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「」に対する検索結果が110件見つかりました

  • 知っておきたい、個別労働紛争とその解決制度

    「労使紛争」という言葉を、一度は耳にしたことがある方も 多いのではないでしょうか。 労使紛争には、労働組合など交渉力を持つ集団と企業との対立 といったイメージを持たれがちですが、従業員1名の企業であっても 労使紛争へと発展する可能性があります。 今回の記事では、労使紛争のなかでも個々の従業員と 事業主とのあいだで生じる労使紛争(以下、個別労働紛争)について 解説します。 「いじめ・嫌がらせ」が相談件数11年連続トップ 厚生労働省がまとめた「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、 2022年度に発生した個別労働紛争(法令等の違反に関するものを除く)の内容については、 「いじめ・嫌がらせ」が69,932件にのぼります。 このいじめ・嫌がらせは、後述する個別労働紛争解決制度の1つである 「専門の総合労働相談員による労働相談」では、11年連続で最多となっています。 参考|厚生労働省『令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況を公表します』 この「いじめ・嫌がらせ」の件数には、2022年度以降、法令等の違いにより パワーハラスメントに関する相談件数は含まれていません。 しかし、2022年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における 「職場におけるパワーハラスメント」に関する相談件数は50,840件にのぼり、 事実上の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、合わせて12万件を超えています。 このことからも、「いじめ・嫌がらせ」に関する問題解決には、 ハラスメントの防止対策を打つ必要性が分かります。 (出典)厚生労働省『令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します』 P4 個別労働紛争の解決手段と制度 「いじめ・嫌がらせ」を含め、個々の従業員と事業主(以下、紛争当事者)とのあいだで、 職場環境や労働条件などをめぐって何らかのトラブルが発生したとき、 お互いの主張が平行線をたどるなど、企業内で解決に至らず、話が錯綜して 泥沼化する場合もあります。 このように自主的な解決が困難となった場合、解決手段として主に以下のようなものがあります。 都道府県労働局や都道府県、民間団体、裁判所などが主体となって これらの解決制度(個別労働紛争解決制度)を実施しています。 あっせんによる紛争解決 個別労働紛争解決制度のひとつに、都道府県労働局が無料で行う制度があります。 この制度には、専門の総合労働相談員が対応する「労働相談」、紛争当事者に対して 問題点の指摘や自主的な解決の方向を示す「助言・指導」などがあります。 そして、これらだけでは解決に至らなかったときのさらなる解決手段として 「あっせん」も行っています。 ここからは、個別労働紛争解決制度のひとつである「あっせん」について解説します。 1 あっせんの特徴 あっせんとは、都道府県労働局に置かれる紛争調整委員会が紛争当事者のあいだに入り、 お互いの主張を確認し、両者に具体的なあっせん案(解決案)を提示するなどして 紛争の解決を図る手段です。 紛争調整委員会は、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家によって 構成されています。 ・対象となる紛争:労働条件や職場環境、労働契約など(あっせんについては 募集・採用関係は対象外) ・迅速かつ無料:裁判と比べて時間がかからず、無料で実施できる ・合意の効力:受け入れたあっせん案は民法上の和解契約(※)の効力をもつ ※和解契約とは、お互い譲歩し争いをやめることを約束する契約 ・プライバシーの保護:あっせんの手続は非公開 なお、従業員があっせんの制度を利用したことを理由として、事業主が従業員に対して 解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。 2 あっせんで解決に至らなかった場合 紛争当事者のいずれかがあっせん案に合意しなかったり、あっせんに不参加だったりと、 紛争の解決に至らなかったときの個別労働紛争解決制度による次の手段には 「労働審判」や「民事訴訟」などがあります。 これらは、あっせんと違い、裁判所による有料の制度です。 ①労働審判 労働審判は、地方裁判所に置かれる労働審判委員会が紛争当事者とのあいだに入り、 話し合いによる解決を図ります。期日(手続を行う日)は原則3回以内です。 なお、労働審判があっせんと大きく異なるのは、話し合いが不調に終わったときです。 この場合、労働審判委員会が最終判断(労働審判)を下し、紛争当事者のいずれかが 審判に対して2週間以内に異議申立てをすれば訴訟に移行し、異議がなければ 審判が確定します。 ②民事訴訟 民事訴訟では、さまざまな手段によっても紛争解決に至らなかったときなどの 最終的な手段として、裁判所の判決による紛争解決を図ります。 労働審判と違い期日回数の制限がないため、民事訴訟は解決までかなりの時間を 要することもあります。 企業がとるべき対応 ここまで述べたように、あっせんは労働審判や民事訴訟に比べ、時間や費用の面からも 負担の少ない解決方法であるといえます。 紛争内容にもよりますが、労働審判や民事訴訟のようなトラブルに発展しないよう、 あっせんによる解決を図ることが望ましいといえます。 そのため、従業員があっせんの申請を行った場合、企業が適切に対応できるよう、 あらかじめあっせんの制度について理解しておくことが大切です。 1 あっせんの流れ 従業員があっせんを申請した場合の基本的な流れは以下のとおりです。 ①企業のもとに紛争調整委員会から「あっせん開始通知書」が届く ②企業は、あっせんへの参加・不参加の意思を伝える ③参加の場合、あっせんの日程が決定・実施される (不参加の場合は打ち切りとなる) 画像ファイル(.jpg、.jpeg、.png)を選択 2 あっせん開始通知書 ある日突然、紛争調整委員会からあっせん開始通知書が届くと、企業としては 驚き身構えてしまうかもしれません。 しかし、ここで冷静に対応することが大切です。 あっせん開始通知書で、企業側のあっせんへの参加・不参加の意思確認が求められるため、 期日までに回答します。 なお、参加・不参加は企業の自由であり、不参加の場合でも企業に対し不利益な取扱いが なされることはありません。 3 あっせんへの参加 参加を選択した場合、紛争当事者双方の希望も考慮したうえで日程が決定されます。 そして、あっせん当日は以下のような内容が実施されます。 ①紛争当事者双方の主張を聞く ②紛争当事者双方による話し合いを促す ③紛争当事者双方が求めた場合、あっせん委員があっせん案を提示 この後、紛争当事者双方があっせん案を受諾した場合、あるいは話し合いに 合意した場合は、解決となり終了します。 一方、どちらかがあっせん案を受諾しなかったり、話し合いに合意しなかったときは、 あっせんは打ち切りとなります。その後については、このまま終了となる場合もあれば 、労働審判など別の手段に進む場合もあります。 4 対応しなかった場合のリスク 不参加を選択した場合、あっせんは打ち切りとなります。 しかし、紛争自体が終了するわけではありません。あっせんを申請した従業員にとっては 解決が図れなかったという結果となり、さらには不参加という企業の対応に ますます不信感を募らせ、トラブルが大きくなるリスクもあります。 その結果、労働審判や民事訴訟に発展する可能性もあります。 そのため企業としては、あっせんに参加し解決に向けた姿勢を示すことが、 トラブルを最小限に抑えるための選択ともいえます。 特定社会保険労務士の利用 企業があっせんに参加する場合、無事に円満解決できるかなど不安が多いものです。 その場合、専門家にあっせん代理を依頼する方法もあります。 あっせん代理の業務が認められているのは、弁護士と特定社会保険労務士です。 日頃から労務管理などを依頼している特定社会保険労務士がいる場合は、 状況も把握してもらいやすいため、その特定社会保険労務士に依頼するのも 一つの方法です。 また、全国社会保険労務士会連合会のWEBサイトには各都道府県にある社労士会の 会員リストが掲載されており、そちらから特定社会保険労務士を検索することもできます。 参考|全国社会保険労務士会連合会『社労士を探す』 あっせん開始通知書が届いた段階で早めに相談し、適切な対応を取ることを おすすめします。 おわりに 従業員と事業主とのあいだで発生するさまざまな労働問題では、企業内で解決を試みるも お互いが感情的になったり、一方が話し合いに応じないなど、両者の歩み寄りが難しい 状況もよく見受けられます。 紛争がこじれてしまった場合、労働審判や民事訴訟など裁判所による解決手段は ありますが、2022年の民事全体の平均審理期間は10.5か月と年々長期化の傾向にあります。 これは企業にとって、金銭的・時間的にも非常に大きな負担となり、状況によっては 社会的イメージの低下にも繋がりかねません。 そのため、あっせんの活用で両者が歩み寄り、円満・迅速に問題解決を図ることは、 非常に有効な手段といえます。

  • SNSへの書き込みによる「炎上」と経営上のリスク

    すべての世代でインターネットが身近になり、Facebook、twitter、 Instagram、LINEなど コミュニケーションツールとしてのSNSが多様化しました。 企業内でもデジタルツールを用いた労使コミュニケーションが活用されていますが、 メリットもある一方で、SNSへの書き込みによる「炎上」などが企業経営を脅かすことも 増えてきました。 技術革新の進展がなぜ企業経営を脅かすのか SNSの使い方や情報の扱い方には、世代間や個人によって差があります。 ものごころついた頃からスマホやパソコンなど、さまざまなメディア機器に囲まれて 生活してきた世代の従業員は、デジタルネイティブ世代とも呼ばれ、 日頃からSNSに身近に接しています。 しかしSNS投稿は不特定多数の人たちが見るものです。 不適切な投稿は、社会的制裁による営業停止や多額の損失に繋がり、廃業に追い込まれる ケースもあるため、企業内でもネットリテラシーが問題視されるようになってきました。 SNSへの書き込みによる「炎上」 総務省「情報通信白書」では、炎上の定義を ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し収まりがつかなさそうな状態や、 特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などで バッシングが行われる状態としています。 SNSへの書き込みによる炎上は携帯電話やSNSが普及し始めた2011年を境に急激に 増加しており、個人だけでなく企業も炎上の対象となっています。 「炎上」の具体的な事例 【ケース1】 職場の不本意な処遇への不満をSNS上に投稿 ある従業員は、日常の情報交換の場としてSNSを使用していましたが、 ある日職場で受けた不本意な処遇の愚痴をSNS上に投稿しました。 その後、アカウントや投稿写真などから、投稿者の企業名が特定されます。 そして同じ問題意識を持つ多くの一般ユーザーからの共感が集まり、その企業に対して 社会的な批判が巻き起こります。 従業員は厳重注意として処分を受け、SNS投稿を削除しますが、ネット上に刻まれた情報は デジタルタトゥーと称されるように半永久的に残ることになりました。 【ケース2】 飲食店のアルバイト店員が厨房の冷蔵庫やシンクに入って、悪ふざけ写真を投稿 アルバイト店員が厨房のシンクや冷蔵庫に身体をいれたり、寝そべったりなど、 不適切で不衛生な悪ふざけ写真をネットにアップしたことで騒動になりました。 その企業は、営業停止、保存食材の廃棄、冷蔵庫などの清掃を行いましたが、 信用は回復せず事業停止に追い込まれています。 これはアルバイト先での不適切な動画をアップする若者の行為、バイトテロのケースの 一つです。 バイトテロによる炎上は、ニュースでも数多く取り上げられ、企業名も公表されます。 不衛生な状態での食品販売・提供が認められたときは、食品衛生法違反にもなり、 飲食店として社会的信頼の回復が困難となります。 【ケース3】 空港内の土産店で、俳優のクレジット伝票を女性店員がtwitterへ投稿 某俳優を接客した女性店員がクレジット伝票を撮影し、LINEで別の店員数名に 送信したところ、受信したアルバイト女性が俳優を名指しした上で、 カード番号の一部や署名が写った画像をtwitterへ投稿したケースです。 土産店を営む企業は、俳優や所属事務所に謝罪しました。 飲食店や宿泊施設などには、著名人・芸能人が来店することもあるでしょう。 それを従業員が不用意に投稿すれば、顧客情報の漏えいとなり、企業全体の信頼が 失墜します。 特にこのようなケースのtwitterでの炎上は、バカッターとも呼ばれ、 過去、ネット流行語大賞にもランクインしています。 【ケース4】 紳士服販売店が「透けハラ」対策をテーマにキャンペーンとしたところ、意図せぬ批判 某紳士服販売店が「透けハラ」を解決するための透けないシャツのマーケティングとして、 自身が体験したシャツの透け体験をtwitterで募集したところ、ハラスメントをあおっている 表現ではないかと炎上しました。 その後、「透けハラ」キャンペーンは一時中止されました。 企業が発信した内容が、企業意図と異なる表現として一般ユーザーに受け取られ批判が 広まったことによる炎上です。 企業がマーケティングとして狙った発信であっても、不適切な内容であるときは、企業の評価が下がったり信頼を失うリスクもあります。 企業ができるリスク対策とは 1 就業規則の見直し 就業規則には、会社として守らなければならないルールを記載する服務規律という部分が あります。 労働基準法では、記載の有無や範囲が定められていませんので、定期的に現代の働き方に あった服務規律の見直しを行う必要があります。 勤務中のSNS等の閲覧や不用意な投稿の禁止、職務で知り得た個人情報の取扱について などを、服務規律に記載されることをおすすめします。 対象の範囲については、在籍中だけでなく退職後においても同様とすることも重要です。 職場内に、デジタルデバイスを持ち込むことを禁止することも有効です。 規定例の一つをご紹介します。 【規定例】 労働時間中に、職務に関係のないWEBサイトやSNSを閲覧し、または投稿を行わないこと。また、SNSその他の場所において職務上必要のない社内情報の発信を行わないこと。 より詳細にルールを定めたいときは、秘密情報保護規程やSNS利用管理規程など、 就業規則とは別の規程を定めます。 2 ITリテラシーを高める研修など ITリテラシーとは、ITに関連する情報技術の理解力、使いこなすスキルのことです。 研修等によるITリテラシーの向上は、生産性向上、適切なコミュニケーション、 セキュリティの強化に繋がります。 また、コンプライアンス研修などで企業を取り巻く法令等に関する具体例を材料として、 従業員ひとり一人にコンプライアンスの意識づけをすることもおすすめです。 3 労使コミュニケーションの強化 コミュニケーションの不足が不適切な投稿を招くこともあります。 特にデジタルネイティブ世代の従業員にとって、愚痴や疑問は社内ではなくSNSに 聞くことは当たり前になっています。 労働環境に関する考え方が多様化している今だからこそ、1on1などの定期面談などで 労使コミュニケーションの強化をはかり、企業と従業員の認識の違いを埋める必要が あります。 タイムラインを通じた個人の価値観の強化 SNSのタイムラインでは、自分の関心のあるものや共感できる人をフォローする ことにより、自分の求める情報を自動的に受信できます。 自身の価値観や労働環境に関する個人的な考え方などを発信すれば、同様の問題意識を 持つ人の共感を即時に得られることから、個人の考え方が強められ、職場への不満が 悪化しがちです。 SNS投稿で日頃のストレスや苛立ちを吐き出し、気持ちのコントロールをしようとする 人も少なくありません。 技術革新の進展は、企業経営にポジティブにもネガティブにも影響を及ぼします。 企業が目指す姿や企業ルールについて従業員と認識を共有した上で、新技術を円滑かつ 効果的に活用できるよう社内整備やITリテラシー研修を進めてください。

  • 令和5年分年末調整の変更点について(年末調整書き方ガイド付)

    企業が給与を支払うときに、従業員の給与や賞与から所得税を徴収することを 源泉徴収といいます。 しかし毎月徴収している所得税の額はあくまで概算の金額のため、年末調整により 税額を確定します。 年末調整とは、年末に本来徴収すべき所得税の一年間の総額を再計算し、既に源泉徴収 している合計額と比較して過不足金額を調整することをいいます。 今回の記事では、令和5年分の年末調整の変更点をまとめました。 年末調整の対象となる人 年末調整の対象者は、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」 を提出した人です。 年末調整には、12月に行う年末調整と年の途中で行う年末調整の2種類があります。 【12月に行う年末調整の対象者】 対象者は、企業に1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務して いる人です。 ただし、以下のいずれかに当てはまる人は除きます。 ・その年の給与収入が2,000万円を超える人 ・震災や火災などの災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および 復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人 ・2か所以上から給与の支払を受けており、自社以外へ扶養控除等(異動)申告書を 提出している人 ・年末調整を行うときまでに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人 【年の途中で行う年末調整の対象者】 対象者は、以下のいずれかに当てはまる人です。 ・海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人 ・死亡によって退職した人 ・著しい心身の障害のために退職した人(退職した年に再就職し、給与の支払を受ける 見込みのある人は除きます。) ・12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人 ・パートタイマー等で働いていたが退職し、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円 以下の人(退職した年に再就職し、給与の支払を受ける見込みのある人は除きます。) 令和5年分年末調整について 令和5年9月22日、 国税庁より「令和5年分年末調整のための各種様式等」が発表 されました。 【令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 【令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 【令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書』 【令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書のイメージ】 以下より、ダウンロードしてください。 参考・ダウンロード|国税庁『令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書』 令和5年分年末調整のポイント(昨年からの変更点) 令和5年分の年末調整は、過去の源泉所得税の改正の影響により、おさえておきたい変更点が3つあります。 1 非居住者である扶養親族にかかる扶養控除に関する適用の変更 令和2年度税制改正により、令和5年1月1日以降、扶養控除の対象となる扶養親族の範囲から、30歳以上70歳未満の国外に居住する非居住者が除外されます。 この改正に伴い、「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から、非居住者である親族欄が変更されています。 (出典)国税庁『令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 ただし、一定の要件のいずれかに該当する場合は今まで通り扶養控除の対象になります。 【一定の要件とは】 ① 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者 ② 障害者 ③ 扶養控除の適用を受けようとする所得者から、その年に生活費または教育費に充てる ための支払を38万円以上受けている者 なお、一定の要件に該当し扶養控除の適用を受ける場合は、扶養控除等(異動)申告書に 書類の添付が必要になります。 2 退職手当を有する配偶者・扶養親族欄の追加 令和4年度税制改正により、「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から、住民税に関する事項の欄に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」が追加されています。 (出典)国税庁『令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』 配偶者や扶養家族が、退職手当の受け取りにより所得税法上で扶養対象外となった 場合でも、住民税においては扶養対象となる方を記入するための項目です。 年末調整の計算に影響はありませんが、企業が市区町村に提出する給与支払報告書に 記載する必要があります。 3 住宅ローン控除関連の変更 令和4年度税制改正で、住宅ローン控除区分の追加・変更が行われています。 住宅取得した初年度は確定申告をするため、令和5年分の年末調整より対象者の確認が 必要となります。 ① 住宅借入金などの年末残高の限度額、控除率および控除期間が住宅の種類などに応じて変更 令和4年から令和7年までのあいだに入居した場合の住宅借入金などの年末残高の限度額、 控除率および控除期間が住宅の種類などに応じて変更されました。 ② 適用対象者の所得要件が2,000万円以下に引き下げ 住宅借入金等特別控除適用の所得要件は、その年の合計所得金額が3,000万円以下でしたが、今回の改正により2,000万円以下へ引き下げられました。 ③ 借入金残高証明書の添付が不要に 令和5年1月1日以降に取得した住宅については、年末調整での借入金残高証明書の添付が 不要とされました。 令和6年分の年末調整で提出する「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」より 適用となりますので、令和5年分の年末調整では従来通りの提出となります。 令和5年分年末調整申告書の書き方ガイド 年々、年末調整申告書の書き方が複雑になってきています。申告書を配布する際に、 書き方ガイドを添えることで、書き方についての問い合わせや誤りが減り、年末調整 担当者の負担を減らすことができます。 こちらの書き方ガイドを配布していただき、スムーズな年末調整を進めてください。 参考・ダウンロード|『令和5年分 年末調整書き方ガイド』 参考・ダウンロード|『住宅借入金等特別控除申告書書き方ガイド』

  • 2024年4月、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。

    2019年4月(中小企業は2020年4月)より、働き方改革の一環として、長時間労働の 解消などによる労働環境の改善を目指した「時間外労働の上限規制」が施行されています。 建設業については、この時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されてきましたが、 2024年4月からいよいよ上限規制が適用されます。 今回は、建設業における時間外労働の上限規制についてと、今後の規制内容や企業に 求められる対応について解説します。 建設業が猶予されてきた背景 これまで、建設業や自動車運転業務、医師などについては、時間外労働の上限規制の 適用が猶予されてきました。 しかし、2024年4月以降、これらの事業・業種についても時間外労働の上限規制が 適用されます。(一部、今後も原則と異なる取扱いもあります。) (出典)厚生労働省『時間外労働の上限規制わかりやすい解説』P6 建設業に対し5年間の猶予期間が設けられていた理由の1つとして、長時間労働の常態化が 挙げられます。 厚生労働省のまとめた毎月勤労統計調査からも、他の業種と比べ、労働時間が長く 休日も少ないことが分かります。 ・年間の実労働時間:全業種と比べて建設業は90時間⻑い ・年間の出勤日数:全業種と比べて建設業は16⽇多い(つまり休日が16日少ない) 約20年前と比べて建設業も改善傾向にあるものの、全業種と比べて建設業は改善の幅が 少ないことがわかります。 (出典)国土交通省『建設業の働き方改革の推進 令和5年6月』P4 こうした背景には、深刻な人手不足があります。 資材不足や資材価格の高騰などによる工期の遅れが相次いで問題となりました。 それをカバーするために長時間労働や休日の減少が起こり、賃金水準の低さなども 相まった結果、人手不足に拍車をかけるといった悪循環が生まれてきました。 このような状況から、建設業に時間外労働の上限規制を適用することはすぐには 難しいと判断され、2024年3月末までの5年間、猶予期間が設けられることとなりました。 2024年4月以降、何が変わるのか 法定労働時間や法定休日などの以下の内容については、建設業でもすでに原則のルールが 適用されているため、今後も変わりません。 ・法定労働時間:1日8時間・1週40時間まで ・法定休日:毎週少なくとも1回(または4週間に4回) ここからは、建設業における時間外労働の取扱いに関する2024年4月からの変更点を 説明します。 1 時間外労働の上限 これまで建設業では、時間外労働の上限規制が適用除外となっていましたが、 今後は原則、月45時間、年360時間が時間外労働の上限規制となります。 (1年単位の変形労働時間を導入の場合、月42時間、年320時間) 2 臨時的な特別な事情がある場合 事業主は、臨時的な特別な事情がある場合、特別条項付きの36協定を締結・届出 することで、月45時間、年360時間を超えて従業員を労働させることができます。 これまで建設業では、特別条項による上限はありませんでした。 つまり、特別条項付きの36協定を締結・届出すれば、制限なく時間外労働をさせることが できるといった状況でした。 しかし、今後は、特別条項付きであっても以下のような上限があります。 ①時間外労働 ・年720時間以内 ・月45時間(※)を超えることができるのは年6回が限度 ※1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間 ②時間外労働と休日労働の合計 ・月100時間未満 ・2~6か月それぞれの月平均が80時間以内 なお、②については、特別条項の有無にかかわらず、年間を通した時間外労働と 休日労働の合計を、常に「月100時間未満」かつ「2~6か月平均80時間以内」にしなければ ならないため、注意が必要です。 (出典)石川労働局『令和6年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されます』P2 3 災害時における復旧および復興事業の例外 上限規制の適用後も、災害時における復旧および復興の事業については例外があります。 【例外の内容】 以下の2つが適用されません。 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満 ・時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月それぞれの月平均が80時間以内 【対象となる事業】 以下のような復旧および復興の事業が対象です。 ・特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧 ・仮設住宅や復興支援道路の建設 など なお、この例外を適用するためには36協定の締結・届出が必要で、36協定届も新しい 様式となっています。様式については、後述の「36協定届の新様式」でご紹介します。 【労働基準法第33条との違い】 労働基準法第33条では、災害など客観的に避けることのできない理由により臨時に 時間外労働などの必要が発生したとき、労働基準監督署の許可を受けることで、 36協定で定める限度とは別に時間外労働や休日労働をさせることができるとされています。この場合、時間外労働の上限規制はかかりません。 (業種は建設業のみならず、すべての業種が対象) この「労働基準法第33条」と、建設業の「災害時の復旧および復興の事業」との違いは 下の図を参考にしてください。 (出典)茨城労働局『建設の事業における時間外労働の上限規制について』P16 4 罰則の適用 時間外労働の上限規制に違反した場合、今後は罰則が科されるおそれがあります。 (6か月以下の懲役または30万円以下の罰金) そのため、企業は上限を上回ることのないよう適切な労働時間の管理が求められます。 企業に求められる対応や注意点 企業は、時間外労働の上限規制の適用に向けた対応として、以下のような取り組みが 求められます。 1 業務の効率化 長時間労働が常態化している職場では労働時間の見直しは欠かせません。 従来と同等以上の労働生産性を確保するには、業務効率化が非常に重要になっていきます。 既存の工程や業務フローの見直し、ミーティングの効率化などを図る必要があります。 2 適切な労働時間の管理 時間外労働の上限を超えないためには、労働時間の管理を適切に行うことが必要です。 そのためにも、出勤・退勤時間や休日などを管理する勤怠管理システムの導入は 有効な手段です。 勤怠管理システムは数多く販売されていますが、それぞれ機能や特徴が違うため、 自社に適したものを導入してください。たとえば現場作業など直行直帰する従業員が 多い職場の場合、スマートフォンなどによる出退勤の打刻機能などが利用できると、 正確な時間管理を行いやすくなります。 3 労働時間に対する正しい認識 労働時間を管理するためには、労働時間について正しく認識しておくことも必要です。 労働時間とは、従業員が企業の指揮命令のもとにある時間をいいます。一見、当たり前の ように感じるかもしれませんが、労働時間になるか判断に迷うケースもあり、過去には 裁判で争われた事例もあります。 下の図は、厚生労働省のサイトで紹介されている「労働時間になるかが問題になりやすい ケース」です。参考にしてください。 (出典)厚生労働省『建設業 時間外労働の上限規制 分かりやすい解説』P10 4 適正な工期の設定 工期に余裕のない建設工事では、急ぐあまり従業員に長時間労働を強いることもあり、 それが施工ミスや労働災害の発生にも繋がる危険性があります。 そのため、時間外労働の発生を抑えるためには、適正な工期の設定が欠かせません。 以下の国土交通省のリーフレットでは、工期の設定において考慮すべき事項や、 発注者・受注者それぞれが取り組むべき事項などが掲載されていますので、参考にしてください。 参考|国土交通省『建設工事における適正な工期の確保に向けて』 36協定届の新様式 現在の建設業では、時間外労働の上限規制の適用が猶予されているため、36協定届に ついては、他の業種と異なる様式(様式第9号の4)が使用されています。 2024年4月以降は建設業も時間外労働の上限規制が適用され、さらに災害時の復旧・復興の 事業では例外として一部適用除外となることから、締結内容によってこれまでと様式が 変わりますので注意してください。 具体的な記載方法については、以下の厚生労働省のリーフレットの記載例を参考にしてください。 参考|厚生労働省『建設業 時間外労働の上限規制 分かりやすい解説』 おわりに 2024年4月まで、いよいよあと半年となりました。 時間外労働の上限規制に向けた対応では、まだまだ解決しなければならない課題が あると思います。 しかし、建設業への就業者、なかでも若年層の就業者が少ないことからも分かるように、 現在の建設業界は決して労働環境がよいとはいえず、長時間労働の解消や賃金水準の 改善など、ワークライフバランスの実現に向けた対策が早急に求められています。 また、この対策は、建設工事の受注者側だけが取り組むのではなく、発注者側の理解も 必要不可欠です。 受注者・発注者とのあいだで積極的に協議し、工期を適切に設定することも、時間外労働の 上限規制に向けた対応、ひいては労働環境の改善に大きく繋がる重要なポイントとなります。

  • 無期転換ルールの運用上の原則と例外について

    従業員は、同じ企業とのあいだで、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の 通算期間が5年を超えた場合に、希望をすれば期間の定めのない労働契約(無期労働契約) へ変更することができます。 このルールを「無期転換ルール」といいます。 企業は、無期転換ルールに対応できる制度設計をする必要があります。 なお、大学の教員などは、この無期転換ルールが5年ではなく10年で適用されます。 今回の記事では、無期転換ルールの原則と例外についての概要や、その運用方法を 紹介します。 無期転換ルールの概要 無期転換ルールとは、同一の企業とのあいだで、有期労働契約が1回以上更新されて 通算5年を超えたときに、従業員が希望するだけで無期労働契約に変更できるルールです。 企業は、従業員からの無期労働契約に変更したいという希望を拒むことはできません。 なお、実際に無期労働契約に変更されるのは希望したときではなく、次の更新時に 無期労働契約として新たな契約が締結されます。 ただし契約期間は無期に変更されますが、その他の労働条件(賃金など)については 以前のままです。 【例 契約期間が1年の場合】 【例 契約期間が3年の場合】 (出典)厚生労働省『無期転換ルールについて』 なお、同一の企業とのあいだで有期労働契約を締結していない期間、すなわち 「無契約期間」が、一定の長さ以上にわたる場合、それ以前の契約期間は通算対象から 除外されます。これをクーリングと呼びます。契約をリセットするための無契約期間を 「クーリング期間」といいます。 【例 通算契約期間が1年に満たない場合】 無契約期間以前の通算契約期間が1年に満たない場合、以下の期間に該当するときは 無契約期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。 (出典)厚生労働省『無期転換ルール ハンドブック』P3 【例 通算契約期間が1年以上の場合】 無契約期間以前の通算契約期間が1年以上の場合、無契約期間が6か月以上であれば、 無契約期間以前の契約期間は、通算契約期間に含めません。 (出典)厚生労働省『通算契約期間の計算について(クーリングとは)』 無期労働契約へ転換するメリット 現在働いている有期契約労働者の無期労働契約への変更は、企業と従業員の双方に 以下のようなメリットが期待できます。 1 意欲と能力のある労働力を安定的に確保しやすくなる 企業:自社の実務や事情などに詳しい無期契約労働者を比較的容易に獲得できます。 従業員:雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約に変更することで、 安定的かつ意欲的に働けるようになります。 2 長期的な人材活用戦略を立てやすくなる 企業:有期労働契約から無期労働契約に変更することで、長期的な視点に立った 社員育成が可能になります。 従業員:長期的なキャリア形成を図ることができます。 無期転換ルールに関する労務管理上の注意点 1 雇止め・契約期間中の解雇などについて 企業が無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が 発生する前に雇止めや契約期間中の解雇などを行うことは、法律の趣旨に照らして 望ましいものではありません。 有期労働契約の満了前に企業が一方的に更新年限や更新回数の上限などを設けることは、 不当な雇止めとして許されない場合もあります。 また、契約期間途中での解雇は、やむを得ない事由がある場合でなければ認められません。 さらに、契約更新上限を設けたうえでクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用を 約束して雇止めを行うことなどは、法律の趣旨に照らして望ましいものとはいえません。 2 社員区分による処遇について 無期転換ルールで無期労働契約に転換した従業員の労働条件は、就業規則などに別段の 定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一となります。 しかし、無期転換者と有期契約労働者の労働条件で契約期間以外に差がない場合や、 無期転換者と正社員(一般的に無期契約労働者のことが多い)との役割や責任、処遇の 区分とそれらの根拠が明確になっていない場合には、いずれ従業員の中に不公平感が 生まれ、職場の一体感を損なうなどのトラブルにつながる可能性があります。 また、法律的にも同一労働同一賃金の原則に抵触する可能性があります。 導入の手順 トラブルを未然に防ぐために、無期転換ルールの導入では、以下の手順を参考に してください。 1 有期契約労働者の就労実態を調べる 現在働いている従業員を、正社員や多様な正社員(勤務地や労働時間などの労働条件に 制約を設けた正社員、限定正社員とも呼ぶ)、有期契約労働者などの社員区分ごとに 分けて人数を記録します。 その場合、有期契約労働者については、通算契約期間や更新回数、無期転換申込権の 発生時期なども把握しましょう。 また、正社員とそれ以外の社員区分が担う職務内容がどの程度異なるかも記録します。 【例 有期契約労働者の現状把握の記録】 (出典)『厚生労働省『無期転換ルールに対応するための取組支援ワークブック』P13 2 無期労働契約への転換方法を検討する 無期労働契約への転換方法は、主に以下の3つがあります。 ①雇用期間の変更 契約期間のみを変更する転換です。 対象は、無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない従業員です。 労働条件を変更せず、期間の定めが有期から無期になります。 ②多様な正社員への転換 正社員と比較して、勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた多様な 正社員への転換です。 対象は、職務能力や職務内容は正社員と同等でありながらも、家庭の事情などから、 転居・転勤を伴う移動が行えないために勤務地に制約がある、または正社員と同じ 時間だけ働くことができないような従業員です。 登用試験や面接などで的確に能力を見極めたうえで、多様な正社員へ転換します。 ③正社員への転換 業務内容に制約がなく、入社後定年に達するまで勤務することを想定した、正社員への 転換です。 対象は、職務能力や職務内容が正社員と同等の従業員です。登用試験や面接などで 的確に能力などを見極めたうえで、正社員へ転換します。 いずれにおいても、処遇の差異とその根拠を明確にしておくことで、トラブル防止に つながります。実際に無期転換を進める場合には、従業員本人の意向などを踏まえながら、 いずれの転換方法がふさわしいのかについて決定することが大切です。 また、無期転換をして終了ではなく、中長期的な登用のあり方をあらかじめ想定して おくことも大切です。 【例 中長期的な登用の方法】 (出典)厚生労働省『無期転換ルール ハンドブック』P9 3 適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する 現状の社員区分において制度や施策が整備されているのか、また、そもそも社員区分を 新設する必要があるのか、それぞれの社員区分の処遇の違いなどを検討します。 そのうえで、就業規則の改定箇所の検討を行います。無期転換者用の就業規則を作成した 場合には、規程の対象となる従業員を、正社員の就業規則の対象から除外しておく必要が あるため、正社員の就業規則の見直しも検討してください。 4 運用と改善を行う 無期転換をスムーズに進めるうえで大切なことは、制度の設計段階から労使の コミュニケ―ションを密に取ることです。労働組合との協議を行うことや、労働組合が ない場合は労働者の過半数代表など従業員との協議を行う場を持ち、労使双方に納得性の ある制度をつくることが、スムーズな導入・運用につながります。 また、無期転換申込権については、従業員への事前説明があることが望ましいです。 2024年4月から、労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加され、 無期転換申込権が発生する契約の更新時に「無期転換申込機会」と「無期転換後の 労働条件」を明示する必要があります。 参考|厚生労働省 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト『2024年4月から労働条件明示のルールが変わります』 無期転換ルールの例外 無期転換ルールには、2つの例外があります。 1 高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者および定年後引き続き雇用される有期雇用労働者に対する特例 専門的な知識を有している、または定年後にも継続して同じ企業に雇用されている 有期契約労働者は、企業が法令上定められている雇用管理を計画し、都道府県労働局長の 認定を受けた場合に、一定の期間、無期転換申込権が発生しなくなります。 【専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法の概要】 (出典)厚生労働省『無期転換ルールについて』無期転換ルールの例外(その1) 2 大学等および研究開発法人等の研究者、教員等に対する特例について 大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの 期間(原則)5年を10年とする特例があります。 【特例の対象者】 (出典)厚生労働省『大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について』 おわりに 無期転換ルールは、期間を定めて従業員を雇用しているすべての企業に関係のある ルールです。 無期転換ルールの導入には、人材の確保が容易になることや、社員の育成を長期スパンで 行うことができるなどのメリットがありますが、現在の制度を見直さないままの導入は トラブルにつながる可能性があります。 無期転換ルールを導入する場合の制度設計は、必ず専門家に相談をしてください。

  • 建設業における墜落・転落の防止対策。

    厚生労働省がまとめた令和4年の労働災害発生状況によると、 休業4日以上の死傷者数は過去20年で最多の132,355人となり 一方、死亡者数については過去最少の774人となりました。 このように死亡者数は全体的に減少していますが、内訳をみると「墜落・転落」による 死亡者数は10年以上変わらず高いままです。 さらに、これらの事故は10年以上連続で全体の中で最も多い割合を占めています。 また、休業4日以上の死傷者数においても「転倒」「動作の反動・無理な動作」に次いで 「墜落・転落」が多い結果となっています。 今回の記事では、この「墜落・転落」の発生件数が多い建設業における、墜落・転落の 防止対策を解説します。 墜落・転落、建設業での発生が依然として最多 労働災害で毎年発生件数の上位に位置する「墜落」「転落」「転倒」。 これらの事故はニュースでもよく耳にするワードです。 なかでも「墜落・転落」は、先述のとおり死亡などの大きな事故につながる 非常に危険な災害です。 1 墜落・転落・転倒の違い 「墜落」「転落」「転倒」は、一般的には以下のような違いがあります。 【墜落】 こう配が40度以上の斜面から、身体が完全に宙に浮いた状態で落ちること 【転落】 階段や坂道など、こう配が40度未満の斜面に身体を接しながら落ちること 【転倒】 ほぼ平面で転ぶ場合のことで、つまずきや滑りにより倒れること 2 建設業の墜落・転落、いまだ横ばいの状況 死亡者が発生した労働災害(以下、死亡災害)を業種別にみると、「墜落・転落」による 死亡者数が最も多いのは建設業です。 厚生労働省の発表によると、建設業の死亡災害のうち、「墜落・転落」による災害が 占める割合はここ数年も減少することなく、毎年40%前後で推移しています。 建設業は、他の業種に比べ、高所作業や重機などを扱う危険な環境での作業が多いことが、このような結果につながっているといえます。 事業者が対応すべきこと 事業者は、法令等に基づき、労働災害防止のための必要な措置を講じなければなりません。そのため、建設業においても以下のような対応が求められます。 1 安全衛生教育の実施 従業員に対し、安全や衛生に対する意識づけのための教育を実施しなければなりません。 すべての業種で実施が必要とされる「雇入れ時」「作業内容の変更時」における教育の ほか、建設業では、以下の要件に該当する場合は必要な教育を実施しなければなりません。 ・特別教育:危険・有害な業務に従業員を新たに就かせるとき ・職長教育:職長や現場で指揮監督する者として、新たに従業員を就かせるとき 2 健康診断の実施 すべての業種で、常時雇用する従業員に対し、原則1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を 受診させなければなりません。 また、特に有害である一定の業務に常時従事する従業員に対しては、6か月以内ごとに1回、 「特定業務従事者の健康診断」を受診させる必要があります。 なお、この対象となる一定の業務には深夜業(※)も含みます。そのため、夜間工事などを 行う従業員は受診対象となる可能性があります。 ※深夜業(22時~5時):週に1回以上または月に4回以上行う場合が対象 3 作業環境測定の実施 従業員の健康被害を防ぐため、作業場の有害物質などを定期的に測定しなければ なりません。なお、法令等にて10種類の作業に対し測定が義務づけられています。 詳しくは、以下の厚生労働省のサイトを参考にしてください。 参考|厚生労働省 職場のあんぜんサイト『作業環境測定』 4 リスクアセスメントの実施 リスクアセスメントとは、労働災害などの発生要因となるような危険性または 有害性などの調査を行い、その結果に基づいてリスクの低減を図る取り組みのことです。 職場に潜むリスクを認識して対策することは、労働災害などの発生防止や快適な 職場環境づくりに役立ちます。 参考|厚生労働省 職場のあんぜんサイト『建設業におけるリスクアセスメントのすすめ方』 5 長時間労働の解消 建設業では、深刻な人材不足などにより、長時間労働が常態化している現場も少なく ありません。 長時間労働は、従業員の肉体的・精神的ストレスを生み、労働災害につながることも あります。今後は工期の見直しや業務効率化などにも取り組みながら、従業員の 長時間労働の問題を解消する必要があります。 6 現場における安全対策 当然のことながら、実際の作業現場における安全対策は非常に重要です。 法令等においても、「墜落・転落」についての安全対策が定められています。 詳しくは、後述の「建設業における墜落・転落の安全対策」でご紹介します。 【発注者や元請事業者の責務】 建設業では、発注者から仕事を請け負った元請事業者が、その全部または一部を 下請事業者に依頼するという形態が一般的によくみられます。 この場合は、発注者だけではなく元請事業者にも労働災害防止のための責務があります。 ①発注者の責務 施行方法や工期など、労働安全衛生を損なうおそれのある条件などを附さないよう 配慮する ②元請事業者の責務 元請や下請の従業員が混在する現場での労働災害防止のため、連絡調整、指導、作業場の 巡視、下請事業者に使用させる機械などの安全確保などを行う 建設業における墜落・転落の安全対策 建設業における死亡災害を、「墜落・転落」が発生した場所別にみると、屋根などの端や 開口部が約3割、足場が約2割となっています。そのほか、近年増加傾向にあるはしごや 脚立、そして木造建設工事における梁(はり)や桁(けた)といった場所による災害も 毎年一定数を占めています。 労働災害を防ぐためにも、災害の発生要因をふまえ、それぞれの現場で適切な対策を 行うことが大切です。 【墜落・転落の発生要因の例】 ・手すりなどの設置がされていない ・足場などの安全点検が行われていない ・墜落制止用器具が適切に使用されていない ・はしごや脚立が適切に使用されていない ・知識不足や誤った作業方法 など (出典)厚生労働省 職場のあんぜんサイト『労働災害事例集』 1 作業床などによる墜落防止措置 高さ2メートル以上の現場で墜落のおそれがある場合は、足場を組み立てるなどして 作業床を設置しなければなりません。 作業床とは、高所作業や機械の点検など、作業のために設置された床のことで、法令等に よる基準を満たしたものでなければなりません。 なお、作業床の端や開口部などには、囲いや手すり、覆いなどの設置も必要とされて います。 (出典)厚生労働省『足場(作業床)の設置』 2 墜落制止用器具の使用 作業床や開口部の囲いなどの設置が難しいときは、要求性能墜落制止用器具 (以下、墜落制止用器具)を使用しなければなりません。 法令等の改正により、現在は、原則フルハーネス型の墜落制止用器具を使用することと なっています。 フルハーネス型とは、身体が器具から抜け出てしまったり、身体を過大に圧迫するなどの リスクが低減されるよう、肩や腿、胸などの複数のベルトで構成された器具です。 (高さが6.75メートル以下の作業場では、胴ベルト型(一本つり)を使用することも可能) (出典)厚生労働省『安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!』 3 足場における墜落防止措置(2023年10月以降) 法令等により足場からの墜落防止措置が強化され、2023年10月以降は以下の措置を 順次講じなければなりません。 ①点検者の指名(2023年10月から) 足場の点検を行うときは、あらかじめ点検者を指名しなければなりません。 ②点検者の氏名の記録・保存(2023年10月から) 足場の組立て、一部解体、変更などの後の点検後、点検者の氏名を記録・保存しなければ なりません。 ③一側足場の使用範囲の明確化(2024年4月から) 幅が1メートル以上の場所で足場を使用するときは、原則、本足場(※1)を使用しなければ なりません。 (ただし一定の状況により本足場を使用することが困難なときは、一側足場(※2)を使用することも可) ※1 本足場とは、垂直方向に伸びる支柱が2本の構造 ※2 一側足場とは、垂直方向に伸びる支柱が1本の構造(安定度は本足場より劣る) 詳しくは、以下のリーフレットを参考にしてください。 参考|千葉労働局『足場からの墜落防止措置が強化されます』 おわりに 建設業では危険度の高い環境での作業も多いことから、他の業種に比べ、労働災害の 発生率が高くなっています。 従業員がより安全に作業できるよう事業者は日頃から安全対策を行い、従業員とともに 労働災害に対する意識を高く持って行動することが非常に大切です。

  • 2023年度、地域別最低賃金の全国加重平均が1,004円に

    先日、2023年度の最低賃金額と改定(発行)年月日が正式発表されました。 全国加重平均額が1,004円となり、はじめて1,000円を超えました。 全国加重平均額の引上げ額は43円で、前年を上回る過去最高の引上げ額です。 最低賃金には、都道府県ごとの物価などに合わせて定められる「地域別最低賃金」と、 特定の産業で定められる「特定最低賃金」の2種類があります。 今回の記事は、毎年10月ごろに改定が行われている地域別最低賃金 (以下、最低賃金)についてです。 47都道府県の最低賃金額と改定(発行)年月日は以下をご確認ください。 参考|厚生労働省『地域別最低賃金の全国一覧』 なお、全国加重平均額とは、都道府県ごとの労働者数×地域別最低賃金で計算した 全国の合計を、総労働者数で割った額です。 最低賃金の引上げはなぜ必要 最低賃金は、従業員の賃金の保障や労働条件の改善、 生活の安定の確保のためだけではなく、企業間の取引条件を改善し 公正な競争を促すためにも必要です。 2016年6月2日の「ニッポン一億人総活躍プラン」では、 年率3%程度を目途として、全国加重平均額1,000円を目指すと閣議決定されていました。2023年度でついに政府の目標は達成され、全国加重平均額が 1,000円を超えることになりました。 最低賃金とは 最低賃金とは、法令で定められている、労働に対して支払わなければならない 1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。 企業は、正社員、パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、 すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。 雇用契約書が最低賃金を下回っていたとしてもその部分は無効となり、 法令等で定めている最低賃金が適用されます。 最低賃金を下回る賃金を支払っていた場合は、50万円以下の罰金が 科せられることもあります。 最低賃金に含まれる賃金とは 支払われる賃金が最低賃金額以上であるかの確認は、1時間あたりの賃金を計算し、 事業場の最低賃金額と比較します。 最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や 各種手当です。 【1時間あたりの賃金の計算方法】 時給制のとき:時給額 日給制のとき:日給額 ÷ 1日の所定労働時間 月給制のとき:月給額 ÷ 1か月の所定労働時間 歩合給のとき:歩合給 ÷ 1か月の総労働時間 以下のサイトで具体的な計算事例が紹介されています。 参考|厚生労働省『最低賃金のチェック方法は?』 暦日数の関係やシフト制、変形労働時間制を適用している場合など、 1か月の所定労働時間が変動することがあります。 月給制で月によって所定労働時間が変動するときは、1年間における 1か月の平均所定労働時間を使い計算してください。 また、1か月の平均所定労働時間に少数点以下の端数がでたときは、 端数処理は行わず計算の結果算出された時間を使って最低賃金を計算します。 【事業場の最低賃金額】 以下のサイトで事業場の最低賃金額をご確認ください。 参考|厚生労働省『地域別最低賃金の全国一覧』 ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。 【最低賃金から除外される賃金】 ①慶弔手当など臨時的に支払われるもの ②賞与 ③残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当 ④精皆勤手当 ⑤通勤手当 ⑥家族手当 1時間あたりの賃金計算は残業代の計算にも使用しますが、 最低賃金と残業代とでは「含まれる賃金」「除外される賃金」が異なりますので ご注意ください。 残業代の賃金計算のときは、④を含めます。反対に、残業代の賃金計算では除外される 「住宅手当」は、最低賃金が地域における従業員の生活の安定の確保も目的のひとつと なっているため、最低賃金には含まれます。 また、④〜⑥の賃金について、従業員に一律で支給しているときは最低賃金と 残業代いずれの賃金にも含めます。 【例】 ・遅刻、早退、欠勤などがあっても精皆勤手当を満額支給(減額なし)している ・扶養家族がいる、いないにかかわらず家族手当を支給している など 最低賃金で企業がおさえておく3つのポイント 1 最低賃金の改定(発行)年月日をまたぐ勤務について 3交代勤務制などでは、夜勤シフトの従業員が最低賃金の改定(発行)年月日を またいで勤務することがあります。 最低賃金は、都道府県ごとの改定(発行)年月日以降に勤務する賃金から適用します。 そのため、最低賃金の改定(発行)年月日をまたいで勤務をしたときは、 0時より新しい最低賃金の適用となるように賃金を計算してください。 【例】 勤務日:9月30日 勤務時間:21:00 ~ 翌朝5:00 最低賃金改定日:10月1日 改定前の最低賃金を適用する時間:21:00 ~ 0:00 改定後の最低賃金を適用する時間:0:00 ~ 5:00 2 遠方で自宅テレワークする従業員の最低賃金について 企業の所在地から離れた自宅を就業場所として、テレワーク勤務をしている従業員もいます。 最低賃金の適用は事業場の場所によって決まりますが、 事業を行う独立性を有する一つの事業場と認められないときは 所属する事業場の所在地を対象と考えます。 そのため、自宅でテレワーク勤務を行う従業員に適用する最低賃金は テレワークを行う場所がどこかにかかわらず、テレワーク勤務を行う従業員の 所属する事業場の所在地がある都道府県になります。 【例】 企業の所在地:大阪府 テレワーク勤務者の自宅:沖縄県 最低賃金の適用:大阪府の最低賃金 3 最低賃金の従業員への周知 最低賃金は、従業員へ周知しなければならないと法令等で定められています。 周知方法は、作業場の見えやすい場所に掲示する、書面で従業員へ交付するなどです。 【最低賃金に関する周知内容】 ・最低賃金の適用を受ける従業員の範囲 ・最低賃金の適用を受ける従業員にかかる最低賃金額 ・最低賃金から除外される賃金 ・改定(発行)年月日 周知していないときは、30万円以下の罰金が科せられることもあります。 例年、以下のサイトで都道府県別の周知用リーフレットが更新されます。 9月20日時点では2022年度のリーフレットとなっています。 年度を確認のうえ、ぜひご活用ください。 参考|厚生労働省『最低賃金 都道府県別広報ツール一覧』 最低賃金の減額の特例許可制度とは 最低賃金には、特定の従業員について最低賃金を下回る賃金を支払うことができる 減額の特例許可制度が定められています。 申請先は、管轄の労働基準監督署です。 減額できる対象者は以下になります。 ・精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者 ・試用期間中の者 ・基礎的な技能および知識を習得させるための職業訓練を受ける者 ・軽易な業務に従事する者 ・断続的労働に従事する者 いずれも一定の条件を満たす必要があります。 また、許可は、対象となる従業員の労働条件を特定してから行いますが 最低賃金をどこまで減額ができるかは、それぞれ異なります。 以下のサイトに対象ごとのリーフレットがあるため参考にしてください。 参考・ダウンロード|厚生労働省『最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領』 減額を検討するときは、事前に管轄の労働基準監督署へご相談ください。 最低賃金・賃金引上げの支援策 最低賃金の引上げにより賃金が上がると、労働保険料(労災保険、雇用保険)、 社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の負担も増えます。 最低賃金の引上げに伴う対象従業員、企業の負担差額などは早めに確認をして 賃金引上げに向けての準備をしてください。 厚生労働省では、賃金引上げに向けた取組事例や地域・業種・職種ごとの 平均的な賃金を検索できるツールを盛り込んだ特設サイトを設けたり、 中小企業向けに業務改善助成金や補助金、税制など、最低賃金・賃金引上げ支援の マニュアルを公開しています。 (出典)厚生労働省『賃金引き上げ特設ページ』 参考・ダウンロード|厚生労働省・中小企業庁「最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援施策紹介マニュアル(令和5年4月版)」 おわりに 毎年、労働基準関係法令違反での送検や、企業名の公表が行われています。 公表されている中には「賃金が最低賃金以上の金額で支払われておらず、 行政指導に応じない」などの事案もあります。 今回の記事を参考に、最低賃金が適正に支払われるようにご対応ください。

  • 従業員10人以上の事業場に求められる労務管理。

    事業が発展し、従業員数が10人以上になると、税務面や労務管理で いくつかの重要なステップが必要になります。 今回の記事では労務面で対応すべき点を説明します。 【従業員数が10人以上となった場合に労務面で対応すべきこと】 ・安全衛生推進者等の選任 ・就業規則の作成・届出(罰則あり) ・法定労働時間の特例の非該当 ※一定の業種に限る ・男女別トイレの設置 ※従業員数が11人以上となった場合 なお、従業員数が50人以上となった場合は、別の法令が適用されます。 過去の記事をご確認ください。 過去の記事『従業員50人以上の事業場に求められる、労働安全衛生法上の衛生管理。』 常時10人以上の労働者を使用する事業場とは 労働安全衛生法上の「労働者」とは、職業の種類にかかわらず、 事業または事業場に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。 この「労働者」には、パート・アルバイトや日雇労働者などの 臨時的な働き方をする者も含まれます。 基本的には労働基準法の考え方と同じで、同居の親族のみを使用する事業や 家事使用人は「労働者」に該当しません。 また、原則同じ場所にあるものをひとつの事業場としますが、 以下の場合は、事業場の単位に注意が必要です。 【例外1 同じ場所にある場合でも業務内容が大きく異なるとき】 それぞれを別の事業場とする。(営業部門と工場部門、本社と店舗など) 【例外2 場所が異なる場合でも事業規模が著しく小さく、事業に独立性がないとき】 直近上位にあたる事業場と一括してひとつの事業場とする。(出張所、支局など) 安全衛生推進者等の選任 中小規模の事業場は、大企業と比べると労働災害の発生率が高い傾向があるため、 職場環境に合わせた正しい安全衛生指導を行う必要があります。 そのため常時使用する従業員が10人以上49人以下の事業場では、 職場の安全衛生水準の向上を図る役割として、事業場に専属の衛生推進者、 また一定の業種においては安全衛生推進者(以降、「安全衛生推進者等」とする)を選 任しなければなりません。 ただし、労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントなどから選任する場合は、 専属である必要はありません。 参考|厚生労働省『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。』 選任すべき事由(事業場の常時使用する従業員が10人に達したときなど)が 発生した日から14日以内に、安全衛生推進者等を選任します。 その後、作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により、安全衛生推進者等の氏名を 事業場内の関係労働者へ周知しなければなりません。 安全管理者や衛生管理者と異なり、選任した旨を労働基準監督署長に報告する義務はなく、 罰則もありませんが、衛生推進者の選任は法令で定められた義務のため、 対象となった場合は必ず対応してください。 就業規則の作成・届出(罰則あり) 就業規則とは、従業員の賃金や労働時間などの労働条件に関することや、 職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。 就業規則を作成することで、労使間での誤解やトラブルを防止できるほか スムーズな労務管理が実現できます。 常時使用する従業員数が10人以上となった事業場では、就業規則を作成し、 過半数組合または従業員の過半数代表者からの意見書を添付したうえで 事業場を管轄する労働基準監督署長へ届出をしなければなりません。 「常時使用する従業員数」には、パート・アルバイトも含まれており、 雇用形態にかかわらず、事業場に所属している従業員が通常10人以上いる場合が 作成対象です。 そのため、繁忙期などの一時的に雇用している従業員は、常時使用する人数に含みません。 作成基準は、企業単位ではなく事業場単位です。 人数のカウントや手続の漏れがないように注意が必要です。 また就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)、 当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項 (相対的必要記載事項) および、任意的記載事項の3つがあります。 就業規則を作成し届出をした後は、従業員がいつでも閲覧できる状態にしておくことが 必要です。 【就業規則の閲覧方法 例】 ・PDF化して社内の共有サーバーなどに保管し、いつでも見られる状態にしておく ・印刷して、見やすい場所へ掲示または事業所へ備え付ける ・印刷して、従業員へ配布する など 作成や届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられるため、適切に手続を 行ってください。 法定労働時間の特例の非該当 労働基準法では、法定労働時間を「1日8時間、1週40時間」と定めていますが、 一定の業種で常時使用する従業員が1~9人の規模の事業場では 特例として法定労働時間を「1日8時間、1週44時間」と定めています。 これを特例措置対象事業場といいます。 【特例措置対象事業場】 ・商業    :卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業 ・映画演劇業 :映画の映写、演劇、その他興業の事業(映画の製作の事業を除く) ・保健衛生業 :病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業 ・接客娯楽業 :旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業 そのため、特例措置事業場で常時使用する従業員が10人以上となった場合、 週の法定労働時間は原則の週40時間が適用されます。 なお、事業場とは工場、支店、営業所などの個々の事業場を指すため 原則の法定労働時間もしくは特例措置が適用されるかは、個々の事業場で判断されます。 【例】A店舗:常時使用する従業員数 12人、 B店舗:常時使用する従業員数 8人の場合 (いずれも理美容業) ・A店舗:常時使用する従業員数が10人以上のため、原則の法定労働時間 (1日8時間、1週40時間)を適用 ・B店舗:常時使用する従業員数が9人以下のため、特例措置の法定労働時間 (1日8時間、1週44時間)を適用 特例措置対象事業場から除外となった場合は、雇用契約書や就業規則などを見直し、 適宜変更してください。 男女別トイレの設置 事業場に設置するトイレの基準についても、法令できちんと定められています。 現在、事業場の規模や業種にかかわらず、男性用・女性用と区別したトイレを 設けなければなりません。 ただし、小規模な事業場では、建物の構造や配管の敷設状況などの理由により、 男女別のトイレを設けることが困難な場合もあります。 この現状を鑑み、2021年12月に法令等の改正により労働衛生基準が変更となり、 事業場で同時に勤務する従業員が常時10人以内である場合は、男女共用の独立個室型の トイレを設置した場合に限り、例外的に男女別による設置は要しないものと定められました。 【独立個室型のトイレの例】 (出典)厚生労働省『ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました』 そのため、事業場で同時に勤務する従業員が常時11人以上となる場合は 原則どおり男性用と女性用に区別したトイレを設置しなければなりません。 設置を怠った場合は法違反となり、罰則が適用される可能性もあるため、 将来的に人員を増加する可能性や事業場を変更する予定がある場合は 適切な環境に変更する必要があります。 おわりに 働きやすい職場の基盤は、法令に基づいた労働環境によって築かれます。 今回解説した4つの義務の中には罰則がある規定もあるため、「法律を知らなかった」では済まされないこともあります。 従業員数が増加しても組織が円滑に機能するために、労務担当者は適切な手続を行い 正確な労務知識を理解しておくことが大切です。

  • 2024年10月、さらなる社会保険の適用拡大に向けて

    パート・アルバイトをはじめとした短時間労働者に対する社会保険の適用では 2022年10月からの適用範囲の拡大が記憶に新しいところではありますが、 2024年10月には適用がさらに拡大されます。 短時間労働者の中には、配偶者の扶養の範囲内で勤務時間を調整するなど 家庭とのバランスを考慮しながら働く従業員もいます。 そのため、2024年10月からの適用拡大により新たに社会保険に加入することとなる 従業員には、あらかじめ十分に説明しておく必要があります。 今回の記事では、2024年10月からのさらなる社会保険の適用拡大について解説します。 社会保険の被保険者とは 社会保険における被保険者(以下、被保険者)とは、 厚生年金の適用事業所(以下、事業所)に勤務している 70歳未満の従業員を指します。 具体的には、次のいずれかに該当する従業員で、正社員や契約社員、 パート・アルバイトなどの名称は問いません。 ➀フルタイムの従業員 ②週の所定労働時間および月の所定労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員 ③上記②の時間数または日数が3/4未満であるが、一定の条件を満たす従業員 この③に該当する従業員を、社会保険上における短時間労働者といいます。 この③の「一定の条件」が以前より段階的に緩和され、 被保険者の適用範囲が拡大されています。 2024年10月から新たに適用対象となる従業員 2024年10月の適用拡大により新たに被保険者となるのは 以下の条件のすべてに該当する短時間労働者です。 1 一定の規模以上の事業所に勤務している 2024年10月から、適用対象となる事業所の規模が「被保険者数51人以上」となります。 この適用事業所のことを「特定適用事業所」といい、その規模は以前より段階を踏んで 範囲が拡大されてきました。 2 週の所定労働時間が20時間以上 雇用契約上の所定労働時間が20時間以上であることが必要です。 (残業時間は含みません。) ただし、所定労働時間が20時間未満の場合であっても、2か月連続で 実際の労働時間が週20時間を超え、今後も引き続き週20時間を超えると 見込まれる従業員については、3か月目から被保険者となります。 3 所定内賃金の月額が8.8万円以上 所定内賃金とは、基本給および諸手当の合計額のことで、以下のものは含みません。 ・割増賃金など時間外や休日、深夜の労働に対する賃金 ・賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 ・最低賃金に含めない賃金(通勤手当、家族手当、精皆勤手当など) 4 学生ではない 大学や高校、専修学校、各種学校などの学生は適用対象外です。 ただし、以下のいずれかに該当する方は被保険者となります。 ・卒業前に就職し、卒業後も同じ事業所に勤務予定の学生 (卒業見込証明書を有すること) ・休学中の学生 ・大学の夜間学部や高校の夜間定時制などの学生 5 2か月を超える雇用の見込みがある 雇用期間が2か月以内であっても、有期契約労働者の雇用契約書に 「更新する場合がある」などの明示があるときは、2か月を超えて 雇用が見込まれると判断され、最初の2か月の雇用契約期間から被保険者となります。 適用拡大に向けた準備 社会保険の適用拡大の対象となる特定適用事業所は、適用拡大が開始された当初は 被保険者数が501人以上の事業所、いわゆる大企業が対象でした。 そのためこの制度は、多くの中小企業にとって自社に関係のない制度と 捉える傾向にありました。 しかし、これからはより多くの事業所が、自社に関係する可能性があることを認識し、 今後の適用拡大の対応に向けて理解し、あらかじめ準備をしておくことをおすすめします。 1 新たな社会保険の加入対象者の把握 適用拡大により加入対象となる可能性のある短時間労働者を洗い出します。 2 適用拡大について社内周知 新たに加入対象となる可能性のある短時間労働者に対し 社会保険の適用拡大について周知します。 また、必要に応じて説明会や個人面談などを行い、社会保険の加入メリットをはじめとした制度内容を分かりやすく伝えたり、今後の労働時間について話し合うなど、 十分に理解してもらうための時間が大切です。 (出典)厚生労働省・日本年金機構『従業員数100人以下の事業主のみなさまへ』 3 書類の作成・届出 2024年10月になると、被保険者資格取得届の届出が必要になります。 届出までの流れは以下のとおりです。 ①日本年金機構からのお知らせ 新たに特定適用事業所となる事業所については、2024年8~9月頃に「特定適用事業所該当事前のお知らせ」、2024年10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が届く予定です。 ②「被保険者資格取得届」の作成 新たに被保険者に該当した短時間労働者についての届書を作成します。 ③「被保険者資格取得届」の届出 2024年10月になったら届書を事務センターまたは管轄の年金事務所に届出します。 適用拡大後の手続について 社会保険の被保険者となった短時間労働者がいる事業所では、社会保険の手続について 以下のような点を理解しておく必要があります。 1 定時決定、随時改定 定時決定や随時改定は、原則、報酬の支払基礎日数が17日以上ある月を対象月として 確認します。 しかし短時間労働者については、17日以上ではなく11日以上ある月が対象月となります。(あわせて、備考欄の「3.短時間労働者の取得(特定適用事業所等)」を〇で囲む) これは標準報酬月額の決定に関わる重要なポイントであるため、特に理解が必要です。 2 資格取得 短時間労働者が社会保険に加入するときは、一般の被保険者※と同じく「被保険者資格取得届」を提出します。 (このとき、備考欄の「3.短時間労働者の取得(特定適用事業所等)」を〇で囲む) ※一般の被保険者:正社員または週の所定労働時間・日数が正社員の3/4以上の従業員のこと 参考・ダウンロード|日本年金機構『健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届』 3 区分変更 雇用契約の変更などにより被保険者区分が変更となる場合、「被保険者区分変更届」の提出が必要です。 (例)週の所定労働時間が20時間の従業員が30時間(一般被保険者)になった場合 「短時間」→「一般」に被保険者区分を変更 (例)週の所定労働時間が30時間の従業員が20時間(短時間労働者)になった場合 「一般」→「短時間」に被保険者区分を変更 参考・ダウンロード|日本年金機構『健康保険・厚生年金保険 被保険者区分変更届/70歳以上被用者区分変更届』 この被保険者区分は、定時決定や随時改定でも利用される重要な区分です。 そのため、区分変更の届出や上述2の資格取得時での備考欄の記入については 忘れないよう留意してください。 4 複数の事業所勤務 短時間労働者のなかにはダブルワークなど複数の事業所で勤務する従業員がいることも想定されます。 社会保険の加入は、それぞれの事業所において要件を満たすかを判断されるため、 複数の事業所で被保険者となる可能性もあります。 その場合、「所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、主となる事業所を選択します。 なお、この手続は、原則従業員本人が行うため、企業は従業員に対し周知をしておくことが必要です。 また、従業員が「所属選択・二以上事業所勤務届」を提出すると「二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」が事業主に届きます。 給与計算の際はこの通知書に記載された社会保険料を控除してください。 (この社会保険料は按分した額のため、通常の保険料額表の金額に当てはまりません。) なお、被保険者証については、後日新しい被保険者証が届きます。 参考・ダウンロード|日本年金機構『健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届』 5 特定適用事業所の該当 2024年10月時点での被保険者数が50人以下の事業所が、その後、 被保険者数が51人以上となった場合は特定適用事業所となり、「特定適用事業所該当届」の提出が必要です。 ただし、適用拡大となる2024年10月時点で、事前に適用拡大の対象となる通知書類が 日本年金機構から届いている事業所については、該当届の提出は不要となる可能性があります。 詳しくは、2024年9月頃に届く通知書類をご確認ください。 【提出先】事務センターまたは管轄の年金事務所 参考・ダウンロード|日本年金機構『健康保険・厚生年金保険 特定適用事業所該当/不該当届』 おわりに 短時間労働者の社会保険適用では、企業には新たな手続やさらなる 社会保険料の負担などが発生します。 一方で、パート・アルバイトなどの従業員にとっては年金保障や 医療保険の充実といったメリットもあります。 この社会保険の適用拡大が、従業員のモチベーションアップやキャリアアップなどに 繋がれば、長期的な就業や優秀な人材の確保、職場の活性化など 長期的な視点でのメリットも期待できます。

  • 仕事と介護の両立を支援するために、企業ができること

    従業員から「家族の介護をすることになった」という申出を受けたとき、 企業によっては体制がまだととのっていないことも多いのではないでしょうか。 仕事と介護の両立には「介護休業を取得する」という方法が浮かびますが、 それ以外にも支援制度は数多く存在します。 介護離職をなくすためにも、企業の担当者が介護に関する知識を持っておくことは これからの時代において重要です。 今回は介護者となった従業員が安心して仕事と介護を両立できるようにするための 企業でできる取り組みについて解説します。 ※介護休業については、過去の記事で詳しく解説しています。 合わせてお役立てください。 過去の記事『企業が知っておきたい、介護休業の基本。』 介護を行うための社会資源 企業による仕事と介護の両立支援は重要ですが、介護者本人・企業の 取り組みだけでは限界があります。 そのため従業員の仕事と介護の両立支援を考えるうえでも、 どのような社会資源があるのかの理解が必要です。 社外には、下記のような社会資源があります。 【相談機関】 地域包括支援センター、市(区)役所・町村役場、居宅介護支援事業所 など 【医療機関】 病院・診療所 【生活支援】 介護事業所(訪問看護、通所介護、介護老人保健施設、介護老人福祉施設) など 介護者である従業員は、家族・親族、介護事業者等、行政、企業と連携をはかり チームとして介護体制を作っていきます。 企業も、介護体制をつくるという点ではそのチームの一員です。 介護者本人にどのような制度を提供できるかを念頭に置き 連携を取っていく必要があります。 介護はいつ発生するか予測ができず、かつ緊急であることが多いです。 介護に直面する従業員がまだいなくても、あらかじめ両立支援の取り組みを 行っておくことで、実際に介護者となる従業員がでた際には 上司や同僚の理解・協力を得ながら仕事と介護の両立体制を スムーズにつくることができます。 介護保険制度の基本 介護保険の被保険者が要介護認定を受けた場合、介護保険制度による 介護サービスを利用することができます。 企業で手続が発生することはありませんが、介護保険制度の基本や 介護保険サービス利用の流れを知っておくことで、介護を行う従業員が どのような状況で仕事と介護を両立しようとしているかの理解を深めることができます。 【介護保険被保険者】 ・第1号被保険者(65歳以上の人) 原因を問わず介護や日常生活の支援が必要となったときは 市区町村の認定を受け、介護サービスを利用できます。 ・第2号被保険者(40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人) 加齢が原因とされる病気(特定疾病)により介護や日常生活の支援が 必要となったときは、市区町村の認定を受け、介護サービスを利用できます。 (出典)厚生労働省『-企業のための-仕事と介護の両立支援ガイド』P24 【介護保険サービス利用の流れ】 1 要介護(要支援)の申請 市区町村の介護保険課の担当窓口で申請をします。 地域包括支援センターや、居宅介護支援事業所などに申請を 代行してもらうこともできます。 2 要介護(要支援)認定 訪問調査と主治医の意見をもとに、審査・認定が行われ、 要介護・要支援の程度が決定します。調査には、状況に応じて家族が 立ち会うこともできます。 要介護・要支援度は、要支援1・2、要介護1~5の7段階に分かれており、 段階によって利用できるサービスや月々の利用限度額が異なります。 3 ケアプラン作成 要介護者本人の意向や家族の意向、専門職の助言をふまえ、 どのようなサービスをどのくらい利用するかなどを決めるケアプランを 原則ケアマネジャーが作成します。 ケアプランの作成は、10割保険給付され、自己負担はありません。 介護者が仕事をしている場合は、日頃の働き方やどのように介護に携わりたいかなど、 仕事と介護の両立の希望をケアマネジャーに伝えることが大切です。 4 サービスの利用 介護保険サービスを提供する事業者(訪問看護、通所介護など)と契約を結び、 サービスを利用します。 利用にあたっては、費用の1~3割や居住費・食費などが自己負担となります。 サービスの契約にあたっては、要介護者は要介護状態によっては正常な判断が できないこともあります。 介護者が立ち会うことをおすすめします。 5 更新手続 要介護・要支援認定には有効期間(※)があります。継続してサービスを利用するためには、有効期間が終了する前に、更新の手続が必要となります。 ※有効期間は原則として初回認定6か月、更新認定12か月となります。 【利用できるサービス】 介護保険は、利用者が事業者を選択して介護保険サービスを利用する仕組みです。 企業としてどのような介護サービスがあるかを知っておくことで、 従業員の介護問題に寄り添い、より適切に対応することができます。 法定の支援制度 家族の介護を行う従業員の仕事との両立を支援する法律として 育児・介護休業法があります。 ここでは、法律で定められている制度についてご紹介します。 企業によって法律を上回る内容の制度を整備している場合は 自社の制度を優先させてください。 【介護休業】 従業員からの申出により、要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、 3回を上限として、介護休業を分割して取得できます。 【介護休暇】 要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、 1日単位または時間単位で取得できます。 【所定労働時間の短縮等の措置】 介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上の利用が可能で 以下の4つの中から企業がどの措置を講じるかを選択します。 ・所定労働時間の短縮措置(短時間勤務) ・フレックスタイム制度 ・始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度) ・介護サービスを利用する場合、従業員が負担する費用を助成する制度 【所定外労働の制限】 所定外労働の制限を請求することができます。 請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要な時に利用することが可能です。 (1回の請求につき1か月以上1年以内の期間) 【時間外労働の制限】 1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働の制限を請求することができます。 請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要な時に利用することが可能です。 (1回の請求につき1か月以上1年以内の期間) 【深夜業の制限】 深夜業(午後10時~午前5時までの労働時間)の制限を請求することができます。 請求できる回数に制限はなく、介護終了までの必要な時に利用することが可能です。 (1回の請求につき1か月以上6か月以内の期間) 【転勤に対する配慮】 事業主は、就業場所の変更を伴う配置転換を行う場合、その就業場所の変更によって 介護が困難になる従業員に対して、介護の状況に配慮しなければなりません。 【不利益取扱いの禁止】 介護休業などの制度の申出や取得を理由として、解雇・雇止め・降格などの不利益な 取扱いを行ってはいけません。 【ハラスメントの防止】 介護休業などの制度利用や申出に関して、従業員の就業環境が害されることがないよう、 ハラスメント防止対策を行うことは企業の義務です。 法定制度と合わせて企業が活用できる取り組み例 法定の支援制度だけではなく企業独自で制度導入を行うことで、より一層の仕事と介護の 両立支援ができます。 【取り組み例1】休暇制度の見直しや勤務時間の調整を行う 介護においては、通院への付き添いや、介護保険サービスの契約、ケアマネジャーの 面談など、平日に介護者が対応しないといけないケースが多くあります。 必要な時間は1~2時間程度となり、休みを丸1日取らなくてもよい場合が多いため、 有給休暇(半日単位、時間単位)の導入や中抜けの取得を認めるといった勤務時間の 調整を行えば、両立しやすい環境をつくることができます。 【取り組み例2】在宅勤務(テレワーク)制度の導入 在宅介護は家事の手伝いや通院の援助が容易になり、事故やケガの心配をすることが ないというメリットがあります。 また、実家など遠方の介護が必要となった場合の介護離職の防止にも役立ちます。 ただし、介護中の在宅勤務(テレワーク)にはデメリットもあり、要介護者が 目の前にいることにより仕事に集中できなかったり、要介護者が就寝した夜中や休日に 仕事をすることになってしまう場合があります。 在宅勤務(テレワーク)制度を導入する際には、メリット・デメリットを把握のうえ 検討されることをおすすめします。 参考・ダウンロード|厚生労働省『テレワーク活用の好事例集』 おわりに 「2023年には団塊の世代の7割が後期高齢者となる」といわれてきました。 その年を迎え、今後は特に働き盛りの団塊ジュニアが介護の問題を抱える時代に 突入します。 そのとき職場環境がととのっていなければ、介護離職という選択をする従業員も 増えていくでしょう。 望まない介護離職を減らすためにも、企業としてできることを検討する必要が出てきます。ただし介護の状況は人によって違い、介護者本人にも予測不可能なことがほとんどです。 個別の事情を理解し、最適な支援を行うためにも、企業側の理解を深めておくことを おすすめします。

  • 【2023年版】台風や豪雨など、自然災害時の企業対応とは。

    近年、全国各地で台風や豪雨などの自然災害が増えています。 企業は、従業員が安全かつ健康に働ける職場環境への配慮や 対策のための「安全配慮義務」を負っていますが、 これは台風や豪雨などの災害発生時にも同様に適用されます。 自然災害では従業員の安全を第一に考え、企業側が休業を指示する ケースも増えてきました。 今回の記事では、自然災害が起きたときの企業対応と、事前の備えについてお伝えします。 自然災害が起きたときの出勤判断と休業手当 自然災害時の出勤では、企業の判断で自宅待機や休業を命じるケースと、 本人の判断で出勤しないケースがあります。 状況に応じて休業手当の支払が必要になります。 1 企業の判断で休業をするとき 自然災害が起き、事業活動が行える状態にもかかわらず 会社都合による休業を命じるときは、それが従業員の安全確保のための 措置だとしても、従業員に対して平均賃金の60%以上の休業手当の支払が必要です。 ただし、台風や豪雨による事業場の建物倒壊や器物破損など 施設や設備が直接的な被害を受けて出社しても事業活動を行える状態でないときなどは、 天災事変等の不可抗力による休業となり、会社都合の休業とは判断されず 休業手当の支払の必要はありません。 2 本人の判断で出勤しないとき 以下の例のように本人の判断で出勤しないときや、自然災害の影響により 出勤できなかったときは、休業手当の支払の必要はなく欠勤扱いとなります。 (例) ・通信回線の障害などにより、職場と連絡がとれず自主的に自宅にいることにした ・台風や大雨による浸水のため、職場まで行ける状態ではなかった など このようなときに本人に負担なく休んでもらうためにも、 有給休暇の取得を推奨したり、振替休日や災害休暇などの特別休暇を 就業規則に設けている企業も多くあります。 自然災害時の事業継続にむけて事前検討 自然災害が必ずしも、事業が行えないほどの影響を引き起こすとは限りません。 従業員が休業すると事業がストップするため、従業員に出勤を強要するケースも 見受けられますが、無理な出勤は強風や大雨による災害に巻き込まれたり、 帰宅困難者となるリスクがあります。 気象予測の正確性が増し、ニュースなどで事前に台風経路や豪雨情報などを 把握できるケースも増えてきました。 自然災害が起きても、少ない人数で事業を継続できるよう以下のような 対応の検討をおすすめします。 【企業の事業継続のための検討 例】 ・災害時の緊急性の高い業務の整理 ・出勤しなくても業務ができる体制づくり(テレワーク、振替休日 など) ・出勤せざるを得ない場合の出勤者の選定 ・出勤者の災害リスク回避(宿泊場所の確保) ・出勤できない可能性のある従業員の業務引継ぎ方法 ・緊急連絡網の作成と更新 ・電気、ガス、水道、通信など障害が起きた時の緊急対応(二次災害防止) など 以下のサイトでは、台風情報や大雨危険度などが地域ごとに確認できます。 参考|気象庁『全国の防災情報』 テレワーク活用企業の自然災害時の備え 新型コロナ対策により導入の進んだテレワークは、自然災害時の事業継続にも 有効な手段となっています。 しかし、テレワークであっても最悪の事態は起こります。 たとえば台風や大雨、落雷などによる停電、過電流、インターネット接続不良などです。 具体的なケースとして、給与計算業務であれば停電やインターネット接続不良が 起きると業務がストップしてしまい、振込期日に間に合わない事態が想定されます。 そのため、非常時にもパソコンが稼働できるようにモバイルバッテリーを貸出したり、 インターネットの接続が途切れた場合のために自宅の主回線以外にも 別のモバイル回線(ポケットWi-Fiや会社スマートフォンでのテザリングなど)を 用意しておくなど、テレワーク環境でも業務をスムーズに続けるための備えが必要です。 【テレワーク活用企業の備え 例】 ・非常時のPCバッテリーの確保 ・インターネットのバックアップ回線の確保 ・通信状況の急変に対する優先業務の整理 ・データのクラウドバックアップ ・コミュニケーション手段の多様化(チャットツールの導入など) ・会議などの調整 など 防災の日と企業の対策 9月1日は、防災の日です。 日本は自然災害が多く発生する国であり、地震などの予測困難な災害も少なくありません。いざという時の従業員の安全確保のため、企業それぞれの防災対策を検討してみてはいかがでしょうか。 【企業の防災対策 例】 ・防災マニュアルの作成 ・災害時の防災対策メンバーの選定 ・災害時の連絡方法(メール・SNSなど)の従業員への周知 ・避難場所の把握と周知 ・公共交通機関の運航停止による帰宅困難者対策 ・事業場内の避難経路の確保 ・建物・社内設備の安全確認 ・非常時持ち出し品のリスト整理と責任者選定 ・毎年一回の避難訓練 ・定期的な必要品備蓄の見直し など 以下のサイトでは、防災マニュアル作成の留意点が紹介されています。 参考|愛知労働局『防災マニュアル作成の手引き』 自然災害後の業務量増加のときの時間外・休日労働 法令で定められている労働時間の限度時間は、原則1日8時間、週40時間です。 この時間を超える労働を命じる場合は、事前に届け出ている36協定で定めた 時間外・休日労働の範囲内で労働してもらうことができます。 自然災害直後も、過重労働による健康障害を防止するため、36協定で定めた 時間外・休日労働を遵守します。 しかし例外として、企業や被災地域の早期復旧や、施設・設備故障の修理、 システム障害復旧など緊急かつ臨時の必要がある場合は、労働基準監督署の許可を得て 時間外・休日労働の上限規制を超えて働くことが認められるケースがあります。 緊急事態のときは、事後届出も可能です。 例外の認定は、個別かつ具体的に判断され、単なる業務の繁忙などは認められません。 以下のリーフレットを参考のうえ、管轄の労働基準監督署へご相談ください。 参考|厚生労働省『災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について』 おわりに 例年、台風は7月から10月にかけて最も多くなります。 自然災害は、全国各地、いつ、どこで起こるか分かりません。 災害時は誰しもが心理的な不安や焦りを感じます。 災害発生時に企業の落ち着いた対応があれば、従業員も安心できるはずです。 今回の記事を参考に、災害時の企業対応について検討されることをおすすめします。

  • 【保存版】派遣先企業が知っておきたい派遣労働者の労務管理

    即戦力の人材がほしい、急な退職者が出てしまったなどの人材不足解消のため 派遣労働者を採用する企業も多いのではないでしょうか。 「派遣」は派遣労働者と派遣会社(いわゆる派遣元)が労働契約を締結しますが、 実際の就業先は派遣先企業(受け入れ先企業)です。 そのため、派遣先企業も労働者派遣について理解しておく必要があります。 派遣には、「登録型派遣」「常用型派遣」「紹介予定派遣」の3種類があります。 派遣の種類など、派遣労働者を受け入れるときに知っておくべき基本情報は 過去の記事をご確認ください。 過去の記事『【保存版】はじめて派遣労働者を受け入れるときのポイント。』 今回の記事では、派遣先企業が登録型の派遣労働者の受け入れ決定後から 受け入れ期間中に求められる対応や、留意すべきポイントについて解説します。 派遣先責任者の選任 派遣先企業は、派遣労働者を受け入れる事業所ごとに、自社の従業員の中から 専属の派遣先責任者を選任しなければなりません。 (ただし、事業所の派遣労働者数と自社の従業員数の合計が5人以下の場合は 選任の必要はありません。) 1 派遣先責任者とは 派遣労働者が適正に就業できるよう、派遣労働者に関する管理を一元的に行います。 派遣契約に基づく就業や環境整備、派遣会社との連絡調整などを担います。 派遣先責任者に必要な資格は特にありませんが、以下の項目に該当する者から 選任するよう努めます。 ・労働関係法令に関する知識を有する者 ・人事・労務管理などについて専門的な知識または相当期間の経験を有する者 ・派遣労働者の就業に関して、一定の決定・変更の権限を有する者 など なお、派遣先責任者として適切な業務を行うために必要な知識などを身につけることを 目的とした「派遣先責任者講習」も有料で実施されています。 参考|厚生労働省『派遣先責任者講習』 2 派遣先責任者の業務 ・指揮命令者※などに対する必要事項の周知 (法令等や派遣契約内容、派遣会社の通知など) ・派遣受入期間の延長通知 ・均衡待遇の確保(教育訓練・福利厚生施設・派遣会社に提供した賃金関係資料の把握) ・派遣先管理台帳の作成、保存および記載事項の通知 ・派遣労働者からの苦情処理 ・安全衛生について派遣会社と連絡調整(健康診断・安全衛生教育・事故時の確認など) ・そのほか派遣会社との連絡調整 ※指揮命令者:派遣労働者に指揮命令する立場の者 労働保険・社会保険の適用確認 派遣先企業は、受け入れの決定した派遣労働者が労働保険・社会保険の 加入対象である場合、派遣会社に労働保険・社会保険の加入状況を 確認しなければなりません。 (派遣会社から派遣先企業に提示された被保険者証の写しなどにより確認) もしも、正当な理由がなく保険に未加入の場合は、派遣会社に対し、派遣労働者を適切に保険加入させてから派遣をするように求める必要があります。 派遣契約の遵守確認 派遣先企業は、派遣労働者の受け入れ期間中に派遣契約が守られているかを 常に確認しておく必要があります。 具体的には、以下の4つの対応を行います。 1 就業条件の周知徹底 指揮命令者などの就業場所の関係者に、派遣契約で定めた就業条件を周知します。 周知方法には、就業条件を記した書面の交付や掲示などがあります。 2 就業場所の巡回 定期的に派遣労働者の就業場所を巡回し、派遣契約に違反した状況ではないか確認します。 3 就業状況の報告 指揮命令者に対し、派遣労働者の就業状況について定期的に報告を求めます。 4 派遣契約の遵守に係る指導 指揮命令者に対し、派遣契約に違反する指示を行うことのないように指導します。 教育訓練・福利厚生施設の提供 2020年、すべての企業に対し、働き方改革の一環として同一労働同一賃金が 適用されました。 これにより、正社員と派遣労働者とのあいだでの、雇用形態の違いを理由とした 待遇差が禁止されました。この待遇差とは賃金はもちろんのこと、 教育訓練や福利厚生施設なども該当します。 【教育訓練の実施】 派遣先企業が自社の従業員に対して業務に関する教育訓練を実施する場合、 同じ業務に従事する派遣労働者に対しても、派遣会社からの求めに応じて 参加できるように対応しなければなりません。 派遣会社が同様の教育訓練を実施する場合はこの限りではありませんが 業務に密接した教育訓練は派遣先企業の方が実施しやすい傾向にあります。 【福利厚生施設の利用】 派遣先企業は、自社の従業員が利用できる福利厚生施設のうち、 休憩室、更衣室、食堂という社内での業務円滑化を目的とした施設においては 派遣労働者にもこれらの施設の利用機会を与えなければなりません。 なお、売店、病院、保養施設などそのほかの施設についても派遣労働者が 利用できるよう配慮する必要があります。 派遣先管理台帳の作成 派遣先企業は、派遣労働者ごとに日々の勤怠内容や教育訓練の実施内容、苦情内容などの 就業実態を把握できるよう「派遣先管理台帳(任意書式)」を作成し、 3年間保存する義務があります。 また、派遣会社に対し、定期的に(1か月に1回以上)、そして派遣会社から 求められたときにも、派遣先管理台帳の記載内容を通知しなければなりません。 派遣先管理台帳の書式について、厚生労働省より記載例が公開されているため ご活用ください。 参考・ダウンロード|厚生労働省『派遣先管理台帳(例)』 苦情の適切な対応 派遣先企業は、派遣労働者からハラスメントや就業条件と異なる実態、 自社従業員とのトラブルなどの苦情を受けた場合、誠意をもって適切かつ迅速な 対応をしなければなりません。 1 派遣会社へ通知 まずは派遣労働者からの苦情を速やかに派遣会社へ通知します。 ただし、派遣先企業において苦情内容の解決が容易かつ速やかに対応できる場合は、 派遣会社への通知は必要ありません。 2 解決に向けた対応 苦情の原因が派遣先企業に関わることのみである場合、派遣先企業の対応だけで 解決できる可能性が高く、派遣先責任者が中心となって対応します。 一方、原因が派遣会社にも関わる場合、派遣先企業と派遣会社がしっかりと 連絡調整しながら解決を図る必要があります。 3 不利益な取扱いの禁止 派遣先企業は、苦情を申出た派遣労働者に対し不利益な取扱いをしてはいけません。 不利益な取扱いの一例としては、不当に業務量を増やす、苦情の申出を理由として 派遣会社に派遣労働者の交代を求めたり派遣契約の更新を拒否する、などが挙げられます。 派遣先企業の責任について 派遣労働においては、原則、派遣労働者と雇用契約関係にある派遣会社が 責任を負う立場にあります。 しかし、派遣先企業が業務について具体的に指揮命令を行い、また就業場所における設備、 機械などの管理も派遣先企業で行っているため、派遣先企業が一部責任を 負うものもあります。 ここでは、派遣先企業が責任を負う主な項目を挙げます。 1 労働基準法関連 ・労働時間・休憩・休日などの管理 ・育児時間の管理 ・公民権行使の保障 など 派遣労働者の日々の勤怠管理の責任は派遣先企業にあります。 ただし、36協定については派遣会社の36協定が適用されます。 そのため、派遣労働者に時間外労働や休日労働をさせるときは、 派遣会社の36協定の範囲内にとどめるよう注意が必要です。 2 労働安全衛生法関連 ・作業環境測定の実施 ・危険または健康障害の防止措置 ・就業制限 ・特殊健康診断の実施 (雇入れ時健康診断および定期健康診断は派遣会社が実施) ・労働者死傷病報告の提出 など 派遣労働者が労働災害により死亡または休業したときは、派遣先企業・派遣会社ともに 労働者死傷病報告の提出が必要です。 なお、派遣先企業は労働者死傷病報告の写しを、遅滞なく派遣会社に送付しなければなりません。 3 男女雇用機会均等法関連 ・妊娠・出産などを理由とする不利益な取扱いの禁止 ・セクシャルハラスメントに関する雇用管理上の措置 など 差別的な取扱いの禁止の責任は主に派遣会社が負いますが、実際の就業先である 派遣先企業にも責任が課されます。 つまり、派遣先企業と派遣会社ともに責任を負うこととなります。 4 労災保険法関連 労働災害については派遣会社が責任を負いますが、派遣先企業には労働災害の証明などの 対応が求められます。 労働災害が発生したときは、派遣先企業は速やかに派遣会社に発生状況などを 連絡してください。 おわりに 適正な派遣労働者の受け入れのためには、派遣会社だけではなく派遣先企業の協力が 必要不可欠です。 派遣先企業は、労働者派遣法をはじめとした法令等、そして派遣契約に関することなどを 押さえておくことが大切です。 また、派遣労働者の受け入れ前については、本記事に記載している事項以外にも、 派遣契約の締結、派遣受入期間の制限、同一労働同一賃金の対応などの様々な対応が 必要となるため、十分に知識を深めておくことが求められます。

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