事務センター、管轄の年金事務所 【労働者死傷病報告の提出(4月〜6月分)】 休業4日未満の労働災害が発生した場合、様式第24号を提出します。 (提出期限)2024年7月31日(水) (提出先)管轄の労働基準監督署 【源泉所得税の納期の特例(1月~6月分)】 従業員10人未満で、納期の特例制度の適用を受けている企業は、1月~6月分の源泉所得税を 納付します。 (納付期限)2024年7月10日(水) (納付場所)管轄の税務署、金融機関、キャッシュレス納付 【報奨金、特例給付金などの申請】 従業員100人以下の企業は、2024年7月31日(水)までに申請が必要です。 (下図の赤枠部分参照) 9月の業務 【社会保険料の改定(定時決定の結果反映)】 定時決定により見直しされた標準報酬月額は、9月分の社会保険料から適用されます。 ただし、7月~9月の随時改定に該当する場合は、随時改定による標準報酬月額が優先 されます。 10月の業務 【地域別最低賃金の改定による賃金の見直し】 地域別最低賃金を下回る従業員がいる場合は、最低賃金以上への引上げが必要です。 【労働者死傷病報告の提出(7月〜9月分)】 休業4日未満の労働災害が発生した場合、様式第24号を提出します。 (提出期限)2024年10月31日(木) (提出先)管轄の労働基準監督署 【労働保険料の納付期限(第2期)】 労働保険料を3回に分割して納付する企業は、第2期の労働保険料を支払います。 (納付期限)2024年10月31日(木)(※1) (納付場所)管轄の都道府県労働局、労働基準監督署、金融機関など(※2) ※1 労働保険事務組合に委託している場合は、事務組合から連絡される納付の日付を ご確認ください。 ※2 口座振替や電子納付も可能 【法改正情報】 2024年10月には、以下の法改正が実施されます。 11月の業務 【被扶養者状況リストの提出】※時期は保険者による 従業員の健康保険上の扶養家族について、収入など現在の状況を確認してまとめたリストを 提出します。 なお、協会けんぽは毎年11月頃に実施しますが、健康保険組合の実施時期は組合ごとに よって異なります。 (提出先)協会けんぽや健康保険組合などの保険者 12月の業務 【年末調整】 年末調整の業務は、従業員に提出を求める申告書が数種類あり、添付書類も従業員によって 異なるなど大変煩雑です。 多くの人事労務担当者にとって1年で一番忙しい時期になることから、早めの準備を おすすめします。 【住民税の納期の特例(6月~11月分)】 従業員10人未満で、納期の特例制度の適用を受けている企業は、6月~11月分の住民税を 納付します。 (納付期限)2024年12月10日(火) (納付場所)金融機関、キャッシュレス納付 【賞与の支給、賞与支払届の提出】※時期は企業による 賞与を支払った企業は、「被保険者賞与支払届」を提出します。なお、賞与が不支給だった 場合は、賞与不支給報告書の提出が必要です。 (提出期限)賞与支払日から5日以内 (提出先)事務センター、管轄の年金事務所 【ストレスチェックの実施】※時期は企業による メンタルヘルスの不調を未然に防ぐため、従業員50人以上の企業に対し、ストレスチェック の実施が義務付けられています。 【法改正情報】 2024年12月には、以下の法改正が実施される予定です。 毎月の定例業務、随時発生する業務 ここまで年間の業務を解説しましたが、当然ながら毎月の定例業務も平行して行わなければ なりません。 さらに人の動きや人事制度の変更、法改正等に伴い随時発生する業務も数多くあります。 人事労務の実務カレンダー 抜け漏れなく業務を行うため、月ごとおよび1年の見通しをたてながら作業を進める必要が あります。 以下は人事労務の実務カレンダーです。2024年の法改正も記載していますので参考に してください。 参考・ダウンロード|『人事労務 実務カレンダー(2024年法改正付き)』 おわりに 人事労務担当者は、企業そして従業員を支える縁の下の力持ち的な役割を担っています。 法令等の専門的な知識も求められ、細かな作業や提出期限のある手続も多く発生し、 日々目まぐるしく業務を行うことも多いかと思います。 年間の実務スケジュールを把握し、2024年も円滑に業務を進めていきましょう。

  • 『年収の壁・支援強化パッケージ』企業が押さえておきたいポイント

    2023年10月から厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が開始されました。 これは「年収の壁」の解消に向けた支援策です。 「年収の壁・支援強化パッケージ」の理解と活用は、人手不足の解消や優秀な人材確保に 有効です。 今回の記事では、支援策の内容を中心に、企業が押さえておきたいポイントを解説します。 なお、年収の壁のしくみや課題については前回の記事をご確認ください。 前回の記事『企業が知っておきたい「年収の壁」。』 「年収の壁・支援強化パッケージ」の目的と背景 少子高齢化による生産年齢人口の減少や時間外労働の上限規制などにより、 人手不足が慢性化している企業も少なくありません。 対応が急がれるものの、現状は年収の壁を要因とした就業調整が障壁のひとつと なっています。 2021年の厚生労働省の調査によると、配偶者がいる女性の短時間労働者の21.8%が 就業調整をしており、理由は57.3%が「130万円の壁」、21.4%が「106万円の壁」と 回答しています(複数回答)。 この調査結果からも、年収の壁が就業調整の大きな要因となっていることが伺えます。 そこで、当面の対応として年収の壁を気にせず働けるよう、2023年10月から 「年収の壁・支援強化パッケージ」が実施されています。 ここからは、企業が理解しておくべき支援策の内容を解説します。 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化【130万円の壁への対応】 社会保険の被扶養者となるためには年収130万円未満(※1)の収入要件があります。 年収130万円以上になると扶養から外れ、130万円の壁により「社会保険加入(※2) による手取り額の減少」が発生する場合があります。 ※1:60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円未満 ※2:または国民健康保険加入および国民年金第1号被保険者に該当 そのため、人手不足の企業では以下のような状況が見受けられます。 【従業員側】もっと働きたい気持ちはあるが、年収130万円を超えると扶養から 外れてしまうため、これ以上勤務時間は増やせない 【企業側】離職されると困るため、年収130万円以上にならないよう配慮が必要で、 残業させたくてもさせられない この対応策として、一時的な収入増加(※)により年収130万円以上になったのであれば、 事業主証明の提出により被扶養者として認定されることとなりました。 (この措置は、同一の被扶養者につき原則として連続2回までです。) ※後述③による収入増加であること この事業主証明が必要であると想定されるのは以下のようなときです。 従業員の家族が勤務する企業に証明書を求める場合と、自社が発行する場合があります。 証明書は厚生労働省のサイトからダウンロードできますのでご利用ください。 参考・ダウンロード|厚生労働省『被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書』 (出典)厚生労働省『「年収の壁」への当面の対応策』P9 なお、留意事項は以下のとおりです。 ①開始日 2023年10月20日から ②対象者 ・新たに扶養の認定を受けようとする従業員 ・現在扶養されている従業員(毎年実施される被扶養者資格の再確認を想定) ※継続的に年収130万円以上であることが雇用契約書などで明らな場合は対象外 ③対象となる収入 人手不足による労働時間の延長等に伴い一時的に増加した給与収入 ※企業と雇用関係がないフリーランスや自営業者などの収入は対象外 ④「一時的な収入変動」と認められる上限額 具体的な上限額は定められていません。 上限を設けるとその金額があらたな年収の壁になりかねないためです。 そのため、協会けんぽや健康保険組合などの保険者が、雇用契約書の内容なども 踏まえながら一時的な収入の増加であるかを判断します。 なお、被扶養者の年収(※)が被保険者の年収を上回る場合、一時的な収入増加とは 認められず、被扶養者認定が取り消しになる可能性があるためご注意ください。 ※または被保険者が被扶養者へ援助した額 社会保険適用促進手当の創設【106万円の壁への対応】 106万円の壁を要因とした「社会保険加入による手取り額の減少」の対応策として、 社会保険適用促進手当が創設されました。(手当支給は企業の任意) 社会保険適用促進手当の大きな特徴は、社会保険料の計算の基礎である標準報酬月額や 標準賞与額から除外されることです。 つまり、社会保険適用促進手当の支給により、企業と従業員ともに社会保険料の負担が 上がることなく従業員の収入増加を図ることができます。 なお、この措置は特定適用事業所に限らず、すべての事業所が対象です。 (出典)厚生労働省『「年収の壁」への当面の対応策』P6 1 支給要件など ①開始日 2023年10月以降の手当を支給する月から ②算定除外期間 標準報酬月額や標準賞与額からの除外は最大2年間 ※2年経過後は、通常の手当と同じく社会保険料に反映されます。 ③対象者 あらたに社会保険に加入した標準報酬月額が10.4万円以下の従業員 ※すでに社会保険に加入している従業員でも、就業場所や労働条件が同じで、同水準の 社会保険適用促進手当を支給する場合は、従業員間の公平性を考慮して対象者となります。 (ただし、2023年9月以前の社会保険加入者は、後述の「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース」は対象外) ④標準報酬月額や標準賞与額から除外される上限額 上限額は、健康保険、厚生年金保険、介護保険にかかる従業員負担分の社会保険料相当額 です。 そのため、協会けんぽや健康保険組合など加入している保険者、標準報酬月額、介護保険料の負担の有無などによって従業員ごとに上限額が異なります。 ※この上限を超えた額は標準報酬月額や標準賞与額に含まれます。 その場合、随時改定に該当する可能性もあります。 【上限額の例】 (出典)厚生労働省『「年収の壁」への当面の対応策』P8 ⑤支給方法 毎月支給や数か月まとめて支給など企業が決めます。 ⑥手当の名称 基本的には「社会保険適用促進手当」という名称にしてください。のちに行政機関による 確認が必要となったとき、算定除外できる手当であるか判断しやすくなります。 そのため、④の上限額を超える部分は別の名称で支給してください。 2 将来の年金額に反映されるのか 社会保険適用促進手当は標準報酬月額や標準賞与額から除外するため、従業員の厚生年金の給付額には反映されません。 3 就業規則等の対応 社会保険適用促進手当を支給する場合、就業規則等への定めが必要です。 以下は、厚生労働省のサイトで紹介されている規定例です。参考にしてください。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(パンフレット)』P6 なお、支給している手当の取りやめは原則として不利益変更となります。 しかし、社会保険適用促進手当が標準報酬月額や標準賞与額から除外されるのは 最大2年間です。 そのため、この措置の終了にあわせて社会保険適用促進手当の支給も終了したいと考える 企業もあるかと思います。 この場合、あらかじめ就業規則等に一定期間に限り支給する旨を定めておくことを おすすめします。 4 実務上、企業が留意すべきこと 企業は、社会保険以外の取扱いについても理解をしておく必要があります。 以下の図を参考にしてください。 キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設 【106万円の壁への対応】 2023年10月以降、短時間労働者の新たな社会保険の加入とともに収入増加の取り組みを 行った企業に対し、最大50万円が助成されます。 具体的には、以下の3つのメニューがあります。 ①手当等支給メニュー 社会保険適用促進手当の制度を活用し、短時間労働者の収入増加に取り組んだ場合に 助成されます。 (ただし、3年目は社会保険適用後6か月間の基本給と比較して、18%以上の基本給等の 増額が必要) (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(パンフレット)』P3 ②労働時間延長メニュー 所定労働時間を延長して短時間労働者に社会保険を適用させた場合に助成されます。 (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(パンフレット)』P4 ③併用メニュー ①と②のメニューを組み合わせたものです。(1年目は①、2年目は②) (出典)厚生労働省『キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(パンフレット)』P4 配偶者手当への対応 短時間労働者が就業調整をする理由として、106万円の壁や130万円の壁以外に 「配偶者の企業から配偶者手当が支給されなくなる」という回答が挙げられています。 以前は専業主婦の世帯が多くみられましたが、2000年ごろからは共働き世帯が増加し、 その差は広がる一方です。 さらには未婚率の上昇など、過去と比べて従業員の世帯状況が変化しています。 こうした状況から、配偶者を扶養する従業員に限定した配偶者手当を見直し、さまざまな 従業員を対象とした賃金制度に変えていくことは、従業員のモチベーションを高め、 あらたな人材確保にも繋がるため、企業にも大きなメリットがあります。 (出典)厚生労働省『図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移』 なお、配偶者手当を見直すためのフローチャートや具体例が厚生労働省のサイトで 紹介されています。参考にしてください。 参考|厚生労働省『配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?』 おわりに 短時間労働者の社会保険の加入は、従業員の保障が手厚くなるだけではなく、 従業員の健康保持や労働生産性の向上、さらには優秀で働くことに意欲的な人材の確保に つながるというメリットが期待できます。 年収の壁の支援策を上手く活用し、短時間労働者が年収の壁を意識せず働ける環境づくりに 取り組むことをおすすめします。

  • 企業が知っておきたい「年収の壁」

    パート・アルバイトなどの中には、配偶者などの扶養の範囲内で働きたいと 考えている人も多くいますが、その主な理由は「年収の壁」を超えないように するためです。 今回の記事は「年収の壁」とは何か、そしてこの壁による影響や課題について 解説します。 なお次回の記事では、2023年10月から開始された社会保険関連の年収の壁に対する 支援強化策を中心に、企業が押さえておきたいポイントを解説します。 年収の壁の種類 パート・アルバイトなど(以下、短時間労働者)で収入が一定額より少ない従業員は、 健康保険料と年金保険料(以下、保険料)や税金の負担がありません。 しかし、一定の収入を超えてしまうと、扶養から外れて保険料の負担が発生したり 税金の課税対象になるなど、手取り額が減少する場合があります。 このように負担が発生する年収ラインを年収の壁といいます。 年収の壁による影響と課題 「年収の壁」は従業員だけに影響するものではありません。 企業の人手不足にも影響しています。 1 企業が抱える問題「人手不足」 近年、人手不足は深刻化しています。少子高齢化による生産年齢人口の減少や 時間外労働の上限規制などにより、人手不足が慢性化している企業も少なくありません。 このような状況のなか、現在雇用している短時間労働者の労働時間の延長は 解決策のひとつといえます。 2 短時間労働者が「就業調整」せざるを得ない現状 企業が短時間労働者の労働時間延長を求める一方、短時間労働者は就業調整 (年収や労働時間の調整)をしながら働いている状況がしばしば見受けられます。 この就業調整をする理由のひとつが「年収の壁」です。 いくつかある年収の壁のなかでも、健康保険や年金(以下、保険)にかかわる 「106万円の壁」と「130万円の壁」は短時間労働者がもっとも意識する壁です。 これらの壁を超えると、配偶者などの扶養から外れ、その後は短時間労働者自身が 保険料を負担することになります。 このとき問題となるのが、収入の増加額より保険料が高くなるケースです。 つまり、労働時間を増やしたにもかかわらず、手取り額が減少するという、 働きがいを感じられない状況が発生してしまう可能性があるのです。 2021年の厚生労働省の調査によると、配偶者がいる女性の短時間労働者のうち、 何らかの理由で就業調整をしている人は21.8%でした。 その理由として57.3%が「130万円の壁」、21.4%が「106万円の壁」と回答しています。(複数回答) この調査結果からも、年収の壁を意識して収入を増やさないように調整している人達が 一定数いることが伺えます。 人手不足の解消が急がれるなか、こうした就業調整は大きな課題といえます。 企業側と短時間労働者側の相容れない状況を打破するためにも、年収の壁の解消が 求められています。 106万円の壁とは 「106万円の壁」は保険の壁のひとつです。 社会保険の適用拡大により、被保険者数101人以上(※)の事業所(特定適用事業所)に 勤務する短時間労働者は、以下の要件のすべてに該当するとき、協会けんぽや健 康保険組合などの社会保険(以下、社会保険)の被保険者となります。 ※2024年10月からは51人以上 ①週の所定労働時間が20時間以上 ②所定内賃金が月額8.8万円以上(8.8万円×12か月≒年収106万円) ③継続して2か月を超える雇用の見込みがある ④学生ではない 社会保険の被扶養者として認定される収入基準は年収130万円未満です。 しかし、たとえ年収130万円未満でも勤務先が特定適用事業所の場合、 年収106万円以上になり、上記の要件に該当すると社会保険に加入して 扶養から外れなければなりません。 つまり社会保険料の負担が発生します。これが106万円の壁です。 そしてこの壁で一番問題とされるのは、壁を超えると収入の増加額より 社会保険料の額が大きくなり手取り額が減少してしまう場合があることです。 なお、年収106万円の壁の年収(②の所定内賃金月額)には、以下の賃金は含まれません。 ・賞与などひと月を超える期間ごとまたは臨時に支払われる賃金 ・時間外労働、休日労働および深夜労働による割増賃金 ・通勤手当や家族手当など最低賃金に算入されない賃金 130万円の壁とは 「130万円の壁」も106万円の壁とおなじく保険の壁です。 (60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は、130万円を すべて180万円に読み替えます。) 年収130万円は社会保険の被扶養者として認定される収入基準です。 そのため、年収130万円以上になると扶養から外れなければなりません。 そして、以下の①または②に切り替わるため保険料の負担が発生します。 これが130万円の壁です。 ①勤務先の社会保険の加入要件に該当する場合は社会保険に加入。 ②それ以外は国民健康保険に加入。さらに配偶者の扶養(国民年金第3号被保険者) だった場合は国民年金第1号被保険者に変更。 130万円の壁も106万円の壁と同じように、壁を超えると収入の増加額より 保険料の額が大きくなり、手取り額が減少してしまう可能性があります。 なお、106万円の壁の年収には、賞与や割増賃金、通勤手当などは含まれませんが、 130万円の壁の年収にはいずれも含まれるため注意が必要です。 また、給与収入以外にも老齢年金、不動産収入、さらに非課税対象の収入( 失業保険、育児休業給付金、傷病手当金、障害・遺族年金など)も含まれます。 そのほかの年収の壁 ここまで保険の壁について解説しましたが、年収の壁はほかにもあります。 これらは税金の壁といわれ、「100万円の壁」「103万円の壁」「150万円の壁」 「201万円の壁」があります。 なお、税金の壁の年収には通勤手当は非課税であるため含まれません。 (一部、非課税限度額を超えた通勤手当は含みます。) 1 100万円の壁とは 「100万円の壁」は住民税の壁です。 住民税は、前年の所得金額に応じて負担する所得割と、所得金額にかかわらず 定額を負担する均等割があります。 この所得割、均等割のどちらも課税されない年収ラインが100万円のため「100万円の壁」 といわれています。 ただし、自治体によって非課税限度額が異なり、年収100万円の基準を下回る場合も あります。 2 103万円の壁とは 年収103万円を超えると以下のような影響があります。 (ただし、年金受給者や勤労学生など一部基準が異なる場合もあります。) 【例:夫に扶養されている妻の年収が103万円を超えたとき】 ・妻に所得税の支払義務が発生する ・夫が配偶者控除を受けられなくなる (ただし、配偶者特別控除を受けられる可能性あり) 【例:親に扶養されている子の年収が103万円を超えたとき】 ・子に所得税の支払義務が発生する ・親が扶養控除を受けられなくなる つまり、自身の所得税の支払義務が発生するだけではなく、配偶者や家族の所得税や 住民税も増額される可能性があります。 3 150万円の壁、201万円の壁とは 上記2の例の場合、妻の年収が103万円を超えると夫は配偶者控除を受けられなく なりますが、妻の年収が150万円以下であれば夫は配偶者控除と同じ額の配 偶者特別控除を受けることができます。 ただし、妻の年収が150万円を超えると夫の配偶者特別控除の額は段階的に減少します。 これが150万円の壁です。 さらに妻の年収が201万6千円以上になると、夫は配偶者特別控除を受けられなくなります。これが201万円の壁です。 なお、夫の年収が1195万円(所得1000万円)を超えると、妻の年収にかかわらず 配偶者控除および配偶者特別控除のどちらも受けることができません。 (出典)財務省『主な人的控除制度の概要(現行)』 おわりに もっと働きたい意欲はあるものの、年収の壁により就業調整せざるを得ない 短時間労働者は意外と多くいます。 年収の壁を意識せず働くことができる環境づくりは、人手不足の解消や優秀な 人材確保にもつながります。 そのためにも、労務担当者は年収の壁のしくみを理解しておくことをおすすめします。 次回の記事では、2023年10月から開始された社会保険関連の年収(106万円・130万円) の壁に対する政府の支援強化策および企業が対応すべきポイントを解説します。

  • 【2023年度版】今冬のインフルエンザ対策

    インフルエンザは、毎年流行を繰り返し、健康に対して大きな影響を与える 最大の感染症のひとつです。 一般的に12月~3月がインフルエンザの流行のシーズンとされていますが、 今年は5月頃から季節外れの流行が見られるなど、全国各地で予期せぬ状況に 直面しました。 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けは2023年5月に5類に移行したものの コロナ禍で免疫力が低下したことによる流行ともいわれており、今冬も感染対策の 徹底が引き続き求められます。 今回の記事では、季節性インフルエンザ(以下、インフルエンザ)の特徴や、流行に対して企業が押さえておくべきポイントをお伝えします。 インフルエンザとは インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染でかかる病気です。高熱のほか、 頭痛・関節痛・筋肉痛など全身の症状が突然現れることも特徴です。 なお、インフルエンザと風邪の主な違いは以下のとおりです。 インフルエンザの発生に備える企業対応 一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出する 時期といわれています。 この時期は人に感染させるリスクが高まりますが、インフルエンザには出勤停止期間を 定める法令等はないため、就業規則に企業のルールを定めておく必要があります。 インフルエンザによる欠勤連絡を受けるたびに異なる対応になったり、対応の遅れで 業務への支障が出ないよう事前の対応をおすすめします。 【発生に備えて決定しておきたい項目】 ・出勤停止期間 ・従業員やその家族がインフルエンザに感染したときの企業への申告方法 ・有給休暇の当日、事後取得の可否 ・発熱した従業員へのインフルエンザ検査の命令基準 ・受診命令した時の賃金支払や受診料の負担 ・休業時の連絡方法 ・業務の引継ぎ方法 ・特別休暇や病気休暇などを設ける場合は就業規則の変更 など インフルエンザに感染した従業員が、出勤停止期間の早い段階で熱が下がり、 症状が快復することもあります。働ける健康状態であっても、感染防止のために出社を 控えてもらうときは休業手当の支払が必要です。 出勤停止期間を検討するうえで、学校保健安全法の出席停止期間も参考になります。 インフルエンザ罹患後の外出時期については、以下のサイトをご確認ください。 参考|厚生労働省『令和5年度インフルエンザQ&A』Q17 インフルエンザと傷病手当金 インフルエンザに感染して仕事ができない場合、健康保険の被保険者は傷病手当金の 支給対象になります。ここでは、協会けんぽの傷病手当金について記載しています。 傷病手当金とは、業務外の理由による病気やケガで仕事ができず、企業から給与の支払が ないときに、健康保険から生活保障として支給される手当です。業務外の理由による 病気やケガの療養のため、仕事を休んだ日が連続して3日間(一般的に「待期期間」 という)の後、4日目以降の仕事に就けず、給与の支払がなかった日に対して支給されます。 ただし、給与の支払があっても、給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、 その差額が傷病手当金として支給されます。 支給額は以下の計算式で算出した額になります。 なお、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、別の計算方法で支給額を 求めます。詳細は以下のサイトをご確認ください。 参考|協会けんぽ『病気やケガで会社を休んだとき』 傷病手当金は同一の疾病に対して通算1年6か月支給されます。 しかし、インフルエンザは原因となるウイルスが複数あるため、感染するたびに 「別の疾病」の扱いになり、感染の都度、傷病手当金を受けることが可能です。 有給休暇と傷病手当金のどちらを選択するのか 基本的に、同じ日に有給休暇と傷病手当金の両方を選択することはできません。 ただし、仕事に就いていない日で、有給休暇による賃金日額が傷病手当金の日額より 少ない場合、その差額が傷病手当金として支給されることはあります。 また、どちらを選択するかは企業が一方的に決定することはできず、企業のルールを 踏まえ、最終的には本人の判断に委ねられます。 判断のポイントは以下のとおりです。支給額や支給される日が異なります。 【有給休暇】 取得日ごとに1日分の賃金が企業から支給されます。 企業の公休日は有給休暇を取得できないため、賃金の支給はありません。 【傷病手当金】 1日分の賃金より低い額になります(上記【傷病手当金 1日あたりの支給額の計算方法】 を参照)。 また、企業の公休日も支給されます。 有給休暇を事前申請としている企業では、当日申請や事後申請を受け付けていないケースも あるため、有給休暇のルールは就業規則を確認してください。 家族がインフルエンザにかかったとき 本人ではなく同居している家族がインフルエンザに感染するケースがあります。 対応例については以下のとおりです。 【対応例】 ・一定期間、休業をさせる(業務命令の休業になるため、休業手当の支払が必要) ・テレワークが対応可能か検討する ・特別休暇を取得させる ・本人の希望があれば有給休暇を取得させる ・小学校就学前の子どもが感染したときは「子の看護休暇」の利用を推奨する など 職場のインフルエンザ対策 インフルエンザは流行性があるため、ひとたび流行が始まると短期間で職場内感染が 広がるケースも見受けられます。 インフルエンザの感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」のふたつです。 従業員が安心して働くことができる職場づくりのひとつとして、以下のような感染予防対策 を行うことをおすすめします。 1 こまめな換気 限られた空間に多くの人が集まることが多い職場では、空気中にただようウイルスを外に 排出することが大切です。 また、新型コロナウイルス対策としても、十分な換気は重要です。 外へ出たウイルスは日光(紫外線)により不活化するため、こまめな室内の換気は ウイルス濃度の低下につながります。 2 適度な湿度の保持 空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。 インフルエンザは湿度の高い環境に弱いため、適切な湿度(50〜60%)を保つことが 重要です。 職場内に加湿器を設置するなどの対応も効果的です。 感染予防のための企業内周知 職場内の感染予防と同様に、1人ひとりが「感染しない」「感染させない」意識を持ち、 咳エチケットや手洗いなどを徹底することも大切です。 疲労が溜まっていたり、睡眠不足のときは免疫力が低下します。普段から十分な睡眠と バランスのよい食事を心がけることで免疫力も高まり、感染予防につながります。 厚生労働省の以下のサイトでは、感染防止やワクチンなどの情報がまとめて掲載されて おり、予防啓発のためのポスターも用意されています。 参考|厚生労働省『令和5年度 今シーズンのインフルエンザ総合対策について』 参考|厚生労働省『咳エチケット』 参考|厚生労働省『正しい手の洗い方』 まとめ インフルエンザは感染力も強く、毎年約10人に1人が感染しています。 いつ誰が感染するかは分からないため、急に欠勤する従業員が出た場合の業務の引継ぎ方法 や連絡方法などをあらかじめ決めておくと、従業員の不安も軽減されます。 労務担当者として、関連する手続を把握し、対応策を準備しておくことが大切です。

  • カスタマーハラスメントから従業員を守るために。

    近年、社会的な問題としてカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が ニュースで取り上げられるようになりました。 2023年9月には、精神疾患の労災認定基準にカスハラが追加されたことなどからも、 被害が深刻であることが伺えます。 しかしカスハラに対する認知度は高まってきているものの、十分な対策が あまりできていない企業も多いようです。 今回は、カスハラの具体的な内容や企業が対応すべきことについて解説します。 カスハラとはなにか カスハラとは、顧客や取引先がその立場を利用して、相手先企業やその従業員に 理不尽な要求をする行為です。 ただし、クレームのすべてがカスハラとなるわけではありません。 クレームには、商品やサービスの改善などの正当なものもあります。 カスハラは、不当な言いがかりや過剰な要求を行う悪質なクレームなど 社会通念上不相当なものを指します。 厚生労働省が公表した企業および従業員への調査によると、過去3年間にハラスメントを 受けた従業員の割合ではカスハラが2番目に多く、そして企業への相談件数は カスハラが3番目に多いという結果となっています。 参考|令和2年度 厚生労働省委託事業『職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)』 なお、カスハラは、個人客によるハラスメントといったイメージを持たれがちですが、 取引先も対象となります。 そのため、企業は業種を問わずカスハラの被害にあう可能性がある一方、逆にカスハラの 加害者となる可能性もあります。 カスハラの判断基準 カスハラの判断基準は法令等では定められていません。 そのため、企業は自社の判断基準を明確化し、その考え方や対応を十分に社内周知 しておく必要があります。 なお、考え方のひとつとして、以下の①②による観点で判断基準を決めることもできます。 ①顧客や取引先の要求内容に妥当性はあるか 自社サービスの過失や商品の欠陥などがあれば、改善を求めるクレームや苦情は妥当です。一方で、顧客の主張と事実を確認したとき、自社サービスや商品に過失が認められない などの事実無根の要求には妥当性がないと判断します。 ②要求する手段などが社会通念上相当な範囲か クレームの妥当性があったとしても、行き過ぎた要求や従業員の就業環境を害するもの など、社会通念上不相当なものはカスハラとなります。 たとえば、暴言や脅迫、長時間または執拗に繰り返されるクレームなどです。 状況次第では、傷害罪、暴行罪、脅迫罪、恐喝罪など、法令等に抵触する可能性も あります。 【カスハラとなる可能性のある行為例】 (出典)厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P9 カスハラがもたらす被害 カスハラは従業員にとって大きなストレスとなり、心身の不調を引き起こし、 休職や離職の原因になることもあります。 企業にとっても、クレーム対応にかかる時間コストの増加、休職や離職による人員不足、 それに伴う生産性の低下など、経営に大きくかかわります。 このようにカスハラは企業や従業員に大きな悪影響をもたらすため、カスハラ対策は 急務であるといえます。 (出典)厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P13 カスハラと労災認定 2023年9月、精神疾患の労災認定基準が改正されました。 この改正により「業務による心理的負荷評価表」に、カスハラとして 「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という項目が 追加されました。 この評価表は精神疾患の労災認定に用いられ、心理的負荷の出来事や強度などが 示されています。 詳しくは、厚生労働省の通達の別表1を参考にしてください。 参考|厚生労働省『心理的負荷による精神障害の認定基準について』別表1 業務による心理的負荷評価表』 カスハラ対応の難しさ カスハラが、カスハラ以外のハラスメントと大きく違うのが、 ハラスメントの行為者が自社の役員や従業員ではない 点です。 ここにカスハラ対応の難しさがあります。 1 社内だけの対応では不十分 ハラスメントの行為者が自社の従業員の場合、ハラスメントであると判断されれば 指導や懲戒など適切な対応を速やかに行うことができます。 しかし、カスハラは行為者が自社以外の者であるため、行為者に直接措置を取ることは 簡単ではありません。 現場や人事労務部門など社内の関係部署だけでなく、状況によっては取引先や弁護士、 警察など外部との連携も重要になります。 (出典)厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P40 2 取引先との関係 取引先との関係では、お互いの立場の違いにより力関係に差が生じることもあります。 (例) ・業務の受注側よりも発注側が優位 ・企業規模が大きい側が優位 など このような力関係を利用し、立場の強い側が相手側に対し、過大な要求や不当な取引の 強制をすることはカスハラとなります。 さらに状況次第では、独占禁止法で禁止されている優越的地位の濫用などにより、 刑事罰や行政処分を受ける可能性もあります。 こうした事態にならないよう、取引先とは日頃から健全で良好な関係を維持しておくことが 重要です。 3 取引先との間で発生したカスハラ対応 ①取引先からカスハラを受けた場合 まずは、自社の被害を受けた従業員やその上司、周囲の従業員などから発生状況を確認 したうえで、取引先にハラスメント行為の事実確認を依頼します。 状況によっては、取引先の担当者と一緒に、ハラスメント行為の疑いがある従業員に 対して事実確認を行うことも考えられます。 ②自社の従業員が取引先にカスハラを行った場合 自社の従業員が、取引先へカスハラを行った疑いが発生した場合、速やかに事実確認を 行います。 カスハラが事実であると判断したときは、就業規則等に基づき懲戒処分などの対応を します。 取引先には、途中経過や決定事項の報告、謝罪、今後の再発防止など、真摯に向き合い 対応することが大切です。 企業が対応すべきこと カスハラが発生しているにもかかわらず、企業が適切な対応をとらなかった場合、 安全配慮義務違反となる可能性もあります。 さらには、被害を受けた従業員から責任を追及される可能性もあり、実際に損害賠償請求を 認めた裁判例もあります。 ①賠償責任が認められた事例 ②賠償責任が認められなかった事例 (出典)厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P17 カスハラ発生時の対策はもちろんのこと、日頃から予防対策をとっておくことは 従業員のみならず企業を守るためにも重要です。 ここからは、カスハラ対策の例を紹介します。 1 カスハラ対策の基本方針や姿勢などの明確化 企業が、カスハラに屈することなく従業員を守る姿勢を示すことで、従業員が安心して 働ける職場環境を目指します。 2 カスハラ発生時の対応方法や手順を決めておく 現場ですぐに適切な対応ができるよう、対応方法や手順などの社内ルールを決めて おきます。マニュアルを作成することも有効な対策です。 3 相談体制の整備 相談窓口を設置するなど、迅速かつ適切に対応できる社内体制を整備します。 なお、カスハラ用に特別に窓口を設ける必要はありません。 2020年にパワハラ防止のため設置が義務化されたハラスメント相談窓口で カスハラの相談もできるように体制を整えておく方法もあります。 また、相談窓口の担当者は、一次対応者として事実関係の把握、被害を受けた 従業員への配慮など、慎重な対応が求められます。 カスハラに該当するか判断がつかない場合も含めて幅広い相談に応じるためにも 担当者向けの教育を定期的に行うことも大切です。 4 従業員の教育、研修 従業員への、カスハラに対する意識付けを定期的に行います。 ・カスハラに関する知識 ・対応方法など社内ルールの周知 ・相談窓口などの周知 ・自身が加害者側にならないための教育 など 5 被害従業員への配慮 被害を受けた従業員だけにカスハラ対応を続けさせることのないよう、 複数名または組織的に対応します。 そのほか、プライバシー配慮などカスハラから従業員を守ることを最優先します。 6 再発防止への取り組み 定期的に社内体制や社内ルールの見直しを行い、適切な体制づくりを継続的に行います。 【カスハラ対策チェックシート】 厚生労働省より、「カスタマーハラスメント対策チェックシート」が公開されています。企業用、従業員用の2種類があります。カスハラ対策にご活用ください。 参考|厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』P52~P54 おわりに 日頃からカスハラ対策に取り組んでいる企業の従業員からは、「カスハラ行為者に対して 落ち着いて対応ができた」「安心して働けるようになった」「企業にとって好ましくない顧客が来にくくなった」などの声も聞かれます。 カスハラ対策は従業員、そして企業を守ります。積極的に取り組むことをおすすめします。

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